あゆ(鮎)

芳ばしい香りとほのかな苦味が夏の渓流を思わせます。太古の昔から人々に愛され、 各地で貢物にされてきました。戦況や豊作・凶作の占いにも用いられたという重要な魚で、 ”鮎”という漢字もここから来ています。最近は天然ものを入手するのは難しくなってしまいましたが、 アユの香りは夏の風物詩として忘れられないものです。

品 種 サケ目アユ科アユ属の淡水魚。日本では北海道中部以南に分布。その他、韓国、台湾、中国の一部にもいます。 香りがいいので”香魚”、1年で一生を終えるので”年魚”ともいいます。 晩秋に河口付近で生まれ、そのまま海に下って冬を越します。翌春に稚アユとして川を上り、 若アユとして昆虫などを食べて成長していきます。夏になると一匹づつ縄張りを張って川藻を食べるようになり、 川藻の香りが身に移って独特の香りを持つようになります。秋には上流から産卵を始め、 落ちアユとして川を下りながら河口まで産卵し続けます。
川を下る事を古語で「あゆる」と言ったのでアユという名前になったそうです。
琵琶湖には陸封型のコアユ(成長しても大きくならない)がいます。長い間、 河川のアユと同じ種類だと思われていましたが、最近のDNA研究で別種である事がわかりました。
6月の解禁が有名ですが、”土用鮎”と言われる土用の頃がもっとも成熟して香りも高く旬と言えます。 実際には九州では6月下旬から7月、東北では7月から8月です。 また簗(やな)を立てて落ちアユを採る9月末から11月も旬と言っていいでしょう。
調理方法 なんと言っても塩焼きで、登り串をして振り塩、ヒレに化粧塩をして強火の遠火で焼きます。 蓼酢(たです)があると最高ですね。 ”背越し(せごし)”(アユを骨ごと2mmぐらいに薄く輪切りにした刺し身)も美味。 その他、皮の固い落ちアユは甘露煮、煮浸し、魚田(田楽)、昆布巻き、など。アユ寿司も風情があります。
目利き 市場に出回っているほとんどは養殖物か準天然物(養殖アユを渓流に放したもの)。 天然物は全体にほっそりとしていて頭部が大きく、胸ビレの上の黄金色の斑点が明瞭です。  
養殖 1909年に石川千代松博士によって、琵琶湖のコアユに人工的に藻を与えれば普通のアユと 同様に大きく育つことが発見されました。これがアユ養殖の切っ掛けです。1960年代に天然アユの減少と共に アユ養殖が盛んになりました。琵琶湖のコアユや人口孵化の稚アユを育てて6月の解禁日までに15cmから20cmに育てます。 また、通年出荷するために点灯して人工的に日照時間を長くして卵を持つのを遅らせる技術も開発されました。 (アユは日照が短くなると、秋である事と察知して卵を持ち、魚体の味が落ちてしまうため。) 天然のアユは成長すると肉食から川藻などの草食になるのですが、養殖では基本的に魚のミンチなどの肉食で育てます。 このため、天然アユにあるような独特の香りが出てきません。しかし最近では植物性の原料を混ぜたエサを使って、 天然ものに味を近づける努力がなされています。 最近は価格の低下によりアユ養殖の採算が合わなくなった為、養殖アユも減ってきています。
市場 養殖物は1998年に全国で1万トン前後で減少傾向。トップの徳島県が35%近くを占めています。 天然物はダムのある川からはいなくなってしまいましたが、まだ各地に天然アユを自慢する川が残っています。 市場に出る前に地元で食べられてしまうので漁獲高は不明。  


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制作日:2002年5月6日
更新日:2006年8月13日
上田 泰久