豚肉

Butaniku 日本人が一番たくさん食べている肉です。明治末期にトンカツが発明されたのが切っかけになって 豚肉が普及したという話は有名ですね。豚肉は急に加熱しても固くなりにくく 外から脂が染み込みにくいのでトンカツにぴったりなのです。 肉そのものから大変おいしいダシが出ることも特徴で、 例えば牛のシャブシャブと豚シャブを比べてみると、お鍋に残った汁の味が格段に違います。

品 種 豚は肉を食べるためだけに飼われている唯一の家畜です。(他の家畜は乳や毛皮の利用を含めた ”多目的”で飼われています。) 紀元前3000年から7000年の古代オリエントの遺跡からすでに家畜化された豚 (つまりイノシシがすでに家畜化されていた)の骨が出土するそうで、人類の最も古い家畜の一つだと言われています。
現在の日本では約20種、800万頭あまりが飼育されていて、 様々なブランド名で流通していますが、ほとんどが以下の2つです。
  • ランドレース、大ヨークシャー、デュロックの三種を交配させた三元交配− 飼料効率(1Kg体重を増やすために必要な飼料)は3Kg程度で、牛の8Kgに比べるとかなり効率的です。 また牛は全体重の50〜60%が”食肉”なのに対してこの豚では70%程度になっています。 ほとんどが食べられるための肉で、それを支える最小限の四肢しか持っていないという、 まさに食肉生産機のような生き物です。通常は生後6ヶ月で出荷されます。
  • 黒豚(英国バークシャー)−飼料効率が悪く成長速度が遅い(生後出荷まで約8ヶ月)ので割高になってしまう のですが、筋肉の繊維が細いので肉質がきめ細かく、かつ味が濃いという特徴を持っています。 一般に畜肉は飼育日数が増えると味は濃くなるが肉質が固くなるのですが、黒豚では柔らかさと両立されているのです。
この他には、中国の金華ハムを作る金華豚、最近実験的に作られているバークシャーと他の種類との交配種などが ありますが、あまり一般的ではありません。
普及の歴史 ヨーロッパで最初に豚肉を愛好したのはギリシアでした。それ以前に文明の栄えたエジプトでは、 豚は飼われていたがあまり食べられていなかったということです。ギリシア、そしてローマ時代に養豚の方法、品種改良、 そして調理の技術が確立しヨーロッパに広まっていきました。 東洋では、ヨーロッパとは別に中国において豚肉の文化(?)が発達していきました。
日本でも弥生時代の遺跡から家畜化されたイノシシ(つまり豚)の歯が見つかっていることから、 そうとう昔から家畜化され、食用にされていたのではないかと推測されています。 木の実や農産物に余剰がでるようになると豚に食べさせて太らせ、 食料が不足する時などにつぶして食べていたのでしょう。しかしその後、 奈良時代の仏教の普及による肉食の禁止以後、1000年にわたって日本人の食卓からは(少なくとも表向きは) 消えてしまいます。明治時代になると再び肉食が奨励されるようになりますが、最初に普及したのは牛肉でした。 豚肉が本格的に普及するのは明治も末期になってから、銀座の洋食屋であるレンガ亭で発明されたトンカツに よってです。(レンガ亭ではポーク・カツレツと呼んでいます。)ビフテキの3分の1以下という値段に加え、 和洋折衷の味が受けて大ヒットしました。

世界各地の豚肉の忌避についてはこちらをごらんください。
部 位 基本的に肩、肩ロース、ロース、ヒレ、ばら、もも、そとももの7つの部位に分けられます。
  • ばら(三枚肉)−豚肉らしい濃厚な味わいがあり、角煮、酢豚、ベーコンには欠かせません。 カレー、生姜焼きも美味。骨付きのものはスペアリブと呼ばれてこれも人気です。
  • ロース−柔らかい肉質で濃い旨みがあります。トンカツ、ソテー、薄く切ってしゃぶしゃぶに。
  • 肩ロース−ロースよりやや固いのですが、より味が濃くすばらしい旨みがあります。 固くても良ければロースと同じ用途で。
  • ヒレ−最もきめ細かく柔らかいが、豚肉の風味は薄い。脂肪分がロースの5分の1程度しか無く、 油との相性がいいのでトンカツにむきます。火を通し過ぎるとパサツクので注意しましょう。
この他にレバー、タン(舌)、ガツ(胃)、マメ(腎臓)、ハツ(心臓)、トンソク(足先)、ヒモ(大腸)、 などが食用とされます。
調理方法 常夜鍋をご紹介します。豚シャブのようなものです。土鍋に水3分の2と日本酒3分の1を入れ、 ダシ昆布を20cmX20cmぐらい入れて過熱します。 沸騰したら豚ロースの薄切りを入れるのですが、野菜は軽く下茹でをしたホウレン草のみです。 白菜や春菊を入れるのはやめましょう。 漬け汁は大根おろし、ポン酢と醤油少々、七味唐辛子を薬味に使います。 残った汁でオジヤを作ると大変おいしいです。コツは日本酒と昆布をケチらないこと。  
市場 県別の一人当たり豚肉消費量を見ると、東高西低になっています。 88年の統計なのですが、北海道、東北、関東では一人当たり年間20kg以上食べていますが、 関西以西では14kg程度です。ただし沖縄は例外で25kgです。  


豚肉の忌避について

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制作日:2002年1月3日
更新日:2002年5月1日
上田 泰久