牛肉

Gyuniku 牛肉の本領はステーキ、ローストビーフなど、焼いてそのまま食べた時の圧倒的な旨みにあります。 脂肪の美味しさと赤身の美味しさをあわせ持っている所が奥の深いところで、 世界中の人々が長い年月をかけてその美味しさを追求してきた食材の頂点です。 牧場が森林を破壊して地球環境にダメージを与えているという話も出ていますが、 それほどまでに人類が執念を燃やして追求してきた食材、それが現在の牛肉なのです。 (写真上はサーロイン、下はフィレ)

品 種 西アジアからヨーロッパが原産地と考えられています。紀元前8,000年にはすでに家畜化されていました。 昔からほとんどの種類の牛が肉を食用にされると同時に乳用・役用に使われていて、 この点が食べられるためだけに飼われている豚と違うところです。 日本では縄文時代の終わりか弥生時代には渡来し飼われていたようで、登呂遺跡などで牛の骨が発掘されています。 長い間、農耕作業に使われまた食用とされましたが、1950年代には農業の機械化によって役用として役割は終わり、 肉用としての改良がおこなわれました。
牛はもともと放牧によって野草を食べて育つ動物ですが(牧草飼育=グラスフェッド)、 美味しい肉を得るために穀物を与えて育てる穀物飼育(グレインフェッド)も広く行われています。 穀物飼育のほうが肉が柔らかく、サシ(霜降り)も入りやすくなります。
屠殺(とさつ)して枝肉にしてから品質検査・格付けされ、その後一週間以上熟成(エージング)させてから出荷されます。 熟成が足りないと旨みが足りず青臭くなります。
牛の西高東低 昔から箱根を境にして西の地方では牛を、北東では馬を農耕に使っていました。(岩手県の南部牛だけが例外です。 背の高い馬が使えない鉱山内部の作業のためと、馬が苦手とする急な坂道で荷物を運ぶために牛が使われていました。) また明治以後の和牛の品種改良も中国地方を中心として行われました。現在でも一人当たりの牛肉消費量を見ると 関西以西のほうが関東・東北よりはるかに多くなっています。(”市場”の項を参照)
牛肉の輸入 最近では国内生産よりも輸入の方がはるかに多くなっていますが、 それは海外の方が”土地が広く放牧に適した牧草地が多い”、”穀物飼育の為の穀物も輸入なので日本では高くつく” などの理由で安く生産できるからです。
現在はアメリカとオーストラリアが輸入牛のシェアを2分しています。 以前は穀物飼育(アメリカ)か牧草飼育(オーストラリア)か、また冷凍(アメリカ)かチルド(オーストラリア)か、 によって味に差があったのですが、最近では日本企業が現地生産者・パッカーと提携して日本向けに飼育し ほとんどチルドで輸入されますのでほとんど差がありません。
種類 和牛、外国種(輸入牛)などの牛の種類についてはこちらのページをご参照ください。
等級 日本では日本食肉格付協会によって牛肉の品質がチェックされ格付けされています。 枝肉の状態で A-5 から C-1 までの15段階に格付けされます。 AからCまでの3段階(Aが最高位)は歩留まり(枝肉から骨や筋を除いて、どのくらいたくさんの肉がとれるか) を表しています。
それに続く 1〜5 までの数字(5が最高点)は肉質を表し、 「脂肪の交ざり具合」「肉の色」「肉の光沢」「肉のしまりときめ」「脂肪の色・光沢・質」 の各項目の総合点によって決められます。 赤身肉よりサシが多いほうが良い品質として格付けされます。 スーパーや肉屋の店頭ではあまりこの等級は見かけませんが、最近少しづつ表示されるようになってきました。
和牛、乳牛、外国種などの種類別に格付け結果をまとめてみましたのでこちらをご覧ください。
外国にも同様の格付け制度があります。 アメリカ USDAのグレード
部 位 こちらのページをご参照ください。
市場 部分肉ベースで、2000年に牛肉の国内生産は36万トン(そのうち肉用和牛が16万トン、乳牛が20万トン)、 輸入は74万トン(アメリカ36万トン、オーストラリア34万トン、カナダ・ニュージーランドなどが4万トン)でした。 過去5年間、国内生産は横ばいですが輸入は微増です。
県別の一人当たり消費量を見ると、豚肉と反対に西高東低になっています。 88年の統計なのですが、北海道・東北では1人当たり3〜4kg、関東・北陸・中京では9kg、 それに対して関西以西では15〜18kgを食べています。豚肉の消費量が著しく多い沖縄は13kgです。  
コメント 牛肉王国のアメリカでは、霜降りを "Fat Beef" と言って嫌う人が増えてきて、 "Lean"(赤身)のおいしい牛肉作りが追求されています。(ただしアメリカでは牛肉が主食なので、 味よりも健康のために赤身を選んでいる人もいます。) 州によって食文化も違うので簡単には言えないのですが、全体傾向としてはやはり赤身にシフトしてきています。
またヨーロッパ最大の牛肉生産国であるフランスは、もともと赤身のおいしさを追及した牛肉作りをしています。 そう考えると世界の中で日本のように霜降りをとことん追求しているのは少数派です。 もちろん、日本の霜降り肉は芸術の域に達しているという事で海外でも評価されていますし、 日本に来ているアメリカ人やフランス人に神戸ビーフを食べさせるとその美味しさに感激します。 しかし一方で赤身系の和牛が市場で苦戦しているのは気になります。 輸入牛と差別化しにくいので価格面で不利なのでしょうが、 がんばっておいしい赤身づくりに挑戦して欲しいと思います。
 


牛の種類

牛肉の部位

日本食肉格付協会による格付け結果

アメリカ USDAのグレード

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制作日:2002年1月13日
上田 泰久