アメリカ USDA による牛肉の格付

世界最大の牛肉生産国であり消費国でもあるアメリカではどのように牛肉の品質を管理し格付けしているのでしょうか。 アメリカは国土が広いので卸・小売や消費者が肉の現物を目で確かめられずに注文しなければならないこともあり、 公的機関による客観的な格付けが早くから整備されていました。 以下のようなシールがスーパーなどでパックされた牛肉に貼られていますが、 これがアメリカで広く普及している USDA (United States Department Agriculture :米国農務省)による等級です。

Prime Choice Select

概要 USDAの肉質格付けは1927年には確立していました。(歩留まり等級は65年) 等級の取得は生産者の義務ではないのですが、多くのスーパーで生産者に対して等級の提示を求めています。 90年までは一般消費向け牛肉の格付率は50%程度でしたが、ここ10年で70〜80%まで上がっています。 近年ではスーパーの牛肉のほとんどに USDA のシールが貼られています。
格付けには”肉質等級 (Quality Grade)”と”歩留まり等級 (Yield Grade)”がありますが、 歩留まり等級は「枝肉から骨や無駄な脂を除いてどのくらいの正肉が取れるか」というもので、 消費者にはあまり関係がありませんので、ここでは肉質等級について説明します。
肉質等級は「牛の種類」「性別」「成熟度(若々しさ)」「サシ(霜降り)の多さ」によって決定され、 プライム・チョイス・セレクト・スタンダード・コマーシャル・ユーティリティー・カッター・キャナー  の8つの等級に分類されると定義されています。 しかし、実際にスーパーに並んでいるのはプライム・チョイス・セレクトの3等級のみで、 他の等級の表示を見ることはありません。(下の表にある出現率をごらんください。)
成熟度(若々しさ) 英語では Maturity なので「成熟度」と訳されますが、若い牛ほど高く評価されます。 ただしここで言っているのは物理的な月齢ではなく肉質の若々しさの事で、「筋肉組織がなめらかで肉が鮮紅色、 軟骨が白く、骨が・・・・」などと細かく定義されています。 A〜Eまでの5段階(Aが最高)がありますが、実際に市場で等級が付けられているのはAかB に限られます。 あえて、等級と物理的な月齢の目安をあげると、A:9〜30ヶ月、B:30〜42ヶ月、C:42〜72ヶ月・・・ぐらいに なるそうです。月齢があがるほど等級が落ちるわけですから、 食肉用の生産者がわざと等級が下がるまで飼育しているわけはありません。 また、役目の終わった乳牛や役用牛を格付けしたらC〜Eにあてはまるのでしょうが、 こういう場合ではわざわざ低い等級をもらうために格付けを申請しないのだと思います。
サシ(霜降り)の多さ 英語では Marbling です。霜降りが高く評価されるのは日本だけではありません。 普通は「サシが多いほうが肉質が柔らかくてトロケル食感があり、香りも味もいい」という事で、USDAの等級でも サシの多さが最も大きな格付け要素になっています。「豊富(Abundant)」「中程度(Moderate)」「適度(Modest)」「少ない(Small)」 など10段階に分かれています。ただし日本人の感覚だと「豊富」でもやや多い程度、 「適度」だと少なめだと感じると思います。
最終的な格付 下の表に肉質等級と「成熟度(若々しさ)」「サシの多さ」の関係をまとめました。
1.成熟度(若々しさ)がAかBの牛がスタンダード以上に格付けされ、C以下だとコマーシャル以下に格付けされます。
2.さらにサシの多さによって等級が決まってきます。
コメント 下の表のチョイスとセレクトの出現率を見ると、88年から99年までの間にチョイスが減ってその分セレクトが増えています。 これはアメリカの消費者の健康志向・味覚志向が変化して赤身肉を求める人々が増えてきたこと、 生産者が等級の高い・低いという価値基準を捨ててまでも、 消費者の志向の変化に合わせて肉牛の飼育を変えてきていることの現れです。
USDAの等級ではサシの多さだけでプライム・チョイス・セレクトが決まってしまい、 「赤身の色」など他の評価要素はその3つの等級の格付けにはほとんど関係無いため、 このような割り切り方ができるのでしょう。


肉質等級と「成熟度」「サシの多さ」の関係・出現率の推移

肉質等級 成熟度
(若々しさ)
サシの多さ 出現率
1988年
出現率
1993年
出現率
1999年
プライムA・B豊富 3.0%2.1%3.2%
チョイスA・B中程度〜少ない 92.3%66.6%59.2%
セレクトA・Bわずか 4.6%31.3%38.5%
スタンダードA・B形跡がある・ほとんど無い 0.0%0.1%0.0%
コマーシャルC〜E豊富〜少ない 0.0%0.0%0.0%
ユーティリティーC〜E中程度〜ほとんど無い 0.1%0.1%0.0%
カッターC〜Eわずか〜ほとんど無い 0.0%0.0%0.0%
キャナーC〜Eほとんど無い 0.0%0.0%0.0%


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制作日:2002年1月13日
上田 泰久