かつお(鰹)

黒潮の贈り物。南の海からやって来て、新緑の季節に関東の沖合いで採れるのがさわやかな味の初鰹。 紅葉の頃、三陸沖を南下してくるのが旨みたっぷりの戻り鰹。一年で2種類の楽しみを提供してくれます。 Katsuo_Tataki

品 種 サバ科の魚。高速で海中を遊泳し、鰯などの小魚を食べます。近縁種にはスマ(ヤイト)、ハガツオ、ソウダガツオ などがいます。
産地 と旬 鰹は南の海で生まれ、2年ほどそこで過ごします。2歳になった1月頃にフィリピン沖から黒潮に乗って日本沿岸を 北上しはじめ、3月には九州や四国の高知沖に現れます。4月には駿河湾沖で鰯を食べて4kg前後まで 太ってきます。これを5月に相模湾沖でとったものが関東で言う初鰹です。(現代では銚子や勝浦もいいですね。) 最近では南方の海で2月、3月に採ったものを初鰹と称して売っていますが、まだ十分に肥えていないので 旨みがたりず、おいしくありません。最近では「初鰹より戻り鰹の方が美味しい。」などという議論がありますが、 本来の初鰹でない物を食べていては話になりません。戻り鰹は、9月頃に三陸沖で採ることが多いようです。
なお鰹のような回遊魚でも地付きの魚がいます。 エサに恵まれ丸々と太って大変な美味だと言いますが、最近は鰹漁船が大型化して沖合いの群れしか採らなく なりましたので、こうした地付きの鰹は地元で消費されるだけのようです。
成 分 よく言われるように、イノシン酸が多くなっています。これは継続して早く泳ぐために大量のATP(アデノシン三リン酸) を蓄えていて、死ぬとこれが分解されてイノシン酸になるからです。また、クレアチンやヒスチジンなどの旨み 増強成分が多いのも、味を濃く感じさせる要因です。脂質は時期と部位によってかなり変わってきます。 初鰹では3%程度。戻り鰹では10%にもなります。また、皮に近い部分ほど脂質が多いという特徴があります。  
調理方法 まずはタタキでしょう。大型の鰹で鮮度の高いものはまだATPの分解が十分に行われていないので、旨みが 足りません。そこで叩いてイノシン酸を生成させるのです。また表面を焼くと皮の近くにある脂質を飛ばして、 旨みが均一化されます。鰹のタタキの場合焼いた後で水にさらさない方が美味しく食べられます。 時々タタキに灰や燃えカスが付いているのを見かけますが、これは水にさらしていない証拠なのです。
小型(1.5kg程度)のものは刺身(皮付きのまま)のほうが美味しいようです。 皮が硬い場合は熱湯をかけて霜降りにします。いずれにしても、皮を食べる事が重要です。皮の近くに脂質が あるからです。
鰹をゴマと一緒にすりつぶして味噌汁に入れるスリナガシ汁も格別の美味しさです。
内臓の塩辛である”酒盗”も最高の珍味の一つですね。 なお、鰹節についてはこちらをご覧ください。  
ポイント 特に初鰹は目利きが難しいと言われています。同じ時期に同じ場所で採れたものでも個体差で脂質、味に バラツキがあるようです。また、ゴリと言われるなぜか硬くてまずい魚体もあります。それがなかなか外見からでは 判断できません。この点も最近の初鰹の評判を落とす原因かもしれません。  
市場 2000年に34万トンの漁獲がありました。漁獲量は安定しています。 2003年現在、豊漁で例年より安値になっています。  
初鰹の値段 「女房を質に入れても初鰹」と江戸での初鰹の人気は有名ですが、実際にはどのぐらいの値段だったのでしょう。 実際に初鰹に驚くような高値がついたのは元禄から天明ぐらい、18世紀を中心とする150年ぐらいの間でした。
文化9年(1812年)の記録が残っています。初鰹の入荷は旧暦の3月25日。わずか17本の入荷でした。 このうち6本は将軍家お買い上げ。この分の値段は非常に安い。3本は料亭の”八百善”が2両1分で買い、 8本が市場の魚屋に流れた。そのうち1本を中村歌右衛門が3両で買って、 下積みの役者にふるまったということです。今の貨幣価値に換算して、1両=3万円として、鰹一本が9万円です。
その後、江戸時代の末期になるにつれて初鰹のフィーバーは沈静化し、値段も普通になっていきます。  


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制作日:2001年7月8日
更新日:2003年6月1日
上田 泰久