香辛料の王様。この小さなつぶが世界中の人々の食生活を変え、 航海や貿易を発展させる原動力となって歴史まで動かしたのです。 ローマ時代にコショウがヨーロッパに紹介されると人々は争ってこれを求めるようになります。 以来1500年をかけて人々は航海術をみがき冒険を重ねてコショウの入手に情熱を傾けます。 産地でも自分たちが食べる食物を輸入に頼ってでもコショウの栽培に力を入れるようになり、 自給自足の枠を越えた農業経済が発生してきます。 今日ではあたりまえのように使えるコショウですが、そんな歴史に思いを馳せてみるのもいいでしょう。 |
品種 | コショウ科。熱帯性の常緑ツル植物です。現在の栽培地はインド、インドネシア、マレーシア、ブラジルなど。 ブドウの房のように果実がなり、未熟の時は緑色。熟してくると赤くなります。 一般に使われる粒コショウは果実を乾燥させたものです。 |
原産地 | インド南部マラバル地方が原産地です。南インドでの栽培は紀元前500年代から始まっています。 またその後まもなくしてジャワ島に移植されました。 |
利用の歴史 |
コショウが日本に最初に渡来したのは8世紀以前にさかのぼるらしく、正倉院にコショウの粒が保存されているそうです。
一般に使われるようになったのは、17世紀(江戸時代)。オランダ経由で入荷するようになってからです。
現代ではコショウは和食のイメージとはつながりませんが、江戸時代前半には"うどんの薬味"として流行しました。
しかし江戸時代の後期になると今度は七味唐辛子が流行し、
うどんにコショウを入れるという習慣は完全になくなってしまいます。 |
種類 |
果実をつみ取るタイミングとその後の処理で、次のような製品ができます。
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成分 | 主な辛味成分はピペリン。細かく粉砕すればするほど強く感じられるようになります。また油に溶けやすいので、 コショウと油の相性も良いと言えます。 |
市場 | 毎年7,000トンから8,000トンのコショウを輸入しています。そのうち約3分の2がマレーシアからです。 |
コメント |
14世紀から16世紀にかけての大航海時代とヨーロッパ列強のアジア進出は、
東方の富と貿易による利権を求めてのものだったわけですが、香辛料がその貿易の主要な産品でした。
それがどのくらいもうかったかという話が残っています。 マゼランの世界一周の時、最初は5隻(せき)の船団と227名で出発しましたが、 途中の災難・事故でマゼランを含む多くの乗組員が死亡し、帰り着いたのはたった1隻。 わずか18名になっていました。それでも途中で寄航したモルッカ諸島でスパイスが積み込まれていたので、 これを売った利益で全船団の派遣費用をはるかに上回る利益があったという事です。 |