ねぎ(長葱) Negi
  薬味に使うと独特の辛味が食欲を増進させます。古来から日本その他の東アジアで盛んに栽培された重要な野菜 でしたが、強い匂いのために好き嫌いが分かれる野菜でもあります。各地に固有の種類があり、 流通の発達した現代でも大根のように生産が一種(青首大根)に偏る事もなく、食べ比べる楽しみがあります。 (写真は下仁田ネギ)


品種 ユリ科ネギ属。(アリウム属)。ネギは葱ではなく、本来は根葱と書くべきで、強い匂いを表す”気”が語源です。 古いネギの俗称の”ひともじ”とはこの”き”から来ています。正確には葱はネギ属の総称で、ニンニクやニラも含みます。
原産地 中央アジアのパミール高原。日本には中国、韓国経由で10世紀以前には伝来していました。 中国にも葉ネギと白ネギがあることから、両種類が日本に伝来したと考えられます。
種類 大きく分けると、東北日本で栽培され夏に育ち冬期は休眠して年越しする加賀太ネギ、一年中育ち関西や南日本に多い九条ネギ、 中間型で関東に多い千住ネギ、の3種類があります。白い部分の多い白ネギ(根深ネギ)、 葉の部分を食べる葉ネギという育て方による分け方もあります。加賀太ネギと千住ネギは育つにつれて土を盛り、 白い部分を多く育てます。
    Tsuchiyose
  • 千住ネギ−関東では最も一般的な根深ネギです。埼玉県深谷市で栽培される深谷ネギ、 茨城県水戸市近郊でとれる茎が赤紫の赤ネギなどがあります。関東では土壌が深く柔らかいので、 土寄せして白い部分を長く伸ばす育て方が可能なのです。(写真右。東京都葛飾区)
  • 下仁田ネギ−加賀太ネギの一種で、群馬県下仁田町の特産です。茎が太くて柔らかく、煮ると甘味があっておいしいので すき焼きや鍋物に使います。下仁田以外ではいいものができないと言われています。
  • 岩槻ネギ−埼玉県岩槻市でかつて生産されていました。枝分かれの多い葱です。
  • ヤグラネギ−親子ネギ、二階ネギなどとも言います。葱坊主ができずに代わりに珠芽ができます。そこから 子供のネギが生えるので、親ネギの上に子供のネギが乗っているようになります。加茂太ネギの一種です。
  • 九条細ネギ−代表的な葉ネギで7〜8株に株別れします。福岡県の万能ネギ、高知県のヤッコネギ、 山口県の鴨頭ネギ(コウトウネギ)が有名です。
  • 九条太ネギ−いわゆる京都の九条ネギです。青い葉の部分が柔らかくておいしい。
  • 越津ネギ−愛知県で栽培されている九条と千住の交雑種です。
  • 芽ネギ−品種ではありません。ネギの芽を7〜8cmでとって食用にするものです。刺し身のツマなどに。
  • アサツキ−本来はネギの近縁種で春に出回ります。ネギより辛味、香りが柔らかく、ヌタに使います。 葉ネギを小さいうちにとってアサツキとして売っていることもあります。
  • ワケギ−本来はネギと玉ネギの交雑種ですが、 他の葉ネギを若採りしたものをワケギと称して売ることもあります。
一年中ありますが、冬の鍋物用の需要が最も多くなっています。
成分 ネギは昔から疲労回復や風邪に効くことで知られていました。ビタミンB1を多く含み、 しかもB1の消化吸収を助けるアリシンを含みます。涙を出す成分の硫化アリルは解毒作用があり、 しかも胃を刺激して消化液の分泌を促すので、食欲を増進させます。さらに生で食べると発汗作用があります。
調理方法 昔は強すぎる匂いと辛味を嫌って、生で食べる時は切った後に水で晒す(さらす)晒し葱にする事が多かったのですが、 今ではほとんど晒さなくなりました。子供に食べさせる時は晒すのもいいかもしれません。
鍋物や煮物に使うとダシがよくでます。マグロのカマとネギのブツ切りを薄く醤油味でひと煮立ちさせたネギマは、 美味しくて温まる逸品です。
雑学 浅黄(あさぎ)とはごく薄い青の事ですが、語源は浅葱で葱の薄い緑色の事を指しました。浅黄は間違った当て字です。 同じように萌黄(もえぎ)は萌葱で、葱のきれいな緑色の事です。


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制作日:2001年9月25日
更新日:2003年12月23日
上田 泰久