さけ(鮭)

Sake 秋になると一斉に川をのぼってくる鮭は、太古の昔から冬を越すための貴重な食料。大変なご馳走でした。 人々は同時に鮭がある年突然帰って来なくなる不安を感じ、(乱獲で鮭が帰ってこなくなるような事が大昔にもあったのでしょうか?) 自然に対する畏敬の念をいだき、必要な分だけを採り、神に感謝して大切に食べるという風習が生まれてきます。
北・東日本では年末に食べる歳取り魚として特別な意味を持っているのも昔の風習のなごりでしょう。 現在では養殖や稚魚放流事業の成功によって漁獲量も安定し、日本人が「最もよく食べる魚」「なじみのある魚」「好きな魚」になっています。

品 種 ニシン目サケ科。河の上流で孵化した小魚はそのまま海へ下り、北太平洋、北大西洋で3〜4年過ごし、 成魚になって生まれ故郷の河に産卵のために戻ってきます。これを母河回帰と言います。(80%が母河に戻ってくるそうです。) 日本では北海道が主な漁場。世界ではアラスカ、カナダ沿岸、ノルウェーなどで漁獲されます。
種 類 店頭に並ぶ鮭には”種類の名前”と”採れる時期による名前”があります。
  • 白鮭−日本で最も多く採れる鮭。単に鮭とも呼ばれます。
    • 鮭児(けいじ)−鮭司とも書きます。産卵する年令に達していない若い白鮭で、ロシア北部の河の生まれだと考えられています。 エサを求めて回遊中に、産卵のため日本の河川に戻ってくる成熟した日本の白鮭につられて沿岸に寄ってきて捕獲されます。 まだ成熟していないので小型ですが、脂がのっていて美味しいそうです。漁獲量は非常に少く、 普通の白鮭の数千匹に一匹の割合。一般の白鮭の10倍以上の値段で取引されます。
    • 時知らず−鮭の旬である秋以外(春から夏にかけて)に採れるので”時知らず”というのですが、 最近では省略されて単に”時鮭”と呼ばれます。これでは何の事だか分かりませんよね。卵巣・精巣がまだ成熟していず、 身肉に脂があるので大変美味。ロシア北部の河川の生まれで、回遊中に日本の近海で漁獲されたものと考えられています。
    • メジカ−本州の河川に戻る鮭がその手前の北海道・東北沿岸で漁獲されたもので、 成熟までまだ少し間があるので身に脂が残っていて美味しい。完全に成熟すると鼻先が伸びてけわしい顔つきになるのですが、 メジカはまだ鼻が伸びる前で目と鼻が近いという意味で”目近”と書きます。
    • アキアジ(秋味)、ギンゲ(銀毛)産卵のために故郷の河に近づいたもので、全身が銀色に輝いています。 秋に出回る最も一般的な鮭。北海道ではアキアジ、東北ではギンゲと呼ばれます。
    • ブナ婚姻色である薄茶色〜赤紫色の斑点模様が出た白鮭。 卵巣・精巣に栄養が移っているので身肉の脂肪分はかなり少なくなっています。河口付近で絶食に入った頃が薄ブナ、 河を昇り始めて斑点が濃くなったものを本ブナと言います。
    • ホッチャレアイヌ語で”尻からばら撒く”という意味。産卵が終わって瀕死の状態で河を流されてくる鮭。 身肉の脂肪分は0.1%になっていると言います。現在では天然の産卵もほとんど無いのでホッチャレを目にすることも 無いと思いますし、パサパサで不味いので食べる人もいないでしょう。しかし大昔に冬に備えて鮭を乾燥させて保存食を作るとすれば、 脂肪分の少ないホッチャレの方が保存中の脂肪の変化がないので適しています。
  • 銀鮭−サクラマスとほとんど見分けがつかないのですが別種だそうです。最近は養殖が大変盛んです。 天然物は北海道の北部でわずかに採れるだけです。
  • 紅鮭−婚姻の時期になると真っ赤になるので紅鮭。身の色も赤身が強く、見た目の美しさで喜ばれます。塩鮭には最高の魚で、 コクのある旨みとほんのりとした甘味があります。主に北米で漁獲されますが、日本でも北海道でごくまれに採れます。
  • アトランティック・サーモン−大西洋鮭。ノルウェー近海で昔からよく採れていましたが、最近はほとんどが養殖もの。
  • キング・サーモン−マスノスケとも呼ばれます。鮭の仲間では最大で、2m近く、体重40kg以上にもなります。 身が厚いのでステーキなどにむきます。北米の河川の生まれですが、日本でも回遊中のものが三陸沖の定置網にかかります。
  • カラフト・マス−日本海北部、三陸沖、からアメリカ西海岸の北部にかけて北大西洋に分布します。60cm前後と小型の鮭。 桜の季節に三陸沖の定置網で採れるのでサクラマスと呼ばれる事もあり、混乱しています。
  • サクラマス銀鮭によく似ているが別種。日本海北部、三陸沖、オホーツク海のみに分布。
成 分 鮭のピンク色はマグロなど赤身魚のミオグロビンではなく、カロテノイド系の色素です。 だから加熱してもマグロのように茶色にならず、きれいなオレンジ色になります。 回遊中の鮭の脂肪分は10%程度ありますが、産卵のため河口に近づく頃には卵巣や精巣に栄養分が集まり、 身肉の脂肪分は急速に減っていき、産卵後のホッチャレでは0.1%にまで減ってしまうそうです。 最近は脂肪分が多い方が好まれるので、河口に近づく前に採ったサケが喜ばれます。  
調理方法 鮭には川魚的な独特のにおいがあるので、世界各地の伝統的な鮭料理では”塩をふって水分と一緒にくさみを抜いてしまう”、 ”燻製にして香りをつける”、”レモン汁や食酢で酸性にしてくさみを消す”などの工夫がされています。 
本来”新巻”などの塩鮭は、脂肪の減ってきた産卵期の鮭をおいしく食べるために、塩をふって熟成 (タンパク質がアミノ酸に分解して旨み成分が増加)をすすめた保存食なのですが、 近年は「塩分控えめ」がはやりなので、保存に耐えられるほどの塩をふらずに冷凍にしてしまう事が多くなっています。熟成していないので、 旨み成分が足りず、その結果どうしても脂肪分の多い沿海ものが好まれるようになっています。  
市場 200カイリ漁業規制前は沖合いで10万トンを漁獲していましたが、漁業規制によって、「稚魚放流>戻ってきた鮭を沿岸で捕獲」という育てる 漁業への変換が試みられました。現在では鮭の母川回帰も定着し、全体では漁業規制以前の2倍、毎年20万トンの水揚げがあります。 育てる漁業の成功例と言えるでしょう。輸入も盛んで20万トン程度です。  


食材事典のホームへもどる



制作日:2002年10月14日
更新日:2003年6月1日
上田 泰久