砂糖

砂糖の甘さが憧れだったのは昔の話。今は甘味控えめがブームです。でも味にメリハリをつけるために、 たまには思いきった甘さもいいでしょう。煮物には中ザラ糖や風味のある三温糖を使いましょう。

原材料 サトウキビ。サトウキビから作る砂糖をカンショ糖と言います。同じ成分のものが甜菜(テンサイ)からも作られ、 こちらはテンサイ糖と呼ばれます。
サトウキビは竹のような構造をしていて、節の間の空間に甘い汁を含んだ白い綿のようなものが詰まっています。 南太平洋の原産ですので、亜熱帯でないと育ちません。日本では沖縄と南西諸島で作られています。
テンサイはサトウダイコンまたはビートと言われ、温帯でも育ちます。ナポレオンが栽培を奨励したため ヨーロッパ全土に広がりました。日本では北海道で栽培されています。世界でも日本でも砂糖の約4分の3は サトウキビから作られます。
歴 史 南太平洋のサトウキビがインドに伝えられて、インドで砂糖製造の方法が発見されたと考えられます。 紀元後5世紀頃に中国で製造技術が改良され、日本には7世紀に鑑真がもたらしたという説があります。
作り方 サトウキビからの作り方。 サトウキビをローラーなどで潰し、茎の中から甘い汁を絞ります。 この汁の不純物を取り除いてから真空状態で加熱・濃縮し、結晶を作ります。 遠心分離機で結晶と糖液を振り分けます。この時に最初に取れる結晶は色が付いていないので、 上白糖や白ざら糖になります。残った糖液を再び加熱してさらに結晶をとる作業を繰り返しますが、 何度も加熱を繰り返すうちに取れる結晶には色が付き、薄い茶褐色になります。これが中ざら糖です。 通常、サトウキビの原産地の工場で荒く精製した砂糖の結晶にしてから日本に輸入し、 日本の精糖工場でこれを再び溶解、精製して再結晶させて製品にします。サトウキビのままではかさばって, とても輸入できないからです。
種 類 精製度による分類:
  • 上白糖−一般的に白砂糖として売られている砂糖で、日本で使われる砂糖の約半分をしめています。
  • 中白糖−あまり市場に出回っていません。上白糖より精製度がやや低いので、薄い黄色をしています。
  • 三温糖−中白糖よりさらに精製度が低く、薄い茶褐色です。甘さが強く、黒砂糖のような独特の風味があります。 和風の煮物によく合います。
  • 黒砂糖−サトウキビのしぼり汁を精製しないでそのまま煮詰めたもので、糖度は低いのですが甘味は強く感じられます。 作り方の項にあるように、他の砂糖は原産地で荒く精製した物を輸入して日本で再精製していますが、 黒砂糖は精製しないで直接しぼり汁から作るために、サトウキビの原産地でないと作れません。
結晶の大きさによる分類:
  • グラニュー糖−上白糖よりさらに高純度で、結晶が大きいのでさらさらしています。匂いが無いので 紅茶、コーヒー、ケーキに使われます。
  • 白ざら糖−グラニュー糖の結晶が大きいものです。コーヒー、紅茶に入れます。
  • 氷砂糖−最も大きな結晶の砂糖です。果実酒を作る時に使われます。また、いなり寿司のアゲを煮るときに 使うとツヤが出ます。
  • 粉砂糖−グラニュー糖の結晶をすりつぶしたもので、ケーキに使われます。
  • 顆粒状糖−グラニュー糖を多孔質の顆粒状に加工したもので、非常に水に溶けやすく、 冷たい飲料に入れる時に使われます。
その他の砂糖:
  • 中ざら糖−薄い茶褐色をしています。白ざら糖と同様に結晶が大きく、純度も変わりません。また、 特にミネラル分が多く含まれているわけでもありません。 色が付いているのは製造工程で何度も加熱するからで、 黒砂糖の香りはありませんが、加熱によるカラメルのような風味があります。 結晶が大きいので溶けるのが遅く、煮物に使うと序々に溶け出して素材に甘味が染みこむので好都合です。
  • Wasanbon 和三盆−(わさんぼん)三盆白とも言います。徳島県と香川県で作られる日本の伝統的な砂糖です。 濃縮サトウキビの絞り汁(砂糖の結晶を多く含む)を砂糖と糖蜜に分離させる時に遠心分離機などを使わずに 重石で糖蜜を絞り出します。しかしこれでは砂糖の結晶の塊にまだ糖蜜が残ってしまうので、 これに水を加えて手でこねて再び重石で糖蜜を絞り出します。この工程を4〜5回繰り返して、 砂糖から糖蜜を分離させていくものです。結晶が非常に小さく水に溶けやすい性質を持っています。 独特の風味があり和菓子に珍重されますが、製造に非常に手間がかかるので徳島、 香川でも数件で製造されているのみです。
調理における砂糖の効用
  • 親水性−水になじみやすいので、素材にはやく水分を染み込ませたいときに使います。例えば、 乾シイタケを早く戻したい時に、ぬるま湯に少し砂糖を加えると早く戻ります。 煮物でダシの旨みを素材に染み込ませたい時も、最初に砂糖を少量使うと水分と一緒に旨みも染み込みます。
  • 保水性−水分を保持し続ける性質です。お菓子など、砂糖の働きで水分を長く保持し、乾燥しにくくなります。 寿司飯に砂糖を加えると炊いたご飯が乾燥しにくく、でんぷんも安定するので、 ほとんどの寿司屋で砂糖を加えています。
  • 浸透圧−逆に、水分の多い素材からは浸透圧によって水分を抜き取ります。 果実酒を作る時は砂糖を入れないと果実から水分が抜けずに香りも出てきません。
    煮物の時に最初から砂糖をたくさん入れてしまうと、素材の水分が抜け出てしまいます。
  • タンパク質の固まる温度を高めるので、卵焼きなどに入れると固まるまでに時間がかかるので、 ふっくらと仕上がります。
調理のポイント 砂糖は塩などの他の調味料よりも先に加えましょう。特に塩はタンパク質を固くするので、 塩を先に加えると後から砂糖が素材に染み込みにくくなります。
しかし、甘く煮たい時に砂糖をたくさん加える時は、3回ぐらいに分けて少しづつ加えるようにします。 一度にたくさんの砂糖を入れると浸透圧で素材の水分が抜け、煮汁が砂糖と固まってしまうのでうまく煮えません。 この点、溶けるのが遅い中ザラ糖は便利に使えます。


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制作日:2001年9月22日
更新日:2004年4月30日
上田 泰久