まだい(真鯛)

Tai

整った姿、美しいピンク、バランスの取れた旨み、身離れのよさ、総てが完璧です。 縁起物でもあり、和食には欠かせません。昔から海の魚の王様の地位にあるのは、 焼いたり干した時の保存性の良さと、そのおいしさにあります。 鎌倉時代以前は海の魚が食べられたのは海岸に住む人だけで、大部分の人はアユやコイ、 それに川をのぼるサケぐらいしか入手できませんでした。たまに運ばれてくるタイの味には驚いたことでしょう。

品 種 成魚は水深30mから100mの岩場に住んでいます。春の産卵期になると浅場に移動し、藻場で産卵します。 稚魚は、藻場で海老の幼生などのプランクトンを食べ、幼魚は砂場で車海老類を食べます。成魚は雑食ですが 主にエビ、カニ類を食べます。寿命40年と言われ、大きなものは1mに達します。 近縁種に黄鯛(レンコ)、血鯛などがいます。稚魚は東京の方言でカスゴと言われて、酢で占めて寿司ダネに 使われます。
産地 と旬 全国の岩礁地帯にいます。明石の鯛、その他、瀬戸内海各地がおいしい鯛の産地として有名です。 (関東近海の鯛の方が姿は美しいそうですが。) 旬は産卵期直前の桜の季節と言われ、この頃のタイを”桜鯛”と言って珍重します。 ただし、1月か2月の厳寒期のほうが美味しいという人もいます。
成分 旨み成分のイノシン酸が多く、また常食しているエビ、カニ類の成分が移ってきているのか、これらの甘味の正体 であるグリシンやクレアチン、タウリンが多いので甘味を感じさせます。
調理方法 きちんと活け締めされた天然ものの場合、熟成には氷温で丸一日必要です。熟成前の死後硬直中だと コリコリして歯ごたえはいいのですが、旨み成分が足りません。
刺し身、塩焼きなどの他に、鯛飯、鯛そうめん、兜の酒蒸しなど、昔から様々な料理が作られています。 刺し身の時は湯引きして皮霜造りにすると皮の美味しさも楽しめます。
「くい塩」−大きなタイを塩焼きにする時にはただ皮の上から塩をふっただけでは身の中にまで塩が浸透しないので、 身が締まらずおいしくありません。そこでクシでブスブスと穴を開けてから塩をふります。 開けた穴は焼くと縮んで目立たなくなります。  
市場 2000年の漁獲量は1万5千トンで安定しています。養殖が8万2千トン。  
コメント ヒラメと同様に養殖が盛んで、それによって天然物も価格が安定してきています。 放流もされています。  
雑学 縁起物のタイですので、徳川将軍家でも祝い事があると大名にタイを献上させる慣わしがありました。 驚くのは送る側の大名の格によりタイの大きさが細かく決められていた事で、薩摩藩では目の下ニ尺七寸(82cm)、 土佐藩は二尺四寸、と言った具合です。  


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制作日:2001年7月20日
更新日:2004年2月14日
上田 泰久