唐辛子(とうがらし)

Tougarashi 少々効かせればシャレたアクセントで、思いっきり効かせれば眼の飛び出るような衝撃で食事を退屈から守ってくれます。 コロンブスによって中南米から持ち帰られるとまたたく間に世界中に広まり、各地の食文化に革命をもたらしました。 特にアジアではカレー、タイ料理、韓国料理、中国の四川料理など、唐辛子の辛さが個性になっている料理が数多くあります。 (写真はタカノツメ)


品種 ナス科トウガラシ属の一年草。熱帯では多年草になります。ピーマンとは同種で、辛味の強い品種から甘い品種まで世界中に 500種以上があります。
原産地 中南米の高地が原産。メキシコでは紀元前5000年から6500年前の遺跡で既に栽培された跡が見られるそうです。 コロンブスによりスペインに移植されるとわずか200年の間に世界中に広まり、 世界各地の料理に大きな影響を与えます。日本には1542年にポルトガル船が伝えたという説が有力です。 朝鮮半島には、豊臣秀吉の朝鮮出兵時に日本から伝わったと言う説もあり興味深いのですが、 逆に朝鮮半島から日本に伝わったという説もあり真相はわかりません。
種類 日本ではかつて50種類以上が栽培されていたようですが、最近は輸入が多くなり国内栽培種は減少しています。 辛味種と甘味種に2分できます。
  • 熊鷹(くまたか)−日本産では最も辛味の強い品種(赤唐辛子)です。乾燥させて香辛料として使います。
  • 獅子唐(ししとう)−甘味種のうち、小型で肉薄の品種の未熟果物。 先端が凹んで獅子の鼻に似ているのでシシトウと呼ばれます。 10個のうち一つぐらい、なぜか辛い実が混ざる、 食べ物界のロシアン・ルーレット。 Manganji_Tougarashi
  • 伏見甘−京都の伏見で栽培されてきた品種で、辛味はありません。 焼いて鰹節醤油で食べると 甘味があって美味。
  • 万願寺唐辛子−伏見甘と大型ピーマンのカリフォルニア・ワンダーとの交配でできたと言われる15cm以上になる甘唐辛子。 京都の舞鶴市万願寺地区固有の品種。肉厚でおいしい。(写真右)
  • 葉唐辛子−品種の名前ではなく、辛味の強い唐辛子の葉です。漬物や、茹でて佃煮にします。
世界の唐辛子の種類 :
  • Cayenne (カイエン) 小粒で鮮やかな赤の大変辛い唐辛子。ギアナの首都カイエンで品種改良された。メキシコやアメリカのルイジアナで栽培され、 タバスコに使われている。 (粉唐辛子の事も一般にカイエン・ペッパーと言います。)
  • Habanero (ハバネロ) オレンジ色で丸っこい。市販されている品種では最も辛い。 カリプ産でジャーク・チキンなどに使われる。
  • Jalapeno (ハラペーニョ) 緑色の短い唐辛子。テキサスなど米国南部で栽培され、主にピクルスで食べられる。
  • New Mexico chilies (ニューメキシコ・チリ)米国のリオグランデ渓谷を中心に栽培される。辛味は少ない。 生のものを焼いてシチューに入れる。
  • Serrano (セラーノ) 細長い緑色。米国南部で栽培される。生のままサルサに使われる他、ピクルスにもされる。
  • Prickeene (プリッキーヌ) タイで栽培されている青くて小さな激辛唐辛子。
  • 朝天辣 中国四川省産の赤くて丸っこい唐辛子。激辛なのになんとなく甘い香りがする。四川料理の基本の味。
未熟果を食べる獅子唐などでは、本来の旬は6月から8月です。ただしハウス栽培が多いので、 旬はほとんど関係ありません。
成分 有名なカプサイシンが辛味の正体で、血行を良くして食欲を増進させ、発汗を促す作用があります。 発汗によって体温が下がるので、特に熱い地域では好まれるのかもしれません。また、炭水化物の消化を助けます。
調理方法 唐辛子 は小さく切るほど辛味が増します。また種のまわりの内壁の部分に強い辛味があるので、あまり辛くしたくない時は丸ごと使いましょう。 辛味成分は油に溶け出しやすいので、油で唐辛子を炒めて辛味を移してから使う方法もよくとられます。 100度の時にもっともよく辛味が溶けるので、一気に加熱せずに弱火でじっくりと炒めましょう。
唐辛子には野菜のアクを止める作用があるので、タケノコをゆでる時やナス を煮る時に入れて使います。
和食ではキンピラが唐辛子の辛味を生かした料理ですね。 ゴボウなどの野菜を油で炒めた後で輪切りの唐辛子を他の調味料と一緒に入れて仕上げます。 乾燥した唐辛子を輪切りにする時は水で戻してから切ると簡単です。

調理法ではありませんが、キムチについてのコメントを書きます。唐辛子が伝わる以前にはキムチは塩漬けが一般的でした。 塩だけでは殺菌力が弱いので、現在のようにアミの塩辛などを加えて旨みを補う事はできませんでした。 唐辛子の強い殺菌力が魚介類の添加を可能にして、現在の深い味わいのキムチやその他の韓国料理の基礎を作ったのです。

唐辛子の粉、小サジ一杯は : 1g

コメント コショウと違って唐辛子は各地の郷土食にガッチリと組み込まれています。わずか200年〜300年の間に、 これほどまでも世界各地の食文化を変えた例は他にありません。理由の一つは、唐辛子が熱帯から温帯にかけて 広い地域で栽培できて、各地の気候風土に合わせて様々に変化していく適応性の強い植物だったという事です。 コショウのように輸入しなければならないものは郷土食には組み込まれません。

七味唐辛子 Manganji_Tougarashi 日本の誇るミックス・スパイスです。1625年に江戸両国橋近くの薬研堀(やげんぼり)で徳右衛門(徳兵衛という説もある) という人物が、漢方薬の配合の手法を参考に、唐辛子を主体に香りのいい6種類の薬味をブレンドして 七色唐辛子(なないろとうがらし)として売り出したのが最初です。
7種の組み合わせは地方や店によって異なります。
  • 東京浅草の"やげん堀=中島商店(徳右衛門が始めたお店が現代まで続いている)"−生唐辛子、焼唐辛子、山椒(さんしょ)、 陳皮(ちんぴ、みかんの皮のこと)、黒ごま、麻の実、けしの実。
  • 長野県善光寺の八幡屋礒五郎−唐辛子、山椒、陳皮、ごま、麻の実、生姜(しょうが)、紫蘇(しそ)。
  • 京都清水三年坂の七味屋本舗−唐辛子、山椒、黒ごま、白ごま、麻の実、青海苔、青紫蘇。


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制作日:2001年12月2日
更新日:2006年4月1日
上田 泰久