きす(鱚)

Kisu

繊細で美しい魚。「キスの最もおいしい食べ方は天ぷらだが、最もおいしい天種はキスではない。」と言われてかわいそうです。 昔は江戸前の代表的な魚の一つでしたが、最近は漁獲量が減って人々の関心から遠ざかりつつあります。美味しい魚なのにもったいない。

品 種 シロギスアオギス(ヤギス)がいます。普通にキスと呼ばれるのはシロギスの方。 シロギスは背が淡い黄色で体長30cm程度。アオギスは背が青みがかっており、50cmぐらいまで育ちます。 味はシロギスのほうが繊細でクセがなくおいしい。
産 地 九州以北、ほぼ全国に分布しています。水質汚染に弱く、日本近海では漁獲量が激減しています。 かわりに韓国から冷凍ものが多く輸入されるようになりましたが、冷凍にすることによって味が落ちます。 シロギスは20cmまで成長するのに5年かかると言われているので、養殖もむずかしいでしょう。
晩春から夏にかけてが旬と言われるが、一年を通してあまり味が変わりません。
成 分 脂質が1%と非常に少ないのが特徴。また、アミノ酸の中ではリジンやグルタミン酸が多いのが、 あっさりとした旨みの基になっています。水分が多いのでうまく水分を抜いて調理した方が美味しいです。  
調理方法 あまり大きな魚ではないのにうろこが硬いので調理がめんどくさいです。これもこの魚が最近ウケない理由の一つかもしれません。 水分が多いので、いかに水分を抜くかで味が変わってきます。例えば刺身の場合は、 開いた後で塩水で洗って水分を抜いた方が美味しい。 天ぷらの場合も、丹念に水分をふき取るようにしたほうがふわっと美味しく仕上がります。 刺身、焼き魚、酢の物、天ぷら、吸い物種、干物、と何にでもできますが、 ずばり言って一番おいしいのは寿司だと私は思います。カスゴより香り(風情)があり、サヨリ以上に上品です。 ところが、江戸前の多くの寿司屋ではキスを握りません。これはなぜかというと、 「疫病よけに、神様の好きなキスを絶って願をかける。」という教えがあるからです。 もちろん、こんな教えを知らないお寿司屋さんもいるでしょうが、 伝統的に師匠から習わなければ、なかなかレパートリーに入っていかないのではないでしょうか。  
逸 話 「神様に捧げた」と言われるのに関連して、次のような逸話があります。
昔(1790年)、江戸八丁堀の清次という漁師が漁から帰って浜に着くと、大男が現れて船にあったキスを見て 「美味そうなキスだな。俺に一匹くれんか。」と言いました。そこで大きなキスを一匹差し出すと、 大男はそのままムシャムシャとそれを食べてしまいました。そして大男はこう言いました。「ああ美味かった。 俺は疫病神だ。おまえさんの名前を書いた紙が門に貼ってある家には、おれは決して入らないことにするよ。」 と言いました。まもなくこの噂が江戸中に広まって、 清次の家には名前をかいてもらおうという人が大勢おしかけて大騒ぎになったろうです。
なお、この疫病神は実は当時の大泥棒だったと話です。  


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制作日:2001年7月8日
更新日:2003年5月24日
上田 泰久