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2018年度只木研卒研生のための卒業研究の準備方法


4月から科目「卒業研究」が始まります!

このページでは、“やる気溢れる只木研3年生の皆さん”に、4月から始まる「卒業研究」に備え、事前にどのように準備をしておくべきかを解説します。
なお、以下で参照する書籍は、全て、只木研実験室の書棚にあります。

ゼミの教科書

4月からの「卒業研究」では、まず、現代暗号技術の中心テーマである“公開鍵暗号”について勉強します。 特に、公開鍵暗号の代表格である“RSA暗号”について勉強します。 RSA暗号を学ぶには、次の本[1]を読んで、実際に実装しながら(プログラムしながら)勉強して行くのがわかり易いと思います。 科目「卒業研究」は、そのような方針で進めます。 この本[1]を読み終えたら、後は、RSA暗号に基づくいろいろな暗号プロトコル、量子コンピュータや量子暗号など、 様々な個別のテーマをゼミで勉強して行く予定です。 [1]を読み終えれば、卒業研究のテーマとして、いろいろな可能性が開けます。

[1] 神永正博, 山田聖, 渡邊高志 著,「Javaで作って学ぶ暗号技術」, 森北出版, 2008年.

4月から始まる「卒業研究」では、まず、この本[1]を輪講します。 即ち、皆さんのそれぞれが、予め割り振られた担当部分を事前に読んで、ゼミの際に参加者に向かって解説します。 “やる気溢れる皆さん”は、4月までに、この本を読み進めておくことを、強くお勧めします。 第3章まで読み進めておけば上等です。


暗号理論の参考書

教科書[1]を読んでいて、理論的な部分などでわからない箇所があったときには、参考書として[2]を参照します。 即ち、[1]の内容の理論的な部分(暗号理論)の詳細については、[2]を参照します。 更に、[2]を読んでいて、数学的にわからないことがあったら、数学的に詳しい解説のある[3]を参照します。 暗号理論の簡単な解説書には、[4]もあります。 [2]や[3]が自分に合わなかったら、[4]を利用すると良いかもしれません。

[2] 岡本栄司, 西出隆志 著,「暗号と情報セキュリティ」, コロナ社, 2016年.

[3] J.A.ブーフマン 著, 林芳樹 訳,「暗号理論入門 原書第3版」, 丸善, 2007年.

[4] 黒澤馨, 尾形わかは 著,「現代暗号の基礎数理」, コロナ社, 2004年.

現代の暗号理論は、数学そのものです。現代暗号理論は、特に(初等)整数論に基づいています。 数学の好きな人は、4月からの「卒業研究」の準備として、[1]は取り敢えず飛ばして、 まず[2], [3](または[4])を読み進めておくと良いでしょう。 (なお、[3]は、可能なら英語の原書を読んだ方が良いです。)


Javaの教科書

教科書[1]を読むには、Javaの知識が必要になります。Javaについては、取り敢えず、次の入門書[5]で必要かつ十分です。

[5] 中山清喬, 国本大悟 著,「スッキリわかるJava入門 第2版」, インプレス, 2014年.

この本は、いわば“只木研オフィシャルJava教科書”です。


以下は、暗号理論研究のための一般的な参考書です。
科目「卒業研究」では、必ずしも以下の本を読む必要はありません。 特に、科目「卒業研究」の事前準備としては、読む必要はありません。 しかし、暗号理論の勉強のために重要な本なので解説します。

チューリングマシン・計算量理論の教科書

現代の暗号理論は、チューリングマシンという計算モデルに基いています。 特に、チューリングマシンに基づく計算量理論に基づいています。 これらのテーマについては、次の[6], [7], [8]が読み易いです。

[6] M.Sipser 著, 太田和夫, 田中圭介 監訳, 阿部正幸, 植田広樹, 藤岡淳, 渡辺治 訳,「計算理論の基礎 [原著第2版] 1.オートマトンと言語」, 共立出版, 2008年.

[7] M.Sipser 著, 太田和夫, 田中圭介 監訳, 阿部正幸, 植田広樹, 藤岡淳, 渡辺治 訳,「計算理論の基礎 [原著第2版] 2.計算可能性の理論」, 共立出版, 2008年.

[8] M.Sipser 著, 太田和夫, 田中圭介 監訳, 阿部正幸, 植田広樹, 藤岡淳, 渡辺治 訳,「計算理論の基礎 [原著第2版] 3.複雑さの理論」, 共立出版, 2008年.

この[6], [7], [8]は英語の1冊の原書を3つに分割したものです(本当は原書で読むのが良いです)。 同じテーマについては、次の[9], [10]もあります。

[9] J.E.ホップクロフト, R.モトワニ, J.D.ウルマン 著, 野崎昭弘, 高橋正子, 町田元, 山崎秀記 訳,「オートマトン 言語理論 計算論 I [第2版]」, サイエンス社, 2003年.

[10] J.E.ホップクロフト, R.モトワニ, J.D.ウルマン 著, 野崎昭弘, 高橋正子, 町田元, 山崎秀記 訳,「オートマトン 言語理論 計算論 II [第2版]」, サイエンス社, 2003年.

この[9], [10]もやはり英語の原書を2つ分割したものです。只木は[6], [7], [8]の方をお勧めします。


暗号理論の本格的教科書

次の本[11]は、大学院生向けの暗号理論の教科書です。この本を読み終えれば、実際に“最前線の研究”に取り組むことが出来ます。 英語の本ですが読み易い本です。 しかし、大学4年生で読むのは(かなり)難しいと思いますが、将来、大学院に進む予定の人は、 この本を“暗号理論の勉強の最終目標”として、念頭においておくと良いでしょう。

[11] Jonathan Katz and Yehuda Lindell, Introduction to Modern Cryptography, Second Edition, Chapman and Hall/CRC, 2014.


現代暗号技術全般の読み物

現代暗号の全体像を理解するための“読み物”としては、次の本が良いです。

[12] 今井秀樹 監修, 伊豆哲也, 岩田哲, 佐藤証, 田中実, 花岡悟一郎 著,「トコトンやさしい暗号の本」, 日刊工業新聞社, 2010年.

この本は、現代暗号技術の“教科書”ではなく、その一般向けの“読み物”ですが、内容はとても正確で、 研究者(卒研生)にとっても、とても有用です。この本は、暗号に興味のある学部3年生〜4年生が読むのにピッタリだと思います。 この本は、卒業研究でも参考になります。


Last update: February 24, 2018.