潜釣会山幸編


葛と遊ぶ




葛澱粉の作り方

冬の時期は、遊び相手の動植物が限られてくるので野外遊びの機会も少なくなります。でも、この時期だからこそ出来る遊びも結構あるものです。そんな中で、今回は「葛の話と葛澱粉作り」を紹介します。



■ 葛根掘り ■

自然薯探しに夢中になっていた時、葛の根元を見つけました。特に冬の時期は下草も枯れて見通しも良くなるため平気でやぶの中に入れますし、自然薯と違って蔓が頑丈なので手繰っていけば簡単に探し出す事が出来ます。掘り出しは繊細さも智恵も必要としない体力勝負だけの力仕事です。掘り出しのコツは、主根が伸びている方向を見極めてその方向に広く掘り出すことです。葛の根は、地中深くと言うよりも横方向に伸びていきます。主根から枝根を伴って広く伸びる傾向にあるためです。葛の根は細い繊維が束ねられた感じで、スコップなどで断ち切ろうとしてもなかなか切れない丈夫なものなのでガンガン掘る事が出来ます。

 


■ 葛の効能 ■

漢方薬の葛根湯が有名で、風邪を引いたときに飲む薬として現代でも使われています。漢方など生薬では薬効を説明するときに体を温める作用と冷ます作用とに大別します。葛根は身体を温める効能があるとされ、風邪薬として広く使われているのです。古くは、葛根の皮を剥いて乾燥させたものを煮出して服用するそうです。最近ではエキスを抽出してか粒状の飲みやすい状態に加工したものが普及しています。葛はマメ科特有の花を夏に咲かせますが、なんと二日酔いに効く薬効も有るそうです。この効能に興味を覚え「葛の花酒」も作りました。「花酒」は色々な花をお酒に漬け込むことを言いますが、「葛の花酒」は薬酒のところで詳述します。



■ デビル・プランツ ■

日本から米国に移植されたこともある葛ですが、現在では日本からやってきた「悪魔の植物」として虐待の運命にさらされています。葛は繁殖力が豊富で、根をしっかりと張り、蔓がそこらじゅうに伸びて広がります。こんな性質に着目してノリ面などの土壌強化やハイウエイの騒音対策などを目的に移植を政府間で正式に行ったようです。移植された葛は米国の風土にも順応し、有用性も認められて各地に移植されました。ただ、勢いがありすぎて一気に繁殖が拡大し、固有種を滅ぼしたり電線にからみついたりと言った問題が多発して駆除の対象になったのが米国における現在の「Kudzu」事情です。このような話は、魚の世界でもブラックバスなどでも起きています。自然界は複雑で微妙なバランスの上で成り立っているものであり、人為的な操作を行う事を戒める実例だと思います。それでも懲りずに、砂漠化した地域や火山の溶岩流跡に「グリーンプロジェクト」として日本から海外に進出しているようです。



■ 葛澱粉の作り方 ■

葛根から澱粉を取り出す方法を簡単に紹介しますが、実践するには冬の時期がベストシーズンです。理由は、葛根に含まれる澱粉質がもっとも豊富になることと水に晒す工程が長いため外気温が高いと澱粉質の変質や劣化が生じるためなのです。従って、冬季限定の野外遊びですね。
作り方は実に簡単なのですが、効率が悪く労力の割には得られるものが少ないのです。スーパーなどで見かける「葛粉」は殆どがイモ等から抽出した澱粉です。100%葛粉は「本葛」などとも称されて高価な値がついています。実際に葛粉を作ってみると理由が良く判ります。

@葛根を掘り出す
A叩き潰す
B水に溶かす
C水に晒す
D乾燥

この間に不純物を除去したり、砕いた葛根から澱粉質を搾り出したりと言った作業を行いますが、手間がかかるのが水に晒す工程です。絞りたての最初は葛根の澱粉質と灰汁が溶け出した真っ黒な水なのですが、掻き混ぜて沈殿させて上澄みを捨てての繰り返しを何度も行い、最終的に真っ白な澱粉に仕上げるのです。特に、沈殿した澱粉は石膏を固めたように堅く締まります。それを無理やり崩して水に溶かし込むのが力のいる作業です。歩留まりは丁寧にやっても数パーセントなのが悲しいですが、木の根っこから取り出した真っ黒な液体が純白に変化するプロセスを見る驚きは新鮮です。写真は、葛根を叩いて潰しては水につけて搾り出しの繰り返しを三回ほど行って得られた残りかすと澱粉質が溶け込んだ泥水のような液体です。葛根の残りかすは繊維状になっているのが判ります。昔は、この残りかすは畑の肥料などに用いたそうで、まさに捨てるところが無いのが凄いですね。さらに、この繊維質だけを取り出し、紡いで編んだ「葛布」は通気性が高いため浴衣などに加工されていたようです。

 

 


■ 水に晒す ■

葛根から搾り出した泥水から比重差を利用して葛澱粉を分離させていく工程を写真で紹介します。下の写真右は、搾り出した泥水を一晩寝かした状態から上澄みを汲み出したもので、写真左が底の方に沈殿した葛澱粉に水を加えて攪拌した状態です。一回目ははっきりとした差が見えます。真っ黒な色は灰汁によるもので、それが上のほうに溜まるためです。

 


下の写真は1回目から4回目までの水に晒して純度を上げていく工程です。それぞれ、上澄みを捨てた後に残る沈殿物に水を加えて攪拌し、一晩ほど寝かせた状態です。褐色の色から白っぽくなっていくのが判ります。

 
 


下の写真左は、水に晒して5回目に沈殿した様子です。また、写真右は、6回目の沈殿して分離している状態です。まだ、褐色の色が若干着いています。さらに工程を繰り返して純度を上げて行くと完成です。

 
 


■ 葛粉を食す ■

純粋な葛粉100%を苦労して作る最大の理由は「食す」ことなのです。葛粉は色々な料理にも使われますが、シンプルに葛湯でいただきます。濃厚な味わいは他ではありつけないものです。



■ 蔓で遊ぶ ■

葛の蔓でカゴを編んで見ました。実用的な蔓カゴは丈夫なアケビなどの蔓を使うのが普通ですが、葛の蔓でも遊び程度なら十分に編む事が出来ます。編み方の本も出されているくらい多種多様の方法がありますが、ここでは最も基本形のやり方です。尚、編み方の方法はネットで調べると色々と出てきますので参考にして下さい。ここで紹介したものは、〜30分程度で仕上げました。

 
 



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