第18話
〜再会〜
瑠璃が柘榴の手に堕ちる同時刻。
王宮の一間で杏花は天麗と向き合って挨拶を済ませ、会話を楽しんでいた。
年も近いせいか、杏花と天麗はすっかり意気投合していた。
「杏花様は天王様の事好きなの?」
いきなりの大胆な質問に杏花は顔を紅くする。
「え・・!?いきなり何で!?」

「両思いっていいなぁって思って。」

天麗は両手で頬を覆い、テーブルに肘をつきながら杏花の紅潮する顔を見てクスリと笑った。

「もしかして天麗は・・好きな人いるの?」

ちょっと疑問視を浮かべながら天麗に尋ねた。

天麗は少し顔を赤くして、ん〜・・と言葉を濁した。

「・・いるよ。・・小さい時からその人だけなんだ。・・実は私の面倒を見てくれた人なの。」

「それって・・ダーツさん!!?」
杏花はすばやく反応した。
(天使達を育てたのは多分ダーツさんだろうし・・・。でも・・・)
杏花がグルグル頭の中を回転させて考えていると天麗が吹き出した。
「アハハ!!違うよ。天王様じゃない。」
「え!?じゃぁ誰・・・・?」
天麗はニコッと微笑んで答える。
「・・・・・・瑠璃だよ。私が赤ん坊の時からずっと傍に居てくれた人なの。」
その言葉に杏花ははっとした。
そういえば会議の途中、瑠璃は天麗を見るなり誰よりも早く反応を示したし・・・。
二人が話す雰囲気もなんだか親密そうで・・・。

「二人は・・恋人なの?」

「ううん。私の長ーーい片思いなの。瑠璃は私の事妹だとおもってるみたいだし・・。」

ちょっと俯いた天麗に杏花はバツが悪そうにシュンとした。

「ご、ごめんなさい!でも瑠璃さんと天麗って凄く仲がいいからてっきり・・」
「いいの。気にしないで杏花様。私だっていい女になっていつか瑠璃を振り向かせてやるんだから!」
グッと気合を入れて子供っぽく言い放つ天麗に杏花も笑顔になった。
「・・いつかね、瑠璃に言わせたいんだ。」
「何て?」
「瑠璃の方から、『お前が好きだ』って・・。言って欲しいからもっと綺麗になろうって思うの。」
「・・天麗ならなれるよ。私も応援するね!」
グッと天麗の拳を握り締める杏花に天麗はありがとうと笑顔で答えた。
そうやって、二人で会話を楽しんでいる時だった。
静かな王宮の廊下がざわつき始めたのだ。
「・・なんだろう?やけに騒がしいね・・。」
「・・私が様子を見てくるから、杏花様は此処に・・」
「ううん。何かあったのかも・・私も行くわ。」
天麗の背中を追って杏花も席を立った。
ざわつく王宮の廊下から、召使いの天使達がガラガラと移動用のベッドを走らせていた。
紅瑪も横にはりつきながら急いでそのベッドを医療室に運んでいるようだった。
天麗と杏花がそのベッドとすれ違った瞬間、目にしたのは・・
琥珀が酸素呼吸器をはめられ、眼を閉じて横たわっている姿だった。
「・・え?琥珀さん・・・」
杏花が言い終わる前にそれは過ぎ去っていった。
天麗も困惑の色を隠せない。
「どういう事・・!?なんで琥珀が・・そうだ・・瑠璃は?瑠璃も一緒に出かけていたはず・・!!!」
天麗の中で最悪なイメージが浮かび上がった。
ぐったりとする琥珀のように・・瑠璃も・・・。
(そんなはず無い・・!!!)
天麗はギュッと気持ちを奥に詰め込んだ。
「・・とにかく何かあったようね。杏花様、医療室へ行きましょう!」
まだ気持ちが追いつかない杏花を引っ張って医療室へと向かった。
そこにはすでに石から生まれた能力者全員とダーツがいた。
「天王様・・皆も・・!!」
「・・ダーツさん、一体何があったの?」
二人が医療室に足を踏み入れた時、手術室に向かう瑪瑙がダーツに話しかけた。
「かなり危険な状況です。でも、最善を尽くします。・・皆もそんなに心配しないで。僕がかならず琥珀くんを救うから・・・」
そういって紅瑪と共に手術室に入っていった。
横たわる琥珀と様々な医療器具。
すでに手術の準備は出来ていた。
メスを持つ瑪瑙の瞳はいつにも増して真剣な光を宿らせていた。
手術が始まってすぐに砂金が皆に話し始めた。
「・・・倒れていた琥珀さんを発見したのは私です。私が天王様にお知らせして翡翠さんと紅瑪さんに救護を頼みました。」
杏花はどうしてこうなったのか聞くが砂金は黙って首を振った。
「・・どうしてこのような事になったのかは解りませんが、花園の近くの崖に不穏な気配がしましたのでそこへ行ってみるとすでに琥珀さんが血を流して倒れていました。」
翡翠も口を開いて答える。
「・・あれはただの崖から落ちた傷じゃねぇな。・・何かの刃に切られた傷跡だ。しかも的確に羽根を狙って切った痕だ。相当な使い手だな。」
「・・それでは、闇界の手のものという線が高いな・・。ラン、なにか気付いたか?」
碧海はランに聞いたがランはいいえ、と答えた。
「・・闇界の者ならば気配で直ぐにわかりますが・・・」
「・・・ということは、闇界に堕ちた天使・・。砂良、あるいは硫化か・・」
杏花が間に入り込んで訴えた。
「砂良さんも硫化ちゃんもそんな事する人じゃないよ!!」
「・・まぁ、砂良は戦闘能力は無いし硫化は剣が武器ではないし・・」
考える碧海にダーツは口を開いた。
「・・・柘榴・・・」
そう呟いたダーツに皆が反応した。
「・・・そういえばアイツは元・天使で剣を使う・・。」
思い出したかのように翡翠は言葉を零した。
「・・ねぇ・・じゃぁ瑠璃はどうなったっていうのよ・・?」
天麗が目を見開いて不安げに問いかけた。
砂金は静かに目を閉じた。
「・・あの時、瑠璃さんの姿はありませんでした・・。」
もし、その柘榴という闇界の手のものが来て琥珀を重症に追い詰めたとしたら?
瑠璃は闇界に・・・・。
「嘘・・そんなの嘘よ!!瑠璃は必ず生きてるわ!!あの男がこんな事で死ぬはずがない・・!!」

   

   

「天麗・・・」
震える天麗の肩を杏花は優しく撫でた。
「・・今は、琥珀さんの事を考えましょう。・・無事に手術が成功することを・・」
杏花の強い言葉に皆の心が固まっていく。
ふとダーツが声を上げた。
「・・翡翠、瑠璃の安否と現在位置の詮索にあたれ。」
ダーツの命を受けた翡翠は頭を下げて影の中にもぐっていった。
「碧海とランは警備を厳重にし、天使達の保護を・・。」
「はい、天王様。」
「はい。承りました。」
碧海とランは医療室を後にした。
「犬獄丸、水晶・・天界すべての領域の結界を強化せよ。」
「はい、天王様。マル行こう!」
「・・・それが水晶の望みなら・・」
「・・・犬獄丸。水晶。杏花に万が一のことがあれば・・杏花の警護をせよ。」
そうダーツは付け足した。
水晶達はこくっと頷いてその場を去った。
「砂金は手術後の琥珀の看病をせよ。」
「・・はい。お任せくださいませ。天王様。」
砂金は治療室のドアを開ける前に向き合い、一礼をして医療室を出た。
「天麗・・お前は夜の警備をせよ。いつ奇襲にあってもおかしくはない。」
「はい・・充分な警戒をして警備いたします。天王様。」
「天麗・・」
「・・・そんな顔しないで、杏花様。私は大丈夫だから・・・。」
そういって天麗は医療室を出て行った。
そうして医療室には杏花とダーツのみとなった。
「・・ダーツさん・・。心配しないで・・。きっと大丈夫だよ。」
「・・そうだな。今は闇界を警戒して態勢を整えよう。琥珀は強い子だから・・きっと大丈夫だ・・。」
哀しげな瞳のダーツに杏花は心を痛めた。
今の自分にできる事・・それは言葉で励ますことしか出来なかったから・・。

   

   

   

それから数時間・・手術は無事成功し、琥珀は絶対安静の身になった。

その横では、眠り続ける琥珀の世話をしながら癒しの歌を奏でる砂金の姿があった。

すぐに瑪瑙は玉座の間にいるダーツに報告した。

「・・翡翠くんの報告ではまだ瑠璃くんの安否は確認されていません。天使達を皆保護し、非難させたと連絡がありました。水晶さんは今も杏花様の傍で警護しています。奇襲の気配も未だないと天麗さんから報告がきております。」
瑪瑙はすべての報告書をダーツに渡した。
「・・琥珀の容態は・・」
「はい。手術で一命を取り留めたものの、今はまだ昏睡状態です。しかし脈拍・血圧・心拍数・共に異常はありません。羽根も回復に向かっています。・・やはり切られた痕のようです。」
目を細めた瑪瑙は更に言葉を続ける。
「琥珀くんの服から瑠璃くんの血液が付着していました。・・真実は琥珀くんが目を覚まさなければ解りません。」
「・・琥珀の回復を最優先とする。」
「はい、天王様。」
そういって瑪瑙は玉座の間から姿を消した。

   

   

   

   

   

   

(瑠璃・・・瑠璃・・どこや?)
暗闇の中・・琥珀は闇に身体をのめり込ませて必死にもがいていた。
手探りで何かを探す。
しかし、手は一向に何かを掴む気配はない。
「瑠璃・・・・」
その時、琥珀の手に暖かな感触が伝わってきた。
「琥珀さん・・」
琥珀が瞳を開けると眩い光とともに流れる黄金の髪が見えた。
琥珀の手を握っているのは砂金だった。
「・・琥珀さん、私がわかりますか?」
優しい声で、優しい眼差しで自分に問いかけていた。
そんな彼女がどの天使よりも天使に見えた。
「・・・わかるで。砂金。手、握ってくれてたんか?」
「はい・・。あなたが帰ってくるのを心待ちにしていました。おかえりなさい、琥珀さん・・」
「・・おおきに。砂金」

   

   

「琥珀さん。一体何が・・?」
琥珀は上半身を起して腕にあった点滴を引き抜いた。
「琥珀さん・・!何を・・」
「天王様に話してくる。・・皆にも、な。」
そういって琥珀は玉座の間に向かった。
羽根の痛みなんか気にはしていない。
しかし。心がまだじくじくと傷口を抱えていた。

   

   

   

琥珀はすべてをダーツたちに話した。
冷静な口調だが、琥珀は時折泣きそうな表情にもなった。
すべてを話し終えると、琥珀はそのまま玉座を去った。
誰も彼を追おうとは思わなかった。
あまりにも寂しい背中に言葉を掛けてやれなかったから・・。
今は一人になりたいんや・・・。
そう呟いた言葉が重くのしかかる。
こんな形で兄弟が引き離されて・・
そんなにも切ない想いで瑠璃は身を投げたのかと思うと・・
闇界の残酷な手段と
何も出来ない無力感に
誰もが苦い想いをした・・。
次に瑠璃と会った時、彼はもしかしたら敵として現れるかもしれない。
もしくは、すでに瑠璃は原石を破壊され・・・・・
ドゴォ!!!!
誰も居ない廊下で響き渡った破壊音。
廊下の白い壁が琥珀の拳に打ち付けられて凹んでいた。
パラパラと落ちる壁のくずが床に散らばった。

その音は静寂の空に消えていった。

   

   

   

   

   

   

瑠璃の失踪から数日たった。

それでもなお、警戒態勢は怠らずにいる。

天麗はまだ全快していない琥珀の代わりに夜の警備にあたり、翡翠は情報収集に回った。

琥珀は門の番人として今でも門の前に腰を降ろして座っていた。

今でも、琥珀は闇の中にいる。

目を閉じれば、そこには闇しかない。
その闇の中を歩けば膝まで闇が琥珀を侵食していく。
そして、琥珀はこれは闇ではないと気付いた。
血だ。
血が何処からかわきでるように自分を包んでいく。
やがてその闇の色をした血は琥珀の肘までも覆い隠した。
(兄者・・・)
微かに聞こえた瑠璃の声。
「瑠璃?」
(兄者・・)
「瑠璃?何処や?」
(兄者・・・・)
琥珀の目の前には闇に埋もれかけた瑠璃がいた。
自分の右目をあげた頃の幼い瑠璃が涙をうっすら浮かべて・・・。
(闇がくるよ・・。助けて、兄さん・・・。)
「瑠璃ぃぃ!!!!」
瑠璃に手を伸ばした瞬間、琥珀は意識を目覚めさせた。
スゥ・・と力なく眼が開けられる。
「・・あかん、寝とったわぁ・・。」
琥珀は自嘲気味にフッと笑みを零した。
「いかんなぁ・・もう番兵は俺一人なんやから、しっかりせんと・・」
そういいかけていた琥珀の言葉を遮るように誰かの声がした。
「・・兄者。寝たらあかんで。」
「・・・・え?」
「・・何、呆けとるん?寝たらあかんていつも言うとるやろ?」
琥珀の瞳が開かれる。
その声、その青い髪、瞳・・・・・まさしく目の前には瑠璃が立っていた。
真っ黒なスーツを着ていてだらしなく白いシャツの前ボタンを外している。
「る・・・・・り・・・・」
「兄者。」
琥珀はニコッと微笑んだ瑠璃の顔に手をやり、本当に実在しているかたしかめるように手で頬を覆った。
「瑠璃・・生きててくれたんやな・・」
すがるような瞳には瑠璃しか見えていない。
「当たり前や。俺らは双子やで?兄者を置いて何処にも行かへんよ・・・・」
「瑠璃・・」
琥珀は瑠璃を思いっきり抱き締めた。
最愛の弟が、生きて帰ってくれた。
それだけでもう何も考えられなかった・・。

   

「だから、兄者も一緒に行こう・・?」

   

瑠璃の肩に頭を置いていた琥珀は何も言わなかった。
言えなかった・・。
目は見開いたまま動かない・・
動けなかった・・。
琥珀の口の端から真っ赤な血がたらりと落ちる。
「る・・り・・・」
少しだけ琥珀は瑠璃から離れて向かい合わせになった。
瞳を見開いた琥珀と対照に瑠璃は口の端をつり上げて笑っている。
音もなく、琥珀の身体を瑠璃の持っている剣が貫いていた。

   

   

喉に血がつかえて琥珀は上手く喋れない。

   

「ゾーク様の元へ・・一緒に行こう・・?」

   

そのまま剣を琥珀の身体から引き離した。
「ぐぅっ・・・!!」
琥珀は瑠璃の前に肘をついた体制になった。
琥珀を瑠璃の凍てついた瞳が見下していた。
「せめて、俺が殺してやるよ・・兄者。」
「嘘・・やろ・・。」
瑠璃の剣が琥珀の首めがけて振り下ろされた。
琥珀は微動だにしなかった。
その瞬間、剣と剣がぶつかる音がした。
琥珀の前に立ち、二刀の剣で防ぐ翡翠の姿があった。
「馬鹿野郎!!何呆けてんだよ!!」
「翡翠・・」
瑠璃は間合いを取るために後ろに下がり距離をとった。
そして琥珀の後ろで紅瑪が声をかけた。
「琥珀さん!!傷口を見せて!」
紅瑪は琥珀の傷を包帯で瞬時に巻いて止血した。
「瑠璃・・!!てめぇ、闇界に堕ちやがったのか!!」
「翡翠、俺は堕ちたんやない・・生まれ変わったんやで。ゾーク様の元でなぁ!」
ガキィィン!と剣がぶつかり合った。
「・・ふざけんな!!お前はこの世界の番人だ!!」
「・・・・お前はどうなんや?何でお前はそっち側にいるんや?翡翠。」
「どういう事だ!!」
瑠璃の剣をかわして瑠璃の懐に飛び込んだ。
瑠璃はフッと笑う。
「・・お前の兄に会ったで?翡翠・・」
「なっ・・・!!」
翡翠に一瞬の動揺が走った。
その瞬間に瑠璃の蹴りが翡翠のわき腹に直撃した。
「ぐあぁ・・!!」
翡翠はそのまま吹っ飛ばされて門の壁に身体をめり込ませた。
たった一撃の蹴りでも威力は絶大だ。
天界で1・2を争う実力は伊達ではなかった。
「翡翠!!」
「くっそ・・!!」
瓦礫の中から這い上がる翡翠に紅瑪が駆け寄ろうとした時、氷の飛礫が紅瑪に襲い掛かった。
「紅瑪!!!」
ぎりぎりの所で翡翠が跳ね返した。
「僕の氷を跳ね返すなんてなかなかやるじゃん?」
「てめぇ・・この前の・・」
「そ、僕の名前は白銀。まぁ今から石に戻る奴に教えても仕方ないけど。」
「誰が石に戻るかよ。寝言は寝ていいやがれ。」
「可愛くないなぁ、本当君たちそっくりだよ。紫水。」
白銀の後ろから紫水が姿を現した。
「・・・・下らん。任務中に余計な事を言うな。白銀」
翡翠はダッと紫水の前に行き思いっきり剣を振るった。
紫水は無言で武器である『銀糸』をくりだした。
糸は切れると思いきや、持ちこたえていた。
にらみ合ったまま、翡翠が口を開いた。
「・・・俺は、そっちには行かない。ここには俺の居場所があるからだ!!」
「・・それもいいだろう。しかし、その居場所を守れたらの話だがな・・」

   

   

二人の戦いをよそに瑠璃は再び琥珀に向かって歩き出した。
そのまますっと手を差し伸べた。
「兄者・・行かへんのか?」
「瑠璃・・」
「耳を傾けてはいけません。琥珀さん。」
二人の言葉を遮って砂金が琥珀の手を掴んでいた。
「目をお覚ましになって・・。その方はかつての瑠璃さんではありません」
「・・砂金・・」
スッと立ち上がった砂金はスゥ・・と深く息を吸った。
砂金は花園の歌姫だ。
彼女の能力は『音』であり、人を癒す歌もあればすべてを狂わし破壊する歌も歌える。
音とは誰もが逃れられない凶器でもある。
「・・・第2楽章。『破壊』・・・」
放たれた砂金の声は風にのって辺りに響き渡る。
「なに・・これ!!耳が・・・・!!」
白銀の頭に鋭い音波がガンガン響く。
目には見えない音波が敵の脳髄を刺激し麻痺させ、やがて死に至らしめるのだ。
しかし、その歌ともいえない音波の波に、もう一つの音波が繰り出され砂金の歌をかきけした。
(私の音が・・かき消された?)
砂金が横を振り返るとそこには砂良が立っていた。
「砂良・・・!!!」
「お姉さまの音は・・私が封じます!!」
「あなたも・・闇界に行ってしまったのですか・・?何故・・何故なんですか?」
「・・・私、後悔していません。あの人の為に歌うことが・・こんなにも嬉しくて幸せだから・・・」
「砂良・・私が、目を覚まさせてあげますわ・・!!」
砂金は穏やかな空気を一変させて歌を奏でた。

   

   

「・・・皆好き勝手してんなぁ・・。兄者、また番兵やろうや。次はゾーク様に仕えてな・・クク・・」
「そんな・・瑠璃・・皆、忘れてしもうたんか!!?」
「・・忘れる?そんな事ないで。全部覚えてる。」
「だったらどうして天王様を裏切るんや!!!」
「・・裏切る?俺はゾーク様に再生してもろた・・だからゾーク様に仕えるんや。」
薄く笑みを浮かべる瑠璃に琥珀は絶望した。
「・・だったら・・あれはなんなんや・・?再生されたのが違う王だから仕えるんか?・・・俺たちは天王様やからこそ仕えていたんやないんか!!?瑠璃!!」
序々に大声を張り詰めた声になっていった。
琥珀はギリ・・と拳を握り締めた。
「・・・兄者も仕える主人を変えてみるとわかるで・・?」
「ふざけんなぁぁ!!!瑠璃!!」
琥珀は天翔剣を出して瑠璃に向かっていった。
ガキィィン!!・・と瑠璃の黒い刃が琥珀の白い刃とぶつかり合った。
「・・・答えはノーか?兄者・・」
「あぁ、俺は天王様に生涯仕えると誓った・・!!それは今も変わらへん!」
「・・・残念や、兄者。出来れば殺したくはなかったのに・・」
瑠璃は羽根を広げて宙に浮いた。
「次は・・兄者の命を貰うで。覚悟しときぃや・・。」
そういって瑠璃は紫水達と共に姿を消した。
「必ず・・・お前を取り戻したる・・!!瑠璃・・・」
琥珀は瑠璃の青い羽根をぐっと掴んだ。
瑠璃は、闇界にいる。
必ず、助けるから・・・。
そう琥珀は強く決意した。

   

   

続く