第4話
〜奪われた歌姫〜
杏花は、自分の全身が映る大きな鏡の前に立ち、恥ずかしそうに振り向いた。
「えっと……なんで、こんな格好するの?」
杏花が身に纏っているのは、華やかなドレス。
突然、着替えをするように言われ、用意されていたのがこのドレスだったのだ。
ダーツはその疑問には答えず、ただ優しく微笑み返した。
「似合っているよ、杏花。」

「〜〜〜〜。」

「君が纏うからこそ、美しいのだな。いや、逆かな。」

恥ずかし気もなく言われ、杏花は思わず素で赤くなってしまった。

「……ダーツさん、よくそんな台詞をサラリと……」

「なにがだ?」

困った顔をしている杏花に、ダーツは純粋にキョトンとしている。

ダーツにとってはキザな事を言ってるつもりはないし、自覚もない。

ちょっぴり天然な天界の王様であった。

「それでは、行こうか。」

そう言って、ダーツは杏花の手を取った。

「え、どこへ??」

何も知らされてない杏花は、色々疑問に思いつつもダーツと共に部屋を出た。

   

   

   

   

杏花が連れてこられた先は、王宮内の大きな広間だった。
そこには沢山の人達…いや、天使達で賑わっていた。
華やかに飾り付けられた会場、いくつも設置されたテーブルには豪華な料理。
杏花はその光景を、ただ驚きながら見つめ歩いていた。
「これって、なんのパーティーなの?」
そう問いかけると、ダーツは表情を変える事なく言う。
「歓迎パーティーだよ。杏花の。」
「え!?私の!?」
とは言っても、杏花は記憶をなくしている為、何故天界に来たのかさえ分からない。
それでもやはり、こうやって歓迎してくれるのは嬉しいものだ。
杏花とダーツが会場を歩くと、道を開けて行く天使達が次々と言葉をかけてくる。
「杏花様!」
「ようこそ、天界へ!!」
そう言われる度に、杏花はペコリと頭を下げて返した。
こういう歓迎の仕方に慣れていない為、どこか笑顔がひきつっていた。
(なんか………疲れる……!)
そう思った瞬間、ダーツが杏花の身体を引き寄せた。
(え………?)
ハッとして、杏花はダーツの顔を見上げた。
「離れない方がいい。」
ダーツは、杏花にだけ聞こえるように、耳元で囁く。
かと思えば、急に明るくニッコリと笑った。
「迷子になりたくはないだろう?」
杏花は顔を赤くしつつも、嫌な気はしなかったのでダーツにピッタリくっついた。
その二人の姿がまるで微笑ましいカップルに見えて、天使達は皆笑顔で見送った。
そうして、ダーツと杏花は用意されていた特別な席に座った。
次々と料理がテーブルに並べられていく中、杏花はじっとダーツの方を見ている。
「ねえ、ダーツさんはシュークリームが好きなの?」
これだけの種類の料理があるのに、ダーツは一番先にシュークリームを取ったからだ。
「ああ。杏花も好きだろう?」
「え、なんで知ってるの!?」
杏花は確かに甘いもの全般が好きで、シュークリームは好物だ。
杏花は、ちょっと悔しくなってきた。
自分はダーツの事を何も知らないのに、ダーツは自分の事を色々と知っている。
はやく記憶を取り戻したいという気持ちはない。
だが、自分の事よりも、もっとダーツの事を知りたい……そう思うのだ。
そして、杏花も一緒にシュークリームを食べた。
しかし、食べ終わって隣を見てみれば、ダーツはすでに二つ目のシュークリームを手にしていた。
「ダーツさん……すごい……」
杏花は、ただそのダーツの甘党っぷりに感服していた。
「なにがすごいのだ?」
相変わらずの反応を返しつつ、ダーツは平然と食べ続ける。
結局、ダーツはシュークリームを三つ食べ終わった後、席を立ち上がった。
「私は仕事があるから、この場を離れるが、杏花はどうする?」
すると、杏花も立ち上がった。
「私はもう少し、この会場にいるわ。大丈夫、迷子にはならないから!」
「そうか。困った事があったら、天使を頼るがいい。この王宮の天使は誰もがお前の力になる。」
「うん。」
そうしてダーツと別れた杏花は、一人で会場を歩いてみる事にした。
(この会場の人達、皆天使なのよね…。)
信じられない気持ちで、杏花は周囲の人達を見回しながら歩いた。
その時、前方の柱の影に、見た事のある人の姿を見つけた。
緑色の髪。あれは確か、女性が苦手なアサシンの………
杏花がその男の名『翡翠(ひすい)』を思い出す前に、目が合った。
しかし翡翠は目が合ったと同時に、素早く姿を消した。
杏花は一人で苦笑いをした。
(なんか私、避けられてるなあ……)
いや、翡翠は杏花を避けているのではなく、女性自体が苦手なのであった。
「あ、杏花様!」
その時、背後から呼び止められて、杏花は振り返った。
そこにいたのは、紅瑪(あかめ)だった。
天界一の医師・瑪瑙(めのう)の妹……正確には、瑪瑙のクローンである。
「紅瑪!紅瑪も来てたのね!」
誰も知らない人達の中で唯一の友達を見つけたかのように、杏花は喜んだ。
「うん。でももう帰るよ。兄さんの所(診療所)に行かないと心配だしね。」

しっかり者の紅瑪は、まるで瑪瑙の保護者のように言った。

「今、アサシンの人を見かけたんだけど……避けられちゃった。」

杏花が笑い話のように言うと、紅瑪は不思議そうな顔をした。

「翡翠?翡翠なら来てないと思うよ?」

「え?」

杏花はそう言われて、自分も疑問を感じた。

考えてみれば、女性が苦手な翡翠が、わざわざこんな大勢の人達が集まる場所に来るはずがない。
じゃあ、さっき見たのは…?
この王宮には沢山の天使がいるから、誰かと見間違えたのかもしれない。
そうして紅瑪とも別れ、再び杏花は一人で歩き始めた。
その時。
誰かの声が、杏花の耳に聞こえてきた。
声ではない。これは、歌声。
この大勢のざわめきにかき消される事なく、その声は杏花の聴覚に直接響くようだ。
どこから…どこから聞こえてくるの?
その声を追うようにして、杏花は自然と足を進めた。
そうして歩いていくと、いつの間にかパーティー会場から出ていた。
そして中庭を少し歩いた所で、小さな庭園を見つけた。
その庭園の中心で、様々な彩りで咲く花に囲まれ、一人の女性が立っていた。
立って、歌っていた。
杏花よりも少しだけ年上に見える女性。
前髪は金色で美しく、後ろの長い髪はオレンジ色。
目を閉じながら、まるで自分の世界だけで歌い続けるような彼女。
その歌声は、優しく、美しい。
だが自信がないのか、声は少し小さめで、時々こもるのだ。
なんとなく声をかけちゃいけない気がして、杏花は黙ってその女性を見ていた。
やがて、女性の方が杏花の気配に気付き、はっとして歌を止めた。
「だ、誰ですか……!?」
まるで怯えるようにして、女性は杏花の方に向かって小さく叫んだ。

   

   

「ごめんなさい、あまりに素敵な歌声だったから。」
杏花はようやく、その女性の近くまで歩いて行った。
「私は杏花。まだ天界に来たばかりだけど、よろしく………」
杏花が言い終わる前に、女性は慌ててビシっと姿勢を正した。

「あ、あなたが杏花様ですか!すみません、気付かなくて……!!」 

そう言いながら、ペコペコと頭を下げた。臆病で、気が小さいようだ。

ようやく、顔を上げた。

「私の名は砂良(さら)です。よろしくお願います…。」 

砂良の命の源は、『アラゴナイト』というオレンジ色の石だ。

「どうしてパーティー会場で歌わないの?」 

杏花が聞くと、砂良は恥ずかしそうに顔を俯かせた。

「私の歌はまだ未熟なので……お聞かせ出来るようなものでは…」

「そんな事ないわ。砂良さんの歌はとっても素敵だと思うわ!」

杏花は、本心からそう思った。

「ありがとうございます……。」

砂良は照れながら笑った。その笑顔は、本当に嬉しそうだった。

そして砂良は、自分の本心を口にした。

「私、いつか天界の歌姫になりたいんです。」
「砂良さんなら、きっとなれると思うわ。」
「はい………頑張ります……!!」
『闇界』との戦争で張り詰めた緊張の続く天界。
きっと、彼女の歌声のような癒し、『歌姫』の存在は天界に必要なのだと杏花は思った。
だが、杏花はその時は夢にも思わなかった。
砂良の歌声を聞くのも、笑顔を見るのも、その時が最初で最後になろうとは。

   

   

   

   

   

   

パーティー会場から抜け出た翡翠は、背中に羽根を出現させ、それを広げて舞い上がった。
普段は隠しているが、天使は誰でもその背に天使の『羽根』を持っている。
だが、舞い上がった瞬間、翡翠は一瞬にしてその姿を変えた。
赤い髪に、黒のスーツ。その背には、生まれながらにして持つ、天使の羽根。
その男は『柘榴(ざくろ)』という名の、闇界の配下だ。

   

   

柘榴には変身能力があり、普段は20歳ほどの成年の姿をしているが、10歳の子供にもなれる。
さらに、他人や動物にまで姿を変えられるのだ。
柘榴は翡翠の姿に変身して、天界のパーティー会場に潜り込んでいたのだ。
柘榴は空高く舞い上がり、天界の王宮を見下ろした。
「近頃……天界が騒がしいようですね。」
闇界はまだ、杏花の存在を知らないのだ。
「これは、すぐにゾーク様にご報告致しましょう。」
丁寧な敬語口調で言うと、柘榴は羽根を翻し、天界を後にして飛び去った。
『ゾーク』とは闇界の王の名である。
天界を一方的に攻撃し、天使を皆殺しにして奪い、我が物にしようと企んでいる張本人。
そして、この柘榴という男も、かつては天界に仕える天使であった。
だが一度殺され、ゾークの手によって再生させられた柘榴は、今ではゾークの忠実な配下。
彼こそが、数千年前から続く天界と闇界の闘いの、最初の犠牲者であった。

   

   

   

   

ここは、闇界。
常に夜であり、光の射さない世界である事から、『闇界(やみかい)』と呼ばれている。
天界の偵察から帰った柘榴は、王宮の玉座の前に立った。
壇上の玉座には、闇界の王『ゾーク』が肘をついて座っている。
漆黒の髪に、漆黒の瞳。その瞳はまるで闇界を象徴するかのように、光を宿していない。
年齢的にはダーツと同じく20代にしか見えないが、実際は数万年という時間を生きている。

   

   

柘榴の報告を聞いたゾークは、皮肉をこめて笑った。
「闘いの中にあるにも関わらず、祭り気分とは。いい気なものだ。」
柘榴が顔を上げた。
「どう致しますか?」
そう聞くと、ゾークは何かを考える素振りを見せて、やがて口を開いた。
「そうだな……我が闇界にも、歌姫が欲しい。」
どうやら、ゾークは次に狙う天使を定めたようだ。
「大理、黒曜。」
ゾークがその名を呼ぶと、控えていた二人の兵士が玉座の前に歩み出た。
それは同じ容姿に同じ制服を纏った、双子の兵士であった。

   

   

『大理(だいり)』と呼ばれた白い髪の男は兄であり、剣術を得意とする。
『黒曜(こくよう)』と呼ばれた黒い髪の男は弟であり、体術を得意とする。
二人とも、ゾークによって石から生み出された配下である。
その双子はまるで、天界の琥珀と瑠璃の双子と対を成すようだった。
琥珀と瑠璃が『漫才兄弟』なら、大理と黒曜は見た目から『白黒兄弟』だ。
大理と黒曜は玉座の前に跪いた。
「天界の歌姫を奪ってこい。そして、我の前に差し出せ。」
ゾークがそう命じると、二人は立ち上がった。
「はい。」
まず、兄の大理がそう言った。
「お任せ下さい。」
その言葉に続くように、弟の黒曜が言葉を繋げた。
「「全ては、ゾーク様のご意志のままに。」」

最後に、二人は声を揃えて同時に言った。

ゾークに忠実な双子の、息の合った独特なしゃべり方である。

   

   

   

   

   

   

杏花はその時、まだ庭園にいた。
「ねえ、もう一度歌ってみて!あの歌声、聞きたいわ。」

そう言うと、砂良は少し躊躇った。

「人前では緊張しちゃってダメなんですけど……でも、杏花様の為に頑張ります。」

そう言って、砂良は緊張しながらも深呼吸をした。

両手を胸の前で握りしめて、スゥっと息を吸った。

そうして、ようやく歌い始めた。

その、心に直接響くような、優しい歌声。

思わず聞き惚れて、杏花は目を閉じた。

だが、その次に聞こえてきたのは。

「なるほど、確かにいい声だ。」

聞き慣れない男性の声に、砂良は歌をやめて、その声の方に振り向いた。

杏花も見ると、そこには二人の男が立っていた。

白い髪の兵士と、黒い髪の兵士。

杏花は砂良の方を見て問いかけた。

「あの人達は?王宮には琥珀さんと瑠璃さん以外にも双子の天使がいたのね。」

だが、砂良は険しい表情をして震えていた。

「違います……あの人達は、天使では………ないです…」

「!?」

その砂良の怯え様を見て、杏花は嫌な予感がした。

白の兵士がまず、名を名乗った。

「我が名は大理!」

続いて、黒の兵士が名を名乗った。

「我が名は黒曜!」

そして、二人同時に声を揃える。

「「我が闇界の王・ゾーク様の命により、その命もらいうける!!」」

それを聞いて、ようやく杏花は気付いた。

「闇界って……事は……敵!?」

杏花の中には、かろうじて『闇界』=『天界の敵』という認識がある。

一瞬で、今が危険な状況である事だけは分かった。

目の前に立つ双子の兵士は、闇界の手先であると。

剣術を得意とする兄の大理は、その手に太く、大きな剣を出現させた。

これが、大地を自在に操る武器、『地割剣(ちかつけん)』だ。

砂良はハッとして、震える足を立たせた。

そして近くの植木の中から、緊急の護身用の短剣を取り出し、構えた。

「杏花様……逃げて!!」

気丈に叫ぶが、手足が震えている。刃物など、持った事がないのだろう。

しかし、杏花は自分だけが逃げる事など出来なかった。

いや、この双子の前では逃げる事など不可能だと、感覚で悟っていた。

「これ以上、一方的に天界を壊さないで下さい……!!」

砂良は涙目で訴える。

そんな砂良を目の前にしても、双子の兵士は少しも動じる事はない。
やがて、体術を得意とする弟の黒曜が、動いた。
かと思えば、一瞬にして砂良の目の前に姿を現した。
それは、一瞬の動きだった。
黒曜の拳が砂良を目がけて放たれたが、砂良はとっさに短剣の刃を向けて防ごうとした。
だが、次の瞬間。
黒曜の拳が砂良に少し触れただけなのに、砂良の体は一瞬にして地に倒れた。
倒れたというよりも、地に押さえ付けられた感じだ。
黒曜の拳には、触れた物に自在の重力を与えられるという特殊能力がある。

「砂良さん……!!」

杏花には、何も出来なかった。
地に倒れた砂良の前に、今度は兄の大理が歩み出た。

砂良の目からは恐怖のあまりに涙が伝っていたが、その口から出る言葉はただ一つ。

「杏花様………にげ……て…」

自分よりも、必死に杏花を守ろうとするばかり。しかし、杏花は首を横に振った。

大理は表情も感情もなく、剣の刃を地に垂直に向けると、一気に深く突き刺した。

砂良の心臓を目がけて。

その光景を目にした瞬間。

杏花は、声が出なかった。
それは、砂良も同じだった。
声を出す間もなく心臓を貫かれ、砂良の命は一瞬にして断たれた。

深く貫かれ、血が溢れ出るよりも先に。

砂良の命が断たれたその瞬間、砂良の体は消滅していったのだ。

それは、まるで砂になって消えていくような一瞬の出来事。

砂良が倒れていた場所に残っていたのは、小さな石1つだった。

これが、砂良の命の源である、『アラゴナイト』という石。

天使は、死ぬと石に戻る。

瑪瑙からその事は聞いていたが、今、杏花の目の前でそれが起こった。

大理はその石を片手で拾った。

ただ、愕然としている杏花を見て、黒曜は大理に聞いた。

「兄上、あっちの女はどうする?」

クールな大理は、特に杏花に興味を示す事なく返した。

「今回の任務は果たした。行くぞ、黒曜。」

そう言って、双子の兵士は杏花に背を向けた。

大理と黒曜の今回の標的は杏花ではなく、砂良だった為だ。

「い………や……」
杏花は、思うように出せない声を振り絞った。

(砂良さんを…………返して…………)

ただ、この場所で歌を歌っていたい。

それだけを願った砂良が、どうして殺されなければならないのだろうか?

   

「いやぁぁぁぁああ!!」

   

双子の兵士の姿が杏花の視界から消えた時、その場には杏花の叫び声だけが響いた。

その時、王宮内の見回りをしていた琥珀と瑠璃の双子が、杏花の叫びに気付いた。

「杏花様!?

琥珀と瑠璃が、同時に杏花に向かって駆け寄る。

「どうされました、杏花様!?」

瑠璃が、今にも倒れそうな杏花の肩を支えた。

琥珀は、地面に残る破壊の跡と、血痕を見つけた。

「………瑠璃、天王様にご報告や………」

状況を悟った琥珀は、さすがにこの時ばかりは悲痛を噛み締めるように、低い声で言った。

だが、杏花は震えながら首を振った。

「もう、遅い………」

もう、取り戻せない。闇界に奪われた、砂良の命は。

ショックの方が大きすぎて、今は涙が出ない。

琥珀と瑠璃はその後しばらく、沈黙した。
今は、何も杏花に聞く事は出来ない。

   

   

   

   

   

   

砂良は、闇界の王宮の玉座の前に立っていた。

しかし、今の砂良はもう、今までの砂良とは違う。

砂良は殺され、石に戻った。

その石をゾークが再生させる事によって、天使はゾークの配下として生まれ変わるのだ。 

不必要な記憶は、全て削除されて。

ただ、その心にあるのは主であるゾークへの忠誠心だけ。

奪われた天使を取り返すには、再び殺して石に戻し、ダーツが再生するしかない。

しかし、我が子同然の天使を殺すなど、ダーツには出来るはずもない。

「ようこそ、闇界へ。」

ゾークは満足そうに言うと、砂良に命じた。

「我にその歌声を聞かせろ。」

「………はい。」

砂良は、歌った。
その歌声は天界に居た頃と変わらず、美しいものだった。

ゾークは、その歌声が気に入った。

「砂良。お前には、離れの部屋を与える。そこで歌い続けるのだ。」

「はい。私の歌を………捧げます。」

そうして、砂良は大理に連れられ、『玉座の間』を出た。

玉座に座ったゾークは一人、遠い昔を思い出して小さく呟いた。

「我が妻・ユナへの鎮魂歌(レクイエム)をな………。」

   

   

   

   

   

   

いつか、天界の歌姫になりたい。

そう夢を語っていた砂良は、闇界の歌姫となった。

   

   

続く