第43話
〜魔術師と呪われた天使(前)〜
それは闇界の襲撃の後、まもなく…
花の園の管理をする砂金の元に一人の奇妙な男が現れた。
真っ白なスーツにアスコットタイと黒塗りのステッキ…シルクハットから鳩を飛び出させて驚く砂金ににこやかな挨拶をした。
   
「初めまして、砂金さん。私は龍涎(りゅうぜん)と申します。あなたと同じ、石から生まれた命です」
   

「…天界ではお見掛けしない方ですね」

「おやぁ?そうですか?よく見てください。ほら、誰かに似てませんか?」
男は金と黒の二色の髪をしていて、瞳も綺麗な金色だ。
ニコニコと愛想がいいその胡散臭さを抜けば、どことなく琥珀に似ている。
   
   
男はシルクハットを叩いて、小さな紙芝居を取り出した。
肩には先ほど出した鳩がいて、龍涎の肩から砂金の肩に移る。
砂金が無くした翼の代わりのように寄り添う鳩に龍涎は「やはり貴女には純白の羽が良く映えます」と絶賛した。
「あなたに一つ、物語を語りましょう。私はこう見えて、魔術師(マジシャン)なんですよ」
「えぇ…まぁ、見た通りですわね」
「さぁさぁ、お話の始まり始まり〜!」
パンパン!と手を叩き、物語の合図をすると、シルクハットからテーブルを出して紙芝居を立てた。
得体の知れない、多分闇界側の天使であろう男が目の前にいて警戒しない訳はない。
だが、砂金は今飛べる羽がないので逃げることも出来ない。
あちらの能力が未知数なので、自らの能力も出せずにいる…仕方なく砂金は様子を見るように黙って紙芝居を見つめた。
   
「昔昔、天王に仕える双子の兄弟がおりました。双子は天界の門番を務めるとても重要な役割を担い、天界の安息を守っているのです。だけれど、双子のうちの兄はとても難しい性格をしておりました。正義感溢れる純粋な弟と同じく、純粋ではあるのですが…異常と呼べる程の純粋さでした。」
   
「……」
紙芝居の冒頭からもうこれが誰の物語か解ってしまった。
しかし、それを何故本人ではなく自分に伝えるのか…砂金は心の中で疑問を浮かべた。
龍涎は顔には出さずとも困惑する砂金を嘲笑うように、さらに話を進めていった。
   
「やがて双子の兄は恋をしました。それは花の園の新しい管理人の美しい娘でした。だけれど、彼の恋した理由もとても歪(いびつ)なものでした。何故なら、彼はただ…【純白な美しい彼女を汚してみたかったのです】」
   
「…違います」
   
「彼女も、それに気付いていながら…あえて素知らぬふりをして彼を愛したふりをしました。何故なら、彼があまりにも【可哀想だから】です」
   
「…違います、それは単なる貴方の憶測です」

砂金は物語の全てを語らせないように、あえて龍涎の言葉を遮った。

それもまた予想していたのか、余裕の笑みを浮かべる。
   
「そんな時、闇界から彼女を救う王子様がやって来ました。王子様はその双子の兄の不良品から生まれた命で、本当は少しの濁りの差で運命が大きく変わった天使だったのです」
   
「…なんですって?…なら貴方は…」
   
「王子様は心に誓いました。何とも自分勝手な男の為に、心を痛める彼女を救おうと…王子様もまた、彼女に恋をしてしまいました。…さて、王子様は何をして彼女とのハッピーエンドを迎えるでしょう?」
   
紙芝居とテーブルをシルクハットの中に戻して、頭に乗せる。
龍涎が一歩前に出ると、砂金は一歩後ろに下がった。
「私を殺して、闇界へ連れていくのですか?」
「まさか。それじゃぁつまらないし、本当の意味であなたを手に入れた訳じゃない…そう思いません?」
「ですが、そうしなければ私は堕ちませんよ」
「硫化さんだって、自分の意思で闇界に行ったじゃないですか。私も、あの男より私を選んだ砂金さんが欲しいんです」
「貴方を私は知りません。貴方を選ぶ私など想像がつきませんわ」
「今から知っていけばいいじゃないですか。もう物語は始まっているんです。出会えた事を運命に、愛し合う事を天命にすればいいんですよ。聡明な貴女ならもうお解りでしょう?」
龍涎は優しい微笑みで、真っ白な手袋をはめた右手を砂金に向ける。
砂金の前で跪き、左手の薬指にキスを落とした。
真っ白なワンピースドレスの砂金に、真っ白なスーツの龍涎、周りは見渡すばかりの花畑…まるで結婚式のようだ。
   
「貴女をお迎えに上がりました、本当の王子様です」
   
「…馬鹿な事を仰らないでください」

「おやおや、お姫様は手厳しい…ならば貴女に、甘い毒を差し上げましょう」

龍涎は立ち上がり、ステッキで右手を叩くと真っ赤なワインとグラスが現れた。
龍涎は砂金の目の前でワインをグラスに注ぎ、よく見せる。
その慣れた手つきとパフォーマンスのような動きに何故か見入ってしまった。
その隙をつき、龍涎はワインを口に含むと砂金を抱き寄せて唇を重ねた。
さっきまでの紳士的態度とは全く違う奪うようなキスに砂金は驚き、抵抗するが敵う訳がない。
   
「んっ…!?いやっ…!」
   
砂金に口移しでワインを飲ませたら力をわざと緩ませ砂金を解放する。
砂金はよろめきながら、すぐに龍涎から離れた。
吐き出そうと咳き込むが、完全にワインを飲んでしまったようだ。
「なにを…飲ませたのですか!?」

「魔法ですよ。今から貴女は私以外の男とキスをすれば、この真っ白な鳩の姿になり自由に空を飛ぶことが出来る。あの男から逃げられますよ」

「…!?それでは、貴方の目的も成し得ないのでは…」
「そうですね。私も貴女を永遠に失うでしょう。ですがそれでもいいと思うのです。このままあの男に飼い慣らされる貴女を見るよりかは…ね」
ニッコリ笑う龍涎は、飛んでいた鳩を口笛で呼ぶと、シルクハットの中に入れた。
砂金に背中を見せて、飛び立つための羽を出す。
   
「貴女にかけた魔法は私しか解けません。またお会いしましょう、愛しい貴女」
   
龍涎は深々と頭を下げて、砂金の前から姿を消した。
一枚の白い羽根だけを残して…。
   
   
   
   
   
   
砂金に起こった変化など知るよしもない王宮では、いつものような日常を過ごしていた。
杏花は数冊の本を持って、双子の門番である琥珀と瑠璃が休憩している憩いの場に向かった。
そこは女子会も開催される皆の広場で、中庭の美しい花を見ながら、お茶を楽しめるのだ。
「琥珀さん、ちょっと頼みたい事があるんだけど…」
杏花がドアを開けると、机に突っ伏している琥珀がいた。
いつも元気な琥珀が、今日はやけに暗いのだ。
杏花は琥珀の前でコーヒーを飲む瑠璃に話しかけた。
「瑠璃さん、琥珀さんどうしちゃったの?やけに暗いというか落ち込んでるというか…」
「フラれたんとちゃいます?砂金さんに…」
「えぇ!?」
「この前、兄者が砂金さんとこから帰ってきてからずっとこうなんですわ…鬱陶しくてかなわんわぁ…」
瑠璃は仕事が進まないとぼやいているようだ。
杏花は琥珀の肩を揺さぶり、声を掛けるが突っ伏したまま「どうか今の俺をほっといてくれ…」と話も聞かない。
「あの、実は砂金さんに借りてた本を返したいんだけど…誰か案内してくれませんか?」
「…砂金んとこに?」
「あ、無理にとは言わないから…そうだ、天麗に話して連れていってもらえば…」
「いやいや!門番の俺こそ王妃様の護衛をせなアカンやろ!なぁ!?瑠璃!」
ガバッ!と起き上がった琥珀はいきなりやる気を出して立ち上がる。
魂胆は見え見えだ…これは砂金に会いに行く口実である。
瑠璃は「勝手にしぃや」と手をふった。
すると、裁判長である碧海がドアを開けて部屋に入ってくる。
「番兵双子、会議室に来い。あぁ、杏花様も来て構いませんよ。」
「会議室やと?なんかあったんかいな?」
「お前、花の管理人に何しやがったんだ?」
ジロリ、と碧海が琥珀を睨み付け答えを言わないまま部屋を出ていってしまった。
睨まれた琥珀は「なんやねん、あいつ…」と首を傾げながら瑠璃と杏花と共に会議室に向かった。
会議室には、天麗と翡翠と水晶(+犬獄丸)と紅瑪がいて先に戻った碧海が会議室の一番奥に座った。
「なんや?オールスターズで神妙な顔して…」
「知らねぇよ、俺達は碧海に呼ばれたんだ」
琥珀の隣は翡翠で、めんどくさそうに肘をついている。
杏花は天麗と紅瑪の間に座り「どうしたの?」と聞いたが二人は首を傾げるばかりだった。
「花の管理人から連絡が来てな…最近、天使の開花が遅れているそうだ」
「え?砂金、調子悪いの?」
「瑪瑙さんのカルテからは身体の異常は見られない。花の開花は管理人の歌で左右される。つまり、管理人の精神不安定が原因だろう」
碧海は「そこでだ!」と何故か琥珀にビシッ!と指を突きつけた。
琥珀は「人を指で差すなや!」と碧海を指差した。
「俺は、このトラブルメーカーが原因だと思う」
   
「「あー………」」
   
「ちょ、なんなん!?お前ら!なんやその妙に納得した顔は!!なぁ、るーちゃ…」
「……兄者…」
「ちょぉぉ!!待ちや!!瑠璃が一番納得したような顔してるで!?」
碧海の意見に反論するのは容疑者の琥珀だけである。
まだ中立の立場にある杏花は、とりあえず琥珀のフォローに回った。
「まぁまぁ、落ち着いてよ。琥珀さんと砂金さんは恋人同士でしょ?それがどうして砂金さんの精神不安定になるの?」
「そうや杏花様!よく言った!」
「兄者がこれまで、一番迷惑かけてんのは砂金さんやと俺は思う。恋人だからこそ、俺らの知らへん苦労があると思うんや」
「そうそう、それに琥珀ってなんか胡散臭いのよね。本気と冗談が解らなくて不安になりそう」
「るーちゃん、天麗!それは誤解や!俺かて純粋な天使やぞ!?」
「鼻で笑えるレベルだな。てめぇが純粋なら、皆聖人君主だぜ」
「お前はヘタレやないか!翡翠!」
「恋人でも大事にしなさそう…」
「紅瑪ちゃん意外と辛辣!!」
「…決定だな。てめぇは有罪だ。本日付けで琥珀は花の園への干渉及び侵入を禁ずる。代わりに天麗がその任を担え」
「りょーかい!!琥珀、諦めな」
「はぁぁぁ!?なんでそうなるんやぁぁあ!!!」
琥珀の反論は有無を言わさず却下され、琥珀の代わりに天麗が砂金との連絡網となった。
杏花は苦笑しつつ、どうしていきなり砂金さんが不調になったんだろう?と首を傾げた。
   
   
   
   
   
   
天麗と杏花は砂金に会いにいくために、王宮の中にある真っ白な扉の前にきた。
金の細工と、陶器で作られた薔薇のアーチの中にそれはあり…とても大きな扉だ。
「天麗、この扉は?」
「あぁ、杏花様は知らなかったわよね。これが正式な花園へ行くための扉よ」
「え?だって琥珀さんはいつも飛んでいくじゃない?私、てっきり皆飛んでいくのかと…」
「違うわよ、これは正式なものだから誰が通ったかちゃんと記録されるし飛ぶより早く花園へたどり着くの。琥珀はめんどくさがって自分で行ってるのよね…」
全く、と呆れる天麗は扉の真ん中にあるドアノブを回した。
すると、ギギギ…と音を立てて扉が開いていく。
その中に光の道のような一本筋が先まで伸びていた。
「今回は杏花様もいるから歩いていきましょ」
「う、うん…これ、途中で落っこちない?」
「あはは!もしも落っこちたら助けてあげる!」
天麗はそう笑い飛ばして杏花の手を引き道を歩いていく。
最初はキョロキョロしていた杏花も次第に慣れてきて天麗の隣を歩いていった。
するとあっという間に花園へ辿り着いてしまい、花園にある砂金の家が見えた。
初めて知ったが、確かに王宮にあった扉と同じものが花園を見渡せる丘の上にある。
どうして今まで気付かなかったんだろう、と首を傾げていたら天麗は杏花を後ろから抱っこして丘の上から飛び立った。
ふわり、と地面に着地した杏花と天麗の前にはいつもと変わらない砂金がいた。
にこりと微笑み「わざわざすみません」と頭を下げる。
「いいのよ、ところで具合はどうなの?砂金」
「えぇ、実はその事でお二人にお話があるのです。お二人を指名したのは私ですから」
「指名って?どういうこと?」
「長くなりますから、どうぞ中に入ってください」
砂金はどうぞ、と家の扉を開けた。
天麗と杏花は顔を見合わせた後、砂金に招かれて家の中に入っていく。
砂金から紅茶を出されて、三人は席についた。
   
「実は、私は呪いをかけられています」
   
「なんですって!?いいの!?話しちゃって…」

「えぇ、別に話すなとは言われてませんから。ですが、琥珀さんに知られるとまずいのでお二人に来ていただくように碧海さんにお話ししましたの」

「じゃぁ、呪いの事は碧海さんも?」
「えぇ、お話しましたわ。そしてこれから私はお二人にもお話します」
砂金がそう言うと、天麗と杏花は「うん」と真剣に耳を傾けた。
砂金は二人に龍涎という男から呪いをかけられたこと。
呪いは琥珀にも関係があり、龍涎の狙いは砂金だということ。
そう話終えた時には紅茶はすっかり冷めてしまった。
「なるほどね…まぁ、この花園は昔から闇界に狙われやすいし仕方ないとして、なんでそいつは琥珀と砂金の仲を裂こうとしてるのかしら?」
「それは…単純に好きとか?砂金さん、本当に彼に面識ないんですか?」
「えぇ、全く…ですがあの方は私の事も琥珀さんの事もよく知っているみたいでした…」
「ストーカーみたいな所が益々琥珀そっくり…」
うげ、と舌を出す天麗に杏花は苦笑した。
なんとなく否定できない杏花と砂金であったが、杏花は気を取り直して今後の対策を考える。
「私たちと碧海さんにしか言ってないってことは、ダーツさんにも琥珀さんにも言うつもりないんだよね?逆に言うと、なんで私たちだったの?」
「えぇ、お二人には王宮の中にある管理室のファイルを持ってきて欲しいんです」
「管理室の?碧海の管轄じゃない。あたしたちの手に余るわ」
「そのファイルはこれまでの精霊界と天界の石の受け渡しが記録されたものです。ですがそれは天王様のお部屋にある鍵でしか持ち出すことは出来ませんの」
「…あぁ、なるほど」
「え?なるほどって…」
閃いた天麗が隣の杏花に悪どい笑みを見せる。
まだピンとこない杏花だが、ハッとした顔で二人を見返した。
ダーツの部屋に入れるのは妻(になる予定)である杏花だけである。
だからこそ、その鍵を取ってこれるのは杏花だけなのだ。
「えぇ!?まさか、私が!?」
「そう言うことね」
「はい、杏花様、お願いします」
「う、嘘ぉ!無理、無理だよ!ダーツさんだよ!?もしも途中で部屋にきたら…」
「あたしが見張っとくから。大丈夫!」
「えぇぇ…?うそぉ…」
唖然として言葉が出ない杏花に砂金は話を続けた。
そのファイルには、取り引きされたものから採掘されたありとあらゆる石の詳細が書かれているらしい。
砂金はそこから、龍涎の石を見つけるつもりだ。
「まずは彼を知る必要があります。何故彼は琥珀さんに似ているのか、執着するのか…そこから彼に揺さぶりをかけどうにかして呪いを解かせてみせます」
「でもさ、琥珀はともかく何で瑠璃とか翡翠は駄目なの?琥珀と似てるならあたしも力負けしちゃうかもだし」
「今回は争いなく事を済ませたいのです。あちらも殺意はないようですし、琥珀さんとあの方を会わせてはいけないと思いますから…」
「…確かに。砂金を奪おうとする男には容赦ないと思うわ」
天麗がそう言うと、砂金は困ったような顔をした。
それを見た杏花はなんとなく違和感を覚える。
(あれ…?なんか今の顔…まるで)
杏花が考えていると天麗は立ち上がり「まぁここは杏花様に任せましょ♪」と茶化すと杏花は「止めてよぉ…」と不安そうな顔をする。
二人はそうして花園を出て王宮へ帰ってきたが、杏花はやはり最後の砂金の顔が気になった。
「ねぇ、天麗。もしも天麗に言い寄る人が現れて瑠璃さんが怒ったら…困る?」
「え?うーん…殺傷沙汰になりそうだからある意味困るけど女として悪い気はしないわね」
取り合う男たち、見守るあたし…みたいな?と笑う天麗に杏花は「そうだよね」と言った。
「なんかさ、まるでさっきの砂金さん…琥珀さんに愛されるのが困るみたいな顔だったから…」
「え…」
二人が会話をしていたら出口が見えた。
天麗と杏花が扉を潜ると目の前に琥珀と瑠璃がいる。
琥珀はすぐに天麗と杏花に詰め寄った。
「砂金は!?なんか言うてたか!?」
「うわっ!びっくりした!てか近いわよ!」
「そんなんどーでもいいやん!なぁ、俺、なんかしたかな?」
「あー、あんたのことうざいんだって!ほら、離れて!」
琥珀を杏花から離すために適当言ってつっぱねた天麗は杏花を後ろに回した。
ガーン!と真に受けた琥珀はぺしょりと地面に膝をつく。
瑠璃は「お疲れさん」と琥珀の頭を撫でて、天麗に向き直った。
「砂金さんの具合はどうなん?」
「え、えぇ。見た感じは普通よ。元気そうだったわ」
「そうか…やっぱり兄者への心労やな。しばらく距離置いたらどないや?兄者」
「うぅ…!自分がリア充やからって酷い言い草やんけ瑠璃ぃ…!」
「ちょ、鼻水つくやん。離しや」
がばっと瑠璃に抱きつく琥珀を見事にスルーした瑠璃は天麗と杏花に「砂金さんのことよろしく」と笑う。
何だか騙しているようで気が引けるが…仕方ないと苦笑した。
「あ、あたしたちちょっと碧海に用があるから行くわね」
「う、うん。じゃぁまた…お仕事頑張ってね。琥珀さん瑠璃さん」
「おぉ、二人もお疲れさん」
「おぉー…」
瑠璃は軽く手を振り返し、琥珀はまだ瑠璃の肩にもたれて元気がなさそうだ。
天麗は「行こう」と杏花を連れて足早に廊下を去る。
そんな二人を瑠璃と琥珀はじっと見つめた。
「…なんや、キナ臭いなぁ」
「兄者も思ったか?なんか隠しとるで…砂金さん、よっぽど体調が悪いんかな?」
「…うぅ…!やっぱり我慢出来へん!砂金とこ行って…」
「待ちや、兄者。それよりも二人の後を追えば済むことやんけ。こんなときのためのアサシンが居るやろ?」
「せや!ひーちゃーん!あーそーぼー!!」
小さい頃、翡翠を呼ぶときはいつもこう言うのが琥珀である。
そして、何故かやって来るのが翡翠であった。
   
「何だよ、なんか用か?てか琥珀、いい加減その呼び出しかた止めろ!」
   
「ええやん、なんだかんだと来たんやから。それよりな、ちょっと頼みたい事があんねん」
「頼みたいこと?」
「天麗と杏花様はなんか隠しとる。それを探って欲しいんや。もしかしたら、天界で何か起きてんのかも知れん」
瑠璃がそう真剣に話すので、翡翠も「了解だ」と影に潜る。
琥珀は「るーちゃんの言うことは素直に聞くんやから…」とぶつくさ文句をいっていたがふと花園へ通じる扉を見つめて砂金を思い浮かべた。
「…あー…あかん、やっぱり俺は待ちきれへん。会いたいわー…」
「…前から思ってたんやけど、兄者って砂金さんの事好きなんか?」
「当たり前やろ、何言うてんねん。」
「いや、俺はてっきり…。なんか兄者って何処までが本気か解らへんから」
「瑠璃こそ何言うてんねん。俺は砂金が好きや。だって砂金は俺のもんやし」
「は?」
なんだか違和感がある愛の告白に瑠璃が首を傾げて、そんな理解できない瑠璃を理解できないみたいな顔で琥珀が首を傾け腕を組んだ。
「好きとか嫌いとかの以前に、砂金は俺のもんやし?会いたいのも当たり前やんけ。砂金だって俺の事好きやろ。むしろ嫌われる要素が俺的に皆無やねん」
「…はぁぁ!?なんやその俺様理論!砂金さんがそう思てるとは限らんやろ!?」
「なんで?砂金は俺の事嫌いになるわけないやんけ。だって俺がこんなにも愛してんねんぞ?何で嫌われるんや?」
瑠璃は呆れて物も言えない。
パクパクと口を開けたり閉じたりして琥珀を指差しやがて、盛大なため息をついた。
「…あかん。こりゃ砂金さんが体調不良になるわけや…」
「え?なに?どーいうこと?」
「…兄者のそれは、100回石になっても変わらんで…」
瑠璃は、この天上天下唯我独尊天使をどうしたものかと…頭を抱えるばかりだった。
   
   
続く