第55話
主従



ネクロを乗せた大牙と護衛の硫化が闇界から天界へと向かう中、それを悟ったデザイヤが兵士を仕向けた。
亡霊が取り憑いた兵士が群れになって追いかけてくる。
硫化も戦うが、敵が多すぎて攻撃を防ぐのが精一杯だ。
大牙も巨体に食らいつく亡霊を振りほどこうともがくとネクロの足を亡霊が掴んだ。
   
「きゃぁぁ!!」
   
【しまった!!お嬢!】
   
亡霊に掴まれてバランスを崩したネクロは大牙の背中から落ちてしまった。
このままでは地面に激突してしまう…ネクロも目をぎゅっと瞑った時ふわりと体が浮いた。
え?と目を開けると気ままに世界を旅する龍涎がネクロをお姫様抱っこしていた。
なんであいつがここに!?と大牙が口にした瞬間、龍涎は指を鳴らした。
   
「IT's Show time!!」
   
大牙と亡霊達を包み込む巨大なカーテンが現れて風呂敷状になったかと思うとカーテンのなかから大きなマジックボックスが現れた。
ガタガタと震えているところを見ると、きっと大牙と亡霊達はあの中に入っているだろう。
唖然とする硫化が「大牙まで!?」と驚いた。
   
「ちょっと!大牙は助けなさいよ!」
「勿論ですよ、お嬢様。私のマジックは常に華麗で完璧です」
   

パチン、と龍涎が指を鳴らすとマジックボックスを取り囲むようにナイフが出現し一気にボックスを串刺しにした。

ネクロは「きゃぁ!」と思わず目を覆う。
ナイフが引き抜かれ、ボックスの中身が披露されるとそこには大牙は居らず亡霊達だけだった。
やがて亡霊が抜けるとそこには気絶した兵士が折り重なって倒れていた。
   
「大牙は?大牙はどこ!?」
「ご安心を。虎ちゃんはこちらですよ」
 
被っていた帽子をくるくると回してネクロの前に出すと、小さな虎が目を回していた。
龍涎が掴んで投げると、元の大牙に戻りぶるぶると顔を振る。
   
「大牙!良かった!無事なのね!」
【無事ではねぇ!!死ぬかと思ったぜ!!】
   
このやろう!!と大牙は龍涎に唸るが龍涎はネクロを大牙の背中に乗せた。
   
「皆さん、天界に避難されるのでしょう?道中、私が護衛致しましょう」
「本当?ありがとう、助かるわ」
【うさんくせぇな…なんでお前は戦わねぇんだよ】
「ご冗談。あんな戦場に行くなんて野蛮ですね」
【いや、行けよ!ゾーク頑張ってんじゃん!】
「僕は愛しの砂金さんにお会いしたいのでパスです」
   
あはは、と笑って三人についていく龍涎は相変わらず忠誠心のかけらもない石の能力者である。
天界へと向かっている最中に、龍涎は「そうそう」となにかを思い出したように声を出した。
   
「ここに来る途中で面白いことを聞きましてね、それをゾーク様に一応お知らせしようかと思っていたんですよ」
「面白いこと?」
「えぇ、闇界の者が魔界で保護されてるって…どなたか行方不明になった方居ます?」
   
龍涎の問いかけにネクロは「解らないわ」と答えた。
戦いが終わってから聞いてみましょうと言うと龍涎は「そうですね」と頷いた。
   
   
   
   
その頃、ゾークは紅との一騎討ちをしていた。
猛火に包まれても、ゾークは結界でそれを防ぎ紅に向かっていく。
紅も錫杖で剣を受け止め、回し蹴りをいれて応戦した。
   
「紅!!朧が行方知れずだ!こんなことをしている場合ではない!解らないのか!」
「知ってるぜ。俺の目の前で崖から落ちていったからな」
「貴様ぁっ…!!!見捨てたと言うのか!!朧を!!」
   
カッとなりゾークの覇気が増して紅を押し返す。
紅はそのまま押しきられ剣圧で壁に激突した。
ぐっ、と眉を潜めて崩れ落ちる紅をゾークは悲痛な目で見つめる。
   
「紅…!!朧を救いたいと自らの能力で朧を生かしていたお前が何故そんなことをする!!心までデザイヤの手先となったのか!答えよ!」
「はぁ…はっ…うるせぇよ…知ったような口聞くんじゃねぇ…!!」
   
ゆっくりと起き上がり、息を切らしながらも瞳にはまだ燃えるような闘志があった。
まだ戦う気か、とゾークも心を鬼にした。
ゾークの知る紅は、朧を大切にしていたはずだ。
朧は半分人間、半分精霊のとても脆い存在である。
元々いくら精霊でも人間の血筋が朧に僅かな寿命しか与えなかった。
そんな朧をどうにか生かすために、紅はあらゆる能力者を探してはその力を奪ってきた。
やがて、自分の生命力を他者に分け与える力を手にいれて紅は朧にそれを使用する。
だから紅がそれを止めれば朧の時間はまた進み…やがて老婆となりあっという間に死んでしまうのだ。
   
「神でもないお前が一人の命を生き永らえさせる為には、寿命を削り生命力を分け与えて食い止めるしかない。朧を無理矢理説得させてまでそうしていたお前が簡単に見捨てたというのか!」
「……もう忘れたよ、そんな昔のことなんざ」
「嘘だ!お前はそんな男ではない!我が知っている!」
「だから…!知ったような口聞いてんじゃねぇよ!!ゾーク!!」
   
紅の体から巻き起こる炎が増して、赤から青に変わる。
その炎は普通の炎よりも強力であっという間に消し炭にされるものだ。
紅の髪も毛先から徐々に青く染まり、どうやら最大限の力でゾークとぶつかるようである。
その時、やっと追い付いた柘榴と琥珀と瑠璃がやって来た。
   
「なんや!?なんちゅうあっつい部屋やねん!!おっさんが集うサウナより酷いで!」
「酷いんは兄者の例えや!天王様はどこやねん!」
「ゾーク様!!」
   

柘榴が加勢をしようとするが、それをゾークは止める。

一騎討ちをしたい、その気持ちを知った柘榴は一歩下がるしかなかった。
ゾークも覇気を纏い、本気で紅とぶつかるつもりである。
剣を握りしめ、最後の躊躇いを捨てる。
   
(紅…我と居たお前は嘘だったのか?これまでのお前は…全てお前ではないのか?)
   
番長なんてふざけたあだ名を許して仲間とともに楽しそうに笑う紅を思い出した。
たまに寂しい表情もあったがそれはお互い若いときだ。
自分の背中を長年託してきた紅は今…自分を殺そうとしている。
それが本心なのか?それともデザイヤにそうさせられているのか?
ぐるぐると想いは巡るが、答えはきっとこの先にあるとゾークは思った。
だからこそ、本気でぶつかるしかない。
   
「心の闇などに負けるお前ではない!!紅!我はお前を信じている!!」
「ふざけたこと言ってんじゃねぇ!だからお前は甘いんだよ!!ゾーク!!」
「それでも我はお前を手放すつもりはない!!!」
   
ゾークの言葉に紅は目を見開いた。
それを合図に、ゾークが紅に向かっていく。
紅はぎゅっと唇を噛み締めて、青い炎に包まれる。
炎は巨大な九つの首を持つ龍になり、火炎球をゾークに向かって放った。
ゾークはそれを斬りながら紅へと突き進む。
途中、火の球に呑まれて業火がゾークの肌を焼き付けたがゾークの覇気がそれを吹き飛ばした。
   
「はぁっ、はっ…紅!…紅!!」
   
痛みも無視して、ゾークは飛んで来る火球を弾き返した。
だが、火球が目の前に迫ったとき柘榴と琥珀と瑠璃が前に出てゾークを庇う。
紅は炎のなかで目を見開いた。
柘榴だけならまだしも、琥珀や瑠璃もゾークを助けようとしたのだ。
   
【馬鹿な…!!!何故天使がゾークを助ける!!あり得ん!!】
   
紅の言葉と共にデザイヤの声が重なって聞こえた。
それにゾークはハッとして紅を見つめた。
ゾークには見えたのだ、紅の心臓に絡まるデザイヤの闇の鎖が。
そこからデザイヤの声が聞こえた気がした。
どうやら、紅の目からデザイヤにも状況が伝わるようになっているらしい。
   
「なんやねん!天使が加勢したらアカンのか!?差別やで!おっさんが頑張る姿見たら誰でも感動するやろ!?老体に鞭打っとんのやで!!」
「誰が老体だ!!」

「ゾークは今や我々の同志も同じやねん!!それに、俺らにも心があるんや!人形みたいに命令ばっかり聞くと思うなや!!」

   
人形のように…それは瑠璃がよく知ることだ。
心を殺して生きていても、誰も救えないし何も守れない。
自分もそうだった。
どこかで天界を懐かしんだから、兄や天麗をこちらの世界に引き込もうとした闇があった。
だが、それでもきっと満たされないだろう…そこは本当の居場所ではないから。
   
「紅さん!!本当にこれでええんか!?あんたの望みはこんなもんなんか!?それで、どないすんねん!!この先、あんたの周りに誰も居らんでもあんたはいいんか!?」
   
【俺…は…】
   
瑠璃の言葉に紅の心が反応する。
だがそれを邪魔するのは心臓に巻き付いて離れない闇の鎖だ。
紅の心に反応して闇の鎖がぎゅっと締め付けると、紅は今までに聞いたことがないような悲痛な叫びをあげた。
   
【紅よ…惑わされるな…!誰が主か忘れるな…!!貴様の主は儂だ…!】
   
「うっ、あっ、あぁぁぁぁあ!!!!!あぁぁぁっ…!!!」
   
【殺せ…!!邪魔する者は一人残らず消し炭にしろ!!それが貴様に与えられた使命だ!!】
   
「がっ、はぁっ…はっ、デザイヤ様…ぁっ…!!」
   
ゲホ、ゲホッ!と咳き込み、ヨロヨロと体をなんとか立て直す。
紅が弱ったことで無数に降り注ぐ火球が止み、ゾークは今だ!と飛び上がった。
   
「俺は…俺の主は…」
   
「紅!!!待ってろ!今、助ける!!」
   
紅は目を見開いた…ゾークが助ける、と言ったのだ。
何故助けるなんて言うんだ?俺は敵だぞ?
本当にお人好しな王様だと、こんな状況でも笑えてしまう。
ふっと紅の記憶のなかにゾークとの思い出が頭を過った。
デザイヤへ忠誠を誓ってからぼんやりしていた昔の記憶が今になって甦る。
付き合いが長い二人は、他の者が知らない時間を共有してきた。
   
あの思い出は嘘じゃない。
あの記憶は幻じゃない。
この気持ちは…偽りじゃない。
   
青い炎を引き裂いて、ゾークは紅の元にたどり着いた。
さっきまで戦いの最中で嫌と言うほど見た顔がなんだか久しく見ていない気がした。
さっきまで見ていたゾークの瞳にある本心…紅は確信したのだ、こいつは自分を殺そうとするのではなく助けるつもりだと。
こんな裏切り者を助けようなんて…とんだ大馬鹿者だと紅は涙が溢れた。
   
ぎりぎりと自分の心臓を握りしめる闇の鎖が忌々しく感じられる。
これさえなければ、ゾークの元に帰れるのに。
またこいつの背中を守れるんだと紅は痛いくらいに胸を握りしめた。
その指が徐々に自分の胸に食い込んでいく。
   
「紅!?」
   
「ぐっぁ…あぁ…あぁぁぁあっっ!!!」
   
ぎりぎりと食い込んでいく紅の指は、紅の意思により自らの胸を引き裂いた。
流れ出る血飛沫にゾークは目を見開く。
そして、思い切りデザイヤの闇の鎖を引き抜き無理矢理に支配から抜け出したのだ。
   
「紅!!!」
   
紅の力が無くなり、炎の龍も消えてしまう。
その中にいた紅とゾークだが紅はぐらりと体を傾けて地面へと落ちていく。
ゾークが抱えて一緒に地面へと降りると柘榴達も側に駆け寄った。
胸からあふれでる大量の血液にゾークは焦ってその空いた胸の穴に手を伸ばした。
   
「紅…!死ぬな!紅…!死んだら許さんからな!」
   
「ゾー…ク……ごめんな…」
   
「謝るな!我は許す!許すから死ぬな!」
   
涙目のゾークに、やはりお人好しだと紅は少しだけ笑った。
闇の鎖が消えて、紅は心が解放された事で世界にまた色が付く。
そこにあるのは、優しい王様が優しい涙を流している悔しいくらいに美しい光景だった。
   
「石になったら…俺のことお前が再生させろよ…ゾーク…」
   
「馬鹿を言うな!お前は…お前は…!!」
   
「今度はお前が主ならいいな…」
   
最後の力を振り絞り、安心させるように笑顔を見せた。
柘榴もその笑顔に見覚えがあり目を見開く。
それはいつも見ていた、あの紅番長の姿だったのだ。
そして、紅はそのまま意識を手放した。
   
   
   
   
   
   
「…紅も所詮、捨て駒に過ぎぬか…」
   
全てを紅の目から見ていたデザイヤが玉座に座りながらそう呟いた。
側には倒れているファリスがいる。
そして、デザイヤと対峙するダーツが剣を握りしめてデザイヤを睨み付けていた。
   
「ほぅ、そんな顔もするとはな…貴様とは長い付き合いだが初めて見たぞ、ダーツよ」
「デザイヤ。貴様の時代はすでにない。玉座から降りてもらおうか。そこは貴様の座る場所ではない」
「なら貴様の玉座か?ゾークはお前に玉座を明け渡したと言っていたが…あながち嘘でもないやも知れぬ。闇界の者たちがお前を庇い、天界の者たちがゾークを援護する。全く、あべこべにしてくれたものだな」
   
呆れたような口調だが、余裕の笑みは冷たい。
ゆっくりと立ち上がり、デザイヤも闇の剣を鞘から抜いた。
その禍々しさにダーツさえも眉間にシワを寄せる。
   
「見るがいい!!これこそ世界を統べる力なのだ!!」
   
デザイヤが剣を天へと翳すと、そこから闇が広がり亡霊たちが次々と湧き出てきた。
その亡霊は居場所を無くしたさ迷える者。
こちらもあちらもない…永遠の闇に囚われた哀れな魂。
ダーツは「空(から)の玉座に空の王、それに従うは無の亡霊…お似合いだ」と皮肉を謳った。
黙れと言わんばかりにデザイヤが剣を振りかざすと亡霊達がダーツに向かう。
だが、それを防いだのは紫水と白銀と天麗である。
   
「貴様ら…!!闇界の者が何故天界の王を庇う!主人が誰かも解らぬ阿保が…!」
「あんたでないことは確かだよ!おっさん!!」
「闇界の反逆者が偉そうな口を叩くな。不愉快だ」
   
ふん、と紫水は睨み付け白銀も舌を出して反発する。
ならば死ねぇ!!とデザイヤが覇気で竜巻を起こすと、ダーツは聖なる光で自分らを包み込み結界を張った。
そして、亡霊を剣で切り裂いていく。
   
「私とゾークを殺そうと目論んでいるようだが、貴様に我々は倒せぬ」
「ふん、貴様らを殺せぬと儂が知らないとでも思ったか?王しか知り得ぬこと…儂が気づいていないとでも?」
   
ダーツの眉がぴくりと動き動揺の色を見せた。
にやりと笑うデザイヤは剣を握りしめ玉座から一直線にダーツに向かっていった。
ダーツは剣でデザイヤの猛攻を受け止めると二人の覇気がぶつかり合い、突風が巻き起こる。
周りにいた亡霊や、紫水達も吹き飛ばしてしまうほどだ。
剣と剣がぶつかり火花が散り、デザイヤの蹴りがダーツを襲うがダーツはそれを腕で防いだ。
   
「王を殺すには、それに相応しい剣と血が必要!!それが無くば王は死なぬ…それを真と思うのか!?」
   
デザイヤの言葉に紫水達は驚きを隠せない。
王を殺すには王さえも殺せる力をもつ剣と王の妻であり国の妃である王妃の血だ。
王妃の血は王にとって毒にも薬にもなる。
それは王宮にて王の側を守る者ならば知っている事実なのだ。
だが、それを否定するようなデザイヤの言葉に皆が混乱の色を示した。
   
「ふん、やはり知らぬか…貴様らの絆とやらもそれほどのものよ。仲間だなんだと信頼した口振りでも真実を語らぬとは……所詮は偽りの主従だ」
「違う。それこそ真に世界を揺るがすもの故に、王は口を噤むのだ」
「世界の平和のために、か?違うな…貴様は貴様の為だ!!誰からも殺されないように、誰も信じておらぬ貴様の…」
「黙れ!!!」
   
デザイヤの言葉を遮るように、激昂するダーツが剣を振り下ろすとデザイヤはその隙をつきその剣を弾き返してダーツに一太刀を浴びせる。
その一太刀がダーツの体を斬りつけ血を流させた。
   
「ぐっ…!!」
   
「天王様!」
   
ダーツは地面に膝をつき、剣で体を支えた。
デザイヤは剣先をダーツの頬に当てて一筋の切り傷をわざとつける。
   
「…王は死ぬ。王妃を亡くした王は、な。儂もゾークも貴様も、すでに王妃を亡くしたもの。王妃の血などもはや必要ない。王同士ならば剣だけで敗者を殺せる…そうであろう?ダーツ」
   
デザイヤの言葉と共に現れたのは、ゾーク達だった。
柘榴や琥珀や瑠璃も初めて聞いたことで驚きを隠せない。
ゾーク自身もそれを知らなかったらしく、ある疑問が浮かんだ。
   
「ダーツに王妃がいた事実を我は知らぬ…どういう事だ?」
「待て…!!デザイヤ!!」
   
ダーツが止めるが、デザイヤは言葉を止めるつもりはなかった。
ゾークさえも知らないダーツの過去をデザイヤは知っているということだ。
   
「お前が生まれるずっと前に…こやつにも王妃がいた。だが、王妃はある日急死したのだ。自ら毒を飲み、命を絶った…王のせいでな」
「死んだ……?ダーツの王妃が…」
   
全員が言葉を無くし、しばしの沈黙が流れる。
ダーツは項垂れ、ぎゅっと目を閉じて苦痛の表情を浮かべた。
甦る遥か昔の記憶…王として守れなかったもの…罪の記憶はどれほどの歳月が流れても消えはしない。
その姿に、デザイヤは高笑いしてダーツの姿を哀れんだ。
   
「愚息も含め何とも愚かな王だ!!王妃なんぞを大事にするが故に貴様らは儂に敵わぬのだ!王妃など飾りに過ぎぬ!愛だの調和だのくだらん!!」
「黙れ!貴様が母を愚弄するな!!ユナのこともだ!!」
「儂も王妃の人選には失敗したと思っている。こんな男しか生めなかった役立たずめが!」
「黙れ!!!」
   
ゾークがデザイヤに斬りかかるが、先程の紅との戦いで負傷をおっているゾークが敵うわけがない。
傷口に剣の柄を押し付けられ痛みに声をあげると同時に蹴り飛ばされた。
   
「がっ…!!」
「…貴様らはまだ気付かぬのか?王妃が二人も死ぬなど…本当に有り得ると思うのか?」
「ど、ういう…意味だ…!」
   
「貴様らの王妃は本当に…不運なものだったのか?」
   
デザイヤの言葉にダーツとゾークが同時に目を見開いた。
まさか、と考えたくもない事が頭を過る。
ダーツの王妃が毒を飲んだことも、ゾークの王妃であるユナが不運な事故で命を落としたことも、全てデザイヤが関わっているとしたら…。
   
「…何故、私の王妃が毒を飲んだと知っている…!?」
   
「…ユナの死が不運なものだと何故貴様が知り得る…!?」
   
絶望の答えはデザイヤの不敵な笑みで確信へと変わった。
二人の王妃は、デザイヤの手によって悲劇を遂げたのだと。
   
   
続く