舞台中央に、囲いのようなものがある。少年1が座っているが、誰かが来る気配を感じてあわてて、囲いの後ろに隠れる。少年2が入ってくる。少年2は誰かを探しているように見える。少年1囲いの陰から少年2をみる。目があって少し見つめ合う。

少年1  ……僕に何もしませんか?

少年2  何もしないよ。

少年1  ホントに? 

少年2  ホントに。

少年1  じゃ、証拠見せて下さい。

少年2  証拠?

少年1  僕に何もしないって証拠。

少年2  証拠はないよ。

少年1  …じゃあ僕に何もしないって誓ってくれますか。

少年2  誓うよ。

少年1 じゃあ改めて こんにちは。

少年2  こんにちは。

少年1 こんにちは。

少年2  こんにちは。

少年1  こんにちは。
   
少年2  こんにちは。

少年1  何度も言わせないで下さい。

少年2  そっちが言わせてるんだろ?

少年1  (微妙な間)話題を変えましょう。僕に「なんでここにいるの?」って聞いてくれますか?

少年2  何でここにいるの?

少年1  もう一回言ってください。

少年2  何でここにいるの?

少年1  もう少し感情を込めて言って欲しいんです。

少年2  何でここにいるの?

少年1  とってもいいです。

少年2  で、答えは?

少年1  それはいえません。

少年2  俺のこと馬鹿にしてる?

少年1  してません。

少年2  そうとしか思えないんだけど。

少年1  ごめんなさい。本当のこと言うから許して下さい。僕、実は……隠れてるんです。

少年2  隠れてる?

少年1  そうです。隠れてるんです。

少年2  誰かが探してるの?

少年1  鬼です。

少年2  えっ?

少年1  鬼が探してるんです。

少年2  かくれんぼ?

少年1  冗談です。

少年2  えっ?

少年1  ちょっと冗談言ってみました。……面白くないですか?

少年2  全然。

少年1  みんなそう言います。

少年2  そりゃそうだろ。

少年1  僕が冗談言っても、誰も笑ったことがありません。

少年2  おまえ、友達いないだろ?

少年1  いません。

少年2  一人も?

少年1  ウィリアムがいます。

少年2 ウィリアム?

少年1  紹介しましょうか?

少年2  別にいいよ。

少年1  ちょうど今来てるんです。

   少年1、後ろに置いてある物の覆いを取る。中から石膏像が出てくる。

少年1  紹介します、ウィリアムです。

少年2、しばらく石膏像を眺めている。

少年1  ウィリアムは気のいい奴なんです。どんな話でも黙って最後まで聞いてくれます。ウィリアム、紹介するよ。こちらは………そうだ名前を聞いてなかった。ねえ、名前なんて言うんですか?

少年2  …………これも冗談?

少年1  冗談って?

少年2  だからさ、この石膏像が友達ってのも冗談なの?

少年1  石膏像じゃなくてウィリアムです。友達なんです。

少年2  でもさ、この「ウィリアム」は話し相手にならないだろ?

少年1  僕、毎日話してます。

少年2  マジで?

少年1  だって友達ですから。

少年2  じゃ話してみろよ。

少年1 ウィリアム。僕のことどう思う?

  少年1石膏像をじっと見つめる。 

少年1  僕って「小学校の同級生に忘れられる男」かな?それとも「一緒に牛タンゲームをやりたくない男」かな?…………そうでなかったら「ポケットティッシュを常に絶やさない男」かな?…………そっかやっぱりそんなこと自分で考えなきゃダメだよね。……わかったそうするよ。…………(少年2に)まあこんな感じです。

少年2  おまえ、空しくないの?

少年1  何で?

少年2  なんでって、ウィリアムは何も言わないだろ?

少年1  どちらかと言うと無口ですからね。でもそれがいいところなんです。

少年2  そうなんだ。

少年1  ウィリアムに話聞いてもらうとすごくすっきりするんです。試しに話しかけてみたらどうですか?

少年2  遠慮しとく。

少年1  遠慮しなくていいですよ。

少年2  いや、今あんまりすっきりしたくない気分なんだ。

少年1  そうですか。また気が向いたらいつでも話して下さい。

少年2  たぶん向かないと思うけど。

少年1 そうだ。1つ聞いていいですか?

少年2  何?

少年1  どうしてここに来たんですか?

少年2  ああ。

少年1 誰かがここに来たのは初めてです。

少年2  そうだろうな。

少年1  どうしてなんですか?

少年2  一つ教えてやるよ。

少年1  なんですか。

少年2  あまり質問し過ぎると不幸になる。

少年1 そうなんですか?

少年2  疑問に思っても聞かない方がいいことも多いんだ。

少年1  じゃあ、僕質問しません。

少年2  その方がいいよ。

少年1  で、どうして来たんですか?

少年2  だから質問するなっていってるだろ?

少年1  今、僕、質問したんですか?

少年2 どう考えても質問だろ?

少年1  すいません。

少年2  別にあやまらなくていいよ。

少年1  ねえ、よくわからないんですけど、どういうのが質問なんですか?

少年2  それも質問だよ。

少年1   えっ?

少年2  それも質問なんだよ

少年1  ……僕にはわかりません。僕には難しすぎます。

少年2  お前、おもしろいヤツだな。

少年1  どういたしまして。

少年2  いつからここにいるの?

少年1  おぼえてません。

少年2  じゃあ、いつまでここにいるの?

少年1  見つかるまでだと思います。

少年2  じゃ、見つかるまでずっとここに隠れてるんだ。

少年1  はい、隠れてます。僕、隠れてるように言われたんです。

少年2  誰から?

少年1  わかりません。でも、僕、何度も何度も繰り返し言われたんです。ここに隠れてろ。絶対出て来ちゃいけないって。

少年2  なんで?

少年1 僕が、何かしたからだと思います。

少年2  何かって?

少年1  覚えてません。ただ覚えてるのは目の前が真っ赤になったことだけです。

少年2  真っ赤ってどんな感じ。

少年1  真っ赤でした。その時思ったんです。僕、何か悪いことしたんだって。でもそれ以上思い出せません。

少年2  そうなんだ。

  少し沈黙が流れる。

少年1  ねえ。

少年2  何?

少年1  初対面で悪いんですけど、お願いがあるんです。

少年2  お願いって?

少年1  牛タンゲームやりませんか?

少年2  えっ?。

少年1  牛タンゲームやりましょう

少年2  二人で牛タンゲームはむなしいよ。

少年1  でも僕、ずっと一人だったんです。一人でさびしくて、誰かと牛タンゲームやりたいって思ってたんです。

少年2  だったら牛タンゲームよりもいいものがあるよ。

少年1  何ですか?いいものって。

  少年2、ビンを2本取り出す。

少年1  なにそれ?

少年2  これを飲むといつでもどこでも幸せになれるんだ。

少年1  幸せって?

少年2  イヤなことがあってもすぐに忘れられるんだ。

少年1  忘れると幸せなんですか?

少年2  ムカついてイライラしてても落ち着くんだ。

少年1  「ムカつく」ってよく言うけど、どういうことなんですか?

少年2  おまえムカついたことないの?

少年1  はい。前から一度ムカついてみたいと思ってたんです。

少年2  お前幸せだな。

少年1  僕幸せなんですか?

少年2  幸せだよ。

少年1  でも幸せって思ったことありません。

少年2  でも幸せだよ。

少年1  じゃあどうして隠れてなきゃいけないんですか?

少年2  ここにいたくないのか?

少年1  家に帰りたいんです。

少年2  でもここにいるほうが幸せかもしれない。

少年1  そうなのかな。

少年2  そうなんだよ。

少年1  ……………………

少年2  …………(瓶をもって)これ、飲んでみようよ。

少年1  はい。

  少年2、少年1に瓶を渡す。

少年2  じゃあ1、2の3で飲むよ。

少年1  はい。

少年2  行くよ、1、2の3。

  二人、瓶の中身を飲み干す。

少年1  幸せになってません。

少年2  そんなに急にはならないさ。

少年1  どれぐらいしたら幸せになるんですか?
  
少年2  だんだんとなるよ。

少年1  じゃあ、幸せになるまで、やりたいことがあるんですけど。

少年2  なに?

少年1  牛タンゲーム。

少年2  どうしてもやりたいの?

少年1  だって好きなんです。

少年2  わかったよ。

少年1  じゃあ僕から行きます。

少年2  いいよ。

少年1  牛

少年2  タン

少年1  サーロイン

少年2  レバー

少年1  ランプ

少年2  砂肝

少年1  負け。

少年2  えっ?

少年1  牛に砂肝はありません。

少年2  そっか。

少年1  牛の肉以外はだめなんです。

少年2  でも牛タンゲームってホントにこういうゲームだっけ?

少年1  そうです。

少年2  これって山手線ゲーム「牛の肉の種類」じゃないの?

少年1  ……似てるかもしれません。

少年2  そのものだよ
 
少年1  まあいいじゃないですか、面白ければ。

少年2  面白くないって。

少年1  ……まだ幸せになりません。

少年2  もうすぐなるよ。

少年1  でも心配です。

少年2  なにが?

少年1  幸せになった時、自分が幸せだってすぐにわかりますか?

少年2  わかるよ。

少年1  どうなったら幸せなんですか?

少年2  まず音楽が聞こえてくる。

少年1  それから?

少年2  その音楽がやがて色と香りを持ち始める。

少年1  それから?

少年2  そうするとだんだん幸せな気分になって来るんだ。

少年1  それが幸せなんですか?

少年2  そうすれば忘れることができるだろ?

少年1  忘れることが出来る。

少年2  それが幸せなんだ.

   遠くからかすかに音楽が聞こえてくる。

少年1  あっ。

少年2  どうした。

少年1  音楽が聞こえてきました。

   確かに音楽が聞こえる。その音楽はどこが苦しげな感じがする。

少年2  それが幸せになる兆候だよ。

少年1 でも、本当にこれ音楽なのかな?

少年2  音楽だよ。

少年1  誰かの叫び声のようにも聞こえます。

少年2  音楽だよ。そしてそれがやがて色や香りに変わるんだ。

  当たりは次第に薄暗くなってくる。音楽はやや大きくなったように思える。

少年1 ねえ、これが幸せなんですか?

少年2  これも幸せのひとつなんだよ。

少年1  なんだか幸せって言うよりも苦しいです。

少年2  苦しいと思うからだよ。苦しいと思ってたら幸せになれないよ。

  音楽が更に高まったように思える。次第に暗くなって行く。

少年1  苦しい。すごく苦しいです。

少年2  もう少しだ。もう少しで幸せになれるよ。

  二人の声は音楽にかき消されて行く。溶暗。

  舞台が明るくなると、少年1が座っている。

少年2  やあ。

少年1  誰ですか?

少年2  俺のこと覚えてないか?

  少年1、少年2をじっと見る。

少年1  思い出しました。

少年2  ねえ、ウィリアムは元気かい?

少年1  元気です。ロドリゲスも元気です。

少年2  ロドリゲス?

  少年1、覆いを取ると石膏像は二つに増えている。

少年2  友達が増えたんだ。

少年1  はい増えました。ロドリゲスはちょっと切れやすいけど根はいい奴なんです。

少年2  (石膏像に向かって)おはよう、ロドリゲス。

少年1  そっちはウィリアムです。忘れたんですか?

少年2  どう見ても同じ顔だろ?

少年1  じゃあ、簡単な区別のしかたを教えます。

少年2  ああ。

少年1  右利きがウィリアムで左利きがロドリゲス。

少年2  ありがとう。これでもう間違えないとおもうよ。

少年1、ウィリアムを眺める。

少年1  …あれ?

少年2  どうした?

少年1  ウィリアムが泣いてる。

少年2、もう一度ウィリアムを見る。
 
少年2  別に泣いてるようには見えないけど。

少年1  どうしたの?ウィリアム。……何で泣いてるの?

   短い間    

少年2  ロドリゲスにいじめられたんじゃないか?

少年1  そうかもしれません。

少年2  だめだぞ、ロドリゲス。………………よく言っといたから、もう大丈夫だよ。

少年1  ホントですか?

少年2  ああ、もうしないと思うよ。

少年1  でも、ロドリゲス怒ってますよ。

少年2  そういうやつなんだよ、ロドリゲスは。

少年1  おかしいです。

少年2  何が?

少年1  本当はこんなじゃなかったんです、ロドリゲス。

少年2  きっと今日は機嫌が良くないんだよ。

少年1  最近ずっとそうなんです。

少年2  そうなんだ。

少年1  ちょっと心配です。

少年2  そう気にすんなよ。

 短い沈黙。

少年1  ……今日は何しに来たんですか?

少年2  言っただろ?質問すると不幸になる。

少年1  わかった。あなたも隠れにきたんですね。

少年2  違うよ。

少年1  きっとそうです。あなたも僕と同じです。隠れるためにここに来たんです。

少年2  勝手に決めるなよ。

少年1  僕、隠れてるんです。

少年2  それは聞いたよ。

少年1  僕、暴れました。だから隠れなきゃいけなくなりました。

少年2  暴れたってどういうふうに?

少年1  誰かを傷つけてしまいました。誰かの泣く声が聞こえました。

少年2  なんで暴れたの?

少年1  そうしないと僕が壊れちゃうと思ったんです。

少年2  壊れちゃう? 

少年1  僕もともと壊れかかってるから。

少年2  そんなことないだろ。

少年1  でもみんなそう言うんです。

少年2  壊れかかってるってどういうこと?

少年1  僕、普通じゃないんです。

少年2  普通って?

少年1  毎日起きて、歯を磨いて、学校に行って、学校から帰って、歯を磨いて、寝る。

少年2  それが普通なんだ。

少年1  僕、学校は行ってません。歯は磨いてます。

  少年1、少年2に歯を見せようとする。

少年2  別に見せなくていいよ。

少年1  ちょっと見せたかったです。

少年2  でもさ、学校行ってないからって、別に壊れてるってことはないだろ。

少年1  それだけじゃありません。

少年2  それだけじゃない?

少年1  僕、金属バット持って立ってました。

少年2  ……………

少年1  僕気がついたら金属バット持って涙流してました。そして目の前に誰か(倒れていました。)………

少年2  (さえぎって)もういいよ。

  やや沈黙が流れる。

少年2  それ以上思い出さなくていいよ。

少年1 僕壊れてるんです。

少年2  お前は壊れてなんかないよ。

少年1  いいえ僕、壊れてるんです。

少年2  そんなことない。俺知ってるんだ。お前は壊れてなんかない。

少年1  ……僕のこと知ってるんですか?

少年2  ……………………。

少年1  教えて下さい。あなたは誰なんですか?

少年2  ……確かに俺は、お前のことを知っている。でもそれ以上言えないんだ。

少年1  どうして?

少年2 質問はダメだ。これ以上聞いても不幸になるだけだ。

少年1  ……………………

少年2  とにかく今は隠れているしかない。大丈夫、俺が守ってやる。
少年1  でも隠れているだけじゃ不安です。

少年2  じゃあ石を運ぼう。

少年1  石?

少年2  石を運んで積み上げるんだ。

少年1  そうすれば守れるんですか?

少年2  ああ、守れるよ。

少年1  そうすれば幸せになれるんですか?

少年2  なれるよ。きっとなれる。

少年1  やってみます。

  少年1、2石を運び始める。石といってもそれは箱で、言葉がかかれている。それは例えば「今ここにいる」「とりあえず」「なんとなく」「ゲット」など意味のあるような無いような言葉である。それらの言葉は次々と積み上げられて城壁のようになっていく。石を積み上げながら以下の会話がなされる。

少年1  僕、石を積むの初めてです。

少年2  楽しいだろ?

少年1  楽しいんですか?

少年2  楽しいだろ?好きなときに好きなだけ積めばいい。

少年1  本当にこの石で守れるんですか?

少年2  守れるよ。

少年1  絶対に?

少年2  ああ、絶対に守れるよ。

少年1  で、何を守るんでしたっけ?

少年2  えっ?

少年1  何を守るんでしたっけ?

少年2  とにかく積むんだ。

  しばらく無言のまま積みつづける。

少年1  すいません。

少年2  何?

少年1  なんだか空しくなってきました。

少年2  楽しくないのか?

少年1  楽しいけど空しいです。

少年2  それでいいんだ。

少年1  いいんですか?

少年2  楽しいんだろ?

少年1  でも空しいんです。

少年2  慣れるんだ。

少年1  えっ?

少年2  そのむなしさに慣れるんだ。そうすればむなしさを忘れることができる。

少年1  わかりました。やってみます。

  しばらく積み続ける。やがてかすかに前の音楽が聞こえてくる。

少年1  また聞こえてきました。

少年2  うん。

少年1  最近よく聞こえて来ます。

少年2  色は見える?

少年1 少し見えます。

少年2  よかったな。

少年1  よかったんですか?

少年2  幸せになってきたんだ。

少年1  これが幸せなんですか?

少年2  感じるだろ?

少年1  たぶん。

少年2  苦しくなくなってきただろ?

少年1  よくわかりません。

少年2  ここにいよう。

少年1  うん。

少年2  ずっとここにいよう。
 
  音楽が高まっていく。二人は石(箱)を積み続ける。その作業の続く中、次第に暗転していく。

  舞台が明るくなると、積み上げられた箱はかなり増えている。誰もいない。石膏像には再びカバーがかかっている。少年2が入ってくる。少年1がついたての後ろから現れる。
少年1  いらっしゃいませ

少年2  起きた?

少年1 僕寝てたんですか?

少年2  寝てたみたいだな。

少年1  どれぐらい寝てたんですか?

少年2  20時間ぐらいかな。

少年1  それって長いですよね。

少年2  普通だよ。

少年1  あの薬を飲むようになってからやたら寝てるような気がします。

少年2  必要なんだよ、眠ることが。

少年1  眠れば幸せになるんですか?

少年2  だんだんとね。

少年1  あと、色々なことを忘れるようになったような気がします。

少年2  色々なことって?

少年1  ここに来る前のこととか。

少年2  そんなことは忘れてもいいんだよ。

少年1  そうなんですか?

少年2  その方が幸せになれるんだ。

少年1  でも本当にいいんですか?そんなに何でも忘れてしまって。

少年2 いいんだよ。

少年1  でも気になるんです。たとえば今もなんか忘れてるような気がするんです。

少年2  何かって?

少年1  僕起きたんですよね。

少年2  ああ。

少年1  朝起きた時ってなんか言うんじゃありませんでしたか?

少年2  おはよう。

少年1  そうだ、「おはよう」ですよね、忘れてました。すいません、もう一回言ってもらえますか。

少年2  おはよう。

少年1  どういたしまして。

少年2  違うよ。

少年1  何が?

少年2  おはようって言われたら、自分もおはようって言うんだよ。

少年1  いつから?

少年2  ずっと前からそうなんだよ。

少年1  知りませんでした。

少年2  練習してみようか。

少年1  はい。

少年2  おはよう。

少年1  うぜえんだよ、てめえ。

少年2  違う、それじゃ喧嘩になるよ。

少年1  喧嘩は痛いです。

少年2  「おはよう」には「おはよう」って言うんだよ。

少年1  難しいですね。

少年2  覚えれば簡単だよ。

少年1  もう一回やってみます。

少年2  じゃあ行くよ。……おはよう。

少年1  ……………………なんでしたっけ?

少年2  おはよう。

少年1  ああ、そうだ。

少年2  同じ言葉を相手に言えばいいんだよ。

少年1  同じ言葉を相手に言えばいいんだよ。

少年2  だからそうじゃなくて。

少年1  だからそうじゃなくて。

少年2  違うんだよ。

少年1  違うんだよ。

少年2  だからさあ。

少年1  だからさあ。

少年2  もう疲れるなあ。

少年1  少し休んだ方がいいですよ。

少年2  …ありがとう。

少年1  どういたしまして。
 
  短い沈黙

少年2  ……石でも運ぼうか。

少年1  また運ぶんですか?

少年2  今度は考えながら運ぼう。

少年1  考えながら運ぶ?

少年2  石に字が書いてあるだろう?

少年1  はい。

少年2  それを見て積む順番を考えるんだ。

少年1  順番?

少年2  たとえばこの「バリバリ」をここへ持ってくるとどうなる?

  少年2、「バリバリ」と書かれた箱を、「超ツルツル」の上に置く。

少年1  「バリバリ超ツルツル」

少年2  どうだ?

少年1  あってる。

少年2  じゃあこっちへ置くとどうだ?

  少年1、「バリバリ」の箱を「今ここにいる」の上に置く。

少年1  「バリバリ今ここにいる」  

少年2  どうだ?

少年1  たぶんあってる。

少年2  じゃあこうするとどうだ?

  少年2、「バリバリ」の箱を置き、その上に「とりあえず」の箱を置く。

少年1  「とりあえずバリバリ」

少年2  どうだ?

少年1  間違ってる。

少年2  なんで?

少年1  「バリバリ」は力が入ってますが、「とりあえず」にははいってません。

少年2 まちがってるよな。

少年1  はい。

少年2  こういうふうに考えながら積むんだ。

少年1  わかりました。

  少年1、2再び箱を運んで積み始める。少年2は次々と箱を運ぶ。少年1は箱の文字を読んで考えながら、積んでいく。たとえば「サイコー」の上に「マジ」という箱を置き、次に「みたいな」という箱を持ってきて、それを一番上に置き、眺めた後、「みたいな」を一番下に積み直すといった具合に。そのようにして「未来」「自分」「へこんでる」、あるいは「あやしい」「メル友」「ゲットだぜ」あるいは「かなり」「イケイケ」「かも」といった不思議な文が次々と作られていく。その間に以下の会話が交わされる。

少年1  すいません。

少年2  何?

少年1  どれぐらい積めばいいんですか?

少年2  とりあえずもう少し積もう

少年1  あと何個ぐらいですか?

少年2 量だけが問題じゃない。積み方によって、強さも違ってくるんだ。強ければ強い     ほど誰も入って来ない。

少年1  だから考えながら積むんですか?

少年2  そうなんだ。

少年1  でも、誰も入って来れなくったら、友達もいなくなります。

少年2  それでいいんだ。

少年1  友達はいらないんですか?

少年2  お前にはウィリアムとロドリゲスがいる。

少年1  でも、もう少し友達が欲しいです。

少年2  それに俺もいる。それで十分だ。それ以上いてもまた傷つくだけだ。

少年1  僕、傷ついてるんですか。

少年2  だからここに来たんだろ?

少年1  そうなんですか?

少年2  もう暴れなくてすむんだ。

少年1  暴れなくてすむ。

少年2  暴れなければ、いろんなことが上手く行くよ。

少年1  僕、暴れなくてすむ。

少年2  そうすれば幸せになる。

少年1  僕、幸せになる。

少年2  そう、幸せになる。

少年1  でも大丈夫ですか?

少年2  何が?

少年1  この石壊れないんですか?

少年2  壊れないよ。

少年1  でもこの石軽いです。

少年2  ……軽い石なんだ。

少年1  軽くても壊れないんですか?

少年2  軽くて丈夫な石なんだ。

少年1  そんな石があるんですか?

少年2  あるんだよ。

少年1  でもこういう石なら痛くなくていいです。

少年2  痛くないって?

少年1  石が飛んできて頭に当たると痛いです。

少年2  ぶつけられたのか?

少年1  運が悪いんだと思います。

少年2 それはぶつけたやつが悪いんだよ。

少年1  でも、ぶつけられたのかどうかわかりません。僕の後ろから良く石が飛んでくるんです。僕、運が悪いんです。

少年2  ここなら石も飛んで来ないよ。

少年1  ホントですか?

少年2  ああ本当だ。

少年1  僕、幸せになれるんですか?

少年2  ああ、なれるよ。

少年1  僕と一緒にいてくれるんですか?

少年2  一緒にいるよ。

少年1  でも僕には良くわかりません。

少年2  何が?

少年1  あなたは誰なんですか。

少年2  前に聞かれたよな。

少年1  なんでここに来たんですか?

少年2  それも前に聞かれたよな。

少年1  僕、前にあなたに会った気がするんです。

少年2  ……………………

少年1  僕のこと覚えてませんか?

少年2  会ったとしてもそれは俺じゃないよ。

少年1  いいえあなただと思います。

少年2  いや、俺じゃない。

少年1  でも…………

少年2  俺が誰だっていい。とにかく俺とおまえはここで幸せになるそれでいいんだ。

少年1  でも幸せって何ですか。

少年2  ………おまえ自分の運を変えられると思うか?

少年1  自分の運?

少年2  この間、地下鉄が脱線して人が死んだことがあったよな?

少年1  脱線すると事故です。

少年2  ある人があの脱線した車両に乗ってたんだ。でもあの時死んだのは脱線した車両     じゃなくて、ぶつけられた方の車両に乗っていた人だった。そして、たまたまそ     の席に座っていた人が、そこに座っていたと言うだけの理由で死んだんだ。そん     なの運が悪すぎると思わないか?

少年1  僕も運が悪いです。良くぶたれたりけられたりします。

少年2  お前は狙われやすいんだよ。

少年1  でも、なんで僕が狙われるんですか?僕何も悪い事してません。

少年2  殴る奴らにとっては殴るのに理由なんて要らないんだよ。

少年1  僕、何度も何度も殴られました。

少年2  ある人間は徹底的に運が悪い。それは最初から決まってるんだよ。お前も多分そ     うなんだ。

少年1  最初から決まってる?

少年2  さっきの地下鉄の話は、実はまだ終わってないんだ。その事故に遭ったときその     人は思った。「自分は死ぬことさえ許されないんだな」って。

少年1  死ぬことさえ許されない?

少年2  もし違う席に座っていたら、すべてを終わりにすることができた。悲惨な現実から逃れることができたんだ。でも自分は死ぬことが許されなかった。だから生き続けるしかない。生き続けて殴られつづけるんだ。

少年1  殴られつづける……

少年2  お前もそうだったんだろ?

少年1  えっ?

少年2  だからお前は暴れたんだろ?

少年1  僕、暴れました。

少年2  こんなふうになってしまう自分がどうしようもなかった。

少年1  僕、どうしようもなかった。

少年2  学校にさえいけない自分がどうしようもなくて暴れた。

少年1  僕、金属バット持って立ってました。

少年2  別にそうしたかったわけじゃない。そうするしかなかった。

少年1  僕、気がついたら金属バットで母さんを殴ってました。目の前が真っ赤になって     ました。

少年2  でも、もういいんだ。忘れろよ。

少年1  僕、忘れられない。

少年2 忘れていいんだよ。俺がおまえの運命を変えてやる。俺が守ってやる。

少年1  僕を、僕を守ってくれるの?

少年2  守ってやるよ。ここに隠れていれば大丈夫だ。ここでおまえは新しい自分になるんだ。俺がお前を守ってやる。

少年1  でもここはどこなの?

少年2  そんなことはどうだっていい。

少年1  ねえ、教えてよ。ここはどこなの?

少年2  どこだっていい。なんだっていい。とにかくここでお前は幸せになる。

少年1  でも僕幸せじゃない。

少年2  これからだんだん幸せになるんだよ。

少年1  でも僕ここにいたくない。

少年2  外に出たらまた傷つく。誰かが必ずお前を傷つける。

少年1  しかたがないよ。

少年2  そんなことない。外に出ることなんかない。ここでしあわせになるんだ。   

少年1  でも、僕ここにいたくないんだよ。

少年2  なんでわからないんだ。ここで石を積むんだ。そうすれば幸せになれるんだ。

少年1  石?

少年2  そう、石を積むんだ。

少年1  でも石なんてどこにあるの?

少年2  えっ?

少年1  ねえ、どこに石なんてあるの?

少年2  何言ってるんだ。ここにあるじゃないか。

少年1  これは石なんかじゃない、ただの箱だよ。

少年2  これは石だ。

少年1  そんなことない。これ、箱だよ。

少年2  石だ。これは石だ。軽くて丈夫な石なんだ。

少年1  じゃ、この言葉は?

少年2  だから言ったじゃないか。この言葉を上手く組み合わせれば強くなる。

少年1  でもこの言葉は軽すぎるよ。

少年2  軽くても強いんだ。

少年1  軽くてうすっぺらだよ。

少年2  そんなことない。この言葉が自分を守ってくれるんだ。

少年1  でも、そうじゃなかった。本当はそうじゃなかったんだ。

少年2  何言ってるんだ。この言葉はおまえを守ってくれる。俺を信じるんだ。

少年1  僕、思い出してきた。

少年2  思い出すことなんかない。

少年1  僕思い出してきた。この言葉、僕が書いたんだ。

少年2  思い出すんじゃない。そんなこと思い出す必要はない。

少年1  何で思い出しちゃいけないんですか?

少年2  思い出すと不幸になる。

少年1  だから僕はここにいなきゃいけないんですか?僕が思い出すと不幸になるから、だから僕はここに来た。そうなんですか?

少年2  そんなことはどうだっていい。

少年1 僕、思い出してきたんです。この言葉は僕を守ってくれなかった。そして僕はよけい傷ついた。

少年2  そんなことない。

少年1  こんなうすっぺらな言葉を身にまとっていたってだめなんだ。僕、帰らなきゃいけないんだ。

少年2  どうしてわからないんだ。たとえ薄っぺらだって自分を隠すことは出来るんだ。自分の運命を変えることができるんだ。

少年1 こんなの違う。こんなの本当の言葉じゃない。嘘で固めたって、幸せになんてなれないよ。

少年2  何もわかってない。何もわかってないよ。

  少年1、急に黙り込んでどこか遠くを見るような表情。 

少年2  どうした?

少年1  音楽が聞こえます。

少年2  えっ?

少年1  音楽が聞こえてきました。  

少年2  幸せに近づいてるんだよ。

少年1  でもこれは本当の音楽じゃない。

少年2  音楽だよ。幸せに近づいてるんだよ。

少年1  音楽じゃない。誰かが叫んでるだけなんだ。だから苦しいんだ。

少年2  苦しい気がするだけだ。もうすぐ慣れる。必ず慣れるよ。

  音楽が急に高まり、突然消える。それと同時に、少年1、積んであった箱を崩して裏返し始める。箱の裏には「ざけんじゃねえ」「うぜえんだよ」「逝ってよし」「殺すぞ」などの攻撃的なことばが書かれている。

少年2  おい、どうしたんだよ。

  少年1、箱を裏返しつづける。

少年2  何してるんだよ。

少年1  …………

少年2  おい、どうしたんだよ。   

少年1  音楽が僕にこうしろと命令します。

少年2  なんだって?

少年1  音楽が僕にこうしろと命令するんです。

少年2  だめだ、そんなことしたら幸せになれない。

少年1  僕は幸せになれない。

少年2  おまえは幸せになれる。

少年1  僕は幸せになれない。このままじゃ幸せになれない。

少年2  その運命を変えるためにここに来た。だからそんなことはやめるんだ。

少年1  やめたくてもやめられないんです。

少年2  どうして。

少年1  だってこれは僕がやってることじゃないんです。

少年2  なんだって?

少年1  これは僕がやってることじゃない、言葉が暴走してるんです。

少年2  言ってることがわからないよ。

少年1  どうしてわからないんですか?石膏像に語り掛けたのはあなたでしょ?

少年2  えっ?

少年1  暴走し始めたんですよ、あなたの言葉が。

少年2  俺の言葉?

少年1  そう。ここにあるのはすべてあなたの言葉です。

  少年2、そこに並んだ言葉を見る。

少年2  これが俺の言葉?

少年1  ロドリゲスに語り掛けたあなたの言葉です。

  少年1、石膏像に掛けられていたおおいを取る。石膏像は一体しかない。

少年2  あれ、ウィリアムは?  

少年1  その名前を捨てたのはあなたでしょ?

少年2  えっ?

少年1  ウィリアムというのはあなたが最初に使っていたハンドルネーム。その名前を捨ててあなたはロドリゲスというハンドルネームを使い始めた。

少年2  ハンドルネーム?

少年1  ネットの世界でのあなたのハンドルネームです。あなたがウィリアムという名で書き込みをした時から全てが始まった。

少年2  ネットの世界?

少年1  ねえ、覚えてないんですか?

少年2  何を?

少年1  もし本当に覚えてないなら、思い出してください。

少年2  だから何を?

少年1  僕のことです。

少年2  えっ?

少年1  あなたが忘れようとしている僕のことです。

少年2  お前のこと?

少年1  言葉がうまく出てこなくて、人とうまく話のできない僕のことです。

少年2  …………………………

少年1  殴られたり蹴られたりして学校へ行けなくなった僕のことです。

少年2  …………………………

少年1  そんな自分をどうしていいかわからなくなって金属バットで母さんを殴ってしま     った僕のことです。

少年2  …………………………

少年1  思い出しましたか?

少年2  …………母さん、俺そんなつもりじゃなかったんだ。母さんを殴りたかったんじゃない。殴りたかったのは他のやつらだったんだ。

少年1  思い出してくれたんですね。

少年2  俺はあいつらを許せないと思っていた。でも何も出来なかった。俺は弱かったか     ら。

少年1  傷ついた。つらかった。でもどうすることもできなかった。

少年2  ある人間は徹底的に運が悪い。それは最初から決まってるんだ。

少年1  生き続け、殴られ続ける。それが僕の運命だった。

少年2  そんな自分を変えたかった。

少年1  それで薬を飲む事にした。

少年2  ある本を読んだら薬で自分を変える方法がのっていた。早速やってみた。最初は苦しかったけど、だんだんと自分を忘れることが出来るようになった。

少年1  そして僕のことを忘れ去ろうとした。

少年2  えっ?

少年1  僕、つらかった。忘れられることを望まれている自分。捨て去られることを望まれている自分。

少年2  でも俺は変わりたかった。

少年1  でもそのために僕は隠れなきゃいけなかった。

少年2  …………………………

少年1  あなたは、僕を忘れた。そしてネット上に別の自分を作り始めた。

少年2  ウィリアム。おれは自分に新しい名前を付けた。

少年1  そして、ウィリアムは語り始めた。

少年2  ウィリアムという名前でなら、どんどん言葉を書くことができた。いろいろな  言葉を自由に操ることができた。

少年1  でもそれは本当に自分の言葉だったんですか?

少年2  えっ?

少年1  (後ろの石を指し示して)自分の言葉だったら何でこの石はこんなに軽いんですか?

少年2  軽くたって言葉は言葉だ。それで俺は救われたんだ。

少年1  でもそれも長くは続かなかった。こんな石をいくら積み上げたって自分を守ることは出来なかった。

少年2  そんなことはない。

少年1  だったらなんであなたはウィリアムと言う名前を捨てたんですか?ネットの世界でもあなたが傷ついたからでしょ?あなたを中傷する書きこみが、掲示板に書かれるようになったからでしょ?

少年2  ウィリアム頭悪すぎ。ウィリアム逝ってよし、ウィリアム死ね。ウィリアム頭悪すぎ。ウィリアム逝ってよし、ウィリアム死ね。ウィリアム頭悪すぎ。ウィリアム逝ってよし、ウィリアム死ね。

少年1  そう、書き込みは何度も何度も繰り返された。

少年2  悔しかった。そんな書き込みをするヤツを殺してやりたかった。

少年1  あなたはウィリアムという名を捨てることにした。そしてネット上にさらにも      う一人、別の自分を作ることにした。

少年2  最強の人格、ロドリゲス。

少年1  そしてロドリゲスは見えない相手に向かって激しく攻撃した。

少年2  俺とやる気か?うぜえんだよ。てめえ殺すぞ。かかってこい。

少年1  相手は誰でもよかった。誰でもいいから自分の怒りをぶつけたかった。

少年2  俺はいつか復讐してやる。俺はいつかこの世の中に復讐してやる。今に見てろ。俺は俺の力で、世界中の奴らをあっと言わせてやる。

少年1  でも思い出して下さい、僕のことを。

少年2  えっ?

少年1  僕は怖いんです。こんな言葉を書き続けるあなたが。

少年2  …………………………………

少年1  僕は怖いんです。机の中にサバイバルナイフを隠しているあなたが。

少年2  …………………………………

少年1  だから見つけて下さい、僕のことを。 

少年2  でも怖いんだ。俺、色んな事させられた。色んな事言われた。外の世界へ戻ったら、たぶんまた傷つくことになる。

少年1  だから一緒に行きましょう。

少年2  えっ?

少年1  僕思ったんです。死ぬことができないんなら生きてやろうって。殴られたり、傷つけられたりしても、とにかく生きよう、生き続けてやろうって。そうでないと僕がかわいそうです。

少年2 ………………………

少年1  あなたが傷ついたら僕が泣きます。泣くことが何の解決にならなかったとしても、僕、あなたのために一生懸命泣きます。…………でも、ここにいたら泣くことさえ出来ないんです。

少年2  …………………………………

少年1  僕、音楽も聞こえました。色も見えました。香りもしました。でも、やっぱりそ    れは現実じゃなかった。ここにいたら本当の幸福にはなれません。

少年2  …………………………………

少年1  僕、隠れてました。僕、我慢してました。でももうかくれんぼは終わりにしたいんです。

少年2  …………………………………

少年1  お願いです。僕を見つけて下さい。

少年2  …………………………………

少年1  僕ここにいます。

少年2  …………………………………

少年1  僕を見つけてください

少年2  ………………わかった。

少年1  (!)

少年2  もうかくれんぼは終わりだ。

少年1  (嬉しそうに)はい。

  音楽が流れる。

少年2  外に行こう。

少年1  はい。

少年2  外には色々なものが待っている。

少年1  はい。

少年2  怖くないのか。

少年1  ちょっと怖いです。でも……

少年2  でも?

少年1  僕、誰かに会いたいです。

少年2  そうか。

少年1  僕、色々な人に会いたいです。

少年2  じゃあ、行こう。

少年1  はい。

  少年2、少年1石膏像に歩み寄り、静かにおおいを掛ける。そして振り向いた二人を何が待ちうけているか、誰にもわからない。音楽が高まり、ゆっくりと幕が降りていく。