今昔ぺんぺん草子

登場人物(登場順)(初演では8人で上演しました。)



与作

ナレーター

なずな



あやめ

先生

天女

乙姫

後藤崎







セールスマン

アシスタント

わらしべ長者



アナウンサー

天女仲間1

天女仲間2

浦島太郎




昔話風の音楽
「浦島太郎」、「鶴の恩返し」、「天の羽衣」などの昔話的な光景があちこちで繰り広げられている。 それを見ている女子高生がいる。
その光景が一つ二つと消えていき、鶴の恩返しの女と男が残る。ナレーターが現れる。(ナレーターは別に立てても良いが、天女がナレーターとなってもよい。)

女(鶴)  (どこか芝居がかっている)わかりました、与作さん。私はもう一度だけ機を織ります。そのかわり約束は絶対に守ってください。絶対に部屋の戸を開けてはいけません。いいですか?

男(与作) (同じく芝居がかっている)ありがとう、鶴。やっと織ってくれる気になったか、

女    これで最後です。与作さんのためにもう一度だけ頑張ります。そのかわりに絶対に部屋の戸を開けないでください。

ナレーター こうしてつるは三日三晩機を織り続けたのじゃった。

男    反物ができあがったら、庄屋さんの言うとおり町に行って売って来よう。そうしてお金が手に入れば都で鶴と一生幸せに暮らすことができる。それにしても何で部屋を見てはいけないのだろう。気になる。気にし出すとどんどん気になってくる。ちょっとだけ開けてみようか。いや、ダメだダメだ。俺はつると約束したんだ。約束は守らなければ。…しかし気になる。なんだか妄想がふくらんでしまう。ああ、がまんできない、いや…でも…だが…しかし…(葛藤にもだえる。)(突然、意外と気楽に)ちょっとだけ開けてみよう。

ナレーター 与作は部屋の戸を少しだけ開けてみました。すると驚いたことに…

突然、女子高生の母親の声。

母    ちょっとなずな!何。この点数。

母、入ってくる。男・女は無言で演技を続ける。

母    何、のんきにテレビなんて見てるの?

なずな  ねえ、なつかしくない?昔話やってるんだよ。

母    何これ…鶴の恩返し?何で昔話なんて見てるの?

なずな  久しぶりに見ると結構面白いよ。お母さんも一緒に見よ…

母、いきなりテレビを消す。男、女はストップモーション。以下の会話のほどよいところでゆっくりと退場。

なずな  何で消しちゃうの。これからいいとこなのに。

母    テレビなんて見てないで、ちゃんと話を聞きなさい。

なずな  何?話って。

母    これ、この点数。

なずな  ああ。

母    ちゃんと勉強してるの?

なずな  してるよ。

母    して、この点数?

なずな  して、この点数。

母    うそ、してこの点数はありえないでしょ。

なずな  ありえるんだよ、それが。

母    あるとしたら、かなりのバカよ。

なずな  お母さん、普通の顔して娘をじわじわ追い詰めないでよ。

母    追い詰めてないわよ。別にあなたがバカだなんて言ってないでしょ?

なずな  ちょっと言われてる気がする。

母    そうじゃないの。あなた努力がたりないの。だって前はできてたじゃない。

なずな  前は前、高校は違うの。

母    違わない。努力すればもっとできるはず。

なずな  でも、ホント勉強してるんだよ。

母    だって今だってテレビ見てたじゃない。

なずな  テレビぐらい見るよ。

母    昔話なんて見てもしょうがないでしょ?それより勉強しなさい。

なずな  はいはい。

母    「はい」は一度。

なずな  はーい。

  母立ち去る。

なずな  ちゃんと勉強してるのになあ。

ナレーター   鏡を取り出して、自分の顔を眺めるなずなであった。

なずな  あたし、ひょっとしてバカ?

ナレーター   そうかもしれない。

なずな  バカって顔のどの辺に出るのかなあ?

ナレーター   こういうところがバカなのであった。

なずな  ホントに勉強してるのになあ。

ナレーター   確かにこの試験の前日、なずなは勉強をしたのじゃった。そして次の日。

  ナレーター退場。そのまま場面は朝の教室になる。あやめが入ってくる。

あやめ  おはよう。

なずな  おはよう。

あやめ  ねえなずな、今度映画見に行かない?

なずな  映画って何の映画?

あやめ  ほら、今やってるじゃん、なんか人間以外のものが出てくる映画。で、人間が…(なずなの机をのぞき込む)あれ、なに朝から勉強してんの?

なずな  だって一時間目テストじゃん。

あやめ  え、嘘。

なずな  数学の小テスト。

あやめ  (黒板を見る)ホントだ、やば、どうしよう?お願いなずな、ちょっと一緒に見せて。

なずな  いいよ、貸してあげる。

あやめ  え、いいよ、悪いじゃん。

なずな  あたし昨日ちょっとやってきたし、確認してただけだから。

あやめ  ホント?ありがと。えー範囲多すぎ、しかも一時間目ってなにそれ。(数学の公式をぶつぶつ言う)

  先生入ってくる。以下の先生の台詞に従って生徒二人は動く。

先生   はい、じゃテストやります。…はい、終了。後ろから集めて。…はい、採点終わりました。返します。

あやめ  あーあたし馬鹿、できたつもりだったのに一問間違えてる。なずなはどうだった?

なずな  (動揺を隠しつつ)うん、まあいつも通りって感じかな。

あやめ  やっぱそうだよね、なずなみたいに計画的に前の日から勉強しないとダメだよね。

  あやめ立ち去る。なずな先生の所へ。その時鶴がこっそりと忍び寄って話を聞いている。

なずな  先生。

先生   なに?生徒。

なずな  あたし、勉強してるのに点数が取れないんです。どうすればいいですか?

先生   勉強することね。

なずな  ですから勉強はしてるんです。

先生   もっとすることね。

なずな  でも、あやめちゃんはしてないのに点数が取れるんです。何でですか?

先生   彼女は頭がいいから。

なずな  あたし馬鹿ですか?

先生なずなを観察。

先生   正直者ね。

なずな  はい?

先生   正直者は馬鹿を見る。

なずな  どういうことですか?

先生   地味に生きることね。アディオス。

先生、立ち去る。

なずな  先生、それ、どういうことですか。

なずな、寂しげに立ち去ろうとする。その途中鶴の方を見る。鶴あわてて身を隠す。なずな首をかしげながら立ち去る。乙姫、天女現れる。

天女   どうだった?

鶴    かなり地味ね。

乙姫   そりゃそうよね、でなきゃ昔話に興味なんて持たないはず。

鶴    なんかちょっと身につまされた。

乙姫   あなたもかなり地味だしね。

天女   ていうかあたしたち、なんだかんだ地味よね。昔はゴールデンタイムにあたしたちが全国放送されてたなんて夢みたい。

乙姫   ちょっとあたしも一緒に地味仲間にいれないでよ。今度竜宮城に来てよ、とってもゴージャスなんだから。

天女   でもあなただって、あの地味な浦島に振られたわけでしょ?それって地味じゃない?

乙姫   別にふられた訳じゃないし。あいつ勝手に出てったの。少なくともあんたみたいに羽衣取られて監禁されるような間抜けとは違うわ。

天女   何その言い方。むかつく。

鶴    ねえ、仲間割れはやめようよ。ちゃんとこれからのこと話そうよ。

乙姫   話せばまた、全国放送されるとでも言うの?

鶴    そうじゃない。あたしたち、地味でいいと思うの。今みたいにケーブルテレビで地味に放送されてるのだって悪くないと思わない?

天女   でも、誰が見てくれてるの?夕方の中途半端な時間帯の放送だし。

鶴    だから、貴重な視聴者であるあの子を大切にしようと思ってるんじゃない。

乙姫   (皮肉っぽく)地味なファンを大切にね。

鶴    それで何が悪いの?地味って、美しいと思わない。

乙姫   ねえ、あんまり地味地味言われると本当にじみーな気分になってくるんだけど。

天女   あたしも。鶴さんは地味が似合うからいいけど、あたしはなんかもうちょっと前向きなものが欲しいかも。

乙姫   賛成。

鶴    じゃあ、どう?あの子を励ましてあげようよ、あの子を前向きな気持ちにしてあげようよ、あたしたちの力で。名付けて「がんばろう 地道プロジェクト」、略して「ジミプロ」

乙姫   結局地味じゃない、そのプロジェクト。

鶴    でもさ、全国放送されてたころだって、けっして華々しくはなかったよ、あたしたち。

天女   ま、視聴率もそこそこだったし。

乙姫   日々の積み重ねって感じではあったかもね。

鶴    そこなのよ。日常のルーティーンの何気ない積み重ね。そこに少しだけハートウォーミングなやさしさというスパイスを加える。それがあたしたちの仕事だったと思わない。

乙姫   無理に横文字使おうとするあなたの地味さ加減、泣けてくるわ。

天女   でも、鶴さんのいいたいことはわかる。この汚い地上の地味な暮らしも悪くないよね。あたし、天に帰る時、正直言ってちょっと寂しかった。

鶴    でしょ?だからさ、今すぐもう一度全国放送とか無理なわけだし、ケーブルテレビの目立たない時間帯でもいいから、誰かを励ましてあげようよ。それって大切なことじゃない?

天女   わかった。やってみる。

鶴    乙姫さんは?

乙姫   地味なの好きじゃないんだけどなあ。

鶴    一緒にやってくれる?

乙姫   わかった。

鶴    よし、決まった。じゃあ、とりあえずあの子をもう少し観察してみようよ。

天女   あ、来た来た。

鶴    隠れて。

  鶴、天女、乙姫地味に隠れる。

乙姫   何かあたしたち隠れ方まで地味じゃない?

鶴    しっ!

  私服を着たなずな現れる。いかにも地味な服装。誰かを待っている。あやめ現れる。なずなを見て走ってくる。ややわざとらしく息を切らせている。

あやめ  ごめん、待った?

なずな  遅いよ、もう一〇時二〇分だよ。

あやめ  うそ、二〇分も過ぎてた?

なずな  うん。

あやめ  ごめんね、無理に誘っちゃって。

なずな  ううん、この映画実は見たかったんだ。はい、チケット代。

あやめ  え、いいよ。うちが誘ったんだし。

なずな  でもホントにあたし見たかったから。

あやめ  いいの?

なずな  うん。受け取って。

あやめ  ありがとう。

なずな  じゃ、行こうか。

  なずな、あやめ歩き出そうとする。その時、後藤崎現れる。あやめ、気がつく。あやめ、後藤崎に走り寄る。なずな置き去り。

あやめ  あれ、今日は用事ができたんじゃなかったの?

後藤崎  大丈夫になったんだ。で、十時半の約束だったし、ここに来ればひょっとしたら会えるかなって。

あやめ  ホントに?うれしい。

後藤崎、なずなの方を見る。

なずな  (笑顔で)こんにちは。

後藤崎  初めまして、後藤崎って言います。

なずな  知ってます。初めてじゃないし。

後藤崎  え?どっかで会ってます?

なずな  毎日。教室で。

あやめ  なずな、同じクラスだよ。

後藤崎  え?嘘?

なずな  すいません、目立たなくて。

後藤崎  いやあ、いいと思うよ。目立たないって簡単なことじゃないし。

なずな  ありがとう。

あやめ  ねえ、じゃあ三人で映画行かない?

後藤崎  いいよ、悪いよ。だって約束したんでしょ?…この子と。

なずな  なずなです。

後藤崎  そう、なずなちゃんと。

なずな  あたし、いいです。せっかくのデートの邪魔しちゃ悪いし、買い物もあるから、二人で楽しんできてください。

あやめ  えーそれはできないよ。

なずな  いいよいいよ、二人で行ってきて。ホントに。

あやめ  そんな、それじゃうちってひどい女になっちゃう。

なずな  ホントにいいって。

あやめ  そう?じゃ、ごめんね。

なずな  気にしないで。

後藤崎  ごめんね。気をつかってもらっちゃって。

なずな  いいえ、楽しんできてください。

あやめ  (後藤崎に)じゃ、行く?

後藤崎  うん。

あやめ  じゃね、今日はありがとう。

後藤崎  ありがとう、……(名前が出ない)

なずな  なずなです。

後藤崎  ありがとう、なずなちゃん。

なずな  楽しんできてね、じゃまた明日。(すでにあやめと後藤崎は聞いていない)

あやめ  (後藤崎にさっきなずなからもらったお金を渡す)はい、あたしの分のチケット代。

後藤崎  え、いいよ、俺バイト代入ったし。

  あやめ、後藤崎立ち去る。なずな、それを見送る。

なずな  (独り言)いいよね、なずな。これでいいんだよね。がんばれ、なずな。明日は明るい日と書くんだから。(去りながら)でも、やっぱ見たかったな、「ゾウガメと呼ばれたポチ」。映画史上最も後味の悪い結末ってどんな結末なんだろう?

なずな立ち去る。鶴、天女、乙姫出てくる。

乙姫   うわー地味。

天女   何、あの最後の独り言。

乙姫   「がんばれ、なずな。明日は明るい日と書くんだから。」

天女   すごいね、あの状況であの独り言。
  
乙姫   予想以上に地味だね。

鶴    だから励ましてあげようよ。

天女   でも、どうやって?

乙姫   あの地味さ加減じゃ、手の施しようがないよ。

鶴    そうじゃないでしょ?

乙姫   何が?

鶴    地味でいいの。

天女   まあね。

鶴    あたしたち地味の国から地味を広めに来たんだから。

乙姫   (驚き)ええっ?

天女   (とまどう)そうなの?

鶴    地味で正直が一番なの。そうやって生きることのすばらしさをあの子に教えてあげようよ。

乙姫   すばらしいかなあ。

天女   まあ、悪いことじゃないと思うけど。

鶴    昔話のコンセプトってそうじゃない。欲張っちゃいけない、正直に地道に生きるのが一番。

天女   まあね。

乙姫   確かに欲張りばあさんはひどい目に遭うけど。

鶴    だから教えてあげるの。今のままでいいって。    

天女   そうね。ま、あの子にはそれがいいかもね。

乙姫   ま、やってみたら?あたしは悪いけどパスするわ。エステの予約はいってるし。

天女   (鶴に)乙姫さん、贅沢がたたってメタボなの。

乙姫   何か言った?

天女   (笑顔で)何も。行ってらっしゃい。

乙姫去る。

天女   で、どうするの?

鶴    欲張ってはいけないというテーマで行けばやはり「舌切り雀」でしょう。

天女   なるほど。

鶴    という訳で、(呼びかける)キューティ雀!

雀登場。いかにも愛くるしい雀である。

雀    チュンチュン。

天女   いやあ、いつ見てもわざとらしいくらい可愛い。

雀    (謙遜)チュチュン。チュチュチュチュ。

天女   まるで天使のよう。

雀    (照れている)チュチューン。

鶴    あなたを呼んだのは他でもないの。

雀    (緊張)チュン。

鶴    ある女の子を励ましてほしいの。

雀    (疑問)チュチュチュンチュン?

鶴    そんなに難しいことではないの。いつもの通り欲張り婆さんをこらしめてやればいいだけなの。    
雀    (自信がない)チュチュチューン。

鶴    大丈夫。あなたならできる。

雀    (自信はないが前向き)チュチュン。チュンチュンチューンチュン。

鶴    やってくれる?

雀    で、いくらくれるの?ギャラ次第でやってもいいよ。

天女   なんだ、しゃべれるの?

雀    当たり前じゃん。でも、しゃべらない方が可愛いでしょ?

天女   なんかだまされた感じ。

雀    で、いくらくれるの?ギャランティ。

鶴    ていうかさ、あなた欲張っちゃいけないって言うメッセージを伝える訳だし、ギャラとかってどうなの?。

雀    じゃどうやって暮らせっていうの?こう不況が続くと、いつまでも純情な雀じゃいられないのよねえ。

鶴    わかった、わかった。じゃあ、そうねえ、米粒五〇粒でどう?

雀    え?そんなに?やるやる。

天女   じゃ、六〇粒あげるから、真剣にやって。

雀    やったやったあ。もう可愛さ二〇%アップで頑張っちゃう。

  雀飛び跳ねて大喜び。

鶴    よし、話は決まった。

天女   じゃ早速やりましょう。

昔話風の音楽。ナレーター登場(ナレーターを別に立てない場合は鶴がナレーターとなる。)なずなが座るとナレーションが始まる。

ナレーター むかーしむかし、あるところにどこと言って特徴のないおじいさんと、それはそれは特徴だらけのおばあさんがいました。ある日のことおばあさんは糊を作って雀に言いました。

婆    ハーイ、キューティ雀、この糊を隣の猫が食べないように見張っていておくれ。

  雀、目を潤ませて婆さんを見る。

雀    チュゥン

婆    ダメダメ。そんなふうに潤んだ瞳で見つめても糊はあげないよ。そのかわり、あたしも潤んだ瞳で見つめ返しちゃう。

婆さん潤んだ瞳で雀を見る。雀目をそらす。

婆    なぜ目をそらす。

雀、無意味に鼻歌を歌う。

婆    ま、とにかく見張っていてね。あたしは川で洗濯とか人に言えないこととかしてくるから。

  ばあさん、立ち去る。

ナレーター お婆さんは多分川に行きました。そして自分の欲望を抑えることを知らない若者だけが残されました。

雀    (客席に)どう思います?空腹の雀の前に糊置いて出かけるのって。あまりに残酷な仕打ちだと思いません?本能を抑えるのは容易なことじゃないのよね。



雀    一口だけ食べちゃおうかな。

雀、糊を一口食べる。至福の時が流れる。

雀    うまい。いやあ、ホントうまい。

雀どんどんエスカレートして食べ続ける。

ナレーター こうしてキューティ雀は糊をすべて食べてしまいました。

雀    ああ、うまかった。あの婆さんのつくる糊は最高だね。人間としては問題あるけど。

  婆さん入ってくる。

婆    ただいま。人間として問題のある婆さんだよ。

雀    (わざとらしい)あ、お婆さん大変なんです。隣の家の猫が。糊を、糊を…お婆さん、怖かったよお。(泣く)

婆    そうかいそうかい。こわかったろうねえ、かわいそうにねえ。いいんだよ、糊ぐらい。ところでお前の口についているのは何だい?

  雀、口をぬぐう。

婆    だまされたな、口には何もついてないよ。

雀    しまった。初歩的な手でだまされた。

婆    さあお仕置きだよ。

ナレーター こうしてキューティ雀は舌を切られ、山へ逃げていきました。

雀、お婆さん去る。

ナレーター その話を聞いたお爺さんが山へ雀を探しに行きます。

お爺さん、「キューティ雀を求めて」という題の歌を適当に歌う。
キューティ雀現れる。

雀    お爺さん!会いたかった。

雀、お爺さんと一緒に激しく踊る。お爺さん息が苦しくなり、座り込む。

雀    お爺さん、大丈夫?

お爺さんかなり苦しそう。

雀  お爺さん、こんなさなかになんだけど、大きいつづらと小さいつづらとどっちがいい?

お爺さん息が苦しくて答えられない。

雀    まあ、この体力だと大きいつづらは無理か。じゃ、小さいつづらということで。

  お爺さん担架で運ばれていく。

雀    お爺さんさようなら。お婆さんにも一応よろしく言っておいてね。
     
ナレーター 家に帰ってつづらを開けてみると、中には大判小判金銀パール、レアもののフィギュアなど豪華な品々が入っていました。それを見たお婆さんは、キューティ雀を探しに行きました。

お婆さん「キューティ雀を探して2」という題の歌を適当に歌う。
  雀現れる。

婆    キューティ雀。

  雀逃げようとするがお婆さんに捕まる。

婆    キューティ雀、この間はごめんね。あの時のわたしは今から思うと私じゃなかったんだよ。

雀    じゃ、何だったんですか?

  婆ことばに詰まる。

婆    ま、とにかく何かだったということで。

雀    なんか納得いかないなあ。

婆    まあ、そんなことはいいから、早くつづらをおくれよ。

雀    じゃあ、しょうがない。あげますよ。じゃあ、大きいつづらと小さいつづら、どっちがいいですか?

婆    両方。

雀    両方はダメです。

婆    何で?

雀    そんなに欲張っちゃいけないんです。

婆    でも、両方欲しいんだもん。

雀    お婆さん、どちらかにしてください。

婆    いやだ、両方がいい。

  そこに母現れる。

母    あら、また昔話なんて見てるの?何これ?「舌切り雀」?さ、チャンネル変えるわよ。

なずな  ちょっと待ってよ、今いいとこなんだから。

母    ダメよ、お母さん、テレフォンショッピングが見たいの。

  母チャンネルを変える。以下の会話のうちにキューティ雀はいじけて立ち去る。婆さんは残ってテレフォンショッピングを一緒に見る。
  華やかな音楽とともにテレフォンショッピングのセールストーク始まる。

セールスマン プルトニウム山田と

アシスタント アルゴンキャッシーの

セールスマン・アシスタント テレフォンショッピング。

セールスマン さあ、今日お届けするのは、つづらです。

アシスタント わあ、これ便利なんですよね。

セールスマン そして今回は前回ご好評いただいたノーマルサイズのつづらに、さらにビッグサイズのつづら、そしてスーパーサイズのつづら、この二点をつけちゃいます。 

アシスタント  うわあ、三点セットですか?これでもう、大きいつづらか小さいつづらかなんて迷わないですみますね。

セールスマン そして今回お買い上げいただいた方にはさらに特別プレゼント、欲張り婆さんのキーホルダー。

アシスタント かわいいー、中途半端な大きさで何につけていいかわからないけど、とにかくうれしいですね。

セールスマン はい、というわけでつづら三点セットに欲張り婆さんのキーホルダーをつけて、お値段の方は据え置きの、九八〇〇円。

アシスタント えー九八〇〇円?逆に前の値段はそれで良かったのか聞きたくなりますね。

セールスマン ノーマルサイズのつづらに、ビッグサイズ、スーパーサイズをつけた欲張り三点セット。お電話お待ちしておりまーす。

  セールスマン、アシスタント退場。

母    早速電話しなきゃ

婆    あたしも

母、ばあさん退場。
あやめ現れる。次の会話の途中に鶴、乙姫、天女が現れ、隠れて見ている。

あやめ  おはよう、昨日はごめんね。

なずな  ううん、気にしないで。あれから買い物して、結構楽しかったし。

あやめ  はい、お土産。

なずな  なんで、いいよ。気を遣わないで。

あやめ  いいのいいの。なずなのために買ってきたんだから受け取って。

なずな  ありがとう。開けていい?

あやめ  うん、結構可愛いと思うよ。

なずな開ける。欲張り婆さんのキーホルダーが出てくる。

あやめ 欲張り婆さんのキーホルダー。ちょっと珍しいでしょ?

なずな  かわいいー。

あやめ  可愛いでしょ。カバンにでも、携帯にでもどこでもつけられる感じで?

なずな  うん、そうだね。

あやめ  よかったら使って。

なずな  ありがとう。

あやめ  ねえ、今度焼き肉食べ放題行かない?

なずな  焼肉食べ放題?

あやめ  肉肉肉肉肉って感じで、心ゆくまで食べたいの。

なずな  いいけど。

あやめ  じゃ、行こう。三人で。

なずな  三人って?

あやめ  あたしと彼となずな。

なずな  え、何で?二人で行けばいいじゃん。

あやめ  だって食べ放題は3名以上でないとダメなんだもん、それにさ…

なずな  それに?

あやめ  何か二人だけでいると、最近煮詰まっちゃうっていうか、なんか時々息苦しくなっちゃう時があって。

なずな  それであたし?

あやめ  うん。何かなずなってさ、そういう感じあるじゃん。なずながいると周りがうまく行くっていうか。ハンバーグで言えばつなぎっていうか。肉だけだとつながらないんだよ。だから、あたしと彼も、なずながいるとうまく行きそうな気がするの。

なずな  今、あたしほめられてるの?

あやめ  うん、ほめてるほめてる。

なずな  そっか。

あやめ  今あたしにとって必要なのは、彼と焼肉とそれからなずな。欲張りかも知れないけど、この三つをそろえたいの。あたし心からそんなシチュエーションを求めてるの。ね、あたしの夢をかなえて。行こう、焼き肉食べ放題。

なずな  いいよ。

あやめ  やったあ、ありがとね。じゃ、日にち決まったら連絡する。

なずな  わかった。

あやめ  ねえ、なずなは何かしたいこととかないの?

なずな  したいこと?

あやめ  欲しいものがあったら、どんどん手に入れないととそのまま年とっちゃうよ。

なずな  そっか。

あやめ あたしなんか欲しいものばっかり。

なずな  欲しいものか。

あやめ  ま、頑張ってね。焼き肉、日にち決まったら連絡する。

あやめ立ち去る。

なずな  あたしの欲しいもの?あたしの欲しいものって何?

  先生が現れる。

なずな  先生。

先生   何?生徒。

なずな  やっぱり欲って出した方がいいんですか?

先生   あなたに欲は似合わない。

なずな  え?

先生   あなたに欲は似合わないわ。

なずな  そうなんですか?

先生   でも、食欲だけは大切にね。

なずな  食欲?

先生   あの頃の私にとって食欲がすべてだった。

なずな  あの頃?

先生   アディオス。

先生立ち去る。

なずな  食欲が全て?焼肉食べ放題?あたしはつなぎ?食欲とあたし?あたしは焼肉?あたしって何?

なずな立ち去る。
鶴、乙姫、天女隠れていたところから出てくる。
  
乙姫   夢がない。

天女   あたしはつなぎ。食欲とあたし。あたしは焼肉。

鶴    ま、いいんじゃないの?

乙姫   つなぎでも。

鶴    うん。

天女   そうかなあ。

乙姫   もうちょっと夢が欲しいよね。

天女 うん欲しい欲しい。

乙姫   なんか夢を与える昔話ってないかな。

天女   夢を与える話か。

乙姫   (思いついて)わらしべ長者とかどう?

天女   あ、いいかも。あれ、夢あるよね。

乙姫   どう?鶴さん。地味もいいけど、やっぱ昔話には夢も必要じゃない?

鶴    まあね。

乙姫   よし、決定。わらしべ長者で行こう。

昔話風の音楽。ナレーター登場。(ナレーターを別に立てない場合は乙姫が乙姫がナレーターになる。)わらしべ長者登場。それを見るなずな。

ナレーター 昔々あるところに貧乏な若者がおったそうじゃ。その若者は、観音様にお願いをした。すると観音様はお告げで、最初に手にした物を持って行くように言ったそうじゃ。

わらしべ長者 あーあ、大学は出たけど就職もできず、ニートな日々。観音様は一番最初に手にしたものを持って行けっていうけど、こんなわら本当に役に立つのかな。待てよ、大学の授業でならったっけ。物は付加価値を付けないと売れないんだ。この藁に付加価値を付けてみよう。

ナレーター こうして若者は、この藁に付加価値を付けようとミヤマクワガタを結びつけることにしました。しかし、このミヤマクワガタは外国人が売りさばいていた輸入品で、ホンモノのミヤマクワガタではありませんでした。でも見た目にはわかりません。若者もそれを知らずに、有機無農薬のミカン3個と交換しました。

わらしべ長者 よし、この無農薬ミカンをネットオークションに出してみよう。

ナレーター このミカンも実は外国産で無農薬どころか、基準値を遙かに超えた農薬を含んでいました。そうとも知らない若者は、それを偽物のブランド品と交換しました。こうして若者はネットオークションを中心に次第に事業を拡大し、ベンチャー企業を立ち上げ一財産を築きました。

母親駆け込んでくる。

母    お兄ちゃんの会社が大変なの。

母、チャンネルを変える。アナウンサー登場(アナウンサーを別に立てない場合は、ナレーターがそのままアナウンサーになる。)

アナウンサー 臨時ニュースです。インターネットの申し子のサクセスストーリーが突如崩壊しました。ベンチャー企業「ハルマゲドン」の社長わらしべ氏ついに逮捕です。直接の容疑は東南アジアの自社工場で作った偽のベンツをホンモノと偽って販売した疑いです。わらしべ氏は「何も知らなかった」といっていますが、トップとしての責任は逃れられないでしょう。「ハルマゲドン」の社員に聞いてみました。

兄登場

なずな  あ、お兄ちゃん。

アナウンサー 今回の事件についてのコメントをお願いします。

兄    ハルマゲドンに本当のハルマゲドンが来たという感じです。

アナウンサー 何ともつまらないコメントです。この会社の社員には全く危機感が感じられません。このような体質が不祥事を産んだのでしょうか。現場からお伝えしました。

  アナウンサー・兄退場

なずな  ねえ、お兄ちゃんどうなるの?

母    わからない。とりあえずお兄ちゃんが帰ってくるまでに、家族で寄せ書きしましょう。

なずな  寄せ書き?

母    人生の節目にもらって一番心にしみるのは寄せ書きなの。だから家族みんなでこっそり書いて、夕食の時、流しそうめんやりながらさりげなく渡すの。これ絶対しみるわよ。

なずな  お母さん、何か根本的に間違ってるよ。

母    いいのいいの、お母さんの言うとおりにしていれば万事うまく行くの。さ、早速書きましょ。

母立ち去る。
あやめが現れる。

あやめ  ねえ、なずな。あたしなずなのこと信じてるよ。

なずな  何よ、いきなり。

あやめ  あたし、動揺してるの。

なずな  動揺?

あやめ  なずなにだけいうけど、あたしのパパ「ハルマゲドン」の部長なの。

なずな  あ、あたしのお兄ちゃんも「ハルマゲドン」の社員だよ。

あやめ  平社員でしょ?

なずな  うん。

あやめ  うちのパパは部長なの。

なずな  すごいね。

あやめ  でね、昨日警察の人がうちに来て、パパのパソコンとか、タイトルのないビデオテープとか、知らない人とゴルフしてる写真とか全部持ってっちゃったの。

なずな  で、お父さんは?

あやめ  三日前から帰ってこない。

なずな  そうなんだ。

あやめ  最近、西の方を向いてブツブツ独り言言ってたから、何か変だなとは思ってたんだよね。

なずな  大変だね。

あやめ  …そうだ。焼き肉食べ放題、もうちょっと先でいい?

なずな  いいよ。

あやめ  こんな時、彼に会いたくないんだ。それに焼き肉やけ食いしちゃいそうだし。

なずな  焼き肉やけ食い、焼け肉焼き食い、焼け肉…

あやめ  意味なくリピートしないで。

なずな  ごめん。

あやめ  あーあ、でもなんかなずなに話したらちょっとすっきりした。

なずな  つなぎだからかな?

あやめ  何?つなぎって?

なずな  いや、何でもない。

あやめ  ありがとね。聞いてくれて。

なずな  ううん。

あやめ  あ、そうだ。お礼にこれあげるよ。欲張り婆さんのキーホルダー。…可愛いでしょ?

なずな  …かわいい。いいの?

あやめ  うん、あげるよ、色々世話になってるし。

なずな  ありがとう。

あやめ  じゃ、また今度愚痴聞いてね。

なずな  うん。

あやめ立ち去る。
なずな、欲張り婆さんのキーホルダーを見つめる。

なずな  今度はどこにつけようかな。

なずな退場。乙姫、天女、鶴現れる。

乙姫   見事な「つなぎ」ぶりね。

鶴    こういう時、地味って意外と強いでしょ?   

天女   確かにあの子って、なんか微妙に前向きなのかも。

乙姫   打たれ強いというか、打たれたのをわかってないというか。

鶴    だから言ってるじゃない、地味がいいの。

天女   うん、長い目で見ていきたい感じ。

乙姫   ま、時間かけて励まして行くか。

鶴    そうできればね。

天女   そうできれば?

乙姫   何か引っかかる言い方ね。

鶴    ……

乙姫   ねえ、どうかしたの?

鶴    番組が打ちきりになるらしいの。

天女   え?

鶴    視聴率が全然上がってないんだって。

乙姫   そっか。

鶴    さっき連絡があった。

天女   いつ打ち切りなの?

鶴    次が最終回。

天女   えっ?

乙姫   それはいくらなんでも急すぎない?

鶴    でも、番組ってそうみたい。スポンサーが付かないと成立しないし。

乙姫   今のスポンサーは?

鶴    知ってた?今のスポンサーってあのハルマゲドンの子会社だったって。

天女   …そんな

鶴    低視聴率の番組には手堅いスポンサーなんて付かないみたい。

乙姫   そりゃそうだよね。

沈黙

乙姫   ま、しょうがないか。やめ時かもしれないな。頑張っても全国放送に戻れる訳じゃないし。

天女   でも…ちょっと寂しい。

乙姫   考えてみれば長持ちした方なんじゃないの?昔話なんてホントはとっくの昔になくなってたんじゃないの?テレビで放送されたから、今まで何とか生き延びてきたけどさ。

天女   そうなのかな。

乙姫   たとえ一時でも全国で見てもらえて、有名になって、幸せだったんじゃない?

天女   …そっか。

乙姫   これでよかったんだよ。少なくとも悪くはなかったよ。

鶴    そうなのかな?

天女   えっ?

鶴    あたしたち、有名になるために頑張ってきたの?自分たちがいろんな人に見られたいから、今までやってきたの?

乙姫   ちょっと違うかも知れないけど、どっちにしろ同じなんじゃない?どうせ、打ち切りなんだし。

鶴    でも、続けようと思えば続けられるんじゃないのかな。

乙姫   どうやって?

鶴    わからない。でも少なくとも最終回がある。

天女   そりゃそうだけど。

鶴    とりあえず最終回がんばろうよ。

乙姫   あたしはもういいや

天女   あたしも。最終回は鶴さんが頑張ってよ。

乙姫   なんかもうテンション上がらないし。

鶴    ねえ、どうして?じゃ、なんで今までやってきたの?

乙姫   なにムキになってるの?もう終わりなんだよ。

鶴    だから、最後まで頑張ろうよ。

天女   なんのために。

鶴    見てくれる人のために。

乙姫   あの子のこと?

鶴    あの子もそうだし、ひょっとしたら他にもいるかも知れない。

乙姫   いないよ。いれば打ち切りにならないよ。

鶴    いなければ探せばいいんだよ。見てくれる人を。

天女   ダメ、あたしそんなに前向きになれない。

鶴    別に前向きでなくてもいいんじゃない?どうせ、あたしたち地味なんだし、地味にやればいいんだよ。

天女   地味か。

乙姫   そして地味にいなくなる。

鶴    いいんじゃない?それも。それがあたしたちの仕事なんだし。



鶴    ねえ、あと一回頑張ろう。

乙姫   頑張るのはいいけどさ。あと一回じゃ出られるのは一人だけでしょ?

鶴    みんなで出ちゃおうよ。

天女   え?どうやって?

鶴    あたしたち、なんとなく似たところあるじゃない。

乙姫   どこが?

鶴    男運の悪いところとか。

天女   まあ、そうかなあ。

鶴    その辺をテーマにすれば何とかなるんじゃない。きっと一本にまとめられるよ。

乙姫   なんか無計画というか。

天女   楽天的というか。

乙姫   なんか鶴さん一皮むけた感じだよね。

鶴    そう?

天女   うん、脱皮したって言うか、羽が生え替わったって言うか。

鶴    たぶんあの子こと見てたからだと思うの。

天女   どういうこと?

鶴    あの子ってなんか妙な底力を持ってる気がしない?

天女   確かに、そうかも。

鶴    地味だけどめげないっていうか。

乙姫   なんだかんだあやめちゃんもあの子に頼ってる気がするし。

天女   つなぎってそういうことなのかな?

乙姫   そうかも。

鶴    だから、とりあえずあの子のためにがんばろうよ。

天女   うん。

乙姫   しょうがない、やってみるか。

鶴    よし、決まった。

天女   あ、あの子が来た。

  鶴、乙姫、天女隠れる。なずな現れる。続けて先生が現れる。

なずな  先生。

先生   なに?生徒。

なずな  人が良いのと、馬鹿なのって違いますか?

先生   …難しい質問ね。

なずな  ちなみにあたしってどっちですか?

先生   両方ね。

なずな  両方?

先生   そう、つまり良性の馬鹿ってこと。

なずな  良性の馬鹿?

先生   悪性の馬鹿は伝染するの。だからどこにでもいる。でも、良性の馬鹿は貴重なの。

なずな  あたし貴重なんですか。

先生   貴重よ。

なずな  ひょっとしてあたし、今ほめられてますか?

先生   調子に乗るんじゃないの。

なずな  すいません。

先生   あなたはまだ、ただの馬鹿。でも可能性はあるわ。

なずな  どうすればいいんですか?

先生   人を愛することね。

なずな  人を愛すること?

先生   愛することは馬鹿にしかできないから。

なずな  愛することは馬鹿にしかできない。

先生   アディオス。

  先生去る。

なずな  愛すること?愛することって何?誰を愛すればいいの?

  なずなぶつぶつ言いながら退場。
鶴、乙姫、天女現れる。

鶴    決まったわ。

天女   何が?

鶴    テーマは愛。

乙姫   愛?

鶴    あたしたちの最終回。テーマは愛。

昔話風の音楽流れる。
鶴を残して天女と乙姫は退場。鶴は機を織っている。与作現れる。
  
与作   ああ、この胸騒ぎはなんだろう。やはり「開けるな」というメッセージなのだろうか。いや、でも俺は開ける。俺は真実が知りたい。  

与作部屋を開けてしまう。鶴中途半端な姿勢で止まる。

鶴    あなた。

与作、部屋を閉める。

与作   俺は何も見なかった。俺は裸の鶴なんて見なかった。

鶴    あなた。

与作   俺は見てないよ。何も見てないよ。

鶴    あなた、部屋を開けて。

与作   ………

鶴    あなた、もういいの。部屋を開けて。

与作、仕方なしに部屋を開ける。鶴、開き直って与作にピース。ストップモーション。
天女とその仲間たちが現れる。その仲間たちはジャージ姿。

天女仲間2 ごめん、怒ってる?

天女   怒ってないよ。

天女仲間1 でも怒られても仕方ない。怒って当然だよね。

天女   だから怒ってないよ。

天女仲間2 あたしたち最低だよね、でもそんなに怒らないで。

天女   (怒って)だから怒ってないって。

天女仲間2 やっぱ怒ってる。

天女仲間1 いいよ怒るだけ怒って。あたしたちはあなたを置き去りにした。友達と思ってもらえなくても仕方ない。でもだからこうして危険も顧みず「天女A救出作戦」を展開してるの。それはわかってほしい。

天女仲間2 結構恥ずかしいのよ、この格好。

天女仲間1 身をやつすためとは言え、天女なのにジャージ。

天女仲間2 もうあたしたちのプライドズタズタよ。

天女   でも、結構似合ってる。

天女仲間2 あ、そう?まあ私、何着ても似合うから。

天女   むしろ普段よりいいと思う。

天女仲間1 それは言い過ぎ。

天女   ごめん。

天女仲間2 さ、行こう。あなたのジャージも用意してあるの。

天女仲間1 さ、早く着替えて。

天女   ごめん、あたし行きたくない。

  天女、天女仲間ストップモーション
  浦島と乙姫現れる。

乙姫   ねえ、行ってしまうの?

浦島   ああ。

乙姫   ごめん、あたしが悪いのはわかってる。でも許して。あたし、どうしていいかわからなかったの。

浦島   なんか大げさだなあ、おとちゃん。ちょっと陸に行って、母親を介護施設に預けて、またすぐに戻ってくるから。

乙姫   いいえ、あなたは戻ってこない。

浦島   戻ってくるよ。

乙姫   いいえ、あなたは戻って来ない。あたし知ってるの。あなた亀のところに行くんでしょ?

浦島   違う。俺と亀とは別になんでもない。

乙姫   もう、隠さなくていい。あたし見ちゃったの。亀が甲羅を干してるとき、あなたがその甲羅をやさしくなでているところを。

  鶴と与作のストップモーションとける。

鶴    そう、あたし鶴なの。びっくりした?

与作   ……いつから?

鶴    いつからって、最初から鶴だったの。

与作箱から何かのフィギュアを取り出し、何か語りはじめる。

鶴    ねえ、どうして?どうしてあなたはいつも大事なことはモモカちゃんに話すの?

与作フィギュアに語り続ける。

鶴    ねえ、今はモモカちゃんと話さないで。お願い、私と話して。

与作フィギュアに語り続ける。

鶴    ごめんなさい。あたし行くわ。

天女   あたし、行きたくない。

天女仲間2 なんで?ジャージが嫌だから?

天女   違う、ジャージは着てみたいよ。

天女仲間2 じゃあ、なんで?

天女   あたし、この地上も悪くないと思う。

天女仲間1 違う。

天女   何が?

天女仲間1 この汚い地上がいいわけない。それはストックホルム症候群よ。

天女   ストックホルム症候群って何か聞きたいけど、ここはグッと我慢するわ。

天女仲間2 ストックホルム症候群とは監禁された被害者が…

天女   だからストックホルム症候群はどうでもいい。私もう少しここにいたいの。

乙姫   あたし、あなたにいてほしいの。

浦島   ……

乙姫   あなた、みずぼらしいし、お金はないし、センスはないし、駄洒落はいうし、見かけは本当につまらない男よ。でも、あなた心まで貧しいの。

浦島   俺帰るわ。

乙姫   最後まで聞いて。心まで貧しいっていうのはこういうこと。

浦島   そういうことか。

乙姫   まだ何も言ってない。あなたはなんの飾り気もない。まっすぐで、曲がることを知らず、素朴でシンプルで、まあはっきり言って馬鹿って言うか…

浦島   やっぱ俺行くよ。

乙姫   待って、行かないで。

天女   あたし行きたくない。

鶴    あたし行くわ。

与作   待ってくれ。行かないでくれ。

鶴    あなた。

与作   俺、もう何もいらない。反物もいらないし、貧しくてもいい。寝る前に絵本を読んでくれなくてもいいし、お医者さんごっこも我慢する。だから行かないでくれ。

鶴    あたしだって行きたくない。いいえ、離れたくない気持ちはあたしの方が強いと思う。でも、もうダメなの。

与作   なんで?

鶴    あなたわかってるはず。あなたはもう私とは暮らせない。あたしが鶴だと知ってしまったから。

天女仲間1 ねえ、あなたわかってるでしょ?天女は人間と暮らせない。

天女   そんなことない。あたし、彼とうまくやってると思う。

天女仲間1 うまくやってる?羽衣取られて監禁されて、それでうまくやってるって言えるの?

天女   そうじゃない、彼不器用なだけ。気持ちをうまく表現できないだけ。だからすぐに怒ったり、ちゃぶ台ひっくりかえしたり、あたしを殴ったり。

天女仲間1 それって完全なドメスティックバイオレンスじゃない。

天女仲間2 略してDV。

天女   いや、それほどでも。

天女仲間2 変なところで謙遜しないで。

天女仲間1 わからないの?このままじゃあなたも彼もどんどんダメになっていくのよ。

天女   あなたたちにはわからないのよ。

天女仲間1 別にわからなくてもいい。あたしたちはあなたを連れて行くわ。

天女   あたし行きたくない。

天女仲間2 なんで?

天女   あたし今帰るくらいなら、とっくの昔に帰ってる。

天女仲間2 どういうこと?

天女   あたし、本当は羽衣ずっと前に見つけてたの。でも見つからない振りをしてた。このままここにいたかったから。

乙姫   あなたわかる?あなたがなぜここに来たのか?

浦島   それは、俺が亀を助けて、それで…

乙姫   そう、でもあなた知らないでしょ?亀をいじめさせたのは私なの。

浦島   えっ?

乙姫   すべてやらせだったの。亀を送ったのも私。子どもたちに亀をいじめさせたのも私。

浦島   なんのために。

乙姫   あなたに来てもらうためには理由が必要だった。恩返しだと言えば、あなたは疑わない。そうやって自然な形であなたに来て欲しかった。

鶴    あなた知ってる?なんであたしが罠に引っかかったか。

与作   えっ?

鶴    あなたのことを見ていたの。あたし罠なんて見てなかった。何も見てなかった。あなたのことを見ていたから。

与作   俺のこと?

鶴    でも、あなたは私のことなんて全然見てなかった。あたしはもう何年も前からあなたのことを見ていたのに。

与作   鶴。

鶴    あなたにとって私はただの鶴。他の鶴と同じただの鶴。だから人間に変身して、人間の振りをして。フェアじゃないのはわかってた。でも、あなたに見てもらうためにはこれしかなかったの。

乙姫   あたしそうするしかなかった。

天女   あたしそうするしかなかったの。

天女仲間1 ねえどういうこと?あなた自分が何言ってるかわかってる?

天女   わかってるよ。

天女仲間2 私わからない。

天女   あたしだって、辛かったよ。あなたたちは助けに来てくれた。危険を冒して、プライド捨てて、ジャージ着て。でも私は助けて欲しくなんかなかった。

天女仲間2 ねえ、あたしたち来ない方が良かった?ジャージ着ない方が良かった?あたし嬉しかったよ、ジャージが似合うって言われて。でも着ない方が良かったの?

天女   違う。本当にジャージは似合ってるよ。

天女仲間2 そんなこと言われても今更嬉しくないよ。

乙姫   初めてあなたを見たのは、あなたがカツオの一本釣りをしてるときだった。一匹も釣れないのに、あなたは一日中真剣に海を見つめてた。あたし教えてあげたかった。カツオは回遊魚、冬に釣ろうとしても釣れるはずがないって。

浦島   そうだったんだ。それで冬は釣れなかったんだ。

乙姫   馬鹿な人。一ヶ月釣れなければ普通気がつきそうなものなのに、本当に馬鹿な人。そう思ったとき、あたしの中に何かが走ったの。

浦島   まるで王子様に出会った人魚姫のように。

乙姫   普通なら自分を王子様にたとえるその無神経さに腹が立つのに、どうして?あなたなら許せてしまう。でもなんで?初めてだった。六百年生きてこんなこと初めてだった。あたしはその気持ちをどうしていいかわからなくて、竜宮城のゴージャスなもてなしであなたをつなぎとめようとしていた。

浦島   楽しかった。特にタイやヒラメの舞い踊りは最高だった。

乙姫   だらしなく鼻の下のばしてるあなたを見る度に私は思った。結局なんでこんな男の何がいいんだろう。でも、あたしは自分の気持ちを封印することはできなかった。

鶴    あなたの家に来て幸せな日々が続いた。でも、私怖かった。だっていつか終わりになることがわかってたから。

与作   この日々が続けばいい。俺はそう思った。

鶴    でも、それはお金が入ったから。あなたが求めていたのは私じゃなかった。

与作   それは違う。幸せな生活にはお金が必要だと思ったんだ。

鶴    違う。だってあなた変わったもの。

与作   変わった?

鶴    でも悪いのはあなたじゃない。あなたを変えてしまったのも結局私。

与作   俺がどう変わったの?

鶴    あたし、最初にご飯作った時のあなたの笑顔が忘れられない。その時あたし思った。もうこれでいいって。でも結局私欲張りだった。やっぱりそれで終わりにしたくなかった。結論を少しでも先延ばしにしたくて、あなたのために自分の羽で反物を織った。

与作   鶴、俺なんだか悲しくなってきた。ごめん、俺って情けない男だよな。

鶴    そんなことない、あたしがいけないの。あたしはあなたにつくすことしかできなかった。だから、あなたはあたしがもっとつくせるように変わっていくしかなかった。

天女   ねえ、あたしのことはもう忘れて。あたし帰らない。

天女仲間1 そんなことできるわけないでしょ?

天女   どうして?掟だから?命令されたから?あなたたちのメンツが立たないから?

天女仲間1 そうじゃない、そんなひどいこと言わないで。

天女仲間2 あたしたち本気なんだよ。本気と書いて「マジ」と読むぐらい本気なんだよ。

天女仲間1 あたしたちだって苦しかった。もっと早くこうやって助けに来たかった。でもどうすることもできなかった。

天女仲間2 修学旅行だってあなたがいなくて寂しかった。あたしあなたと一緒に枕投げたかった。好きな人の名前を告白し合いたかった。罰ゲームで男子の部屋に行きたかった。

天女仲間1 でもできなかった。やりたかったのにできなかった。

天女仲間2 だから今からでも一緒に枕投げたいの。

天女仲間1 あなたにとっては今更なのかも知れない。でも、あたしたちの気持ちもわかって。お願い、わかってよ。

短い沈黙。

天女    ……ごめん。あたしひどいこと言ったね。

天女仲間1 ううん、もともとあたしたちが悪いんだから。

天女   …ありがとう。助けに来てくれて。

天女仲間1 うん。

天女   わかった。あたし帰る。あなたたちと一緒に天に帰る。

天女仲間1 ありがとう。

天女仲間2 …じゃ、行こっか?

天女   ごめん、でもちょっとだけ待ってくれる。あたし、あの人に手紙を書きたいの。

天女仲間2 うん。

天女仲間1 じゃ、外で待ってる。

天女仲間去る。天女、手紙を書き始める。

乙姫   ああ、あたしらしくない。どうせ行ってしまう男に未練がましくすがりついて。六百歳にもなって、これじゃ十五、六の小娘みたいじゃない。さ、早く行って。

浦島   でもそれでいいんじゃない?

乙姫   えっ?

浦島   俺、ゴージャスでプライドの高い乙姫さんよりも、十五、六歳の小娘みたいな乙姫さんの方がいいと思う。

乙姫   ………

浦島   ねえ、乙姫さん。

乙姫   なに?   

浦島   もっと素直になればいいのに。

乙姫   生意気言わないで。まだ三〇にもならないくせに。

浦島   ごめんなさい。

乙姫   早く行きなさい。亀が首を長くして待ってるわよ。

浦島   うん。

浦島行こうとする。

乙姫   そうだ。あなたに渡すものがあるの。

乙姫玉手箱を取り出し、浦島に渡す。

浦島   何?これ。

乙姫   この箱にはあなたがここで過ごした時間が入っているの。

浦島   ここで過ごした時間?

乙姫   これを持って行って。でも絶対に開けちゃだめ。

浦島   なんで?

乙姫   開けたら思い出が現実になってしまうから。あなたが生きなければならない現実は他にある。だからこの箱を開けてはいけないの。

浦島   俺が生きなければならない現実?

乙姫   それはあなたが陸に戻ったときにわかると思う。

浦島、箱を見つめる。

浦島   …ありがとう。乙ちゃん。

乙姫   さ、早く行って。

浦島   それじゃ

浦島去る。

鶴    ごめんなさい。だから、あなたをダメにしたのは私なの。

与作   そんなことない。俺、本当に馬鹿だった。

鶴    …そう、確かにあなたは馬鹿だった。

与作   えっ?

鶴    でも、あたしは馬鹿なあなたがそばにいて、幸せだった。

与作   鶴。

鶴    今までありがとう。

与作   鶴。俺お前が・・・

鶴    いわないで。

与作   え?

鶴    そこから先は言わないで。

与作   ……

鶴    だって、ずるいよ。別れるときになってそんなこというの。

与作   ……

鶴    さようなら。

  鶴、与作から離れる。与作それを見送りやがて立ち去る。なずな現れる。

天女   この手紙をあなたが見ることはないでしょう。なぜなら、私はこの手紙をあなたの目に触れないところに隠していくからです。

乙姫   言えなかった言葉は、そのままにしておいた方がいい。

鶴    それが、あたしらしいから。

なずな  それが、あたしらしいから?

乙姫   もっと器用だったなら。

天女   もっとうまく言えたなら。

乙姫   もっとうまく生きることができたなら。

天女   あたしは幸せだったのでしょうか。

鶴    でも、それはあたしらしくない。

なずな  あたしはあたし、誰でもないあたし。

乙姫   たとえ六百年生きても、あたしはあたし。

天女   同じ失敗を地道に繰り返し。

乙姫   そばにいる普通の誰かと一緒に。

鶴    地道に、地味に生きていく。

なずな  地道に地味に生きていく。

天女   でも時々

乙姫   思いがけない誰かのことばに。

鶴    驚かされたりすることもある。

与作現れる。

与作   待ってくれ、鶴。俺、お前が好きだ。お前が鶴でもいい。俺、お前が好きだ。

乙姫   あたしあなたが好き。

鶴    地道で地味なあなたが好き。

天女   たとえつなぎでも、あなたが好き。

乙姫   馬鹿で平凡で、でも誰かを支えている、そんなあなたが好き。

与作   鶴、お前が好きだ。

何かを感じながらたたずむなずな。溶暗。
  明るくなると、あやめが現れる。

あやめ  おはよう。

なずな  おはよう。

あやめ  ねえねえ、お父さん帰ってきたの。

なずな  ホント?

あやめ  なんか変わり果てた姿になってたけど、でも帰ってきてホッとした。

なずな  よかったね。

あやめ  ホントよかったよ。ありがとね、あの時色々話聞いてくれて。

なずな  気にしないで、あたし、つなぎだから。

あやめ  つなぎ?

なずな  あたし、ハンバーグで言えばつなぎ。肉だけじゃつながらないから、あたしが肉と肉をつなげるの。

あやめ  ごめん、何言ってるかわからない。

なずな  わからないよね、あたしもよくわからない。

あやめ  自分でわからないこと言わないでよ。

なずな  ごめん。あたし、馬鹿だから。

あやめ  なずなのこと馬鹿って言っていいのかどうかよくわからないけど、他に言いようがない気がする。

なずな  別にいいよ。遠慮なく言って、馬鹿って。

あやめ  でも思うんだ、うち。

なずな  なに?

あやめ  なずなはずっとこのまま馬鹿でいて欲しいな。

なずな  うん、ずっと馬鹿でいる。

あやめ  それもどうかと思うけど。

なずな  どっちなのよ。

あやめ  あ、そうだ。これあげる。欲張りばあさんのキーホルダー。

なずな  …かわいい。

あやめ  かわいいでしょ?結構レアなんだよ、これ。

なずな  ホントに?

あやめ  うん、よかったら使って。

なずな  ありがと。

あやめ  じゃあね。

あやめ立ち去る。なずな勉強を始める。先生が入ってくる。

なずな  あ、先生おはようございます。

先生   おはよう、生徒。あらえらいわね、朝から勉強?

なずな  今日のテストはがんばらないと。こないだお母さんに怒られちゃって。

先生   今日のテスト?

なずな  今日テストですよね?

先生   テストは来週の月曜日

なずな  え?

先生   あそこに書いてあるじゃない。

なずな  (黒板を見る)あ、ホントだ。あたし、月曜ってとこしか見てませんでした。

先生   相変わらず馬鹿ね。

なずな  あーあ、せっかく勉強したのに。

先生   じゃ、あなただけ今日やってあげようか?

なずな  ホントですか?

先生   やるわけないじゃない。

なずな  そうですよね。

先生   …でもあなた人を愛することがわかったみたいね。

なずな  えっ?

先生   一歩良性の馬鹿に近づいたわね。

なずな  ホントですか?

先生   良性の馬鹿はいつの間にか内側からにじみ出てくるの。

なずな  内側からにじみ出てくる?

なずな自分の体をしげしげとながめる。

なずな  どこからにじみ出てるんですか?

先生   アディオス。  

  先生立ち去る。こっそりと乙姫、鶴、天女が顔を出している。

なずな  にじみ出てるんだ、あたし。…でもどこから?…にじみ出てる…にじみ出てる。

乙姫   地味に出てる。

なずな  地味に出てる?地味ににじみ出てる?そっかきっと地味ににじみ出てるんだ。

なずな退場。それを応援する仕草をしながら退場する三人。
照明変わる。

なずな  ただいま。

母登場。

母    お帰り。ニュースニュース、お兄ちゃん転職決まったの。

なずな  ホントに?

母    何度聞いても名前を覚えられない地味な会社なんだけど、製造年月日を偽装したり、売れ残りを再利用したりしない地道で手堅い会社なの。

なずな  よかったね。

母    あたし、この会社ならいいかなって思って、寄せ書きに電話番号書いておいたの。そしたらお兄ちゃん、早速電話したみたいでさ。

なずな  さすがお母さんだね。

母    お兄ちゃん早速会社のキャラクターグッズもらってきたの。あなたにも一つあげるわね、イメージキャラクターの正直婆さんのキーホルダー。

なずな  …かわいい。

母    そういえば、あなたにもう一ついいニュースがあるわ。特別番組で「昔ばなし」やるんだって。一二〇分スペシャルで全国ネットの生放送。

なずな  生放送ってどういうこと?

母    細かいことは気にしないで素直に喜びなさい。好きなんでしょ?昔話。

なずな  うん、大好きだよ。で、いつやるの?

母    それがね、テレフォンショッピングと重なってるのよねえ。

なずな  えー、お母さんも一緒に昔話見ようよ。

母    うーん、どうしようかなあ。

なずな  見ようよ、一緒に。

母    わかった。一緒に見てあげるわ、昔話。

話を続ける二人。そんな中、昔話のキャラクターが現れる。昔話の光景が繰り広げられる中次第に暗くなる。