ゲームというのは、一般に物語に参加し、その主人公としての体験ができるメディアだと思われていました。
 けれどAIRという作品は、主人公ではなく狂言回し、或いは(機械仕掛けの)神として物語に参加できる可能性、また群像の中の様々な人物として参加、体験できる可能性というものを示しました。
 ネットワークゲーム等を考えてみれば当たり前の事ですが、用意された物語の中でそれをやるというのはコロンブスの卵的な発想で、とても魅力的な提案でした。
 国崎往人。彼はプレイヤーの分身であり、Airというゲームの主人公ではありますが、同時に、AIRという物語のおいては、それを完成させる重要な、だけど一つの部品でしかありませんでした。
 それは、幾多のテレビゲームをプレイし、ボタンを押すという行為を繰り返し幾多の物語を完成させてきた、ゲームのプレイヤーという存在の意味を問い掛けてきました。

 「AIR」においては、物語を進行させるプレイヤーの操作キャラ(往人)がそこで語られる物語を直接的に終わらせるわけではありません。
 けれども、「DREAM」や「AIR」における主人公の行動は、プレイヤーの操作はその物語を終わらせる要因となっています。
 そしてこの物語においては、選択肢の無い、即ちプレイヤーや主人公の関与しない「SUMMER」の登場人物達の行動もまた物語の終焉への要因として語られています。
 即ち、往人、或いはプレイヤーの行動は自分達の関与しない「SUMMER」と等価であると。
 自分が物語を成立させる多くの事象の中の一つであることを実感させるものとして「ゲーム」を利用した表現。
 それが私の見たAIRという物の姿の一つです。
(9/20追記)
 と、大騒ぎしてみたが、AIRのゲームの使い方はフロレアールと同様だそうで目新しいものでもないらしい。
 それで今木さんが元長さんがAIRをどう思うか気になるとか書いてたのかしらんとか一瞬思うが、多分違うだろうな(その発言見つけられなかったので、幻か他の方の発言かもしれない)。
(9/23追記)


●9月16日 AIRについて その2

 この作品で語られる「AIR」という物語の前にも、きっとたくさんの往人達がいたのです。
 世界中のいたるところに、この作品で語られる往人と同じ立場の者が。
 彼らの名前は往人ではなく、髪の色も灰色ではありませんでした――金色だったり、茶色だったり、美しい黒だったりしました。いや、男や人形使いですらなく、ある時は少女、またあるときは老人だったりしました。
 けれど、彼らは一人残らず彼の仲間でした。間違いなく彼の同族でした。
 様々な想いの果てに生まれ、白紙の行き先(未来)に続く一生という切符(時間)を手にし、力(例えば、法術)と目的(例えば、救うべき空の少女)を受け継ぎ、託された目的を適えられる可能性(例えば――観鈴との邂逅)を前にして、どのように生きることも許された者達でした。
 長い長い歴史。
 いったい何人の往人、何百人の往人がいたのでしょう?
 そして何人の往人が目の前の観鈴を救えたのでしょう?

 そして「AIR」TRUEシナリオの中で語られる往人は、観鈴を救わずにはいられませんでした。


■AIRという群像(群像:一定の主題のもとに緊密な構成をもって人物群を表した作品)


 彼らの名前は往人ではなく、髪の色も灰色ではなかった――金色だったり、茶色だったり、美しい黒だったりしました。いや、男や人形使いですらなく、ある時は少女、またあるときは老人だったりしました。
 けれど、彼らは一人残らず彼の仲間でした。間違いなく彼の同族でした。

 それ故、AIRという作品の中の彼らは皆、往人と呼ばれ、往人として存在していました。
 観鈴を見捨てる者も、観鈴の元に帰って来る者も、観鈴でなく佳乃を救う者も、親しくなった美凪と別れ、観鈴を探し続ける者も…皆が皆、往人でした。

 様々な想いの果てに生まれ、一生という時間と可能性を手にし、力(例えば、法術)と目的(例えば、救うべき空の少女)を受け継ぎ、託された目的を適えられる可能性(例えば――観鈴との邂逅)を前にして、どのように生きることも許された者達でした。

 それは歴史群像として語る事もできたでしょう。
 輪廻転生ものとして語る事も出来たでしょう。
 それぞれのシナリオを独立させ、オムニバスとして語る事も出来たでしょう。
 けれど、AIRはそのようには語られませんでした。

 AIRという作品においてそれは、全く同じ条件からスタートする往人の行動をプレイヤーが選び、その結果として結末に辿り着く、アドベンチャーゲームという形で表現されていました。

 プレイヤーは自らの選択によって数人の往人を生み出し、また、その往人の人生を体験し、知る事となりました。
 プレイヤーは群像の中の登場人物達を作り出し、同時に群像の中に自分(プレイヤー)の選んだ生き方をした往人として存在していました。

(書きかけ)


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