…かーさんもいっしょに行こうよ その方がおとなり喜ぶよ
画家兼主夫の父と会社勤めの母、その子供の蒼一郎・紅一郎・燈一郎の三つ子の高校生(!)はすちゃらかな生活を送っていた。
ある日お隣に女三人の母子家庭が引っ越してくる。「『やっぱり離婚家庭の子だ』なんて言われたくないでしょ」が口癖の母の下、
高校生の姉は天真爛漫な小学生の妹につんけんどん辛く当たる。引っ越した当日に行方不明になった妹を探しに走り回る姉。はたして妹はお隣で蒼一郎
の彼女になっていた…
きんぎんすなごの後書きで作者が言及していた、北極星の男・夏目蒼一郎が主人公の短編シリーズをまとめたモノである。
わかつきめぐみの作品には悪意が無い。
それは悪意を覆い隠しているのではなく、悪意に発展する芽に別のベクトルの存在を気づかせてくれる(「教える」のではない)天然の存在があるからだ。
読者はそこに最近見ないけれど、でも確かに何処かで経験したシチュエーションを垣間見るだろう。
日常にある些細な、普段は気にも止めないけれど意識すると気づく「きらめき」を寄せ集めたのがわかつきめぐみ作品であるからだ。
わかつきめぐみ作品は存在するかもしれない“一言で言える希望や理想”を見せるのではなく、気づけばそこにある日常という人の繋がりにある中の良さを思い起こさせるのだ(まぁ、これだって理想や希望だともいえるのだけれど)。
ちょっといらいらしている人に推奨。
読み終わった後で周りを見渡してみよう。夏目家のような人たちはいないかも知れないけれど(いる人は幸せだね)、どこかに似たようなシチュエーションはきっと転がっている。
客観評価 A 主観評価 A
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