【Q】平成21年度の税制改正における相続税制の改正は、どうですか。


【A】相続税制においては、事業承継税制の根本改革として非上場株式等に係る相続税、および贈与税の納税猶予制度が創設されました。また、農地に係る相続税の納税猶予制度の見直しも行われました。
 相続税の抜本的改正として事業承継税制と並んで検討が進められていた「遺産取得課税方式」への転換は、平成21年度の税制改正では見送られることになりました。したがって、相続税については、現行の法定相続分を勘案して税額を計算する方法である、いわゆる「法定相続分課税方式」が継続されることになります。

【Q】今回の事業承継税制の改革について、その経緯と全体像について説明して下さい。

【A】事業承継税制とは、中小企業の事業承継の円滑化を配慮した取引相場のない株式の相続税財産評価基準の改善改革問題です。これは、私が昭和55年10月、通産省(現・経済産業省)・中小企業庁の「中小企業承継税制問題研究会」の座長として、事業承継税制を提唱し、政府税制調査会特別委員となり、大蔵省(現・財務省)・国税庁の頑強な抵抗を排除し、3年がかりで昭和58年度の税制改正で遂に実現させ構築した税制です。
 この事業承継税制は、その後、幾多の変遷がありましたが、昨平成20年度の税制改正で抜本的見直しをすることとし、「中小企業の経営の承継の円滑化に関する法律」(平成20年5月9日成立、平成20年10月1日施行)〔以下、「経営承継円滑化法」という〕の制定を踏まえ、平成21年度の税制改正において、新たな制度を創設することにしたものです。
 取引相場のない株式等に係る相続税の軽減措置については、これまでの10%の減額措置から、80%の納税猶予への新たな事業承継税制が導入されました。
 事業の後継者である相続人(経営承継相続人)が、被相続人(先代経営者)から、相続等により、経営承継円滑化法における経済産業大臣の認定を受けた非上場会社(認定中小企業者)の株式等(相続後において発行済議決権株式の3分の2に達するまで)を取得した場合は、その80%に対応する相続税の納税を猶予する制度です(詳細は、本紙第177号、平成20年4月1日号〜第179号、平成20年6月1日号を参照)。
 この制度は、平成20年10月1日に遡って適用されます。


【Q】本年度改正の目玉といわれる「贈与税の納税猶予制度」の導入の狙いと、その仕組みは、何ですか。

【A】これは、昨20年度の税制改正では、とりあげなかったことです。もともと事業承継ということですから昨年は、相続税の納税猶予として、あくまで先代経営者が死亡して相続が発生したときに相続税額を計算して、その80%の納税を猶予する、ということになったのです。
 ところが、現実に円滑な事業承継ということを考えますと、むしろ先代社長(創業経営者、父親)が亡くなってからですと、相続の関係で、相続人同士の話し合いが不調になる恐れもあります。本当の意味において〃円滑に事業承継〃の進め方を考えると、先代社長が健在なうちに後継者を確定しておいて、そこに株式等を贈与しておくことが最も望ましいことになるでしょう。
 そこで、今回、相続の前の段階で贈与をする場合でも、相続税の納税猶予の条件と同じ条件を満たすと、贈与税の納税猶予をも認めることにしたのです。
 しかも、贈与税の納税猶予は、贈与税の全額を納税猶予するという画期的な措置の導入をしたのです。生前贈与の段階では、全く税金の負担がなく、相続の段階で、改めて計算するわけです。



漁火新聞 2009年5月号