ギャルゲーと言うもの 【第3回:これって…ギャルゲー?】
     ようやくギャルゲーが一気に花開くところに来たので、文体を多少真面目にする。さて、未だにギャルゲーのタイトルが並ぶわけでもなく、脇道に逸れっぱなしで話が進んでいるのだが。

     そうせざるを得ないのは、「ギャルゲー」の起源がはっきりしていない事に大きく影響を受けている。はっきりしているのは、スーパーCD−ROM発売以降のPCエンジンで、後にギャルゲーと称されることになるゲームが多数発売されるようになった、と言う事と、前回の最後に触れたようにこの91年前後に『ギャルゲー』と言う言葉が発生しているようだ、と言うこと。

     まさかこう言うテキストを書くことになるとは思っていなかったので、ずいぶん前に廃棄してしまったのだが、徳間書店が発行していたゲーム専門誌「PC−EngineFAN」において、この『ギャルゲー』についての特集を組んだことがあった。ココで何か記せるほど詳しくは覚えていないのだが、『ギャルゲー』と言う表現や定義に対しての編集者の戸惑いを感じさせる内容であったことは記憶している。とりあえず初出がいつであるにせよ、ギャルゲーなる言葉が使われ始めたのはこの時期である、と考えて良いだろう。

     で、この頃からゲーム機の主役がプレイステーションに移る1995年までの、「所謂ギャルゲー」と分類できそうなタイトルがどの程度発売されたかをざっと纏めてみる事にした。単に書き並べるのも芸が無いので、「家庭用オリジナルゲームとその続編/移植」「アニメなど原作企画付き」「業務用タイトルの移植とその続編」「パソコン用タイトルの移植とその続編」で分けてみた。注意して欲しいことは、実写系のゲームはギャルゲーと見なされないようなので入れていない事と、パソコンからの移植については移植版の発売年で並べてある、と言う事。それから、この一覧を作るのに複数のサイトに資料を求めたが、その作業中に置き場所が微妙で悩まされたタイトルがいくつかあったり、後々の話につながる可能性を考え、意図的に加えてあるタイトルがあるので、決して完全なものではない。あくまで目安程度に。データの追加・訂正など指摘あればご連絡いただけると幸いである。

     当初はギャルゲーと言う言葉を生むことになったPCエンジンと、その次の世代の覇者となったプレイステーションだけ押さえておけば済むだろうと思ったのだが、他のハードついてもピックアップしてみた。それらの中にもその後に影響を与えたと思われるものやPCエンジン、プレイステーション等と比較することで何か見えてくるかもしれないと思ったからである。なお、任天堂のゲーム機については完全、或いはそれに近い適当なデータベースが見つからなかったこと、またNEO−GEOやX−BOXもリストが無い、タイトルが少ないと言った理由で対象外とした。ゲームのジャンル表記については、現在の解釈でなるべく妥当な表現と思われるものを選んだ。内容の詳細については書き切れない(面倒とも言う)ので各々調べて頂きたい。

     パソコンからの移植作など、内容について情報が無いため一部に不確かなものもあるが、こうやって並べてみると、プレイステーション/セガサターン登場以前まではプレイヤーの分身たる主人公と女性キャラクターとの関係がゲームの展開に影響を与える(または関係性そのものを主題にしている)所謂「恋愛系」と言うゲームはタイトル数の上では少数派であることに気付く(タイトルの後ろに◆をつけた。勿論「恋愛系」と言う表現は最近になってのもの)。そもそも恋愛と言うテーマを盛り込んだ最初の家庭用オリジナルゲームがときめきメモリアルなのだから、当然と言えば当然である。

     と言うことは、この頃言われていた「ギャルゲー」とは、本当に「女性キャラクターが前面に出されたゲーム」と言うだけの、多くのゲームに対して使えた言葉だったんじゃないだろうか。実際、ゲームの内容を見てもアクション・対戦格闘・RPGなど幅広いし、その設定や物語は恋愛とは必ずしも関係ない。

     それを裏付ける資料になりうる1枚のポスターがある。PCエンジンDuoの宣伝用ポスターで、その左下にこんな記述がある。

     このポスター自体には制作年の記載が無いが、並んでいるゲームの発売時期から1992年と思われる。言葉の定義や基準はともかく、使われているコピーからも既にこの時点でNECがPCエンジンを所謂ギャルゲーが豊富なゲーム機である、と言う自覚を持っていた可能性を感じさせる。
     このポスターの注目するところはその節操の無さ幅の広さで、上の表で出てこなかった天外魔境のツナデや天外魔境2の絹、パロディウスだ!の敵キャラであるはずのちびびんたリカやスナッチャーのジェミー・シード、果ては宇宙戦艦ヤマトの森雪まで確認できる。流石にこれらのゲームをギャルゲーとすることには疑問を感じるが、それでも(特に任天堂製ハード以外の)ゲーム機の所有者がほぼ男性に限定されていたこの当時においては、ビデオデッキやPCゲーム、インターネット等の普及の影の功労者たるアダルトコンテンツ程ではないにしろ、ゲームに登場するヒロインは男性ユーザーにアピールする力を十分持った「武器」であったと言う側面はあったと言えるかもしれない。その後この武器は所有者が変わり、やがて少しずつ形を変えて行くことになる。

     このポスター作成から2年後、ときめきメモリアルが発売される。このゲームについては、これだけで十分コンテンツのテーマ・素材として数多のサイトで取り上げられているし、ココであまりスペースを費やすつもりは無いが、それでも「ギャルゲー」をテーマにしたからには避けて通れないタイトルだと思うので、必要なことは述べておくことにする。
     ときめきメモリアルは家庭用初の恋愛シミュレーションという事になっているが、そのアイディアは決してゼロから生まれたゲームではなさそうだ。ゲームデザインを手がけた立石流牙氏がPC用の18禁恋愛ゲーム「同級生」を意識していたと言うのはもはや誰も知らない話になったが、プレイヤーの選択の結果登場する女性キャラの誰かと恋愛を成就させるというゲーム上の目的設定から見ても、やはり影響を受けたと言って良いだろう。だから、プリンセスメーカー卒業といった育成シミュレーションの派生系としての自己育成と言うゲーム上の要素と、同級生がゲームで表現できることを示した女性キャラとの恋愛と言うテーマ。これを融合させたのがときめきメモリアルと言うゲームだと私は考えているのだが、この解釈は強引過ぎるだろうか?

     ときめきメモリアルをゲーム史においてどのようなポジションに置くかはさておき、このゲームはとにかく大ヒットした。そして「勝てば官軍」の言葉があるように、ときめきメモリアルはギャルゲーの代名詞となった。

     データ収集と作表で疲れたので、以下次回。

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これを読んでくださった方へ。
実際にところ、このサイトを見にくる方がギャルゲーに対して
どのような考えを持っているのかが知りたいので、

1)あなたの「ギャルゲー」に対するイメージ
  ギャルゲーファンのイメージではありません!混同されぬように)
2)あなたのお勧めのギャルゲーのタイトルと、その理由

いずれか(または両方)を教えてください。
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[2002/07/18 第1稿]
[2002/07/29 加筆・公開]