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宇治川一清(うじがわ・かずきよ)
 昭和36年東京都生まれ。東京理科大学中退。本田技研工業、ソフトウエア会社を経て昭和63年独立。平成4年中小企業診断士登録(平成10年に返納)、有限会社インタープレフ・マネジメント設立。
 企業やビジネス人におけるあらゆる問題に対応する総合型コンサルタント。マーケティング技術から気分のコントロールまで、幅広い視点を持って活動中。

メール uji@bakugyo.co.jp


 


 経営セミナー講師 ウジガワのイチオシ商品は、
    「ハイブリッド思考」 です。
 

 みなさん、こんにちは。ウジガワです。
 今回は、基本方針についての話をさせていただきます。

 2002年から「サクセスルートコンサル」という短期通信コンサルをしています。
 「どんな事業の方向に向かうと売れやすいか」という眼力に基づいてアドバイスをするという意図で「サクセスルート」という名前を付け、セミナーの少ない時期のスケジュールに合わせていただきながら年間120人以上に受けていただきました。
 修了者の中から選抜した方が、通信経営塾や訪問コンサルへと長期個別密着コンサルへと進んでくださって、今日に至っています。

 このコンサルをスタートするまでの経緯は、こうです。
 それまで「売れる事業の始め方」というタイトルのメールマガジンを発行していて、3500人ぐらいの読者がいました。
 それをまとめて出版するという話になって原稿を完成させたあとで、出版社の方から「売れる事業の選び方・始め方」というタイトルで行くという報告が一方的にありました。
 「選び方」について書いた覚えはなく、違和感があったので若干不満げに問い合わせると、「内容は十分にこのタイトルをカバーしている」という返事でした。
 ようするに「選び方」という言葉があるほうが本が売れるのだという発想で、とにかくタイトルに入れようと。
 そこにあとから理由をつけたのだと思います。
 「本が売れること」を求めているのは僕も同じでしたから、「なるほど」という感じですぐに納得し感謝しました。

 ただ、もし本が「選び方」の言葉によって売れてしまうと、僕の中に「選び方のノウハウが確立していない」ということが明らかになるという怖さが沸いてきました。
 というか、ようするにインチキなのです。
 「どんな事業プランだとどれだけ売れるかを読むことができる眼力」については、以前から誰が最も強く持っているのだろうと考えたり、実は多くの人が読めないまま新事業を始めているのではないかと疑問を持ったりしていましたが、それを僕自身が身につけるまでには至っていなかったのです。


 そこから、本が出版される前後のタイミングで、集中的に「選び方」についての研究を行いました。
 本もたくさん調べましたし、多くの企業もの「売れている理由」も眺めました。
 それまでのコンサルの現場での活動を記録した膨大な量の資料も読み直しました。

 まず、「今の業種の範囲内でもっと売れるようにするための考え方」が多く浮かび上がってきました。
  ●我が社の売上は私が上げるという基本方針を持つ
  ●お客様にとって必要な会社はお客様が伸ばしてくださると考え、「必要」を見抜き自社を合わせる
  ●誰がやるかが結果を決めることに着目して、「別のカタチ」に逃げようとしない
  ●成功する人は何をやっても成功するので、まだ自分が成功していなければまだそこに達していないだけだと考える
 つまり、経営者やそこで働く人たちが「売れる人になる」「成功する人になる」というのが、コンサル現場で成果を上げてきた最大要素でした。
 僕が行う経営コンサルのほとんどは、実は経営者コンサルだったわけです。
 このあたりが「売れる事業の選び方・始め方」の本の中で中心的に書いてあることです。

 「選び方」に関しては、なかなか僕の中で体系的にはできておらず、断片的に言葉が記録されているのを拾い出しました。
  ●良い商品が売れるのではなく、売れたものが良い商品なのだ
  ●社会が「安物化」している
  ●上位層よりも下位層の方が客数が多い
  ●経営のリスクを減らすためにはお客様を分散させること

 当初、「どんな商品がお客様にとって魅力的なのか」というようなものを探したのですが、「事業のカタチ」でそれを実現することは難しいと気付きました。
 考えていたのは「カタチ」でしたが、それとは別の要素、「レベル」によって決まるのだと仮説ができました。
 つまり、「魅力的な」というのは、「選び方」とは切り口の違う話です。


 「何が魅力的なのか」については後の研究テーマに残して、「売れやすい事業とは何か」に集中しました。
 この段階で急速に浮かび上がってきたのは、「市場規模」という言葉です。
 家計調査年報などが思い浮かんで面倒くさい印象がありましたが、コンサル先の人たちと「市場規模」についてたくさん会話をするうちに整理されてきました。

 典型的な例が、この対比です。
  ●コンビニに週1回行く人は人口の5割ぐらいではないか。
  ●本屋に月に1回行く人は人口の1割ぐらいではないか。
 いずれも統計データではなく、現場の人が感じているニュアンスです。
 ここから単純に客単価1000円で計算すると、人口1万人のエリアでコンビニは週に客数5000人で売上高500万円、年商2億5000万円ぐらいになります。
 本屋は月に1000人の客数で月商100万円。年商1200万円という計算です。
 これこそ、市場規模が大きいか小さいかの違いだと僕は解釈したわけです。

 それではなぜ本屋が成り立つのかというと「人口1万人で」という設定が違うのです。
 人口100万人の都市にコンビニが100店舗あるという場合を勝手に想定したわけですが、本屋はコンビニより明らかに少ないです。
 仮に10店舗あるとすると、10万人のエリアで商売をするという計算になり、年商1億2000万円になります。

 コンビニは、「何でもある、いつでもある、どこでもある」という店です。
 狭い地域で成り立つ理由は「何でもある」からで、品揃えを広げることで顧客密度が大きくなります。
 本屋は「本しかない」ですが、競合が少ないですから対象エリアを広域化できるので対象顧客数を増やせて成り立ちます。
 コンビニの方向は「総合化」で、本屋の方向は「専門化」です。

 ここまでの計算では、双方それぞれに別の優位性があって「どちらが売れやすいか」を決めることはできません。
 ただ、現場で動く場合に重要になってくるのは、専門化する場合には広域化が不可欠だということです。
 広い地域の多くのお客様に自社の存在を知っていただき、その良さを知っていただかないと成り立ちません。
 必要なのは「販売システム作り」です。
 ここがビジネスの中で最も難しいと考えている人が多いです。

 つまり、専門化するより総合化した方が圧倒的に成功の可能性が大きいのです。

 この仮説を持って、現場に照らし合わせました。
 「誰がやるか」「成功する人になっているか」という要素が関係していて、この仮説の立証は簡単にはできませんでした。
 ただし、「同じ人がやる場合」という前提の中では、総合化した方が売れやすいということを現場で実感することができました。
 ですので、自社を売れやすい方向にシフトさせる場合には、
  ●ベタな事業ほど顧客密度が上がる
  ●まずは普通の事業を目指す
  ●オーソドックスでハイレベルな事業が売れる事業
 などのキーワードが生まれました。

 ただし、あらかじめ覚悟する必要があります。
 総合化すると市場規模は大きくなります。
 が、同業者(競争相手)が増えます。
 多くの先輩事業者が高い経営管理水準の事業を確立しているわけで、自分がそこに参入すると当然ビリからスタートです。
 でも「こうすると売れる」という手本がある状況です。
 二番手戦略という、「手本に同質化する」という作戦で、一気にこちらの実力を上げることができます。
 レベルという点で先輩たちをぶち抜くことで、大きな市場規模の中、限界の高い数字まで進んで行くことができます。
 専門化して狭いジャンルで実力をつけるよりも、総合化して広いジャンルの実力をつける方が困難なのは当然です。
 しかし、そこで実力をつけることができないと、ビリのままで全く売れないわけです。




 さて、こんな「選び方」の基本原理を人に伝えてみました。
 ところが、あまり興味を引くことができませんでした。
 みんなが何となくわかっていたことなのです。
 聞いてみると、「アタリマエでしょ」というレベルのことだったのでした。

 「業種を選ぶ」という立場にいるという自覚がある人はコンサル現場にそんなに多くはいませんでした。
 ただし、創業者支援のセミナーでは重要な位置を占めました。
 しっかり準備して伝えました。
 集中して聞いてくれて、納得してくれます。

 しかし、講座でできあがってくるビジネスプランは「変わった事業」や「珍しい事業」が目立ちました。
 そのようなプランは、僕の眼力による評価では「売れないな」です。

 実は、創業段階で無意識に自分の方向を決めている、ある傾向があります。
  ●競合が多いところは勝てないからイヤだ
  ●ウデを活かして高収益の仕事をしたい
  ●下位層向けの仕事は手間がかかって面倒くさい
 つまり、無意識に専門化する方向を選んでしまいます。

 経営技術的にも、安売りをするには高いマネジメントレベル(経営管理水準)がないと売価設定ができません。
 大量仕入・大量販売が安売りをする上での重要な要素ですが、創業段階では極めて困難です。
 そんな要素がからんで、「ようするにやりたいことは何か」というと、「変わった事業」や「珍しい事業」になるのです。

 でも、たぶん売れません。
 眼力からすると。
 ただ相手は感情的になってしまう恐れがあります。
 反論されるのが怖いので、思っていても言えないことがありました。


 ここまで書いたような知識は「頭」で考えることに影響を与えます。
 その一方で、「心」には五感からの信号とか、好き嫌いなどの感情とか、苦手意識とかが作用します。

 ハイブリッド思考法では、このように頭と心を別々に捉えます。
 そして、過去の行動からみると、頭で考えた通りに動けると良い結果を生むことが多いです。
 とはいえ、「心」は頑固です。
 なかなか考えたことに賛成してくれません。

 頭と心の関係では、常に選択肢は2つです。
 頭が心を説得するか、心の求めるものに合わせて頭で考えるかです。

 その考えのもと、多くの方を相手に個別長期密着コンサルをしてきました。
 もはや結論は簡単です。
 頭が心を説得できる人は、ビジネスにおいて結果を出す可能性のある人です。
 「売れる人」になって行く条件であると同時に、「売れる事業を選べる人」の条件でもあったのです。


 さて、ここでどのような判断結果を出すかは、個人の実力差かというと、実はそうではありません。
 例えば創業段階で、年商1千万を目指すのであれば、心が求めるような「やりたいこと」を選んでしまいます。
 それでOKだと思います。
 ただ、無意識のその数字のレベルを目指して終わっている人が多くいます。
 そこがものすごく「もったいない」と感じます。
 その部分が無意識から意識的なものへと変わるだけで、明日の日本は強く進んで行く可能性を感じるのです。

 意識的に年商100億を目指すのだという「基本方針」を持っていると判断結果が変わります。
 「売れる事業」を選択して取り組みます。
 何とか実現できる方法を探して、それが嫌いだろうが苦手だろうが取り組んで、自分のものにするのです。
 時間軸を組み込むと、「やりたいことは売れてからやる」という、単純な考え方も生まれてきます。

 つまり、自分の頭にどのような基本方針を持つかが重要なのです。

 「やりたいこと」をやるのであれば、自分の長所を伸ばせば良いという「好きなことをやる」楽しい日々が開けます。
 もしかすると自分にはまだ具現化されていない優秀な能力や魅力があって、それを活かせれば頭で考えなくても「予想以上に自然に売れる」こともありうるだろうという期待は残ります。
 持ち味を伸ばし活かすのはもちろんOKです。
 しかし、「まず売れたい」の段階の次には「売れ続けたい」の段階が来ます。
 短期の成功で終わらせないためには欠点・短所をあらかじめ埋めておく必要があります。
 それが年商1千万の事業がしたい人と年商100億の事業を目指す人との違いです。
 ですから、「売れること」をやるためには、自分の弱点とも向かい合って、苦手意識を乗り越えて弱みのない事業を作る格闘の日々が続きます。

 自分のビジネスについて、何が必要かを頭で理解し、頭で基本方針を決めます。
 普通は、心と相談して基本方針を決める習慣があるので、残念ながらそこで腰砕けになる人も見てきました。
 
 ですが、これはパターンです。
 自分の頭で決めたことしか実現させることは困難です。

 人の心にはそれぞれ欲求もありますし、苦手意識もあります。
 それに支配されずに基本方針を作ること、決めること、実行することが事業でのカギです。








2012年2月3日

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