神戸事件の処分決定を怒りをこめて弾劾する

 

一、十月十七日、神戸家裁は、A少年を医療少年院に送り込むという決定をくだした。私たちが明らかにしてきた数多くの疑惑に何一つ答えることなく家裁がおこなったこの決定にたいして、私たちは怒りをこめて弾劾する。

二、公表された家裁の決定書(要旨)を見るとき、私たちは神戸事件への疑惑をいよいよ深くせざるをえない。

A、家裁の決定は、六月二十八日の任意同行時にA少年が五月事件の犯行を否認していたにもかかわらず、警察官が偽計によってA少年に「自白」を強要したということを認定している。すなわち、「科学捜査研究所が上記声明文(いわゆる挑戦状)と少年の筆跡とが同一人の筆跡か否か判断することは困難であると判定したため、逮捕状も請求できず、任意の調べにおける自白が最後の頼りであった状況において」「あたかも筆跡鑑定により上記声明文の筆跡が少年の筆跡と一致しているかのように説明」した、と。そのうえで家裁は、このことは「もとより違法」であるとして、取調警察官の供述調書の全部を証拠から排除したのである。

 警察の違法捜査が家裁の決定においてもつきだされた。このことのもつ意味はきわめて重大である。物的証拠が何ひとつ存在していないにもかかわらず、警察官が偽計を用いて少年に「自白」を迫り、この「自白」を唯一の根拠に逮捕したということは、憲法に規定されたいわゆる令状主義に反する不当逮捕である。いやこれこそは少年の逮捕がでっちあげ逮捕であったことを示しているのである。

B、にもかかわらず家裁は、警察官の調書は証拠から排除しながら検事の調書は排除せず採用した。検事の取り調べの前提となっている少年の逮捕と身柄拘束が前記のように違法なものである以上、この状況下で作成された検事調書もまた無効であることは、法廷の常識のはずである。ところが家裁は、ただ黙秘権がある旨を検事が告げたということをもって、検事調書を採用するという前代未聞の恥知らずな決定をくだしたのである。

C、この違法な検事調書に依拠して家裁は「非行事実」の認定をおこなった。しかし決定では、「非行事実」の認定にかんしてその根拠をまったく明らかにしていない。犯行声明文の筆跡と少年の筆跡とは同一とはいえないという警察自身の鑑定結果が出ていたことを家裁自身が認めている。これは犯行声明を書いたのは少年とは別人だということである。にもかかわらず「非行事実」の認定においては、この点さえまったく触れられてはいない。もちろん、向畑ノ池から発見された金ノコがはたして凶器なのかどうかをはじめとする、いわゆる「物証」にまつわる一切の疑問も不問に付してしまったのである。

三、以上のように、家裁の十・一七決定は、きわめて理不尽なものである。それは、「神戸事件はA少年の犯行である」という答えをはじめにまずありきとし、強引につじつま合わせをおこなったものにほかならない。
 じっさい家裁がA少年を「有罪」とした唯一の根拠は少年が「供述」で非行事実を否認していないということだけなのである。しかし、この「供述」は不当逮捕以降約百日にわたって外界から遮断された密室の中で権力の誘導のままにつくりあげられたものにほかならない。そして、医療少年院に送り込まれたA少年が今後真実にめざめ本当のことを話したとしても、それは闇に葬りさられてゆくにちがいない(少年が関東医療少年院に送られたことは、ご両親と隔離するためという疑いさえをもたざるをえないのだ)。
 私たちはこのような決定に激しい憤りを覚えずにはいられないのだ。

四、このような家裁の決定にたいして、付添人(弁護団)が同意したことは極めて遺憾であり、ただちに抗告されんことを私たちは心から願うものである。

五、以上、家裁決定は、神戸小学生惨殺事件の真相を闇から闇に葬りさるものにほかならない。私たち神戸事件の真相を究明する会は、怒りをもってこの理不尽な決定に抗議するとともに、真相究明をさらにおしすすめ、必ずや真実を白日の下に引きずり出す決意である。

 一九九七年十月十八日

神戸事件の真相を究明する会 

ホーに戻る