自賠責保険の基礎知識

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自賠責保険の基礎知識

自賠責保険とは

自動車保険は、大きく分けて強制保険(自賠責保険)と任意保険の2つがあります。

自動車損害賠償責任保険(略して自賠責保険)は、自動車損害賠償保障法(略して自賠法)に基づいて決められた強制の保険で、自動車を所有する全ての者に加入が義務づけられています(自衛隊・在日アメリカ軍・国連軍を除く)。しかしながら、現実にはこの自賠責保険すら加入していない悪質ドライバーが結構います。

自賠責保険は、交通事故被害者の最低限の補償を確保する保険で、被保険者以外の他人に対して支払う保険で、示談代行のサービスはありません。

1度の交通事故で複数の人に被害を与えた場合でも、被害者の人数に制限はないので、一人ひとりに限度額まで補償してくれますが、支払いの対象になるのは、あくまでも交通事故で被害を受けた他人です。例えその交通事故でドライバー自身が怪我をしたとしても、自分の自動車にかかっている自賠責保険は使えません。

この自賠責保険に未加入で自動車を運行した場合、1年以下の懲役又は50万円以下の罰金に処せられます。(プラス無保険運行 違反点数6点)また、自賠責保険証明書を積まずに自動車を運転してしまうと30万円以下の罰金です。250cc以下のバイクや原付は、車検がないので、自賠責保険が切れていないか注意してください。

なお、自賠責保険は対人賠償に限られ、物損事故の補償はしません。ただし、被害者が負傷した際、義肢・メガネ等の身体機能を補う物が破損した場合には、例外的にその費用についても支払われます。 この場合、壊れたメガネの写真と新たに購入した際の領収書を添付して請求します。身体機能を補完しないサングラスなどは対象外です。

自賠責保険でいう被害者とは

自賠責保険では、怪我をした人が被害者、怪我をしていない人を加害者といいます。

例えば、自動車対バイクの交通事故で、自動車の過失が40%、バイクの過失が60%とします。バイクの過失の方が大きくても、自動車のドライバーが無傷で、バイクのドライバーが怪我をしている場合、被害者はバイクのドライバー、加害者は自動車のドライバーということになります。

つまり、自賠責保険では、過失割合に関係なく、怪我があるかないかで被害者、加害者の区別をします。 双方に怪我がある場合は、双方ともに被害者でもあり、加害者でもあるということです。

自賠責保険で請求できる損害の範囲

被害者1人当たりの支払限度額と請求できる損害の範囲は次のとおりです。注意しなくてはならないのは、例えば死亡事故の場合、3,000万円の範囲内で自賠責保険が支払われるということであって、死亡した被害者に対して自動的に3,000万円が支払われる訳ではないということです。

(交通事故発生日が平成14年4月1日以降の場合)

死亡事故 最高3,000万円

死亡に至るまでの傷害による損害の場合は、これとは別に傷害事故の場合の規定が準用されます。

支払可能損害 内容 支払基準
葬儀費
(1回分のみ)
通夜、祭壇、火葬、火葬場サービス、埋葬、墓石、戒名、位牌、喪服借料(被害者の配偶者・親・子)、喪主家用の花輪1台、切手、参列交通費などに要する費用
墓地、永代供養、年忌供養、香典返しなどは含まれません。
60万円(立証資料不要)
立証資料(領収書)等により60万円を超えることが明らかな場合は、100万円の範囲内で妥当な額とします。
逸失利益 被害者が死亡しなければ将来得ることができたと考えられる収入額から本人の生活費を控除したものです。 収入および就労可能期間、被扶養者の有無等を考慮のうえ計算します。
(事故前1年間の収入-生活費)×死亡時の年令に対応するライプニッツ係数=逸失利益
慰謝料 被害者本人の慰謝料
本人の遺産となりますので、遺産相続人が受領するものです。遺族慰謝料請求権者に分配するものではありません。
350万円
遺族の慰謝料
遺族慰謝料請求権者(被害者の配偶者(内縁関係)、子供(養子・胎児)および父母(養父母)) の人数により金額が異なります。
被害者の兄弟姉妹、祖父母、孫、配偶者の親・兄弟などは該当しません。
請求権者
  • 1名の場合 550万円
  • 2名の場合 650万円
  • 3名以上の場合 750万円
被害者に被扶養者がいるときはさらに200万円が加算されます。
  • 1名の場合 750万円
  • 2名の場合 850万円
  • 3名以上の場合 950万円
各請求権者は、認定額を均等に分割されることになっています。

傷害事故 最高120万円

支払可能損害 内容 支払基準
治療費 診察料・入院料・投薬料・手術料・処置料・通院費・柔道整復等の費用です。 必要かつ妥当な実費
看護料 入院中の看護料(原則として12歳以下の子供に近親者等が付き添った場合)
自宅看護料または通院看護料(医師が看護の必要性を認めた場合または12歳以下の子供の通院等に近親者等が付き添った場合)
入院1日につき4,100円
自宅看護または通院1日につき2,050円これ以上に収入減の立証がある場合、近親者は19,000円、近親者以外は地域の家政婦料金を限度として、その実額
諸雑費 入院中の諸雑費 原則として入院1日につき1,100円(立証資料不要)
通院交通費 通院に要した交通費 必要かつ妥当な実費
自家用車で通院した場合は、ガソリン代として自宅から病院までの距離、1Kmに対して15円で計算されます。
義肢等の費用 義肢、歯科補てつ、義眼、補聴器、松葉杖等の費用です。 必要かつ妥当な実費
診断書等の費用 診断書、診療報酬明細書等の発行手数料 必要かつ妥当な実費
文書料 交通事故証明書、印鑑証明書、住民票等の発行手数料 必要かつ妥当な実費
休業損害 事故による傷害のために発生した収入の減少(有給休暇を使用した場合、家事従事者の場合を含む) 1日につき5,700円
これ以上に収入減の立証がある場合は19,000円を限度として実額
対象となる日数は、実休業日数を基準とし、傷害の態様、実治療日数などを勘案して、治療期間の範囲内で決められます。
慰謝料 精神的・肉体的な苦痛に対する補償 1日につき4,200円
対象となる日数は治療期間の範囲内
  • 『治療実日数×2<治療期間』の場合は、「治療実日数×2」が対象補償日数。
    例:通院(入院)実日数が10日、治療期間が50日だった場合 4,200円×10日×2=84,000円
  • 『治療実日数×2>治療期間』の場合は、「治療期間」が対象補償日数。
    例:通院(入院)実日数が10日、治療期間が18日だった場合 4,200円×18日=75,600円
その他 眼鏡・コンタクト 50,000円が限度

後遺障害事故 最高4,000万円(第1級)〜最高75万円(14級)

支払可能損害 内容 支払基準
逸失利益 身体に障害を残し労働能力が減少したために将来発生するであろう収入減 収入および各等級 (第1〜14級) に応じた労働能力喪失率、喪失期間等により計算します。
年間収入額×労働能力喪失率×症状固定時の年令に対応するライプニッツ係数=逸失利益
慰謝料等 精神的・肉体的な苦痛に対する補償等 「神経系統の機能または精神・胸腹部臓器に著しい障害を残し、常時または随時介護を要する後遺障害」を参照。
「それ以外の後遺障害」を参照。

後遺障害の等級・支払限度額は、「神経系統の機能または精神・胸腹部臓器に著しい障害を残し、常時または随時介護を要する後遺障害」と「それ以外の後遺障害」ごとに定められています。

神経系統の機能または精神・胸腹部臓器に著しい障害を残し、常時または随時介護を要する後遺障害
慰謝料(1,600万円)+逸失利益(2,400万円)の支払限度額4,000万円 (第1級)
慰謝料(1,163万円)+逸失利益(1,837万円)の支払限度額3,000万円 (第2級)

慰謝料は、初期費用等として、第1級500万円(1,100万円→1,600万円)、第2級205万円(958万円→1,163万円)を加算します。

慰謝料は、被害者に被扶養者がいるときは、第1級1,800万円、第2級1,333万円とします。ただし、総額が増えるのではありません。

それ以外の後遺障害
慰謝料+逸失利益の支払限度額3,000万円 (第1級)〜75万円 (第14級)
後遺障害等級別の自賠責保険金額表 (単位:万円)
後遺障害等級 1級 2級 3級 4級 5級 6級 7級
自賠責保険金額 3,000 2,590 2,219 1,889 1,574 1,296 1,051
慰謝料 1,100 958 829 712 599 498 409
後遺障害等級 8級 9級 10級 11級 12級 13級 14級
自賠責保険金額 819 616 461 331 224 139 75
慰謝料 324 245 187 135 93 57 32

上段=慰謝料+逸失利益の支払限度、下段=慰謝料の支払限度

慰謝料は、被害者に被扶養者がいるときは、第1級1,300万円、第2級1,128万円、第3級973万円とします。ただし、総額が増えるのではありません。

自賠責保険の重過失減額

任意保険および政府保障事業の場合は、被害者に70%の過失があれば70%を、80%の過失があれば80%を差引きます。自賠責保険の場合は、被害者救済という目的にそって、その割合がかなり緩やかになっています。

後遺障害事故・死亡事故の場合 傷害事故の場合
被害者の過失割合 7割未満 7割〜 8割〜 9割〜 7割未満 7割〜
自賠責保険の減額率 減額なし 20% 30% 50% 減額なし 20%

なお、損害額が支払限度額を超える場合は、支払限度額から減額されます。後遺障害や死亡の原因が交通事故によるものかどうかはっきりしない場合は、因果関係が不明という理由で50%が減額されます。

保険金等の請求方法

保険金等の請求方法には、加害者請求と被害者の直接請求の2つの方法があります。

加害者請求

(この場合は保険金の請求といいます。)

加害者が被害者に損害賠償金を支払った場合、自分の加入している自賠責保険会社に対して保険金の支払請求(加害者請求)をすることができます。

加害者が請求をする場合は、すでに被害者に対して損害賠償金を支払っていることが条件ですので、被害者に支払うために前払いを求めることはできません。この場合、被害者が確かに損害賠償金を受け取ったという領収証が必要になります。

ただし、加害者に任意保険の対人賠償責任保険の契約がある場合は、加害者本人が損害賠償金を立替えて支払うというケースはほとんどありません。加害者側の任意保険会社が一括払いという方法で被害者に損害賠償金を払い、任意保険会社が加害者に代わって自賠責保険分を回収するという方法が一般的です。

被害者の直接請求

(この場合は損害賠償金の請求といいます。)

加害者が損害賠償金の支払いをしない場合、または示談ができない場合には、被害者は加害者の加入している自賠責保険会社に対し、損害賠償金の支払を加害者の承諾を得ることなく、直接請求することができます。損害賠償金支払いの方法は、被害者側で指定した銀行などの口座に振込入金するという形で行われています。

加害者が任意保険に未加入、または被害者側の過失が大きいときは、被害者請求を行うのが一般的です。

自賠責保険請求に必要な書類

必要書類 発行者
作成者
加害者請求 被害者請求
傷害 死亡 傷害 死亡
本請求 本請求 仮渡金 本請求 仮渡金
支払請求書(保険金、損害賠償額、仮渡金) 請求者
交通事故証明書(人身事故) 自動車安全運転センター
事故発生状況報告書 運転者・被害者等
診断書 医師
死体検案書(死亡診断書) 医師
診療報酬明細書 医師
後遺障害診断書(後遺障害のある場合) 医師
通院交通費明細書 被害者等
付添看護自認書または付添看護料領収証 付添者
休業損害証明書、確定申告書(写)、職業証明書 勤務先等
被害者側からの賠償金領収書 示談金受領者
示談書および示談金領収書(示談成立の場合のみ) 示談当事者
請求者の印鑑証明書 市区町村
委任状および(委任者の)印鑑証明書
(第三者に委任して請求する場合)
委任者
住民票または戸籍抄本
(事故当事者が未成年で親権者等が請求する場合)
市区町村または
本籍の市区町村
戸籍謄本(除籍謄本) 本籍の市区町村
その他損害を証明する書類、領収書等 支払い先

上記の他に、別途必要となる書類を提出する場合があります。

自賠責保険から支払われないケース

加害者に責任がない場合

交通事故の加害者が免責となるには、次のa〜cの3つの条件全てを加害者側が立証しなければなりません。

例えば、次のような交通事故の場合、AさんはBさんの自動車に掛けてある自賠責保険から支払われないことがあります。

自損事故で死傷した場合

ガードレールや電柱に自ら衝突して死傷した場合。

自動車の運行によって死傷したものではない場合

駐車場に停めてある自動車に、スケートボードで遊んでいた子供がぶつかって死傷した場合。

被害者が他人ではない場合

被害者所有の自動車を友人が運転し、自損事故を起こして同乗していた自動車の所有者が死傷した場合。

仮渡金

自動車保険に人身傷害保険が付帯されていると、治療費、休業補償等がご自身の自動車保険から支払われますので、当座の資金に当てられます。これがない場合は、自賠責保険の仮渡金(かりわたしきん)を頼ることになります。

従来の内払制度(内払金請求)は、平成20年10月1日に廃止され、本請求と一本化されています。

被害者が死亡したり、11日以上の治療を要する傷害を受けた場合(治療期間が10日以下の場合は対象外)、当座の治療費、生活費、入院雑費および葬儀費などに充てるため、被害者は、総損害額の確定前であっても仮渡金を加害者の加入している自賠責保険会社に請求することができます。この場合、自賠責保険会社は、遅滞なくこの仮渡金を支払わなければならないことになっています。

仮渡金請求にあたっての注意点

仮渡金が請求できるのは1回のみで、金額は被害者1名につき、下記の程度によって決められます。

平成3年4月1日〜
事項 請求可能額
1 死亡 290万円
2 次の傷害を受けたもの
  • 脊柱(せきちゅう)の骨折で脊髄(せきずい)を損傷したと認められる症状を有するもの
  • 上腕(じょうわん=肩から肘までの部分)又は前腕(ぜんわん=肘から手首までの部分)の骨折で合併症を有するもの
  • 大腿(だいたい=腰から膝までの部分)又は下腿(かたい=膝から足首までの部分)の骨折
  • 内臓の破裂で腹膜炎(ふくまくえん)を併発したもの
  • 14日以上病院に入院することを要する傷害で、医師の治療を要する期間が30日以上のもの
40万円
3 次の傷害(前号aからeまでに掲げる傷害を除く)を受けたもの
  • 脊柱の骨折
  • 上腕又は前腕の骨折
  • 内臓の破裂
  • 病院に入院することを要する傷害で、医師の治療を要する期間が30日以上のもの
  • 14日以上病院に入院することを要する傷害
20万円
4 11日以上医師の治療を要する傷害(第2号aからeまで及び前号aからeまでに掲げる傷害を除く)を受けたもの 5万円

無過失責任と運行供用者責任

民法709条は、交通事故に限らず民事上の不法行為一般の損害賠償責任について規定しています。民法の不法行為責任は、故意または過失により他人の権利を侵害したものは、損害を賠償する責任があると定めています。しかし、この規定では、加害者に故意・過失があったなどの証明は被害者の方がしなくてはなりません。また、加害者および使用者以外の責任を追及することはできません。

自動車損害賠償保障法(自賠法)は、交通事故による人身事故の被害者の保護を目的に特に設けられた法律です。人身事故の場合、ほとんどが自賠法によって損害賠償請求が行われています。自賠法の最大の特徴は、無過失責任主義と運行供用者責任の2つです。

無過失責任主義

自賠法の最大の特徴は、民法709条では被害者に負わせていた故意・過失の立証責任を、加害者が無過失を立証しなければならないとしたことです。加害者が無過失を立証することは不可能に近く、被害者が損害賠償金を取り易いようになっています。

運行供用者責任

運行供用者については、自賠法3条に次のように規定されています。「自己のために自動車を運行の用に供する者は、その運行によって他人の生命または身体を害したときは、これによって生じた損害を賠償する責に任ずる。」

つまり、運行供用者というのは、自動車を自分の思い通りに使うことができる状況にあって、自動車を運行することが自分の利益となる人のことです。

このように自賠法では、損害賠償責任を直接の加害者だけでなく、その自動車を支配している者にも負わせることによって、被害者が損害賠償請求をし易くなっています。ただし、自賠法が適用されるのは、傷害、死亡などの人身事故に限られ、物損事故の場合は、民法の不法行為責任で請求することになります。

人的損害 運転者、使用者、運行供用者
物的損害 運転者、使用者
運行供用者の主な例

夫と妻は自賠責保険の支払いにおいては他人

加害者と被害者が他人同士の場合、加害者は被害者の損害を賠償しなければならないのは当然のことです。しかし、加害者が夫、被害者が妻というような場合には、損害賠償請求をすることは稀です。

交通事故の場合には、昭和47年5月30日の最高裁判決で、自賠法3条の他人性の解釈が確定し、夫と妻は自賠責保険の支払いにおいては他人であると認められました。これにより、夫が運転する自動車に同乗中に死傷した妻は、運転していた夫に損害賠償請求をすることが認められ、自賠責保険会社に対して自賠責保険金を直接、被害者請求できることになりました。他の家族間の交通事故についても、考え方は同様です。

任意保険の場合、対人保険も対物保険も、運転者の家族(配偶者、子供、父母)には支払われません。ただし、搭乗者保険や自損事故保険で支払われます。

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