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あさま山荘事件当時の社会状況例

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何故留守宅が心配だったかというと、いまと違って、あの頃はマスコミや世論がどちらかというと学生の反体制運動に同情的で、警察、特に機動隊は権力悪の権化みたいな扱いを受けていた時代だったからだ。

あの頃は警察官の家族であるというだけで小学校などで日教組の教師から不当な差別を受けるという、今日の若い人たちには想像もできないようなイデオロギー優先の時代だったからだ。

私が警視庁の警備第一課長で、東大安田講堂事件だの全共闘の街頭ゲバ闘争の警備などに寧日ない、いわゆる第二次反安保闘争はなやかなりし頃、ある日次男のTが区立の中丸小学校から泣きべそをかきながら帰ってきた。

きけば担任のSという女教師に授業中に

「このクラスの子でお父さんが警察官と自衛官の子供は立ちなさい」と言われ、

次男が他の警察官や自衛官の子どもたちと顔を見合わせながら立つと、

S教師は「この子たちのお父さんは悪い人たちです。あんたたちは立っていなさい」といわれなく立たされたというのである。

世田谷の三宿に陸上自衛隊駐屯地があるところから、警察官と自衛官の子供は結構何人かいたようだ。

親の職業で子供を差別して悪いこともしていないのに立たせるとは何事かと激怒した私は、早速校長先生に抗議した。

校長は

「日教組には私も困らされています。ですが相手が悪い。

また子供さんにはね返ってもいけないから」と言を左右にして一行に煮え切らない。

「では教育委員会に公立小学校における親の職業による差別として正式に提訴しますから」と告げると、

これはいけないと思ったのか、校長はS教師を家庭訪問の形でさし向けてきた。

S教師は「ベトナム戦争はけしからん、自民党政権は軍国主義復活を目指している。機動隊は学生に暴力を振う権力の暴力装置だ」などと日教組の教条主義的な公式論をまくしたてる。

一通り言わせておいてから

「私の言っているのはベトナム戦争や全共闘のことではない。

貴女は親の職業で罪のない子供を立たせるという体罰を加えたようだが、小学校教師としてそれでいいのかと尋ねているんです。

反省をしないなら私は教育委員会に提訴するつもりです」という。

S教師はヒステリーを起こして

「やるならやって御覧なさい。日教組の組織をあげて闘いますよ」と叫ぶ。

「どうぞ。私も貴女を免職させるまで徹底的にやりますよ。ではお引き取りください」と突っ放す。

すると免職という言葉にイデオロギーが負けたのか、突然S教師はフロアに土下座して「どうぞ許して下さい。教師をやめさせられたら暮らしていけませんので」と哀願しはじめた。

私は呆れ果てて一応鉾をおさめたが、「あさま山荘事件」の時代はこんなひどい話がまかり通っていた時代で、警察官の家族達を取り巻く社会環境は、お世辞にも友好的と言えるものではなかった。

(連合赤軍「あさま山荘」事件:佐々淳行著、文春文庫、P181〜P183)