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2001年東北横断・賢治と芭蕉とラーメンの旅

(郡山〜仙台〜平泉〜花巻〜遠野〜盛岡〜秋田〜十文字〜松島〜仙台)

9月22日( 春木屋@郡山/福到(ふーとう)@仙台
9月23日( マルカン@花巻/直利庵@盛岡
9月24日( 丸竹食堂@十文字/名代三角そば@十文字/味よし@仙台/満天@仙台

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 我が家が北へ向かうと言うことは・・・
今回の遠出のテーマは「北へ」。連休ごとに遠出する我が家だが(>「家族の旅日記」参照),意外に北へ向かうことは少ない。南へ向かう場合は最後に東京でラーメンを食べてから帰ると言う楽しみがあるのだが,北の場合はどうしても茨城への帰り道が単調になり,なんとなく暗い気分になって「どっと疲れる」と言う理由による。でも2日間程度の連休で行けそうなところは,「南」はすべて行き尽くした感もあるので,妻との話し合いで今回は「北へ」と言うことになったわけだ。ではどこに行くか。
実はHP開設前の1998年2日間の連休で函館を往復したことがある(1998/10/10〜11)。その時の日程はこうだ。仕事後の前日午後六時に自宅を出発し,常磐道〜磐越道〜東北道と通り青森まで行ってしまう(約600K・渋滞など全くないので6時間で行ける)。深夜2時過ぎの青函連絡船に乗れば目が覚めたときは函館と言うわけだ(約3時間・車は青森港に置いておく・無料)。函館朝市で朝食(「茶夢」と言う狭い店)をとり,レトロなチンチン電車『函館ハイカラ号』で市内を行ったり来たり(イカのキーホルダー型の乗り放題チケットがある)。「五稜郭」から啄木ゆかりの「立待岬」も行き,市街地に戻ってレンガ造りの「金森レストラン」で食事。「ハリスト正教会」「旧函館公会堂」等々の定番を散策し,最後は函館山から100万ドルの夜景をしっかり堪能。帰りも深夜発の青函連絡船で本州へ戻るという強行軍。2日目は青森から八甲田山へ向かい「雪中行軍」の碑を見て,次は「酸ヶ湯温泉」(混浴)に行き家族で朝風呂。ここの年季の入った木造の馬鹿でかい屋内風呂はかなりおすすめ。奥入瀬を抜けて十和田湖へ向かい八幡平から玉川温泉に寄る。最後は乳頭温泉「鶴の湯」へ。こちらは秘湯と言われるが,人も多くまた思った以上に狭かった。夕食は盛岡に出て名物「冷麺」食べて(「食道園」という有名な焼肉店)帰る。ラーメンも食べたかったが,当時はネット環境になかったのでラーメンという発想がなかったのだ。仕事の関係でまとまった休みの取れないわが家にとって,北海道まで行けただけでも幸せだった。実はこの時の旅の心残りがある。それは吉田拓郎の名曲「旅の宿」(♪浴衣の〜君はすすきのかんざし〜)の舞台となったという「蔦温泉」に行けなかったこと。今回それも考えたのだが,帰り道の600kmを考えるとそれだけの目的でそこまで行ってしまうのはきつい。それは展開次第と言うことでとにかく「北」が決定。前々日の夜のことである。
今回の旅のテーマの中心に置いたのは「ラーメン」ではなく「観光」。目的は『イーハトブ』。宮沢賢治ゆかりの岩手を,平泉中尊寺をからめて,娘達への教育的効果を高めよう(?)と言うわけだ。前日はしっかり娘達にアニメ『銀河鉄道の夜』のビデオを見せておく。あと一つ僕自身が今まで見たことがない「松島」も含めよう。 「松島や あぁ 松島や 松島や」ってどんなにすごいのだろう・・・。
とは言えラーメンをからめなければこのHPに載せる意味がない。こんな時役立つのがこのインターネット。まず「どんぶりリンク」からZOUさんの「福島ラーメンミシュラン」,天野さんあまおじさんのらーめん紀行」,らーめん・ふぇちおさん2001麺 夢中の旅 」である。あと岩手の情報は僕のサイトも紹介されている「All About Japan/ラーメン」の中の「東北地方のラーメン情報」で見つけた「岩手ラーメンDate Base」。これは岩手についてかなり参考になる。行きそうなところをすべてプリントアウトして準備。実際かなり役立った。もちろんOOSAKIさんの「全国おいしいご当地ラーメン」(竹書房・1999/12)は当然携帯。見知らぬ土地に行った時には,この本の巻末のリストはホント役に立つ。見知らぬ土地でなんの情報もない店に入り,それがうまい確率は限りなくゼロに近いのである。

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 9月22日(春木屋@郡山/福到(ふーとう)@仙台
今回も,仕事終了後の午後5時にミニバスの練習から帰ってきた上の娘を待って自宅を出発。問題は夕食である。ZOUさんの「福島ラーメンミシュラン」でチェックした「会津とらや@いわき」「のぞみ家@いわき」なら(>「いわきラーメン事情」参照)時間的に余裕があるのだが,せっかく行くのだから日帰りでは行きづらいところに行きたい。目的は郡山。その一杯のためだけに常磐高速から磐越道へ。閉店時間に間に合わなければすべて無駄になってしまう。黙々と走る。
  春木屋@郡山:郡山市桑野2-16-13 月休 11〜15/17〜20:30<024-922-0141> P 5+6+4台
正式には「春木屋郡山分店」と言うようで,その名の通りあの「春木屋@荻窪」の暖簾分け。郡山の市街地・郡山市役所にほど近い場所にあるが,周囲はすっきりしていて駐車場が店前に5台分のほか,少し離れたところに6+4台分ある。入口はガラス張りの二重構造でどこか焼肉店のような雰囲気もある。午後8時近くで店内は満席。店主も従業員の女の子も若いから,店に活気がある。しかも本店と同じくきっちり白衣なので落ち着いた雰囲気もある。「中華そば」は650円。もちっとした中太麺に軽く油の浮いたきりっと熱いスープ。本店のイメージをそつなく継承しているという感じだ。郡山でこの味でこの値段なら,老若男女,世代を問わず納得するだろう。満足。高速で来た甲斐はあった。なんとここには本店にはない「つけ麺」もあり(値段は850円とずいぶん高いが),麺があったかいのも選べるという。比較のため両方注文。平皿に刻みのりがかけられる。「あったか」はなんとスープに「浸かって」いる。たしかにつけ汁が冷めにくく最初は暖かいのだが,当然浸したスープの方は先に冷めていくから,麺がのびぎみの印象になる。冷水で締めた普通のつけ麺のほうが,麺のコシを堪能できいいだろうということで,妻との意見が一致。暖かいものが欲しいなら,普通に「中華そば」の方がきりっとしていて「春木屋」らしい。具はゆでタマゴ半分にチャーシューがごろごろ。調理場にはたしかに荻窪で見た記憶がある若者。2人いるがどちらも見たような気がするが記憶違いかな。入口に逸見政孝・武双山・サッカーの都並の写真。店内の壁も有名人の写真が花盛り。店主の趣味だろうが,本店は狭く相変わらずの行列だから,郡山に来た際にはこの店に寄るのが確かにいいかも。この店はHPを持っているのだが,「春木屋紹介」の「春木屋のはじまり」の項に昔の春木屋の写真があった。微かに残っていた79年当時の記憶(>「春木屋@荻窪」参照)が甦る。思わず顔がほころんでしまった。そう,食べ歩きを始めた1978年当時も「春木屋@荻窪」はこういうなんでもない店だったのである。
夕食を食べてしまえば後は急ぐ理由もない。北へ向かうだけ。「とんこつらあめん楽@郡山」(郡山市台新1-30-10 火休 11:30〜22・日祝11〜21)も候補に入れていたのだが次回に回そう。4号線を北上する。腹がこなれた頃仙台について,もう一杯食べようと言う魂胆だ。それにしても4号線沿いはラーメン店が多い。ラーメンショップ系がほとんどだが土地柄だろうか。無事仙台に着いたのは11時過ぎ。仙台の店のデータは,天野さんあまおじさんのらーめん紀行」に詳しいが,らーめん・ふぇちおさん2001麺 夢中の旅 」の写真付き情報も重ねて参照すると便利である。その中からまず繁華街のど真ん中にある「こむらさき」(青葉区国分町2-11-11無休11〜26)に行ったのだが,まんま「天下一品」のラーメンも出しているのを見て急激にその気がなくなってしまう。売りは中華そばのようだが「天下一品」のそれをイメージして「わざわざ仙台に来てまで・・・」と思ってしまったのだ。「熊本ラーメン」というのもあるようで,新横浜ラーメン博物館にあった熊本の「こむらさき」とも関係があるのだろうか?クルマに戻り次なる候補を探す。ふぇちおさんのデータはこの青葉区の店がやたら多いのだ。この一帯のにぎわいはさすが東北一の大都市だけあって,大阪あたりの雰囲気と比べても何ら見劣りしない。
  福到(ふーとう)@仙台: 仙台市青葉区一番町4-4-3 無休 11〜14:30/17〜26<022-264-0723>
繁華街のど真ん中のビルの1階にあり,入口は奥まったところ。こぢんまりとしていてちょっと不安になってしまうが,ここまで来たらしょうがない。店内はそれなりに狭いが,メニューは写真付きと凝っている。フートウラーメンは800円と高めだが要するにチャーシュー麺と言うポジションで,バラ肉で厚めのチャーシューがぽんぽんとのる。それに背脂が多量にふりかけられる。スープ表面に張った背脂の膜の甘さも加わる。これだけこってりしていると,多量にかけられた「無農薬」という刻みネギがけっこうありがたい。醤油色のスープそのものは,魚介系のダシを感じるもので特徴はある。麺はにゅるっとしてもちっとして独特。帰り道,「全体的に甘い,メンマも甘かった」と妻。期待が大きかった分文句も多いようだが,いくらインターネットで調べたと言っても,地方に行ってそんなに「圧倒的にうまいラーメン」がそうそうあるわけではない。僕的には平凡なものでなかった分満足である。近くにあったらまた行くかもしれないが,遠路はるばるまた食べに行きたいかと聞かれれば遠慮してしまうが・・・。
仙台市北部の泉インターから東北道に乗り北上。岩手に入り一関の先の前沢PAで車中泊。午前2時近かったが,早く着いても眠れないからこのくらいの時間が丁度いい。娘達は3列目のベッドでとっくに熟睡である。

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 9月23日(マルカン@花巻/直利庵@盛岡
仕事疲れで朝が辛いことがあっても,旅先でそんなことはない。朝7時前に,しかも娘共々さわやかに目が覚めてしまった。さっそく『中尊寺@平泉』(岩手県西磐井郡平泉町平泉字衣関202 無休 <0191-46-2211>)へ。ガイドブックを見たら朝8:30から開いていると言うのだ。さすがお寺である。4号線を南下し,少々後戻りすることになるがしょうがない。お寺一帯は国道4号線から西に折れてすぐの小高い山の麓にあるという感じだが,こんな場所にこんな歴史的なお寺があるなんて不思議である。周囲は何もない地形的にも平凡な普通の田舎町なのである。入口の売店街に町営の有料駐車場があったが,かまわず脇の坂を奥へ進む。案の定,一番奥に未舗装の駐車場があった(500円)。見上げれば金色堂も見える。坂の上の「讃衡蔵」(宝物殿のようなもの)で共通券(大人800円)を買い,いざ金色堂へ。子供の頃から教科書で何度となく見せられてきた国宝のお寺である。が,そこにはきれいな今風の建物。「あれっ歴史的建物がこんなもの?」と思ってその場所に進むと,なんと本堂(阿弥陀堂)がまるごと建物の中に入っているのである。さすが国宝第一号。漆の上に張られた金箔が鈍く輝き,蒔絵や透かし彫りの金具等々,この建物が800年も前から存在していたという事実に圧倒される。場内の案内アナウンスで「藤原3代の『お体』と泰衡の『お印』が納められ・・・」と言う部分が親子4人妙に気になって,作務衣姿で庭を掃いていた男性に妻が聞いたら「お体は『ミイラ』でお印は『首』のことです」とアゴの下で手のひらを横に切った。娘と妻は大騒ぎ(笑)。まぁこういうお寺を見たことをいつか娘達は教科書で思い出すだろう。その経験が大事。敷地の奥には本殿を覆っていた以前の建物も移築されてあり,また能舞台等もある。「讃衡蔵」で奥州藤原文化の栄枯盛衰を実感し,充実した気分で中尊寺を後にする。時間はまだ10時過ぎ。早起きはこんなに有意義に時間を使える。じっくり見たい場合は麓の町営駐車場にクルマをおいて月見坂を上り,その一番奥まったところが中尊寺だから感動も大きいかもしれない。4号線を北上し花巻へ向かう。
宮澤賢司記念館」(花巻市矢沢1-1-36 無休 9〜16:30 <0198-31-2319>350円)。R4からR283に折れ、北上川を渡りのどかな風景の続く道を走る。花巻市街地の東側郊外の山の中という感じだが,東北新幹線御の新花巻駅からは近いようだ。山の頂上が駐車場だが,狭いようで早くも渋滞している。麓の「童話村」の駐車場(無料)にクルマを置いて徒歩で登ったのだがけっこう疲れた。坂の途中に「山猫軒近道」の看板。獣道のような山道を登ると「山猫軒」に出る。これで「注文の多い料理店」の童話通りの雰囲気を味わえるわけだ(笑)。催し物としてやっていた「お神楽」を横目で見ながらその奥の記念館へ。木造の古い建物をイメージしていたのだが,予想に反してモダンな造り。入口部分から奥へとデッキに囲まれており,山の頂上なので浮いているように見える。エントランス正面は落ち着いた感じの喫茶スペースで右側が展示部分。中央の大銀河系ドームをぐるっと一周する感じで,環境・信仰・科学・芸術・農村等々の展示物が並ぶ。単なる童話作家ではない賢治の深遠な思想を感じることができる。直筆原稿も多数あり,愛用したチェロまで展示されている。あまりにも有名な「雨ニモ負ケズ」の詩は病を患うようになった晩年のもので,その手帳に書かれ原文が展示されていた。それが死後に発見されたと言う点が悲しい。施設面積はけっして広いとは言えないが、「読む」部分が多いので、その割には大人が楽しめる感じである。もちろん子供向けにも童話のスライドショー等があるので安心。今回の旅のメインをここに置いていたのだが十分満足できた。帰りは記念館脇のレンガの坂道を下りて花時計のある公園へ。「イーハトーブ館」と言う立派な施設もあるが、図書館や会議室等をメインとした更にお堅い施設のようなので今回はパス。昼食のために花巻市街地に戻る。「山猫軒」での食事も考えたのだが,予想に反して和食っぽいメニューが並んでいたのでちょっと拍子抜けだったのだ。
 マルカン@花巻:花巻市上町6-2 水休 10:30〜19 <0198-24-1111>
HPの情報で「懐かしい感じ」と言っていたので高い天井のレトロな食堂を勝手に想像していたのだが,カーナビが指定した住所にはデパートしかない。何のことはない,雑然としたデパートの上階のレストラン(と言うか大食堂)だったのだ。ちょっと拍子抜けしたが,縦5〜6段のガラスケースにずらっと並んだ和洋中のメニューの数々。簡単なテーブルがフロア一杯にぎっちり並び(250〜280席とか),そのほとんどが客で埋まっている。下の売り場フロアにはさほど客はいなかったのにこのにぎわい。それだけここの店が支持されていると言うことであろう。その理由は,眺めの良さそうな窓際のテーブルに行き,パイプ椅子に座ってわかった。これは昭和40年代のデパートの大食堂そのままなのである。切ないくらいに懐かしい。子供の頃,日曜にデパートに行って,こんな場所で好きなものを両親や姉と食べたのだ。「何にするんだ?好きなもの食べていいぞ・・・」元気な頃のオヤジの声が聞こえた気がした。そのセリフを今,僕が娘達に言う。安いから安心なのだ。妻と僕はネットで調べた「マルカンラーメン・530円」。水戸で言えば「スタミナ」,東京で言うなら「中本@上板橋」タイプの辛味あんかけラーメン。具は蒲ぼこ・きくらげ・ウズラ・白菜・マッシュルーム・ニンジン・バラ肉・タマネギ・韮と多彩。それが鮮やかなオレンジ色のとろみのスープに混ざっている。そのとろみは底までだからなかなか減らない感じ。麺は白いにゅるっとした食感の縮れ麺。娘達には25cmはあろうかというソフトクリームをつけた。テーブルの上にそびえ立つ量でなんと140円なのだ。下の娘は子供らしく「お子様ランチ」を食べたのだが,上の娘は「なんでも食べていいぞ」(普段ラーメンばかりなのでその罪滅ぼし)と言ったのになぜかチャーシューメン(480円)。珍しく選択肢はたくさんあったのに(洋食も和食も),どうも娘はあえてラーメンを食べる傾向がある。うれしいような悲しいような・・・。ラーメンの出来自体は可もなく不可もなくと言う感じだったので,複雑な気分である。窓からの風景も懐かしかった。窓から見える西側の周囲にビルは全くなく,遙か彼方まで見渡せるのだ。ウエイトレスのユニフォームも鮮やかな青に白い襟,それに額の上方に飾る白い髪止め(なんて言うんだ?)。服自体は新しいが,これもレトロなデザインなのだ。食べてる間に25cmのソフトクリームが溶けて倒れそうになって大騒ぎ。典型的なファミリーそのものである。久々に食事を楽しめた気がする。
のどかな秋の日差しの中,北上川に架かるどこか懐かしい感じのする朝日橋を渡り,『宮沢賢治童話村』(花巻市高松26-19 <0198-31-2211>9:30〜16:30 無休・無料)へ。記念館のある山の入口の道路を挟んだ向側にある。広い駐車場の奥にある入口の門は「銀河鉄道の夜」でジョバンニとカンパネルラが銀河へと旅立っていった「銀河ステーション」を象っている。その奥は広大な緑の空間。敷地の遥か右奥には「賢治の学校」(300円・共通券がお得)。内部はまず,真っ白な吹き抜けのドーム型の洒落た空間「ファンタジックホール」があり,ここで写真を撮ればモデルのよう。それに続いて宇宙・天空・水・大地の4つの空間。これがけっこうビジュアル的に凝った造りで大人も楽しめる。有料の価値はあるだろう。一方,敷地の左奥にはデッキに乗ったログハウス風のウッデイな小屋が6棟並ぶ「賢治の教室」。森・植物・動物・星・鳥と言う「教室」そして「森の店っこや」という店。こちらは建物の割にはテーマがボンヤリしていて消化不良という感じだ。他に「妖精の小径」という小高い山を歩く散歩道や山野草園。さらには右手前の空間に新しい施設も作る模様でかなり充実している。家族連れのみならず、若いカップルでも楽しめる施設だ。子供たちが駆け回り,予定以上にゆっくりしてしまった。先を急ごう。国道107号線を西へ向かう。
1時間ほどで「とおの昔話村@遠野」(遠野市東舘町3-9 無休<12〜3月・月休> 9〜17・入村は16:30まで 大人500円・小中150円<0198-62-7887>)へ。来内川にかかる大手橋に『とおの昔話村』の石碑があるのだが,そこに立っても本体がどこにあるか最初わからなかった。1軒奥の何でもない古い民家が本館だったのである。受付のある本館は「柳翁宿」というかなり古い木造の旅館(旧高善旅館)。向かい側に「遠野昔話資料館」。堅苦しい感じはなく洒落た証明の資料館だ。その奥には「物語倉」。もともと現在地にあった造り酒屋の蔵を活用した建物で,切り絵やイラスト・映像などをふんだんに使ったビジュアル的に楽しめる施設。照明も凝っていて大人の世界だ。敷地西奥には「旧柳田国男隠居所」。こちらは普通っぽい感じだ。北側に駐車場があって,そちら側からならわかりやすかったようだ。
予定では遠野から日本海側の釜石に出て,三陸海岸を北上し宮古を経由して,また盛岡まで戻る予定だったのだが(単に日本全国海岸線制覇を目指す僕が東北ではその部分だけ通っていないと言う単純な理由による),どうも時間的に苦しそうだ。釜石・宮古にさしたるラーメン情報もなく,また次なる目的地「直利庵@盛岡」の営業時間が20時までなので,どうにも間に合いそうにない。釜石に向かう釜石街道(R283)を途中で引き返し,遠野街道(R396)を北西に進んで盛岡に向かう。順調に盛岡市内に入る。
 直利庵@盛岡:盛岡市中ノ橋通1-12-13 水休 11〜20 <019-624-0441>

明治17年創業の老舗だそうで,ガイドブックを見ても「わんこそば」ならこの店ということになる。ただネットでは中華そばも有名のようで1階の店で味わえるようだ。入口に「わんこそばの方は御二階へどうぞ」との立て札。妻と娘は「わんこそば」を食べてみたいと言うので2階へ。入口は別で,靴を脱ぎ年季の入った狭い階段を上がる。造りは昔の旅館(料亭?)のようである。座卓が縦にきっちりと並んだ列がずらっと横に並ぶ広間がいくつか。閉店時間が近いので席はかなり空いていたのだが,それでも奥からきっちり詰めさせられた。メニューを見るとわんこそばは・・・なんと1人前2500円!!特上なら3500円。くらくらしたがそれで行くしかあるまい。2階はわんこそば専門のスペースのように見えたから,希望の「中華そば」はどうにも注文しづらい雰囲気だったのだ。明らかに小柄な下の娘の分は800円で食べ放題とのこと。その分はちょっと得かなと思ったが,なんのことはない,先に9種類の薬味が出てくるのだが(刺身・いくら・山菜・なめこおろし・もみじおろし・刻みのり・ネギ・くきわかめ・お新香),これで大人3人分かい?と思うくらいの量。刺身なんか1人一切れ。他は薬味だからしょうがないが,もう少し何とかして欲しいものだ(天ぷらつけるとかね)。きっちり着物を着た仲居さんが,四角いお盆にわんこそばを並べてやってきた。「はいどっこい」「はいどんどん」「はいじゃんじゃん」・・・そう言ってどんどんわんこそばを差し出す。かけ声は実にユニークだ。おわんをわずかに前に出すと,そこにそばを投げ入れてくれるシステム。娘達は(妻も)喜んで食べている。ただそのそばは期待したようなコシのあるものではなく,そうめんのようなもの。かなり柔かめ。これにはかなりがっかり。1杯分はおわんの底に食べ残しのようにちょっとあるだけだから,そりゃ何杯でもいけるわけである。元々すこしつゆがかけられているから,こちらにつゆはいらない。むしろ余ったツユを脇の大きな椀に捨てながら食べることになる。結局15杯のお盆で10回位おかわりしただろうか。それでも考えるのは「中華そば」のこと。途中で仲居さんに聞いたら,なんと2階で「中華そば」を頼むこともできたという。それを聞いて追加注文しようかとしばし考えたが・・・50杯くらい食べたあとではさすがにそれは断念。妻と娘にわんこそばを食べさせて,自分は中華そばにしとけばよかったと後悔することしきり(このわんこそばなら一口食べれば十分だ)。・・・落ち込んでしまった。デザートはグレープフルーツだけど目はうつろ。総額8300円+消費税。値段ほどに食材は質量ともに満足できなかったし,「名物を一応食べた」と言う事実以外にグルメ的な充実感はまるでない・・・。結局この値段は「手間代」と「人件費」ということなのかなぁ。お手洗いの手前の調理スペースでおばちゃんが二人,低い茹で釜の両脇に座ってわんこそばをおしゃべりしながら振り分けていたのが印象的。ますますありがたみが無くなった。どうでもいいけどもう少しコシのある麺を出せよなぁ・・・。まぁ娘2人が思いのほか喜んでいたから,これはこれでいい旅の記念になったのかもしれない。Pは奥のパーキングビルを利用(サービス券を会計の時にくれる)。1階の着物の若いお姉さんはクラクラするくらいきれいな人だった(笑)。

今回,我が家の旅のお決まりの温泉巡りはしていない。「夏油温泉」の露天風呂を考えていたのだが,時間的・距離的に無理になってしまった。電話帳で調べて銭湯を探す。選んだのはサウナ付きと広告が出ていた「第2菊の湯」。ごちゃごちゃした住宅街の中にあり,建物は一応鉄筋のようだが,今時こんな銭湯があるのかと言うくらい中が雑然としている。それでも一応風呂に入れば落ち着く。いい経験をさせてもらった。
さぁどこに行こうか。これから北へ向かうのは可能だが,明日の「松島」が苦しくなる。何となく田沢湖〜角館をイメージして盛岡からR46を西に向かう。ふと気がつくと,燃料が残り少ない。こんな遠くで夜中にガス欠しては目も当てられない。一応国道なんだし,そのうちスタンドがあるだろうと思ったのが,これが甘かった。行けども行けどもスタンドがないのだ。たまにあったとしても明かりが消えている。午後10時半過ぎ,ますます不安になってくる。結局,角館まで来てしまい,たまたまあった警察署で聞いたら「協和か河辺まで行けばあったような・・・」との答。もうそれはほとんど秋田市なのである。なんとか河辺町のスタンドまでたどり着きホッと一息。もうここまで来たなら秋田まで行くしかあるまい。
秋田まで来るとは思っていなかったのでネットでの情報は全くない。たよりは「ご当地ラーメン」の巻末データだけ。「田んぼ@泉」「一元@大町」「小江戸@泉中央」「奥州屋@中通」の4店の住所をカーナビに入力して次々に廻るが,この時間(深夜0時過ぎ)では当然の如く閉まっていた(店名からして深夜営業とは思えない)。仕方なく,市内あちこちにあった「東京まんぷくラーメン」(店名からしてそそられない)の大町店に入店。手打みそラーメン・600円を。細縮れ麺で,具は海苔・メンマ・チャーシュー3枚・・・って,けっこう賑わってはいたものの,ここで報告するほどのものは無いと思うので以下割愛。秋田道・秋田北インターから太平山PAへ。当然のことながら他にクルマはいなかった・・・。

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 9月24日(丸竹食堂@十文字/名代三角そば@十文字/味よし@仙台/満天@仙台
せっかく秋田まで来たのだから何か観光をしなければ。「赤れんが郷土館@秋田」(無休 9:30〜16:30 200円 P有)へ。ちょうどこの日は市民マラソン大会で市内は交通規制。右往左往しながらたどり着いて笑ってしまった。昨日食べた「東京まんぷくラーメン大町店」のすぐそば(並び)だったのである。館自体は,明治45年建造の旧秋田銀行本店がそのまま保存されてたもので,実に渋い。郷土の版画家の作品(『勝平得之』の鮮やかな色彩の版画絵)が展示されていてけっこう楽しめた。秋田はこれくらいにして(ラーメン店の開店までいたのでは帰りが辛い),秋田道で以前から気になっていたラーメンの町「十文字」に向かう。秋田県南東部の横手市と湯沢市の間にあるこの町,マスコミ等で見た印象はないのだが,ラーメン好きの間ではよく話題になる町で,「ご当地ラーメン」のリストにも2軒掲載されている。その2店を目指すわけだ。秋田市内からは距離的に80kmほどだったが,秋田道で1時間ほどで到着した。のどかな休日の昼近く,山間の広大な盆地の普通の町という印象だ。
 丸竹食堂@十文字 : 平鹿郡十文字町十文字新田本町7-1<0182-42-1056>
市内中心部を南北に走る幹線道路沿いにあり,隣はスーパーとけっこうにぎやか。白い暖簾に木の引き戸の外観はもちろん,テーブル6台に座卓が3台の店内も,椅子が縄編みだったりするからまんま蕎麦屋の風情。調理場の見える配膳口の周りは飾り物で雑然としているが,店自体に活気があるから気にならない。お昼時で8割程度の入り。席的には満席だ。多彩なメニュー(食堂だから当たり前か)の中,麺類は中華そば400円(大盛り100円・ダブル200円),チャーシュー麺550円,メンマ・ワカメ・月見中華が各500円,コーン・モヤシ・こんぶ・冷がけ中華が450円と言った構成。スープはわずかに醤油色だが,ほとんど透明と言っていいスープ。ダシが効いて,関西うどんでもいけそうなスープだ。麺は細縮れ麺でかなり固め。あと脂身のない小ぶりのチャーシュー。麩と赤い縁のカマボコがのるのが風情がある。これがこの地方のスタイルなのかな。
 名代三角そば@十文字 : 平鹿郡十文字町十文字新田本町6-1<0182-42-1360>
「丸竹食堂」の脇の路地を入ってすぐにある店。狭い店だが,小さめのテーブルが6台ぎっちり配置され,それがぎっちり満席。僕たちも相席だ。年輩者が多い印象。こちらのメニューはいたってシンプル。「三角中華そば・550円」に「中盛り・700円」「ダブル・800円」と単純なもの。丸竹に比べるとかなり濃いめの醤油色のスープ。ダシはきいているが普通っぽい。こちらの麺は圧倒的に縮れている。しかも固め。壁に貼ってあった,持ち帰り用の麺の説明に「40秒くらいで麺は上げてください」と書いてあったからそう言うタイプの麺なのだろう。妻とは「丸竹のスープに三角の麺なら最高ね」と言うことで意見が一致。ここの中華そばは,なんと全国宅配できるそうだ<0120-73-0955>。「三角らーめん」の文字が洒落たデザインで描かれた,和紙風の袋に入った『三角パック』。スープ付き1400円で,チャーシュー付きは1600円。店の規模からすれば,ずいぶん大きな商売をやっているなぁ。狭い路地裏で店前の駐車スペースはギリギリ3台。クルマは離れたところにとめてきた方がいいだろう。
それだけで十文字インターにとんぼ帰り。秋田道から東北道に戻り仙台方面に南下。松島までは200kmほど。順調に行けば2時間半で着く。
大和インター経由で平凡な畑の中の県道を走り松島へ入る。海岸沿いはいきなりの渋滞,そして人混み。さすが全国的に有名な観光地である。駐車場以外にクルマをおけるようなスペースはないくらい雑然としている。駅前の通りはかなり渋滞していたが,駅前の県営第1駐車場は意外にも満車ではなくあっさりとめることができた。北側の広大な公園を抜け,遊覧船乗り場の先端まで行って記念写真を撮り,松島港を見おろす小高い山の上にある「観瀾亭@松島」(無休8:30〜17<022-353-3355>)へ。伊達政宗が豊臣秀吉から拝領した伏見桃山城の一棟を,後に移築したものだそうで,赤い敷物が鮮やかな縁側に座り,眼下の松島の島並を見おろしながら、1杯300円の抹茶をいただく。なかなかに風情があり,妻と娘はにんまり(僕はひたすら写真係)。裏側には「松島博物館」と言うものもあるが,建物も展示物も完全に盛りを過ぎたと言う感じで,昭和の遺物という雰囲気。でもこれはこれで,また違った味わいがある。水族館との間に広がる公園で遊んで松島をあとにする。時間があれば赤い福浦橋を渡り「福浦島」(無休 8〜17 150円)に渡ったり、250体のロウ人形があるという「伊達政宗歴史館」(無休 8:30〜16 1300円)世界最大のオルゴールがあるという「オルゴール博物館」(無休 9〜17:30 1200円)あたりも見てみたかったがそれはまたの機会に。
仙台へ向かう。青葉城に向かい騎馬姿の伊達政宗像でも見ていこうと思ったのだが,なんと仙台城趾全体が工事中で入れない状態。あきらめて市街地に向かったのだが,それにしても仙台という街は大きい。さすが東北一の大都市である。夕食はもちろんラーメン。娘達よ許せ。これが我が家の宿命なのだ。店の選定は再度「あまおじさんのらーめん紀行」との中から,評価は様々でこれ1軒と言うと選びがたい。ここでも「全国おいしいご当地ラーメン」の巻末リストに載っている店で,店休日と,営業時間と場所を総合的に考慮して(?),場当たり的にその瞬間の気分で決める(笑)。とにかく,ここぞという有名な店がない以上,話題性のある地域性豊かな店を選びたいが,実際はなかなか難しいのだ。
 味よし@仙台:仙台市青葉区国分町2-5-14<022-261-5486>
繁華街のど真ん中にある。周囲には駐車スペースはないから北側のコインPにとめてとぼとぼ歩いていく。角地の2面に入口のある入ってすぐのカウンターのみの店。狭い。有名店・人気店と言った賑わいはない。普通にポツポツと客がいる。「2001麺 夢中の旅」の情報では,カネボウのカップ麺になった(見たことないけど地方限定版かな?)「味よし@中倉本店」(仙台市若林区中倉1-7-30 水休 11:30〜20:30)とは関係ないそうだ。ラーメンは580円。別に「正油ラーメン」もあるのだが,こちらは支那そば風で油の膜が張りけっこう熱い。麺はやや縮れのある細いストレート麺。やわらかい・・・。具はこりこりメンマにほぐれるチャーシュー。「正油ラーメン」&「みそラーメン」は660円。具は炒めモヤシに挽き肉とメンマ。要するに札幌系の醤油味と味噌味。ニンニクとしいたけ(?)だろうか旨味がはっきりしている。麺はやや太めのストレート麺。こちらも柔らかい。調理場はカウンター奥の中に二重構造だったのが印象的。割とあとひくスープだったが圧倒的な特徴はない。悪くはないがよくありそうな店だ。すぐ北側に東京の人気店「山頭火」(青葉区国分町2-9-32 無休 11〜翌4 もちろん本店は旭川)があったのだが,無難にそっちにすればよかったかなぁ・・・。旅の最後の一杯としては心残り・・・。で,この店でラーメン食べている間から「これは仙台でもう一杯だな」と考え始めていた。
 満天@仙台:仙台市青葉区三条町12-1 日休 11〜14:30/17:30〜23 <022-301-3534>
TVチャンピオン」で取り上げられた店という売りだが,僕自身はいつの回なのか全く印象にない。住所的には「味よし」と同じ青葉区なのだが,かなり北にある印象だ。最寄りの駅は北仙台駅と言うことになる。でもそこからもかなり遠い普通の町中。国分町あたりとは環境は180度違う。繁華街の灯りを遠く南に眺める静かな住宅街といった立地条件だ。市街地の北西部だが,この店に向かうのに一方通行がやたら多く,周囲の道路はかなりわかりづらい。初めての場合,カーナビがなければたどり着くのは不可能ではないか?南側のセブンイレブンにクルマを止めて(もちろんお買い物をしてだ)店に向かう。「屋台亭」と描かれた黄色い看板通り,店の奥半分の調理場をを囲むカウンターの周囲は大型の屋台風。看板メニュー(だと思う)の「超こってりラーメン・630円」は要するにこってり背脂系。旨味たっぷりのガツン系スープ。具はほぐれる柔らかさのバラ肉チャーシューに海苔・メンマ・半熟玉子。麺は黄色い太麺でけっこう固め。妻の食べた「博多とんこつラーメン・630円」はもちろん背脂は浮かないストレートな濃厚とんこつスープ。けっこうスープそのものの濃度はあるのだが,旨味も強く,トンコツ好きの妻も持て余し気味(連食2杯目だからかもしれない・いや今日4杯目だからかも・断っておくが全部妻の希望で僕は昼夜とも2杯目は強要していないのである)。麺は白い細麺で博多「風」と言ったところ。粉の違いだろう。具は僕のと同じ。メンマ・半熟たまごまでのるのが博多らしくない?店のHPがあるので興味のある方は参照されたい。
市街地に戻ったら午後8時。さぁ帰ろう。福島県の太平洋側をR6で南下すれば一直線でいわきまで行くのだが(東北道では郡山に向かう分,遠回りになる),僕の体力を心配する妻の助言で素直に東北道で帰ることに。自宅までは270km。でも高速なら楽だ。20:30,仙台南インターから東北道に乗り福島へ南下。郡山から磐越自動車道で東へ。いわきからは常磐道南下。実に単調だったが,我が家の旅としては珍しく12時前に自宅に着いた。体力的には余裕がある。本当はいわきであと1杯くらい食べてきたかったのだ・・・。

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