===== ===== ===== ===== ===== ===== ===== 「徒然(つれづれ)レビュー2004」・・・新課程参考書のレビューを開始 ===== ===== ===== ===== ===== ===== ===== レビューした本一覧:(旧)は旧課程版、(学)は学校用、(傍)は傍用 「Z会数学基礎問題集 チェック&リピート 改訂版」T・A/U・B(Z会出版) 「1対1対応の演習」数学V(東京出版) 「数学U 朝田 式と証明・高次方程式・指数対数・三角関数講義の実況中継」  (語学春秋社) 「短期攻略 センター数学T・A(/U・B)基礎編」(駿台文庫) 「本質の研究」数学U・B/V・C(旺文社) 「大学受験のための中学からの基礎数学短期集中攻略」(栄光) 「湯浅の無敵のセンター数学TA・UB」新課程用改訂版(栄光) # 雑感:自費で本を買う意味 「短期攻略 センターT・A(/U・B)実戦編」(駿台文庫) 「チャート式 センター試験対策 数学TA+UB」(数研出版) 「初めから始める数学T・A」PartT(マセマ) 「場合の数・確率 A・SOの解法」(学研) 「中高一貫数学コース」数学5をたのしむ(岩波書店) 「分野別 受験数学の理論」B場合の数・確率/E数列 「新課程 やさしい数学T・A」(洛陽社) 「高校生のための逆引き微分積分」(講談社ブルーバックス) 「分野別 受験数学の理論」G微分・積分(駿台文庫) 「坂田アキラの2次関数が面白いほどわかる本」(中経出版) (年度版)「10日あればいい 大学入試数学T+A(/U+B)演習」(実教出版) 「堀川晋の数Uの微分積分が面白いほどわかる本」(中経出版) 「合格!数学U・B(/V・C)プラス110問題集」(マセマ) 「フォーカスUP」(啓林館) # 雑感:数学V+C版参考書における諸単元の扱い一覧(・・・を作る必要性) 「チョイス新標準問題集」数学U/B/V・C(河合出版) 「土曜日に差がつく 数学T・A・U・B計算力エクササイズ」 「(同) 数学T・A(/U・B)典型問題エクササイズ」(河合出版) # 雑感:問題集の役割分担が進んでいる? 「解法のテクニック」数学V・C(科学新興新社/フォーラム・A) # 雑感:「本質の研究」(旺文社)の著者と対面! 「カリスマ先生の数学」(PHP研究所) 「超基礎数学塾 かみくだき数学U」(学研) 「短期完成!基礎力徹底ドリル」(学研) 「佐藤の数学教科書」2次関数編(東進ブックス) 「うっちィーの美しい数列」(ギルドブックス) (学)「スタンダード(/メジアン)数学演習T・A・U・B 受験編」(数研出版) (学)(年度版)「ニュースタンダード数学演習T・A+U・B」(数研出版) (学)(年度版)「数学T・A+U・B標準演習 PLAN100」(数研出版) 「坂田アキラの三角関数・指数・対数が面白いほどわかる本」(中経出版) 「高校数学テキスト」T/A/U/B(聖文新社) 「数学を人に教えられる本」(マセマ) 「もう一度やってみよう! 数学の基礎」(日本能率協会マネジメントセンター) 「数U 微分・積分が得意になる問題集」(駿台文庫) 「大学入試へステップアップ 実力強化問題集」数学T+A(文英堂) 「高校数学+α 基礎と論理の物語」(共立出版) 「ベクトル・数列 A・SOの解法」(学研) # 雑感:参考書から予備校の授業を見つめる # 雑感:参考書における「有名」大学 「元気が出る数学V・C」(マセマ) 「大学への数学 解法への探求・確率」(東京出版) 「分野別 受験数学の理論」Dベクトル/H行列/I2次曲線(駿台文庫) # 雑感:「カリスマ参考書レビュアー・水野健太郎先生絶賛の書!」への道 (年度版?)「大学への数学 新数学演習」(東京出版) 「新課程数学A 野竿 場合の数・確率・命題と論証 講義の実況中継」(語学春秋社) 「10日あればいい 短期集中ゼミ 実戦編」数学U/B(実教出版) (旧)「センター試験数学 30秒速解テクニック」(日本実業出版社) 「試験に強くなる 数学T+Aの考え方解き方」(文英堂) 「小島の難関大突破 ハイレベル数学」U・B(栄光) (通称「黒大数」)「大学への数学」U&B(研文書院) 「DVD数学教室 平面ベクトル」(アルファ数理セミナー)※個人 (旧)(年度版)「合否を分けたこの1題」(東京出版) (旧)(年度版)「大学入試攻略数学問題集」(河合出版) 「新課程数学T・A 野竿 数と式・2次関数・三角比・平面図形 講義の実況中継」  (語学春秋社) # 雑感:解説中でどの程度まで基本事項に戻るべきか 「山本俊郎の確率[原則編]が面白いほどわかる本」(中経出版) 「坂田アキラの数列が面白いほどわかる本」(中経出版) (旧?)「東大の理系数学25ヵ年」他(教学社) 「馬場・高杉の合格!数学」U・B(マセマ) (旧)「ジャンプ!高校数学から受験数学へ」数学U+B(現代数学社) # 雑感:平面図形(数学A)の教科書配列について 「1対1対応の演習」数学B(東京出版) 「経済セミナー増刊 経済学に最小限必要な数学【高校数学編】」(日本評論社) 「青チャート」数学U(数研出版) 「白チャート」(数研出版)・「ニューアクションγ」(東京書籍)・「フォーカス  Light」(啓林館)・「基礎からベスト」(学研)他 #  向け配慮を感じない # 雑感:『略解』の存在意義について 「解法のテクニック」数学T・A(科学新興新社・フォーラムA) 「ニューアクションβ」数学T+A(東京書籍) 「大学への数学 1対1対応の演習」数学U(東京出版) (旧?)「入試問題が語る数学の世界」(現代数学社) 「湯浅の見える新数学UB」(栄光) 「小島の難関大突破 新数学T・Aハイレベル演習」(栄光) ***05/03/21 「Z会数学基礎問題集 チェック&リピート 改訂版」T・A/U・B(Z会出版) 教科書レベルの確認と入試基礎レベルの内容の定着に使える問題集。旧課程版からひき つづき、教科書学習時に理解度の差が出やすいレベルの問題を、中堅私大の入試小問中 心にうまく集めている。問題は同じタイプ(テーマ)の数題をまとめてタイトルがつけ てあるので探しやすく、また各テーマごとに問題はおおむね易→難の順に並んでいるの で、教科書レベルの確認、発展演習、分野別苦手対策など幅広いレベル・用途に対応で きる。筆者がこの本を高く評価しているのもこの部分によるところが大きい。自身の中 では、他の参考書を評価するときの1つの基準にもなっている。 本文は、問題文とそれらの解法のポイントをまとめた「チェック・チェック」が見開き 左右1ページずつ、次のページから解答・解説(2ページまたは4ページ)という繰り 返しになっていて、1問1問が重たくないので、テーマごとに必要事項を確認しながら テンポよく解き進めていけるようになっている。 私大文系(難関除く)志望なら、この本を最終目標にしてもいいぐらい。また、国公立 志望といえど特にセンター重視の大学・学部では差になるのが案外こういうレベルだと 思うので、何が何でも過去問演習・難問対策をしなければとあせる前にこの本で本当の 意味でゆるぎない基礎力を身につけておいて欲しい。 この「チェック&リピート改訂版」については、旧課程版から当レビューで高く評価し ていたこともあり、発売前後には当サイトの掲示板にもこの本に関する書き込みが多数 あった。それだけ生徒さんの関心も指導者の皆さんの関心も高かったのだろうが、予想 以上の熱狂ぶりに(?)今回ばかりは驚きを隠せないでいる。別に筆者自身がこの本を 書いたわけでも何でもないのだが。 ***05/03/20 「1対1対応の演習」数学V(東京出版) 入試基礎レベルをひととおり押さえた人の力試し向け演習書。旧課程版には数学が苦手 な人には突飛と映る問題がやや多かったが、新課程版ではT・A・U・B同様かなり 「おとなしく」なり、一般の受験生にも使いやすくなっている。旧課程版のようなピリ リと辛口の問題と解説を期待する人にはやや物足りないかも知れないが、問題数を考え ると、ヘタに難問ばかり収録するよりはこの程度の方がよいのでは。自学自習用を考え ればなおさらである。しかし、いくら使いやすくなったとはいえ、一定の予備知識は前 提。良書ではあるが使い手を選ぶという認識を持って欲しい。 本の最後には「微積分総合」という章があり、たとえば積分と極限の融合など、数学V の複数分野にまたがる問題がいくつか収録されている。問題数的に十分とはいえない が、難関校志望者の基礎がために役立つだろう。それ以外は、旧課程版にはなかった 「積分フロー図」が目を引く。これは、被積分関数の式の形を見てYes・Noに答え て進んでいくと使うべき積分の公式がわかるというもので、もちろん万能ではないがあ る種の「見通し」を与えてくれる。 「数学U 朝田 式と証明・高次方程式・指数対数・三角関数講義の実況中継」(語学春 _秋社) いわゆる講義調の参考書だが、基本事項の詳しい導入が付いているわけではなく、予備 校のテキストにあるような練習問題の解説がメイン。「考え方」では問題へのアプロー チを語り口調で説明しているが、読んでいるうちに次のページに移ってしまう。単に中 味が薄いだけという印象がどうしてもぬぐえない。同シリーズの数学T・Aの本も2冊 出ているが、それらと同じ印象。基礎の基礎から丁寧に解説してあると期待してしまう と痛い目にあう。 「短期攻略 センター数学T・A(/U・B)基礎編」(駿台文庫) センター対策の導入向けの演習書。各章は3つの「STAGE」からなり、STAGE 1では基本事項のまとめと例題、確認用の類題、STAGE2はセンター試験で差がつ きやすい応用的解法のポイント紹介と例題、確認用の類題という構成。STAGE3は 章末にあたり、主に過去問を扱っている。 STAGE2の切り口に工夫が感じられ、好感が持てるが、類題が少々重たいのが残 念だった。基礎編と銘打っていることを考え、全体にもう少し詳しく解説して欲しかっ た気がする。 ***05/03/10 「本質の研究」数学U・B/V・C(旺文社) 個人的に待望だったシリーズもようやく完結。U・Bが重たいのは他書同様だが、相変 わらず「読ませて」くれる。例題の網羅性と別冊解答の分厚さばかり競って肥大化する 昨今の参考書事情を見るにつけ、この本には独自の路線を歩み続けて欲しいと思う。そ れでも、導入部分の「問」を面倒がらずすべて解くか、学校の授業などで教科書レベル を完璧にしていることを前提とすれば、例題の選題もなかなか。 進学校に在籍してはいるものの速い進度に追いつけず、基本のところをおろそかにした ままとにかく解法を覚えさせられるだけで来てしまった生徒さんがこういう本で「生き 返る」ことも多いと思う。高2以下か、浪人決定直後の生徒さんぐらいにしか薦められ ないが、意欲はあるが思ったように力が発揮できていない人はぜひ。 「大学受験のための中学からの基礎数学短期集中攻略」(栄光) 湯浅弘一先生お得意の、講義調と例解形式をミックスした初学者向けの本。長いタイト ルだが本当にそのままの内容。中学内容の復習から高校の教科書の本文レベルへの橋渡 しができる。大学入試まで対応しているわけではないが、読みながら例題を解いていく うちに、今習っている内容にすんなり入って来られるのがうれしい。「数と式」「方程 式と不等式」「2次関数」「平面図形」を扱っている。 筆者自身、掲示板で質問を受けていると、確かにこの本で中心となるレベルから復習し て欲しい人にもたくさん出会うのだが、今までは、特に「しんどい」と思われ、かつ熱 意はあると思われる生徒さんには中学生用の総まとめ用参考書を薦め、そうでない生徒 さんには、易しい導入本でとりあえず「慣れて」もらいながら、それでもつまずくとい う人にだけ改めて中学生用を薦めるということをしてきたのだが、この本の登場で、 「じゃあまずこの本から復習したら?」と言いやすくなったのは嬉しい。 さらに、一貫校の中学生で、授業レベルに対して余裕のある生徒さんに限れば、高校内 容の先取り(紹介)としてこういう本を薦めることもできる。「今は理解できなくてい いけど、頂点が原点じゃない放物線もあって、それはこういう式で表されるみたいだ よ」程度に、まさに「触れて」もらうわけである。各内容に変に深入りせず、初歩的な 応用にだけとどめているので、既習内容の復習をしながら、ちょっと得した気分になれ ると思う。 難点としては、毎度のことかも知れないが「詰めの甘さ」をあげたい。確かに説明のわ かりやすさやレベル設定を見れば受験生の現状を考慮していることはわかるが、「中学 からの」と謳うからには、今の課程においてどこまでが中学内容でどこからが高校内容 か、しっかり調べたうえで本として仕上げて欲しかった。読んでいるうちに自然と高校 内容まで理解できてしまうという一種の「錯覚」を与えるのも本づくりのテクニックで はあるが、さすがに「1次不等式」のところに「←中学校の復習」と書いてあったり (今の受験生が学ぶ課程では削られている!)、逆に書くべきところに書いていなかっ たりすると、指導要領や現課程の教科書内容をすべて見たうえで書いているかどうか、 そちらを疑ってしまう。大学受験が専門の著者だから仕方がないだろうという言い訳は 許されないと思う。 ご多忙であろう湯浅先生に恥をかかせないためにも、こういう部分についてはやはり出 版社側でのフォローが欠かせないのでは。 「湯浅の無敵のセンター数学TA・UB」新課程用改訂版(栄光) 06年度入試から必須になる(であろう)数学Aの「平面図形」の内容を加え、新課程 に対応。内容は単に分野別にフルサイズの過去問(&少々アレンジしたもの?)とその 解説のみで、対象レベルとしては中程度。正直、このレベルには類書も多く、この本を 薦める必然性はほとんど見当たらない。「Battle」「装備の点検」など独特の雰 囲気づくり(らしきこと)はしているが、果たして意味があるのだろうか。 さらに困るのが章立てである。「2次関数」「数と式」「確率」「数列」「三角比」 「三角関数」「指数・対数関数」「微分積分」「ベクトル」「論理・平面図形」の順に 収録されているが、この配列には正直言って疑問符がつく。数列と、数と式でも「整式 の割り算」に関する部分はBだし、論理・平面図形はAだから、教科書配列的な順序に 従っているわけでもなく、多くの受験生にとって取り組みやすい分野から順に並べてい るわけでもない(前書きにこういうことが明記されていないので、意図してこの順序に している可能性もほぼ消える)。新課程のセンター試験もT・AとU・Bに分けて実施 されるわけだし、T・Aだけで受験できる学科もあるわけだから、そういう受験生に対 する配慮も欲しかった。 ご多忙であろう湯浅先生に恥をかかせないためにも、こういう部分についてはやはり出 版社側でのフォローが欠かせないのでは。 # 雑感:自費で本を買う意味 # # 勤務校に限らず、学校で仕事をしていると、参考書の業者に電話をして「サンプルを # 見せてください」とお願いすると、大抵の参考書に関してはサンプルを送ってもらえ # ます。これらを学校外の人にあげたりしてはダメですが、自分自身の勉強にもなる # し、授業で出す追加問題のヒントにもなるわけですが、それ以上に「自分の懐を痛め # なくてよい」というメリットがあります。塾や予備校の先生方にこの話をすると、い # つも羨ましがられます。あと、勤務校の生徒さんには怒られるかも知れませんが、サ # ンプルが送ってもらえなくなったら、学校という職場にいる意味の(筆者個人にとっ # ては・・・多少大げさかも知れませんが)70%程度が失われてしまいます。 # # であるにもかかわらず、なぜ(明らかにサンプルを送ってもらえるであろう出版社の # 本であっても)あえて自費で買うのか。逆にこれは勤務校の先生方によく聞かれるの # ですが、私はいつもこう答えることにしています。「頼んだらサンプルがある分には # 送ってもらえるが、時間がかかる。本そのものが欲しいのではなく、読みたい本は一 # 刻も早く読みたいのです。あえて言うなら、本を買うのでなく本を読むための時間を # 買っている。そんな感じでしょうかねえ」・・・あと「タダより高いものはない」と # いう言葉もありますね。教科の教員全体としてでなく個人的に動きすぎるといろんな # 意味であとが怖くなりはしないかとか、そういう方面に気を遣ってもみたり。 ***05/03/07 ※ 03/06執筆分に加筆 「短期攻略 センターT・A(/U・B)実戦編」(駿台文庫) センター形式のオリジナル問題(予備校のテキストや模試の問題?)を分野別にまとめ た問題集で、「T・A」は50題、「U・B」は60題を収録している。各問題番号の 横には難易度を示す星のマーク(1個〜3個)と目安時間も書かれている。他教科との 兼ね合いを考えると、分量的にもこれが妥当か。「実戦編」とあるからには模試形式の 問題も収録して欲しかったところだが、新課程1年目で試行テストも行われていない今 の状況では仕方ないのかも知れない。 解説のスタイルでは難点が目立った。答案形式の解答が収録されているが、一応付けた だけといった感じで、そっけない。答案で太字になっている数字が答えなのだが、マー クではどの記号にあたるのか書いていない。副文に「←3−(6)」と書かれているの は巻頭の「重要事項総まとめ」の3−(6)を見よということらしいが、この本ローカ ルの番号づけであるし、当の3−(6)の中にも複数の公式があり、どれなのかわから ない。正直言って不便である。意図してこうしたのでなければ、やはりまずは公式名か 公式そのものを書いて、それと併記する形で番号指定をするべきだと思った。 ***05/02/17 「チャート式 センター試験対策 数学TA+UB」(数研出版) まず何より、新課程版のセンター対策向け演習書としてお薦めできる本が出てくれて ホッとしている。T・A・U・B内容が1冊にまとまっており、旧課程版に比べて分量 的にも絞られたので(この本の本冊+別冊が、「青チャート」T+Aの本冊部分と同じ ぐらいの厚さ)、他の本と一緒に使っても邪魔にならないと思う。また、センター対策 を意識した「素早く解く!」といったコーナーなど解説面も充実している。ぜひ多くの 人に使って欲しい。 分野ごとに「基本例題」「CHECK」「重要例題」、そして「実戦問題」(過去問) という配列になっている。具体的な使い方としては、基本例題のあと重要例題とその下 にある「問題」をやって実戦問題に進むか、基本例題をとばして「CHECK」から始 めるかのどちらかだろう。 ところで、この「CHECK」は傍用問題集の中では難しいほうの問題で、教科書学習 時に差がつくところでもある。筆者が以前に薦めていた中では「チェック&リピート」 (増進会出版社)が近い。センターは通過点と考えられる人と、対策で最後まで悩む人 の差は、けっきょくこのレベルを即答できるようになっているかどうかだと筆者は思っ ているので、多くの人にこの本を使ってもらい、悩みの解消に役立てて欲しいと思う。 「初めから始める数学T・A」PartT(マセマ) 馬場敬之先生による講義調参考書の新シリーズで、今回は徹底して日常学習用・初学者 向けをウリにしている。たとえば方程式・不等式の項では等式変形の仕組みから解説し てある。そのかわり、数学TとAで計2冊になる。今回はその1冊目である。 「元気が出る」の基礎の解説もそれなりに詳しいが、あくまで予備校の基礎クラスのレ ベルで、中途半端な感じは否めなかった。今回は序盤を長くとり、その中で例もかなり の数を扱っているので、文字どおり一般の高校生向けになったといえそう。本当に「つ いに出たか??」という感じだ。さすがに著者(馬場先生)も大学受験生の質の変化を 見て、「元気〜」よりさらに下が必要だ(売れる)と気づいたのだろう。 この手の講義調に対して筆者がいつも言っているのは、紙面が平板にならないための工 夫である。マセマのシリーズは矢印付き副文など「小さな部品」の使い方はうまいが、 全体のバランスについてはやや弱いといつも思う。頭から読むぶんにはそんなに気にな らないのだが、「探す」読み方をするときは不便さを感じてしまう。本文中で使ってい る字体が個性的すぎるせいもあるのだが、今回の場合だと公式適用例の問題文、「不等 式○○を解いてみよう」などの文言が文中に埋没してしていて探しづらかった。 「場合の数・確率 A・SOの解法」(学研) 新課程版になって、例題(問題文のみ)、マンガ、講義、例題の解答の4ページで1講 という形式となった講義調(?)参考書の第2弾。ある程度の基本事項は頭に入ってい るものとし、それを例題ごとに復習しながら、最後は網羅系の節末・章末レベルまで もっていくというコンセプトは理解できなくもないが、各講がブチブチ切られて変に独 立しているうえ、どの講もいきなり例題の問題文からというスタイルにこだわりすぎて いるせいか、使いやすさを感じない。 生徒さんがこの手の講義調に求めるものの1つに、「授業を受けているようなメリハ リ」があると思うのだが、本としてのスタイルを優先しすぎるあまり、その部分が損な われているのが非常にもったいないと思った。 「中高一貫数学コース」数学5をたのしむ(岩波書店) ようやく完結。 「分野別 受験数学の理論」B場合の数・確率/E数列 ようやく完結。E数列では「数列の極限」に関する内容も扱っている。 「新課程 やさしい数学T・A」(洛陽社) 数学ではあまり聞かない出版社だが、著者が駿台の元講師ということで見てみた。ひと 昔前の予備校のテキストに講義部分を付け足したような内容だが、説明はやたらと文章 が長く、詰めて書かれており、答案形式のところは省略が多い。いかにも古くさい感 じ。 収録例題は4つのレベルに分かれているが、易しい問題は下に答案形式の解答が載って おらずポイントや一部の途中経過だけを説明しており、難しい問題は答案だけになって いる。旧課程版の「解法のプロセス」(旺文社)における着眼の説明と模範解答が、問 題によってどちらか1つだけ載っている感じだ。たしかにこの本のノリがわかればトン トンと進むし、筆者個人としてはこういう「解説」の作り方もありかなとは思うが、 ターゲット層が狭いこともあるので、その層がつまずくであろうレベルの問題だけでも もっと詳しく丁寧に解説すべきだと思った。著者(講師)が自分の担当する生徒さん向 けに、つまり読者のことを完全に把握して出すならこれで良いのだろうが、市販本とい うことを考えると疑問符がついてしまう内容であった。 # 筆者は、この本を最初見たとき、表紙の色づかいから「ああ、これは英文法や古文、 # 漢文の本をほそぼそと(?)作り続けている出版社だな」と直感したが、まさにその # とおりで、参考書マニアにしか分からない妙な喜びにしばし浸ってしまった。 ***05/02/08 ※05/02/06執筆分に加筆修正 「高校生のための逆引き微分積分」(講談社ブルーバックス) 外見は新書版だが中身はほぼ受験参考書なので、ここで紹介することにしました。 $ (前書きより)数学Vの微分積分を一応習ったけれど、頭の中が整理しきれていない $ 人、大学の理系学部に何とかもぐりこんだけれど、まだ高校の微分積分がよく分かっ $ ていない人にも役立ちます。 $ $ (帯より)解き方が判らないのは、教科書が問題ではなく、答え(手法)で分類して $ いるからです。本書では、個々の問題(関数)→手法の逆引き方式によって、解法の $ 定石を解説します。 ・・・とあるとおり、数学Vの微分積分(とくに積分計算に関するところ)を半講義調 で解説した本です。頭から読み進めていくぶんには既存の参考書と大して変わらないの ですが、やはり新書版ということで、見開きの情報量の少なさというハンデは如何とも しがたいです。大学で学ぶ微分・積分とのつながり等を含め、全体に「いいこと」が書 いてあるのですが、あとで探そうと思ったときに手間がかかります。 しかしそれ以上に、大学入試問題が本文中にいきなり出てくるのが問題です。箇所に よっては大学入試問題→例題→大学入試問題と続くこともあります。さすがに不必要と は言いませんが、読み飛ばすか後回しにするかしたい読者のことも考えて欲しいです。 全体に、大学の教科書にありがちな「読者は頭から真面目に読み進め、いちど読んだ内 容は覚えてくれるだろう」という執筆者の認識(傲慢?)から十分に抜け出せていない 本です。例題は問題文を枠で囲み、場合によってはページを改める。大学入試問題につ いては章末にまとめるなどしてあったら印象もだいぶ変わったでしょう。そんな中、巻 末の「索引」で本文内で出てきた積分計算その他が一覧で探せるようになっているのは 大きな救いでしょう。このおかげで、何とか「逆引き」と呼んで差し支えない、いわば 生命線です。 手前味噌になりますが、NET学園の新矢先生が書いた「速攻 数学V 微積分計算」が 私の中でひとつの基準になっていて、どうしてもこの手の本が出てくると「速攻」と比 べてしまうのです。「速攻」の巻末にある、筆者自身が数学Vの積分計算を思い出す手 助けにさえなった手法のまとめ「各論」と比べると、この本ごときが「逆引き」と名 乗っているのが個人的に許せなかったりするのです。 「分野別 受験数学の理論」G微分・積分(駿台文庫) これもある意味「例のやつ」ですね。「受験教科書」としてSEG出版から発売されて いた、思いっ切り正統派の解説本。シリーズの中でもとくに分厚い本で、大雑把に最初 の3分の2がいわゆる高校の数学Vの内容。残りは高校数学の範囲外の内容と「わき」 の知識です。最後のほうにある補足の「評価の思想」が個人的に目を引きました。 ***05/01/28 「坂田アキラの2次関数が面白いほどわかる本」(中経出版) もはや言うことは何もありません。「例のやつ」です。書店で実際に見てみてくださ い・・・。 今回、数学T内容ということで、受験生のみならず、教科書学習と並行して読む生徒さ ん、一貫校の中学生の予習用なども意識しているようです。解答(答案形式)の前に略 解形式の「ナイスな導入」がありますが、ここの扱いでさまざまなレベルに対応でき、 それが幅広い人気の秘密にもなっていると思います。具体的には、 1:初学者は「導入」を読んでノートに答案をつくり「解答でござる」で答え合わせ 2:確認を兼ねた演習がしたい人は「導入」を読み飛ばして「解答」で答え合わせ 3:ザッと復習する人は「導入」を読んでわからなかったものだけ「解答」を見る 4:実戦演習なら巻末の問題一覧で取り組む問題を選び「2:」か「3:」へ などのようにすればよいでしょう。別に難しいことではなく、自然とこの読み方になる と思います。 初学者向けの工夫に関して言えばは、巻末の「ナイスフォロー」が目を引きます。平方 完成、二重根号簡略化などの演習量が補えるし、軽く読むにも邪魔にはなりません。 さて、毎度「爆死する!」だの「即死でっせ!」だの不謹慎なことを書く著者ですが、 もはやこれも「お約束」となってます。筆者自身もこの本の影響を受けていて、授業中 に「ぐはぁっ!」だの何だの叫んでますが、思いっ切り「引かれて」しまってますね (苦笑)。今さらですが、講師(著者)のキャラクターが講義調の大事な要素だという ことを痛感します。 ***05/01/25 (年度版)「10日あればいい 2006大学入試数学T+A(/U+B)演習」 _(実教出版) 学校採用が主力だが市販もされている「10日あればいい」シリーズの中では最もレベ ルの高い「演習」の新課程版。見開きで1つの分野・テーマを扱い、左ページで例題を 解説したあと、その下あるいは右ページの最初から「演習問題A」「演習問題B」が続 く。入試標準レベルの入り口から中ほどまでを全体的にカバーしており、こなせばひと とおりの力はつく。 旧課程版からの特徴であるが、例題の解説は丁寧である。問題文にはアンダーラインが ひかれて要点や選ぶべき解法が書き込まれているし、解答の横には解法の流れを説明し た「分析とイメージ」もある。この調子で「演習問題」の解答・解説の丁寧にして欲し かったが、コストパフォーマンスを考え、かつ「学校向け」と割りきればこの程度でも 仕方ないのかも知れない。 「10日あればいい」全体にいえることだが、まずある程度の知識は前提で(この本の 場合は傍用問題集レベル?)、別冊解答で理解できないときに質問できる環境もあった 方が望ましい。この本で自学自習できるぐらいなら、もっと高レベルの本を薦める。 ***05/01/21 「堀川晋の数Uの微分積分が面白いほどわかる本」(中経出版) ・・・今までの同シリーズの本に比べて、分厚さからして明らかに貧弱。急づくりの感 は否めない。これで果たして「面白いほどわかる」シリーズと言っていいのか。 明らかに違うのは導入部分。このシリーズの特徴であった軽妙な講義部分がほどんどな く、章によってはいきなり問題文の羅列、それに対して着眼点の説明もろくにせず、答 案の羅列。計算や注釈を見れば確かに詳しいが、それ以上のものがない。「面白いほど わかる」の基本はあくまで講義調ということだったはずなのだが、それすら崩れてし まっている。 この本に関しては「Ver.2」の発売を切に望む。坂田アキラ先生の続刊が出るよう なので、そちらでリベンジなるか。 「合格!数学U・B(/V・C)プラス110問題集」(マセマ) 旧課程版からあった、マセマの本を気に入った人が演習量を増やすための本。この本の レベルの問題を押さえれば受かる、具体的には中堅からやや上あたりの私大の志望者 で、網羅系にいちいち戻るのに抵抗感がある人には良いかも知れないが、筆者はこの本 の紙面がどうしても好きになれず、いつも詳しく見る気をそがれている。 このシリーズの良さはやはり「答案に対する書き込み式の解説」なのだから、見やすさ を犠牲にしてまで1題の解説を無理やり1ページに収めるよりも、ページ数が増えても もう少し余裕のある紙面構成にした方がよいと思う。それ以前に、数字に使われている 字体がくどくどしくて、参考書向きじゃないなといつも感じているのだが・・・。 (新)「フォーカスUP」(啓林館) ※05/01/17執筆分に加筆修正 青チャートよりやや易しめ、黄チャートと同レベルぐらいの総合参考書。旧課程版は正 直言って使う気になれない本だったが、新課程版で内容が大幅に見直された。実はこの 本、04年度より学校採用限定の本となり、書店の店頭には並ばなくなってしまった。 そういうこともあり、筆者としても非常に心配していたのだが、今回ここで紹介するの には理由がある。 05年度採用分から「改訂版」として、現場の意見をとりいれてマイナーチェンジされ たものに変わる。しかも、将来にわたって2年ごとに内容を見直し、改訂を重ねていく というのだ。 キーワードは「自学自習用」らしい。実際、例題ページや別冊解答における「副文」、 また基本事項を再整理するページやいわゆる「質問コーナー」なども、今回の改訂で一 段と充実した感があるし、節末・章末の問題番号の横に対応する例題番号を示されるよ うになり、使いやすさがUPしている。収録問題に関しても、おそらく学校の先生に意 見を聞いて見直したとおぼしき箇所が多くある。たとえば「2次方程式の解の配置」に 関する例題枠が1つから2つに増えたり、「1次方程式と2次方程式の連立方程式」の 解き方を示すだけの例題枠が新たに追加されたりしている。 これでベストになったというわけではないし、ここからさらにどう改良すべきというこ とを筆者が言えるわけでもないが、出版社、執筆者として内容面を常に見直していくと いう姿勢を示したことは評価に値する。 最近、筆者のもとにV+Cの採用見本が届いたので、時間が空いたときなどにちょく ちょく見ている。今回改訂されるのはT+Aだけだが、U+BとV+Cについても、そ れぞれ2年ごとに改訂していく予定だそうである。 # 雑感:数学V+C版参考書における諸単元の扱い一覧 # # ・・・を作る必要性をひしひしと感じている。Cの「条件つき確率」は収録扱うの # か。Vの発展事項である「微分方程式」をどこまでケアするのか。生徒さんのレベ # ル、状況、志望などにより、本としての使いやすさよりそちらを優先して選ばなけれ # ばならなくなることも考えてである。・・・ということは、各参考書の対象生徒層、 # 評価、そしてもちろんこまかいレビュー内容もT・A・U・BまでとV・Cとで別だ # てにしなくてはならない状況が多く考えられるわけで・・・。 ***05/01/01 (新)「チョイス新標準問題集」数学U/B/V・C(河合出版) 河合出版から出ている入試基礎〜標準レベルの問題集の新課程版。問題はAとBに分か れていて、Aはいわゆる網羅系の例題を終えたあとの力だめし用。Bが過去問演習前の 足固め用で、やや難しいが頻出のもの、パターンから外れるもの、進んだ問題という構 成になっている。数列の応用で「格子点の個数」など、参考書には載りにくいテーマに についても、重要なものに関してはきちんと問題数をとって解説してあり(しかし邪魔 にはならない)好感が持てる。さらに、巻末にある略解(ヒント)が適度に詳しく、解 く問題の選択基準に使えそうだ。 全体を通じて、突飛すぎる収録問題もほとんど見当たらず、略解の存在が機能性を強化 しており、繰り返し使用にも堪えると思う。よく「○○を終えたんですけど、もう少し 上の問題を網羅した本がありませんか」という相談を受けるが、そういう人たちにとっ て選択肢の1つになるだろう。 難点としては、本によってAとBの線引きやおのおのの分量に差があることがあげられ る。留数先生からも指摘を受けたが、「V・C」を基準に考えると「U」が易しすぎ、 「B」が重たすぎる。おそらく本づくりが分業になっているために各著者(講師)クセ が出ているのだろうぐらいは想像できるが、いかに予備校系とはいえ「シリーズもの」 を謳う以上、しかも著者の語り口が表に出ない「問題集」であることだし、それでは済 まされない。何とかして欲しい。 # 薦める立場としても、実は非常に困っていたりする。 ***04/12/28 「土曜日に差がつく 数学T・A・U・B計算力エクササイズ」 「(同) 数学T・A(/U・B)典型問題エクササイズ」(河合出版) 「土曜日に差がつく」とは何ともわかりやすいタイトルですが、つまりは主として公立 高校に通う生徒さんで、教科書レベルに不安を残す人向けの基礎がためドリル的演習 書。見開きで1つの小テーマを扱っており(目安時間は20分もしくは30分)、基本 事項のまとめがあったり、紙面に余裕をもたせて丁寧に解説してあったりと、初学者向 けを意識した工夫が見られます。 そろそろ受験を意識し始める時期、何かやりたいが、いわゆる「網羅系」は分量的に多 いので心配だという人には、とりあえず力だめしとしてこれらの本をやることを勧めま す。レベル的にはもう少し上までやっておくべきですが、少なくとも演習授業でいきな りつまずくということはなくなるでしょう。 最初タイトルを見て、筆者は「土曜日を利用して、教科書学習と並行して演習量を増や すための本」なんだろうなと思いました。中を開けてみると、まさにその期待どおりの 内容・レベル・分量だったのですが、帯(おび)を見ると少し違ったことが書いてあり ます。「1土曜日2時間4題−4ヶ月完成」とあり、さらに「高2秋・冬(2ヶ月)→ 高3春(2ヶ月)→高3夏前」とあるのです。本来、教科書学習時にこのレベルまでは 完全に仕上げておくべきなのでしょうけれど、ほとんどの受験生はそのレベルになく、 受験を意識する高2秋ごろから「何かやらなければ」と焦り始めるというのが現実なの でしょう。 # 雑感:問題集の役割分担が進んでいる? # # 教科書レベルのトレーニングのための本としては、「カルキュール」(駿台文庫)、 # 「短期完成!基礎力徹底ドリル」(学研)に続いてこの「土曜日で差がつく」(河合 # 出版)と、ひととおり出揃った感があります。「基礎力徹底ドリル」は網羅性が高い # がその分多い。「土曜日〜」は分量的にもレベル的にも軽く、そのかわり解説が詳し # い。「カルキュール」はそれらの中間といった印象ですが、こういう本が出てきたこ # と自体、大変嬉しく思います。 # # 従来「問題集」というと、問題の収録枠組や解説が全体に平板であったり、他の教材 # と併用するには分量が中途半端に多いものが大半でした。それでなくてもほとんどの # 生徒さんは学校で「教科傍用問題集」というのを持たされていて、やるのも基本的に # そちらが優先になるので、収録問題の大半が傍用問題集と重複するものを市販しても # 売れるわけがないし、(さらにそれらは自力でやらなければならないわけだから)到 # 底使えないわけです。筆者自身ようやく分かってきたのですが、演習書・問題集のあ # るべき姿として、以下のような役割分担で考えるとスッキリするようです。 # # 1:「土曜日〜」のような、純粋に教科書の本文レベルに絞ったトレーニング向け # 2:「チェック&リピート」のような、教科書より少し上を幅広くカバーするもの # 3:「やさしい理系」や「新数学演習」のような、実戦レベルの演習用 # 4:「1対1対応」「考え方解き方」のような、網羅系参考書の延長上のもの # 5:「こだわって!」のような、分野限定で易から難までカバーするもの # 6:「東大の理系数学25ヵ年」のような、いわゆる過去問系 # # 大雑把に、収録問題のレベルで考えると1〜3、学習者の目的別で考えると4〜6の # 分類が出てきます。この分類がすべてとは言いませんが、どっちつかずで、到底使い # ものにならない本が、演習書・問題集にはまだまだ多く残されています。 ***04/12/27 (新)「解法のテクニック」数学V・C(科学新興新社/フォーラム・A) 勤務校にサンプルが送られてきたので、早速見てみました。前々から言っているとお り、教科書レベルから「傍用問題集」レベルを仕上げた人が上のレベルに触れるための 本に仕上がっています。核になる問題のレベルとしては「青チャート」「ニューアク ションω」などに近いのですが、易から難まで幅広く問題を収録しすぎているこれらの 本に対して、この「解テク」は全体的に問題の難易度が「そろって」いるという印象が 強く、万人受けはしないけれどもピッタリはまったときの学習効果が期待できます。 以前にも書いたかも知れませんが、この本を使う層として真っ先に思いつくのは、やは り一貫校の生徒。高2から数学V・Cの教科書事項を学んでいる人が、余力の範囲で 日々の学習と並行して使うのにはもってこいです。さもなくば、浪人生の年度前半の基 礎がため用か。 # 新課程版の数学V・Cの参考書で問題になっているのが、数学Cの「確率分布」の範 # 囲の例題を収録するかどうか、そしていわゆる「発展的内容」、具体的には数学Vの # 積分の応用である「微分方程式」、それに数学Cの行列の応用である「線形写像」の # 諸性質などをどう取り扱うかです。現時点で、各社から一応は出揃ったわけですが、 # これらの部分の扱いは本当にバラバラです。筆者自身、こんなにバラバラでいいのか # と心配したくなります。作り手(出版社・著者・編者)の意向もいろいろあるみたい # ですが、最終的にどういう収録状況に落ち着くのかは、正直な話、新課程入試が始 # まってみないと何とも言えないというのが現状のようです。難関国立大で、これらの # 内容を扱うぞ扱うぞと言ってこちらを「脅して」いるところがありますが、ただ教育 # の現場を混乱させるだけでなく、その「サンプル問題」と呼べるものを1〜2題でい # いから今すぐ作っていただけませんでしょうか??それさえあれば、教科書や参考書 # の作り手も「発展」の度合いが分かるし、何より生徒も安心するってものでしょう。 ***04/12/07 (新)「本質の研究」(旺文社) 早くU・B以降が出て欲しいなあと思う今日この頃・・・、 この本の著者である長岡亮介先生と、直接お話をする機会に恵まれました。「黒大数」 の共著者でもいらっしゃいますが、2冊とも、いわゆる例題網羅型の総合参考書とは一 線を画し、基本事項の掘り下げと本質の理解に重きを置くという点で共通しており、お 聞きしたお話も(これらの参考書が直接話題になることはなかったのですが)やはりそ れらに沿ったもので、自分の考えが間違っていないことを改めて感じました。 まず「例題網羅」ありきで、何題やればどの大学の入試問題まで対応できるかといった 質問をよく受けますが、これほど愚かな質問もないと思っています。例題網羅も学習法 のひとつではありますが、それが必須ではありません。網羅系参考書がダメだと言うつ もりはありませんし、実際掲示板でもよく薦めていますが、網羅自体が目的ではなく、 日々の継続というのはやはり大事ですし、その中で皆さんが「本質」に触れるきっかけ をつかんで欲しいと願ってそうしているのです。 ***04/11/28 「カリスマ先生の数学」(PHP研究所)※11/24執筆分に加筆修正 最近はやりの、いわゆる「復習本」。中高生に限らず、社会人や大学生までターゲット にしている。数学と実生活のかかわりや数学の歴史に触れさせて数学に興味を持たせつ つ、教科書レベルの問題をいくつか解説するという、よくあるスタイル。著者は代ゼミ のまさに「カリスマ講師」、山本俊郎先生。確率や規則性の話から論理、微分・積分の 理論まで、高校の「数学基礎」のネタにできそうな内容をあちこち「つまみぐい」して いる。 本のコンセプトはわからないでもないが、執筆者が盛り込もうと考えている内容が多す ぎる。確かにスッスッと読めるし、部分部分に関しては「ニヤリ」とさせられるところ もあったが、全体的にみれば、各内容が単発に終わってしまっている印象も強いうえ、 会話調が前面に出すぎていて、言葉を尽くして丁寧に丁寧に説明する山本先生の持ち味 も半減していると感じる。随所にイラストが挿入されているが、一部本文の内容とリン クしていないうえ(老先生キャラが登場するのに老先生のイラストがないなど)、そう かと思えば脈絡に乏しい水着女性・・・センスを疑う。 ・・・とここまで普通に内容の紹介をしてみたが、実は極めて腹立たしく思っている。 本の内容よりも、著者が山本先生だということに(?)である。この本を出している PHP研究所にはっきり言いたい。第一線で受験生の指導にあたっていらっしゃる山本 先生の貴重なお時間を、こんな本のために無駄にしないで欲しい。大げさかも知れない が、日本の国全体にとって多大なる損失だと思う。いっそ、ほとんどの内容は山本先生 のお手を煩わせることなく、いわゆる「ゴーストライター」に書かせたものであると信 じたい(苦笑)。 この先生は「数学が面白いほどわかる本」シリーズ(中経出版)も担当していらっ しゃったはずだが、こちらの続きはどうなったのだろうか。このシリーズにこだわるわ けではないが、本業は「予備校講師」なのだから、やはり今まさに困っている高校生や 予備校生に直接役立つ本の執筆を優先すべきではないのだろうか。 ***04/11/24 (新)「超基礎数学塾 かみくだき数学U」(学研) 以前からあったシリーズで、旧課程版の馬場敬之先生から今回は今野和浩先生に著者が 交代。本自体のコンセプトは、教科書学習を中途半端に終えてしまった生徒さん向けに 基本事項を駆け足で導入しつつ入試基礎レベルの代表的な問題をピンポイント的に紹 介・解説するというもので特に変化はない。 正直、旧課程版の馬場先生の導入については「乱暴」という印象が強かったので、その 部分が(著者が代わったこともあるのだろうが)今回かなり改善されていて好感が持て る。随所に「例題」(教科書の問・練習レベル)が入り、またそれが次の事項や「実戦 演習」(入試基礎レベルで、この本のメインの問題)に巧妙につなげられている。授業 としての「流れ」を重視しながらも、大事なところはきちんとまとめる。正直言うと多 少不自然に感じるところもあったが、今野先生独特ともいえるこの「メリハリ」にはい つも感心させられる。紙面構成的にも、旧課程版の妙な「狭苦しさ」がなくなり良い感 じである。 難を言えば、やはり「実戦演習」の選題である。確かに代表的なところをとってきてい るし(予備校で言えば中堅クラスの前期の教材っぽい)、「超基礎数学塾」というコン セプトも考えて説明しはじめると厄介になるものは省いてもあるが、もう少しレベルを 落としてもよかったのではないか。超基礎なのだから、メインの問題を入試問題で固め る必要はなかったと思う。せっかく「実戦演習」1題に「練習問題」(実戦演習の類似 問題)をセットにしてあるのだから、このどちらかのみで入試問題を扱うなどの手法を とってもよかったのではないか。率直に言って、収録問題には数値だけややこしくした ものが多く、せっかくのテンポが損なわれる。 ***04/11/19 (新)「短期完成!基礎力徹底ドリル」(学研) 教科書の問・練習レベルの問題を1回30分目安のミニテスト形式にした本。見開き左 ページに問題、右ページに解答・解説というスタイルになっている。現在、数Tと数U の一部しか発売されていないが、数Aの「確率」を扱ったものなども早く出て欲しい。 計算力向上には「カルキュール」(駿台文庫)があったが、1つの見開きに配置された 問題数がやや多く、自分でペースを決めてじっくりやれる人以外にはややしんどい(速 い人と遅い人の個人差も出やすい)という問題があった。とくに他の教材と並行して取 り組みたい人には、1回の学習でやるべき箇所が区切られていた方がよいので、この 「基礎力徹底ドリル」を是非おすすめしたい。 # NET学園の先生方と、ちょうど「計算ドリルが欲しい」と話していたときに、タイ # ミングよくこの本が見つかった。「ドリル」というと小学生が使う教材のようなイ # メージがあるが、たとえ高校生であっても、そういうことを決して軽視できない状況 # になっているのだろうか・・・。 ***04/11/14 (新)「佐藤の数学教科書」2次関数編(東進ブックス) 言葉を尽くし、丁寧な語り口調で教科書事項を解説した本。今回のこの本は数学Tの 「2次関数」の分野だけを扱っているが、これだけで厚さが数Tの検定教科書よりもあ るのにびっくり。本当に、検定教科書を講義調にした感じだ。「日本で一番わかりやす い」というタイトルはどうかと思うが、基本に忠実なので、自学自習には向くだろう。 問題レベル的にも、「グラフや定義域が動く最大・最小問題」や「2次方程式の解の配 置」など、入試の基礎と呼ばれるレベルの問題はひととおり扱われており、この本だけ でもある程度完結する。解説面でも、とくに重要な問題については、いわゆる「解説 答」(答案形式を崩し、答えの中に説明を盛り込んだもの)と通常の解答を併記したり するなど工夫もみられる。 使用者として真っ先に思いつくのは一貫校の中学生の先取り用。あとは、網羅系や傍用 問題集の内容がイマイチ理解できていない人。何となく例題のマネをして解答を作って いるけれど意味をわからずやっている人は案外多いのではないだろうか。 「うっちィーの美しい数列」(ギルドブックス) また、数学参考書の世界をナメているとしか思えない本を見つけてしまった。 目新しい工夫の見られない、そっけない解説。少しふざけたような語り口で、おまけに 冗談のセンスが古い(笑)。そこに脱力感あふれる挿絵が加わる。著者は河合塾の講師 らしいが、こんな内容の本を河合出版から出してもらえるわけもなく・・・。 ***04/10/29 (新)「スタンダード(/メジアン)数学演習T・A・U・B 受験編」(数研出版) 学校採用向けの演習書。まだ見ぬ新課程入試1年目を見据えて編集されており、出版社 の苦労がうかがえる。 前者「スタンダード」の方が難易度的には高く、別冊解答も後者「メジアン」には付く が前者には付かない。一応のグレード付けはあるのだが、核になる収録問題の難易度が 似通ってくるため、見るべき点は見開きの構成の仕方に絞られてくる(この会社の本を 含め、この手の演習書では見開きで1つの分野・テーマを扱っているため)。 「スタンダード」は左ページが基本問題、A問題、右ページが例題1題、B問題の構成 である。「メジアン」は最初に例題、それから右ページにかけてA問題、B問題の順だ がスタンダードに比べて1ページに並ぶ問題文の量は少なめに抑えられている。とはい え、どちらも分量的にはかなり多め。とくに「スタンダード」は生徒さんの家庭学習に 待つところが大きくなる。 # 出版社側のグレードに従うと、難易度は難しいほうから「オリジナル」「スタンダー # ド」「クリアー」「メジアン」「シニア」「ベーシックスタイル」の順で、上の2つ # には別冊解答がない(教師用の教授資料のみ)。また、今回から「オリジナル」の問 # 題を精選して収録した書き込み式の問題集「オリジナルセレクト」が加わる。 (新)「(年度版)ニュースタンダード数学演習T・A+U・B」(数研出版) (新)「(年度版)数学T・A+U・B標準演習 PLAN100」(数研出版) センター対策に重点を置いた学校採用向けの演習書。「ニュースタンダード」は見開き で1つの分野・テーマを扱う形式で、左は私大入試の小問(我々が言うところの「チェ クリピ」レベル)、右はセンター試験の問題が中心になっている。右も左も分量が中途 半端に多い気がする。「PLAN100」は書き込み形式で、こちらもセンター対策用 をうたっているが、分量も少なく難易度も高くない。1学期は基礎固めでつぶれてしま いそうな生徒さん向けに、センター対策と銘打った授業をするための本だと思う。 # 出版社側のグレードに従うと、難易度は難しいほうから「ニュースタンダード」 # 「ニューステージ」「PLAN100」の順で、さらに続刊が予定されている。 「坂田アキラの三角関数・指数・対数が面白いほどわかる本」(中経出版) 教科書の基本事項から非常に丁寧に導入している講義調参考書の人気シリーズの続刊。 受験に数学Uを使いたいが教科書レベルから身についていないという文系受験生(とく にセンターの数U・Bを何とかしたいと思っている人)や、教科書学習と並行して何か 軽めの本を使いたい高2生などにおすすめ。 以前に出た「数列」の出来が非常に良かったので、それに比べるとやや期待はずれの印 象を持ってしまった。「板書調」とも言うべきこのシリーズのパワー・・・坂田ワール ドとでも言うべき雰囲気がやや影をひそめ、例題の解答・解説中のこまかな注釈ばかり が目についたせいと思われる。まあ、扱っている分野が分野なので仕方のない面もあろ うが、これでは紙面の見づらさが際立ってしまわないか。 さらに、収録されている問題がいわゆる網羅系参考書で例題として扱われている問題止 まりで、到達度的に「数列」より明らかに低いことにも疑問を持たざるを得ない。単純 に考えても、「三角関数」「指数・対数」という2つの分野を扱っているこの本のほう が「数列」だけを扱った本より薄いというのはおかしいだろう。総合参考書だけをライ バルに据えるならそれでも良いのだが、他の講義調の内容まで視野に入れれば、もう少 し入試っぽい問題まで扱った方が訴求力があったはず。ターゲットを明らかにする意味 も含めて、たとえばセンター試験などを題材に、もっと総合的な内容まで入れた方が良 かったのではないだろうか。 人気の著者・シリーズであっても、肝心の内容が十分に練られないまま、話題のうちに 続けて出したいという出版社側の意図が強く出すぎるとそのパワーは半減してしまうの だなあというのが現時点での率直な意見である。今のままでももちろん参考書全体から すれば十分及第点だが、個人的には増補版(Ver2.0?)の発売を強く希望する。 ***04/10/19 (新)「高校数学テキスト」T/A/U/B(聖文新社) 中学生用の問題集として超有名な「新中学問題集」(教育開発出版)と同じサイズで、 紙面構成がそっくりの問題集。おそらく学校一括採用向けなのだろうが、筆者のよく行 く書店では以前から並んでおり、他の本のついでに購入してきた。 パッと見てみたところ、なかなか良い。各節の最初に基本事項のまとめがあり、代表的 なタイプの問題には例題枠がある。各例題枠の下にまず類題が必ずあり、テーマによっ てはその次にややひねった問題が何題か続く。このサイクルがいくつか続いたあと、 「練習問題」というページ(これが節末に相当)でそこまでにやった内容を復習・定着 できるようになっている。さらに章の終わりには章末問題があり、その分野の知識を 使って解ける入試問題までを扱っている。 おそらくは学校の授業で使うのが前提だろうが、問題の収録枠組が単調でなく小気味良 いし、分からないところも切り捨てやすくなっているので、家庭学習の際も使いやすく 感じるであろう。オーソドックスな授業展開としては、 * 基本事項の導入部分と例題を黒板で解説したあと、続く問題が授業内演習か宿題 * 練習問題ページは宿題に出して範囲の小テストをするか、定期試験前の自主課題 * 余裕があれば章末を考えさせ、質問授業のような「つまみ食い」形式で解説 といったところが考えられるだろう。外見もそうだが、作り方のポリシーがモロに「新 中問」。計算問題の練習量、それに完全類題を必ず付けるところ、節末でレベルを上げ すぎないところなどは、変化のある繰り返しで解法のパターンを身につける中学生の学 習法をかなり意識している。教科書レベルだけを早く終えたい一貫校の生徒さんには是 非おすすめしたいが、どこの書店に行っても買える本なのだろうか?? 「数学を人に教えられる本」(マセマ) 分数の計算の仕組みの解説。数学的帰納法などの論証。数列。座標幾何。三角関数。ベ クトルの同じく導入部分。途中、数列にからめてはローンの話なんかもされているが、 なぜこの組み合わせなのかイマイチ伝わってこない。とくに後半は、数学の苦手な高校 生向けの本の講義部分をそのまま会話調にして引き伸ばしただけのような印象もある。 ターゲットはおそらく国立文系および私立の大学生で、受験生時代にマセマの本を愛用 していた人。家庭教師や塾講師をしようと思っている人には特に良いと思う。問題は解 けるがいざ基本事項を導入してみろと言われると意外とできないことに気づくが、そん なときにこういうネタ本を持っておくと安心する。 「もう一度やってみよう! 数学の基礎」(日本能率協会マネジメントセンター) 著者は「河合塾」となっていて、一瞬「河合塾シリーズ」かと勘違いしてしまうが、出 版社は参考書ではまったく聞かない会社だった。しばらく読み進むとわかるように、S PIに代表される就職筆記試験等の対策本で、範囲は中学までと、一部高1内容の数学 と算数。執筆しているのは河合塾本体の講師・スタッフではなく、グループの専門学校 「トライデント」のスタッフとのことだ。 実は、就職試験や資格試験の対策本、加えてちょっと前までは看護学校の入試対策本な んかもそうだったのだが、この手の本には、学参を見慣れているとあまりに内容に乏し かったり不親切だったりする本が多い、というよりほとんどであるというのが現状のよ うだ。 ***04/10/08 (新)「数U 微分・積分が得意になる問題集」(駿台文庫) 1つの分野にしぼり、入試基礎〜標準の入り口レベルまでの問題を集めた問題集。著者 は2人で、うち1人は「チェック&リピート」(増進会出版社)の共著者。 問題はテーマに分かれており、1テーマは1〜2ページ、5〜10問程度。さらにA、 B、Cの3レベルに分かれており、Aは即答レベル、教科書内容をひととおりさらった だけでは歯が立ちにくいBが中心、Cがチャレンジ問題的位置づけになっている。 分野別の本としては分量的にやや多いので、全体を仕上げようとすると挫折する恐れも ある。もし使うとしたら、さしあたって、たとえば面積なら面積、接線なら接線だけを やるなど、気になるテーマにしぼって、そこを集中的に演習していくのが良い。そのた めの本・・・つまり、演習量を増やして定着をはかる本であって、分野全体を単発の問 題で網羅する本ではない、という印象を持った。 ターゲットはやはり文系の受験者であろう。どのみち文系ではこの分野がひとつのヤマ になるわけだから、演習量が多いに越したことはない。とくに計算力の弱い人にはおす すめである。また、文系で頻出の「1/6公式」を使う問題も、この本では問題数を とって詳しく扱ってある。理系はここに深入りするよりさっさと数Vを先取りして欲し い。この分野をやるなら、センター対策を兼ねてそっちの演習書を使った方が良い。 ***04/09/29 (新)「大学入試へステップアップ 実力強化問題集」数学T+A(文英堂) 教科書内容の確認と入試基礎〜標準レベルの演習問題までを1冊にまとめた問題集。教 科書の問・練習レベルの問題数をおさえ、節の最後のほうに入試問題を多めに収録して ある。同社の「シグマ基本問題集」、これは日常学習用で「理解しやすい」に対応した 問題集という位置づけだが、それよりも問題数は少なめになっている。別冊解答集「解 法マニュアル」は、この手の問題集のそれにしては詳しく、副文(注を参照)はないも のの要所要所に着眼・指針的な内容がコンパクトに書かれており、好感が持てる。 タイトルにも「大学入試へステップアップ」とあるように、高3生や浪人生で、数学 T・Aの基本事項を復習しながら入試問題にも随時触れていきたい人向けか。 欲を言えば、もう少し内容を精選し、分量も抑えて欲しかった。そこでどの問題を削り どう再編成するかをきちんと考えることによって、対象レベルがよりはっきりし、問題 の配列方法も見えてくるからである。指導者用のネタ集としてはこれで十分だが、自学 自習用ということを考えると正直物足りない。 この本が依然として「重く」感じられるのは、傍用問題集っぽさが抜けきっていない中 に、各節の後半に難しい入試問題がズラズラと並ぶからである(いくつかの問題には 「必修」「難」などのマークがついているが、不十分だし、その付け方にも疑問を感じ るところがある)。教科書レベルの確認問題のまとめ方は良かったが、節によってその コンパクトさにバラつきがあったので改善して欲しいのと、さらに機能性向上のための ひと工夫である。もっと細かい小テーマでまとめる、難易度マークを付ける、例題枠で 区切る、総合問題だけ巻末に回すなど、いろいろな方法がある。市販の参考書では旧課 程版の「Z会数学基礎問題集 チェック&リピート」(増進会出版社)などが参考にな るだろう。 新課程版で、日常学習と入試との「つなぎ」に使いたい本としては、同社から「数学 T+Aの考え方解き方」が出版されており、他社の本も含めて今のところこれがベスト と筆者は考える。体系立てて学ぶにはこれで良いが、速習がしたい人もいるはずなの で、それを考慮して、この「実力強化問題集」に期待するものがあったのだが、この中 途半端さは残念。「意欲作」として一応の評価はするが、改訂版(もしくはこのコンセ プトを受け継ぐ新シリーズ)を待ちたい。 # 注:副文(ふくぶん) # # 答案の横に「←三角関数の加法定理」などのように書き込まれた補足説明等の総称。 # ほとんどの網羅系参考書の例題ページに付いている。別冊解答も例外でなく、従来は # 答案だけの2段組(ページを縦に2つに割って掲載する)だったのが、この副文方式 # が「ニューアクション」(東京書籍)シリーズで採用されてから、一気に他の参考書 # にも広まった感がある。 # # いわゆる総合参考書では、紙面を縦に区切って専用のスペースをとり、真右から書か # れることが多い。同じ真右でも「黒大数」(研文書院)のように、答案のすぐ横に続 # けるパターンもある(この場合は文字色や字体が変わる)。予備校系の本になると、 # かなりまとまった内容を副文に入れることが多くなるため、そういった本ではいろい # ろな方向から矢印が飛んだり、矢印を長く伸ばしたりして離れたところに書き込んだ # りしている。特にすさまじいのは何といっても「坂田アキラの数列が面白いほどわか # る本」(中経出版)。副文の域をはるかに超えた量の補足を紙面にぎっしり詰め込ん # でいるが、よく見ると、答案の邪魔にならないように配慮されたものと、あえて本文 # に割り込んで書かれているものにはっきりと分かれている。最初はうっとうしく感じ # るが、慣れればそれほど違和感なく読めるようになるのはこのおかげだと思う。 # # なお、「副文」は参考書に限らず書物一般に使われる用語で、対義語は「正文」。 ***04/09/27 「高校数学+α 基礎と論理の物語」(共立出版) 前書きに「大学数学へのかけ橋」とあるように、いわゆる受験参考書とは違う。高校数 学全分野の基本事項や公式の導入部分を講義調でふり返る本である。一部、教科書と違 う導入をしており、たとえば積分法の導入では「まず原始関数ありき」でなくまず区分 求積法から入るなど、学生にも発想しやすいアプローチを大切にしていると思う。 「基礎と『論理』の物語」と銘打っているのだから、もっと「かしこまった」読み物か と思ったら、単に高校の教科書の導入を丁寧にしたような感じで、数学科出身でない筆 者にも意外と読みやすかった。ということは、あっさりしすぎていて物足りないという 人も当然いるだろうが。 ***04/09/26 (新)「ベクトル・数列 A・SOの解法」(学研) 旧課程版から発売されていたシリーズ。例題とその解説をメインにしながらも、基本事 項の確認と着眼点の解説に講義調をまじえた丁寧さが特徴。正直、旧課程版は参考書と しての完成度も低く、収録問題の配列やバランスにも疑問を感じていたが(とくに基礎 の確認用の問題が変にややこしいのが気になった)、収録問題もほとんど差し替えられ ているし、かなり改善された感じではある。ただ、あくまで旧課程版(初版97年)に 比べればのレベルではあるが。 内容はおそらく予備校本科の授業(上を狙いたいが基礎の確認も怠れないレベル)のテ キストと講義部分が元ネタ。教科書レベルはひととおり完成し、次は「解法のプロセ ス」(旺文社)などに進もうと考えているが、いきなりは不安だからまずは分量を絞っ て丁寧にやりたいと考える生徒さん向き。「基礎」のところは、わかりきっているなら とばしても構わないだろう。 ただ、紙面構成が全体にうるさく、しかも強調されるべきところがしっかり強調されて いないことに腹立たしさを感じる。各講(節)の最初にある脱力感をそそるマンガが目 立ちすぎ、本来強調すべき「例題」の問題文は、細く弱々しい字体で書かれている。さ らに解答・解説ページは真っ青。解答部分、例題の問題文再録部分の両方とも背景が薄 い青で塗られていて、さらに解答への手書きの書き込みが濃い青になっているのだが、 答案の中でポイントとなる箇所がこの「書き込み」と同じ色になっていて、強調どころ か埋没してしまっている。近年の学研の本からは想像できない読みづらさである。 ページの端に基本事項や解法のポイントが書かれているのが「工夫」とも言えなくもな いのだが、これが紙面をかえって狭く感じさせており、それに見合う効果が得られてい ないことも問題にしたい。だいたい、こんなところに小さい字で長ったらしく書かれた フレーズをたよりに本をパラパラ見ていく読者がいるだろうか。もっとシンプルに、例 題の問題文を再録したページを設け、そこに基本事項と解法のポイントのまとめを付け 加えれば十分ではないか。 全体としては、「入試っぽい」問題を扱っているがそれ以上でもそれ以下でもないとい う印象にとどまる。生徒さんの現状も考慮すれば、旧課程版の時代よりも基礎に戻る ウェイトを高めないといけないと思うので、同じ分量でベクトルだけもしくは数列だけ の本にし、網羅性も高めてもっと丁寧に解説して欲しかった。とくにベクトルの方はま だまだ改善の余地がありそう。 # 雑感:参考書から予備校の授業を見つめる # # 筆者はこれまでにも「予備校のテキストの焼き直しのような参考書だ」という評をし # てきたが、今回の「A・SO」の変貌ぶり・・・いや、参考書としての評価を下げて # いるわけではない、収録問題のレベルの低下ぶりを見て、さすがに危機感を抱いてし # まう。おそらく、この「テキスト」を使うクラスの生徒さんは、文系でも国立か、各 # 地方ではそれなりに名の通った私大を志望しているはずなのである。ところが、教科 # 書レベルの基本事項すら満足に身についておらず、当然テキストの問題を予習するど # ころではない現状が見てとれる。 # # 予備校の授業でも、テキストに入る前に基礎の復習を入れる必要に迫られるが、1講 # の時間が増えるわけではないから、当然限界がある。そこで、当日の授業内容を理解 # するのに必要なところだけをいかにコンパクトに提示するかが重要なテクニックに # なってくるのだろうと筆者は推測する。そうするのは、生徒さんの負担を軽くするこ # と、また授業の満足度を上げることを考えれば当然のことなのだろうが、これが行き # 過ぎるとすべてがその場しのぎになってしまい、体系立てて教えるなどといった部分 # がどんどん犠牲にされてしまう。 # # 生徒さんのレベルが低ければ、求めるもののレベルも低い。今回は、参考書を通じて # それを見てしまったような気がした。筆者も一時は予備校のカリスマ講師になりたく # て仕方のない時期があったのだが、この「レベル」をもっと早く知っていたら、もっ # とすんなり見切っていただろうにといつも思う。 ***04/09/10 # 雑感:参考書における「有名」大学 ※09/07執筆分に加筆 # # 実際に受験生を集めているかどうかはさておき、「チャート式」をはじめとする参考 # 書や問題集には入試問題がよく収録される、いわば参考書世界における有名な(?) # 大学というのがある。いろいろな本に同じ大学の同じ問題が載っていたり、同じ本の # 中で同じ大学の問題が何題も扱われていたりすると、レビューする側としては何故な # んだろうとついつい思ってしまう(こういった偏りは、出題している大学自体が少な # い数学V・C分野の問題についてより顕著である)。また、大学によっては問題の作 # り方に特徴があって、それが参考書の問題として収録しやすい(収録しにくい)要因 # になっているという場合もあるだろう。そういう意味で、特に印象に残っている大学 # をあげてみると・・・ # # 東京大・京都大:よく言われているように、教科書的な分野別にとらわれない出題を # _してくるため、教科書学習を終えたばかりの生徒さんはたいてい手が出ず悩む。章 # _末に1題2題何げなく収録されているが、「大学の名前が欲しい」、つまりこう # _いった大学の入試問題まで収録しているんだよと言いたいがために無理して載せて # _いる可能性もある。正直、他分野との融合が少なく、考えれば何とかなる「場合の # _数・確率」、それにハイレベルな演習書における「整数問題」ぐらいしか、突飛で # _ない収録を見たことがない。逆に言えば、これらの大学を(とくに理系学部を)受 # _けようとすれば、教科書的な分野別に従って編集された演習書だけではやはり不十 # _分で、一定以上の過去問演習が不可欠になってくると思う。筆者が過去問演習を重 # _視するのもこのためである。 # # センター試験:受験者は多いが、皆さんもご存知の独特の誘導形式がある。ひとつひ # _とつの設問は基本的でも、それらが一緒くたにされると十分に差がつく要因になる # _好例といえる。参考書への収録も、やはり節末・章末が中心になるが、東大・京大 # _と明らかに異なるのは、あくまでセンター試験は教科書的な分野別に即して出題さ # _れているという点。とくに網羅系にセンター試験やその前身の共通一次試験の問題 # _が収録されている場合、それらは(出題年度は古くても、いや古い場合のほうがむ # _しろ)比較的無理なく取り組める良問であることが多く、力試しには最適なので、 # _是非取り組むべき。 # # 自治医大:04年度入試では数学T・Uからの出題で、解答はセンター物理のように # _いくつかの選択肢から値や数式を選ぶ形式である。1つ1つの問題は単発で、まっ # _たくの教科書レベルかそれを単に複雑にしただけの問題が半々ぐらいだが、問題数 # _が25もあり、それを70分で解かなければならないので、全体を「試験」として # _見ると、いわゆる難関大とはまったく違うハードさがある。シングルカットされた # _問題と実際の入試問題の印象がこれほど違うのも珍しい。我々指導者や参考書の執 # _筆者向けのネタ集としては絶品であるが、受験生として受けたくはない(苦笑)。 # # 筑波大:理系学部の2次試験は例年数学V・Cのみの出題。数学Cのコンピュータや # _統計に関す問題も選択できるようになっている。もちろんそれらの問題に対処する # _ための(いわば道具としての)数学T・A・U・Bの力は必要だが、たとえば数学 # _Bの「ベクトル」単体での出題はしないということである。また、理系学部にして # _は珍しく1つ1つの問題が検定教科書における各単元(分野)の枠組みを踏まえて # _いるので、とくに「ニューアクション」のα以上(東京書籍)や「こだわって!」 # _(河合出版)を使えば対策しやすい。ただし、レベルはかなり高め。分野ごとの総 # _合的な力が問われるので、参考書には収録されづらい。入るにしてもやはり節末以 # _降が中心になるだろう。 # # 東北学院大:教科書内容に従って入試問題を出題するという姿勢を忠実すぎるぐらい # _貫きまくっており、出題も非常に素直である。04年度入試では、数学A・数学 # _B・数学T・数学U・数学Vの5科目から計3科目を選ぶようになっている。筆者 # _は「ココからスタート基礎問」数学U・B(学研)にここの問題がたくさん収録さ # _れているのだが、筆者自身それを知るまでは、(東北地方の入試に関わることがな # _いので)まあ名前に「学院」とあるから何となく私立だろう程度の認識しか持って # _いなかったが、この本を含めいろいろな本で絶えずこの大学名をまのあたりにして # _いるうちに興味がわき、ついに赤本を立ち読みし、この出題形式を知ったわけであ # _る。赤本のコーナーでこの本を見かけると、筆者は「ココから収録ネタ問数学」と # _書いたシールを表紙に貼りたくてウズウズしてしまう(病気?)。同じような出題 # _形式の大学として福井工大などがあるが、「チャート式」なども含めて、よく見か # _けるのはなぜかこの「東北学院大」。何かあるのだろうか?? # # 早稲田大:学部によって問題の難易度や出題形式にかなり差がある。参考書の作り手 # _から言えば、とにかく大学の名前が欲しいときに、こういう大学は非常に助かる。 # _早稲田の場合、理工は国公立並み、経済・政経も文系の中ではかなり難しいが、商 # _学部などは小問も多く、くみしやすい。いろんな意味で「狙い目」である。入試傾 # _向を正確に伝える(知る)ならやはり「ナマの」過去問に勝るものはない。参考書 # _でも学部学科、日程などの明記が基本であろう。 # # 近畿大:近畿地方ではやはり名の通った大学であるが、大衆化しており、学科を選ば # _なければ受験生のレベルはそれほど高くないはず。それなのに妙に難しい。近大の # _上には関関同立という4大学があるが、それと比べても決してひけをとらない。ま # _た、なぜかは分からないが同じ近大でも文系学部のほうが理系学部よりも難しいよ # _うな気がする。ちなみに、理系で言うと、医学部と理工学部は大阪府、生物理工学 # _部は和歌山県、工学部は広島県、あともうひとつ九州理工学部(産業理工学部とい # _う名前に変わったはず)があり、人気・難易度もかなり違う。最近、とくに生物理 # _工学部の人気が高く、問題も骨太の印象。その一方、九州理工学部の問題には中学 # _レベルの問題まで出ている。・・・近畿地方における「狙い目」か? # # 静岡理工科大・愛知工大:冒頭に小問集合があり、ここから多く採用されているよう # _だ。とくにV・Cの本でよく見かける大学名である。とある受験雑誌に愛知工大の # _記事が載っていたので読んでみたところ、ここはNHKでやっている「ロボットコ # _ンテスト」の常連なのだそうだ。「チェック&リピート」数学V・C(増進会出版 # _社)は、こういう「お得感」のある大学(入試は不必要に難しくなくて、倍率もお # _そらく低い。また、場所は山奥だが設備はパンフを見る限りしっかりしている)の # _入試問題のオンパレード。 # # 秋田大・山梨大(医):医学部入試というと、国公立では他学部との共通問題が中心 # _で標準的な出題が多く、私立では教科書レベル+αの問題が中心で計算力・処理能 # _力を主に試されるというのが大まかな傾向だが、数学の入試問題をかなり本格的に # _作っているところといえば、やはりこの2大学ではないだろうか。計算力はもちろ # _んだが、難関学部を目指す者として、それ以上の力もつけて欲しいという大学関係 # _者の熱意の表れ、と言えばほめ過ぎだろうか。前者は「チャート式」でよく見かけ # _た。後者は「場合の数・確率」分野の面白い問題を予備校のテキストなどで何問か # _見ている。他の問題も含めてかなりの計算力が必要。 # # 奈良女子大:以前、数列(新課程数学B)の「群数列」という出題ジャンルについて # _調べた際、この大学で出題された問題(同じもの)が実にいろいろな本に載ってい # _て驚いたのを覚えている。ネタとしては「ありがち」なものと思うが、良問かつ数 # _列以外の知識をそれほど必要としない問題であったことが、参考書に載せやすい要 # _因となったのかも知れない。他に、出題された時期が参考書の執筆時期と重なった # _ので編集者・執筆者の印象に残った、最近は群数列の(参考書に載るレベルの)出 # _題自体が少ないなどの原因も考えられる。 # # 筆者がこういう情報を得るきっかけとなったのは、やはり自分のサイトの「アドバイ # ス掲示板」である。受験生どうしでも似た情報はかなりやりとりされているようだ # し、最近は頻出のアドバイスを断片的に集めたサイト(テンプレート集)というもの # もあって、入試問題を見たことがない人でも、そこから切り貼りすればそれっぽいこ # とが書けるようになってしまったが、筆者はそういったものができるずっと前から、 # 自分の目で教材と入試問題を分析し、あくまで「自分の言葉で」アドバイスすること # を心がけ、また実践してきた。このところ、アドバイス内容もだんだん確立されてき # たと感じるが、初心を忘れることなく、常に新鮮な気持ちで質問に耳を傾け、紋切り # 型でない本当に個人個人を見つめた回答をこれからも続けていきたいと考えている。 ***04/09/07 (新)「元気が出る数学V・C」(マセマ)※09/02執筆分に加筆 他の導入向け参考書に先立って発売された。V・Cは内容自体が大変難しいのだが、部 分部分はかなり噛み砕かれているので、とくに極限分野の初歩的な練習問題で挫折する よりは、ある種の即効性のあるこういう本で分野の概観をつかむのもアリかも知れな い。ただし、この本はあくまで一時的に使う本であるということを忘れてはいけない。 計算練習の量を別の本で補ったり、同じシリーズの上位レベルの本か網羅系で穴を埋め たりする必要がある。 旧課程版も持っているので見比べてみたが、数学V分野に関しては選題・構成・表現を 含めてほとんど同じ。数学C分野は課程の変化に対応するため、新たに書き加えたり旧 課程版の「数学B」の本から持ってきたりしている。表現や図などで改善されていると ころも一部だがあるので手抜きとまでは言わないが、とにかく早く出してしまいたいと いう思惑が先行しすぎてはいないだろうか。 とくに気になったのが「頻出問題にチャレンジ」という枠組みで収録されている入試問 題(小テーマのまとめ的意味合い)が旧課程版とまったく同じだったこと。旧課程版の 初版は平成13年であるが、この調子だと旧旧課程時代の入試問題である可能性もある わけで、少々心配になってしまう。同じタイプ・難易度の問題で構わないから、新しい 年度の入試問題から選び直すだけでも出来なかっただろうか。なぜこういうことを言う かというと、それは生徒さんが、そして我々のような指導者が入試傾向を知るのに、意 外とこういう本をその「入り口」にしたりするからである。 このシリーズを通じての特徴とも言える「〜だね」「〜だよ」などの使い方も全体的に 若干おとなしくなったように感じるのだが、筆者はとある参考書紹介本でこの本が「語 り口がオカマっぽい」などと評されていたことを知っているので、余計な勘ぐりをして しまう。まあ、これも広い意味では「改善」といえるのか。 ***04/09/02 「大学への数学 解法への探求・確率」(東京出版) 上級者向けの、確率分野の強化用演習書。その難易度と分量のバランス・解説面・実用 性(というより、つまりは「一般受け」)などの側面から、筆者がいつも薦める本の中 には入れていないし、実際に使っている知り合いもいないので詳しいこと言えない が、・・・となぜこの場でわざわざ言わなければならないかというと、実は、先日この 本が「月刊:大学への数学」の増刊号から「1対1対応の演習」のような単行本という スタイルに変わったからなのだ。 ただし、単行本になって変わったところは今のところ見当たらない。筆者が所有してい る2002年度の増刊号と何ページか見比べてみたが、すべてとはいかないまでもほと んど内容は同じ。どうやら、毎年同じ内容で「増刊号」として出ていたものが単に単行 本化されただけだと考えて差し支えないようだ。とは言うものの、生徒さんが「確率を 勉強したい」と思い立つ時期は様々であるし、扱いとして単行本のほうが時期を問わず 安定供給されるだろうから、この差は案外重要なのかも知れない。 「分野別 受験数学の理論」Dベクトル/H行列/I2次曲線(駿台文庫) 以前、SEG出版から発売されていた「受験教科書」というハイレベルな講義調参考書 (・・・に一応分類されるのだろうが、大学の教科書のような参考書である)が、新課 程の施行に合わせて駿台文庫から発売されたもの。新課程で弱い事項、たとえばDベク トルであれば「ベクトル方程式」や「空間内の平面の方程式」、それに基本事項自体の 証明(導入)なども詳しく扱っている。 # 分野と箇所によるが、通常の教科書とは異なる面白い導入をしているものもあり、指 # 導者の立場で言えば総じて好感が持てる(恥ずかしながら、筆者自身この本で初めて # 知った事実もある)。ただ、この本のような導入が実用でも使えるかどうかはやはり # 生徒さんの実状も見て場面場面で判断していかねばならず、悩ましいところ。 留数先生もおっしゃっているように、紙面構成のそっけなさに物足りなさを残す。今ど き網羅系でも黒以外に赤・青の2色を使っているものがあるし、そうでなくてもほとん どの本ではレイアウト枠や罫線をうまく使って答案部分と「副文」を区別したりしてい る。予備校系になると、重要事項や興味深い図は黒板のようなイラストの枠に入れて強 調しているものまである。どうしてもそういうものと比べてしまうのだ(もっとも、こ れは駿台文庫の本全体にいえるのかも知れないが・・・)。 # 雑感:「カリスマ参考書レビュアー・水野健太郎先生絶賛の書!」への道 # # この本の帯(表紙の上から巻かれている細長い紙)に、とある国際的な数学者の先生 # が顔写真入りで登場していて、この先生の絶賛の書!・・・とある。もちろん、こう # いった先生にコメントをいただくのも悪くないのだが、いわゆる「名前貸し」の領域 # からどの程度出ているのかといえば大いに疑問が残る。 # # 普通の受験生などはかえって敬遠してしまうだろうし、筆者のような、決して数学が # 得意とはいえない生徒さんを相手にし、日々結果を求められる指導者にしても、果た # してどうなのだろう。特に筆者などは、この先生が今現在の高校生とどの程度接する # ことが出来ているのかをまず疑うし、同様に、世間に出回っている参考書と呼ばれる # ものの一体どれほどに目を通されたうえでのコメントなのだろうかとも考えてしまう # わけだ。 # # 筆者は数学の専門家ではないし、このシリーズに関しては、究極的には大学以降の数 # 学にお詳しい先生にしか評価できないものだと自身認めているので素直に譲る(?) # けれど、曲がりなりにも現場に立って教材を見続けてきたという自負はある。機会が # あれば、帯でもいいし、書店の特設コーナーなどのメディアなどでもいいから、そう # いう場で自身の活動を世間にアピールしたいと常々思っている。・・・というわけで # 興味のある皆さん(誰?)からの、いつあるか分からないオファーを心待ちにしなが # ら、今日も寝るとしよう。 ***04/08/17 「(年度版?)大学への数学 新数学演習」(東京出版) 毎年、夏休みを前に発売される、難関大志望者向けの定番シリーズ。大体の内容は知っ ていたが、今年こそ現物を手元に置きたかったので購入。前まえから感じていたことだ が、見た目より分量がかなり多く、しかも序盤からかなり「飛ばして」いるので注意が 必要。難関大志望者で、過去問演習もある程度こなしたうえで、その知識を「総整理」 するための本であろう。 「新課程数学A 野竿 場合の数・確率・命題と論証 講義の実況中継」(語学春秋社) まだ詳しく見ていないが、少し前に出た「2次関数(その他)」と同じ分量・レベル。 (新)「10日あればいい 短期集中ゼミ 実戦編」数学U/B(実教出版) 新たに2冊、発売されていた。「T+A」から通じてシリーズとしてのまとまりもコン セプトも、そして価格の面でも評価するが、やはり分量的・レベル的中途半端さは否め ない。標準的な網羅系のレベルを復習しながら、その内容にプラスアルファする状況 (中堅までの学校の過去問演習の前段階)ではそれなりに使えるが、あくまでペース メーカーの一種ととらえ、適宜他の教材や過去問も併用すること。 前述したように、演習量・網羅性も考慮すれば、このレベルの定着には「考え方解き 方」(文英堂)が理想。あまりにも理想すぎて手に負えないという人のために、このシ リーズのような本があるのだという認識を筆者は持っている。 ***04/07/28 「センター試験数学 30秒速解テクニック」(日本実業出版社) センター試験および私大のマーク問題に使える「裏ワザ」的な解法を集めたもの。この 手の本にしては、キワモノ的・ブラックボックス的テクニックは比較的少なく感じた。 不等式の不等号を無視して方程式で処理したり、数値代入法に代表される特殊化を用い たりといったテクニックはいろいろな本で見るが、それらが単発に終わらず、読み進め ていくうちに複数の箇所で出てくるので、この手の本にありがちな「疑わしさ」がかな り薄れており、好感が持てる。適宜講義調をからめてあって、読みやすい。 収録問題の出題年度だけでなく、「T・A」「U・B」「T」「U」の別もぜひ書いて おいて欲しかった。数学TもしくはT・Aのみの受験生も少なからずいるわけで、そう いった生徒さんこそ、この本に載っているような解法を必要としているのではないかと 思うからである。 以前にもここで類書を紹介したことがあるが、問題(解法)の配列に関してはいつも考 えさせられる。似たアイデアをまとめて紹介するのか、それとも出題分野で分けるのか という「2択」が基本になるのだが、まずはそのどちらなのかをはっきりさせること。 ついで、1冊の中でこれら2つのパターンをミックスして、使いやすさをアップさせて いきたいところである。今回紹介した「30秒速解テクニック」の編成を分析すると、 $ 1:最初のほう(1章〜2章)に、読み手にインパクトを与えるためのいわば「つか $ _み」の部分があり、ここではアイデア主導の説明がなされている。 $ 2:各分野の問題の解説が、T・A→U・Bの順に並ぶ。各章の中で、同じ分野の問 $ _題がある程度まとまっている。 $ 3:「複雑なパターンの問題を解く」「有名私立大学マークシート対策」という章が $ _続く。T・A、U・Bの区別はない。 $ 4:最後のまとめとして「過去問演習」がある。問題を見ればどの分野かわかるの $ _ので、分野別といえなくもない。 このうち、1:で各分野の問題が混ざるのはある程度仕方ないが、いきなり最初の問題 が数学U・B範囲の問題である時点で、数学TもしくはT・Aのみ受験の生徒さんは完 全に置いてきぼりである。前述したように、出題分野の区別が容易につき、せめて2問 めか3問めぐらいにT・Aの、それもインパクトの強い問題があればまだ良かったのだ が・・・。テクニックを整理する部分がなかなか良いだけに、このマイナスは非常に もったいない。 2:の部分は良いので、この割合をもう少し高くしたいところだ。3:で紹介されてい るテクニックの一部を2:に回し、全体をもっと整理すれば、さらに良い印象になった と思う。正直、3:はいまいち整理しきれていない。この章の内容も捨てがたかったの で「ネタ切れ」とまではさすがに言わないが、とにかく本の形にするために、あれもこ れも付け加えたような印象はぬぐいきれていない。そのうえで、4:をどの場所にから めるかだが、ここは好みか。 ***04/07/26(7/25執筆分を加筆修正) (新)「試験に強くなる 数学T+Aの考え方解き方」(文英堂) 教科書レベルと入試標準をつなぐレベルの問題を集めた本。二重根号内に文字式が入っ た問題や、文字係数を含む2次関数の最大・最小など、教科書と傍用問題集に載るか載 らないかのレベル、また大抵の本で扱ってはいるが難しいものに重点をおいている。 筆者がこの本をパッと見たときに、比較対象として真っ先に浮かんだのは、高校の演習 授業で多く採用されている「10日あればいい 大学入試短期集中ゼミ 数学T+A実戦 編」(実教出版)。新課程版で見比べてみたところ、「考え方解き方」は「10日」と 同じかやや高いところを狙っていることがうかがえるが、使いやすさでは文句なしに上 である。 基本事項のまとめ・説明のページもあるし、そのあとに「CHECK!」として軽い練 習問題も収録してある。網羅系の例題レベルが仕上がっていることが前提となるが、例 題枠に相当する「TYPE」の問題は栄養分が高い。節末の「EXERCISES」に もかなり多くの問題が収録されているが、多くの問題の問題文の近くに例題枠との対応 が示されているので、見通しは良いほう。 ただ、どんなに工夫しようが、やはり人によって理解不理解の差が出やすいものを集め ているということには変わりないので、扱いには注意が必要。とくに「CHECK!」 で手いっぱいの人は使うべきではない(ただ、その本を使えるレベルにあるかどうかの 判定が同じ本の中で容易にできるところは評価に値する)。時間がない人はとくに節末 の扱いに注意しよう。もし使うなら、解ける問題だけを先にどんどん解いていき、残っ たものをもう一度だけザッと流す感じで、先に進むべきであろう。 # 教科書学習時にこのレベルにまで手を出せたら、あとの入試演習がどんなに楽になる # ことかと、筆者はこういう本を見ていていつも思う。 *** 04/07/26 (新)「小島の難関大突破 ハイレベル数学」U・B(栄光) 楽しみなシリーズのU・B版がやっと出た。とにかく分厚い。T・Aの本とはまた別モ ノという印象だ。確かにU・Bは文系にとっても理系にとっても重要な範囲で、入試問 題のパターンも幅広いし出題数も純粋に多いことを考えれば、この問題数でも仕方がな いのか。収録問題の難易度は「#」マークで標準と難に分かれているが、問題数との兼 ね合いを考えたらもう1段階ぐらい欲しい。 (新)「黒大数:大学への数学」U&B(研文書院) 基本事項の導入に定評のある硬派な参考書。数学の好きな人にはぜひお薦めしたい。こ のシリーズの新課程版で「T」と「A」は2冊に分かれていたが、内容的に重たいはず のUとBが1冊になっているのは一体なぜだろう。価格も2600円とかなり高い。 ***04/07/09 「DVD数学教室 平面ベクトル」(アルファ数理セミナー)※個人 何を隠そう、NET学園の新矢先生がご自分で作られたDVD教材。内容は平面ベクト ルだけで価格も2万円とそれなりだが、約12時間かけて丁寧に説明されているし、予 備校の衛星授業などに比べれば割安。基本事項の導入から入試基礎レベル(主要な参考 書で扱われている典型題)まで網羅している。先生ご自身が高校生の塾で長く指導され ていることもあり、主に数学Bを早めに(先取りで)学習しておきたい公立高校の生徒 さん用を意識しているが、幅広く使えそうである。 分量や収録時間等これで適切か、また付属しているテキストがどうかなど、考えるべき 問題は多々あるが、一定水準はクリアしていると思う。ただ、今は他に比較対象となる 教材がないので、もう少し詳しく見て、評価をしていきたい。とにかく、今後こういう 教材が出てきたときのひとつの基準となることは確か。 # 筆者も参加している「NET学園」関係者によるものなので、評価が手前味噌になら # ないように注意したい。 # ・・・とりあえず、宣伝だけしておきます。↓こちらを参照してください。 # http://www.jttk.zaq.ne.jp/alp/dvd/index.htm 「(年度版)合否を分けたこの1題」(東京出版) 「(年度版)大学入試攻略数学問題集」(河合出版) 最近、この手の本がちらほら見られるようになった。筆者はこれらを「良問集」と呼び たい。中でも、この2冊は最新の入試問題(フレッシュ問題)から選んだ良問を集めた ものであり、その双璧ともいえよう。古い問題まで含めれば「入試数学 伝説の良問 100」(講談社ブルーバックス)などの本もあるが(ちなみに著者は駿台の安田亨先 生)、内容面に加え実用性も兼ね備えた本ということで考えれば、やはりおすすめはこ の2冊ということになろう。 # 以前は「闘う50題」(SEG出版)というシリーズもあったが、現在はどうなって # いるのだろうか。レベル的にも高すぎて、まるで手に負えなかったことだけは記憶し # ているのだが・・・。 前者は、主要大学の04年度の入試問題の中から、合否の分かれ目になったと思われ る、つまり受験生の出来の差が激しかったと思われる問題を1題ずつ選んで解説しなが ら、入試傾向の分析もしている。後者は04年度の入試から標準的な良問を科目(数学 T、数学A他)別に配置し、さらにトピック的な問題の紹介をしている。普通に問題を 解いていくなら後者のほうが使いやすいが、純粋に読み物として考えれば面白いのは前 者。どちらにせよ、難関大志望者で、中でも比較的数学が得意な人の力だめし用か、さ もなくば我々指導者自身の勉強用。 今、筆者は中学部で仕事をしており、大学入試問題に触れる機会がほとんどないので、 こういう本の存在は非常にありがたい。 ***04/07/05 「新課程数学T・A 野竿 数と式・2次関数・三角比・平面図形 講義の実況中継」  (語学春秋社) 実況中継シリーズといえば、受験生のあいだではひとつの定番になっている講義調参考 書であるが、これはその新課程対応版の第1弾。著者の語り口を引き立たせるような字 体の強調など、紙面構成面では工夫がみられる。もう少し1ページあたりの情報量を増 やした方が逆に読みやすくなるのではと思ったが、我慢できなくはない。 まず対象レベルが気になるが、著者自身前書きに書いているように、入試基礎レベルの 確認を通じて入試標準レベルへの橋渡しをすることを意識しているようだ。また、基本 事項的な内容でも生徒さんによって理解に差が出やすいところに関しては、適宜戻って 丁寧に解説しているのも嬉しい。 ただし、本文中で扱われている問題には答案形式の解答がついていない(講義部分と混 ざっている)ので注意が必要。とくに、「基礎チェック」のレベルの問題は、この本の 中では本当に「チェック」の位置づけになっているので、自力で最低5割は解けるよう になっておかないときつい。その他の収録問題に関しても、読むだけではどこまで定着 するか疑問を感じる。やはり、巻末の演習問題(こちらは詳しい解答がついている)に までしっかり取り組むか、さもなくば別の本で演習量を増やすかするべきだろう。 # 雑感:解説中でどの程度まで基本事項に戻るべきか # # 丁寧さをウリにする講義調によくある構成として、「講義はあくまで問題の解き方を # 中心に進むが、解説の枠組みの中で、その問題を解くのに使われる基本事項を整理す # る」というものがある。今回は、この是非について少し考えてみたい。 # # こういう本が多く出てきた背景には、予備校の(主に中堅レベルの)授業がそういう # 構成になっているということがあると思う。あくまで問の解説を中心にしながらも、 # 必要最小限の導入を付け足すことにより、基本事項のみの羅列というつまらない(も # う理解している人にとっては逆に苦痛にもなりうる)時間帯がなくなり、問題の中で # 基本事項がどのように使われているかがコンパクトに示されるわけだから、授業を受 # ける側は「聞きやすい」と感じるだろう。それに、大人数になれば生徒さんが授業を # さえぎって質問することは不可能に近くなるから、そういう条件下では変に基本事項 # をスキップして生徒さん側に疑問を残すことは致命的なのである。 # # どこまで戻って導入するか、逆にどの部分をテンポよく進めていくべきか、そのへん # のバランスやメリハリをどうするかが、塾や予備校の重要なノウハウになってきてい # ると思う。それには筆者も同意する。ただ、それを「本」という形にするとき、何も # 考えずに著者(講師)の授業の進め方そのままに構成してしまって良いのだろうか。 # # 確かに、他のページや本を参照したくてもどこを見ていいかわからなかったり、また # 面倒くさく感じたりすることはあるので、時々なら導入に戻るのも悪くない。しか # し、そのせいで解説が何ページにもなってしまうと逆に読みづらくなるし、また、基 # 本事項のまとめのページがなく、あとで確認したいときに探しづらくてもいけない。 # こういう本は、とりあえず通読するには良いが、それ以上使う気がしない。 # # 授業はその場限りのものだから、気持ちよく聞けることを重視すべきであるが、本は # ずっと残る(必要ならばいつでも見られる)ものだから、講義調といえど、全体のま # とまりをもっと意識して作るべきではないか。 ***04/06/21(6/15執筆分に加筆) 「山本俊郎の確率[原則編]が面白いほどわかる本」(中経出版) 「坂田アキラの数列が面白いほどわかる本」(中経出版) とりあえず、著者が増えました。山本先生おひとりでは全分野を網羅する前に課程も変 わってしまう、このことを筆者は大変危惧していたのですが、その点ではひと安心で す。しかも、2人目の著者である坂田アキラ氏というのは、当サイトでも絶賛している 「看護医療技術系の数学[数T・A必出問題の完全解法]」(文英堂)の著者です。こ の本を最初に手にしたとき、たとえようもないショックを受けたものです。そのパワー は今回も健在で、予備校でも抜群の集客力を誇る実力がいかんなく発揮されています。 代わりに、シリーズとしての統一感をどう保つかという新たな問題が出現しているわけ ですが、このシリーズの場合、対象レベルにさほど大きなバラつきがなければ、ページ のスタイルなどは各著者にまかせる方向で構わないでしょう。使い手が各著者のテイス トを理解し、それに乗っていくような形で使いましょう。以前の「細野本」のような、 本の途中から問題が急に難しくなってしまうなどの使いづらさはかなり改善されてお り、より万人受けする構成になったことは確かです。 「確率[原則編]」は基本事項から丁寧に導入していく従来の山本先生のスタイルで、 典型問題にも豊富な別解がついており、理解が深まります。演習量はやや少なめなの で、教科書レベルで挫折してしまった人の再導入、傍用問題集レベルの確認をしながら 入試問題に触れる、この2つの用途に向きます。教科書の配列とは少し異なるので、教 科書学習と並行して使うべきではないでしょう。 「数列」はむしろ一般的な参考書の形式を土台に、著者なりに親しみやすさを追求した 結果として「講義調が強く出た」感じで、「ナイスな導入」(苦笑)や「イメージコー ナー」など、とにかく賑やかな紙面が目を引きます。 # いや、実はちょっと賑やかすぎて場所によって紙面が見づらいんですが・・・ こちらは演習量もそれなりにあって、典型題から入試基礎・センターレベルまでをほぼ 網羅していますが、不安なら他の問題集と組み合わせてください。特にこの「数列」は 講義調好きにはたまらない出来に仕上がっています。ぜひ見てください!! 毎度のことですが、講義調の宿命ともいえる紙面の間延び感、横からの書き込み、これ らが我慢できない人は買うべきではありません。 ***04/06/10 「東大の理系数学25ヵ年」他(教学社) 「東大の理系数学23ヵ年」といえば、以前より難関大受験者に薦めていた分野別過去 問集ですが、先日、02年度と03年度の2ヵ年ぶんを加えた「25ヵ年」が発売され ました。これから買う人はこちらを買いましょう。 見てみましたが、内容は本当に2ヵ年分を加えただけです。収録問題は、各分野ごとに 古い順に並び、分野別に1から番号がついているので、旧「23ヵ年」に収録されてい た問題については問題番号も(そしてページ構成も)前と同じ。指導者を中心に、この 「25ヵ年」に買い換える人も多いと思いますが、ある意味非常にありがたいですね。 25ヵ年ともなると、そのあいだに課程も何度か変わっているわけですが、将来何年度 の入試から出題範囲に入る(もしくは出題範囲から抜ける)などのチェックもしっかり ついています。ただし、京大に限っていえば、ここは少し前から課程逸脱を公言してい る格好になっており、「抜ける」のチェックがついていれば絶対やらなくていい、とい う判断材料にはしづらいのですが。 ***04/05/19 (新)「馬場・高杉の合格!数学」U・B(マセマ) 教科書レベルを終えた人がさらに上を目指すための演習書。著者お得意の、少し講義部 分があって次に例題形式というスタイルをとっている。例題ページの解答に板書のよう な「書き込み」があり、これが好きな人にとっては極めて使いやすい本となる。浪人生 で、きちんと使えている人には継続使用をすすめる。または、学校に頼らず自分でどん どん先取りしたい人には選択肢の1つとしてもらう。 # ちなみに、筆者は紙面の工夫自体は評価するが、こんなにゴテゴテにしなくてもと思 # う。同じ著者・素材で、もっとバランスよく紙面構成している本もあり、それと比べ # るとやはり「うっとうしさ」が先に立ってしまうのである。 地方の国公立大、私大の入試問題を中心に収録してあるが、難易度にかなりバラつきが あるし、例題数も全体にやや少なすぎて内容が薄く感じられる。もう少し例題数を増や して網羅性を上げるか(「苦手だけど受験に必要な人のための」シリーズのように)、 それとも良問を多く収録するか(「ココからスタート基礎問」&「1対1対応の演習」 シリーズ)、はたまた1問1問をとにかく丁寧に解説するのか(「山本のベクトル原則 編」)、どれかに特化してくれれば薦める機会も増えるのだが、今のままでは網羅系と 並行して使う「力だめし用」の域を出ない。 ***04/05/16 「ジャンプ!高校数学から受験数学へ」数学U+B(現代数学社) 内容は一応タイトルどおり。代表的な本でいえば「1対1対応の演習」ぐらいのレベル が中心だが、やや複雑な問題も扱っている。授業に使えそうなネタを探してみたのだ が、紙面のバランスが極めて悪く、ところどころ見るだけでも非常に疲れる。 # 雑感:平面図形(数学A)の教科書配列について # # 新課程数学Aの平面図形分野は、中学内容の復習と中学校から「上がって」きた内容 # をどう教科書に盛り込むか、また何を本文中で扱って何を補足扱い・章末問題での扱 # いにするかで、教科書の編成や力点も各社で明らかに異なっている。 # # 困るのは、教科書学習と併用できる本の選択肢が狭まってしまうこと。教科書の章を # 終えてしまってから学習するのならば、見たことのない問題が1つや2つあってもそ # れらについては「まあ触れておこう」と割り切ってしまえるが、配列からまったく # 違ってしまうと、いちいち対応する問題を自分で探さなければならないし、進捗状況 # の管理にも手間がかかる。正直、やる気をなくしてしまうと思う。 # # 同じ出版社の教科書と参考書を比べると配列はある程度一定しているが、こまかい違 # いを探し出すときりがない。収録問題のレベルが適切かどうかを含めて、いちどゆっ # くり調べてみる必要がありそうである。 ***04/05/06 (新)「1対1対応の演習」数学B(東京出版) 今回の目玉はTAUB範囲の総仕上げとして収録されている「融合問題」。これが受験 生からよく「こういうタイプの問題をきちんと解説した本はないですか??」と聞かれ るところをうまく取ってきており、好感が持てる。もう少しネタが集まれば、この部分 だけで1冊にしても、いや、むしろそちらの方が売れると思う。表紙の下に小さく書く だけにせず、いっそ本のタイトルを「数学B・数T〜B融合」と変えてしまっても良い ぐらいだ。 「青チャート重要例題レベル」からの接続を考えると、 # あくまで「レベル」であることに注意されたい・・・ 各分野で難しい問題をピックアップしてくるか融合にチャレンジするかという2つの方 向性があり、前者は旧課程版からこのシリーズで事足りていたが、後者でレベル的にも 分量的にも良い本がなかなかなく、筆者も「志望校の出題傾向を見なさい」ぐらいのア ドバイスで済ませざるを得なかったところだったので、今回の改訂は大変心強い。 難点があるとすれば、それは何をさておき薄すぎること(「融合問題」にも1章分を割 いてあるとは思えない)。数列分野にせよベクトル分野にせよ、数学が得意でもこの分 野だけは苦手という人も多い二大巨頭(?)なのだから、この改訂を機に、もう少し例 題数を増やして、易しめから難しめまでフォローして欲しいのだが。 # ちなみに、旧課程版の数学Bの本が普通の分厚さなのは、「ベクトル」「複素数と方 # 程式の解」「複素数平面」のほか「条件付き確率と乗法定理」「確率分布」まで扱っ # ているからだ。通常2分野しか学習しないところを3分野収録すれば、厚くなって当 # 然である。妙に納得。 ***04/05/05 「経済セミナー増刊 経済学に最小限必要な数学【高校数学編】」(日本評論社) 最近、ちょっと暗い話(というより愚痴?)が続いているので、少しは明るい話題を。 本書は、何を隠そう「NET学園」のまなりん先生、新矢先生、池田先生の執筆による もので、筆者も編集に参加している本なのである。大学受験数学の参考書ではなく、数 学を選択せずに経済学部に入学してくる大学生向けに書かれた本なのだが、経済学に直 接必要となる分野だけを講義調をまじえながら丁寧に説明した画期的な本と自負してい る(内容は、「数列と関数」「微分法」「行列」「線型計画法と行列の利用」「確率」 「統計」の教科書レベルに絞った)。 編集者の1人として、これらの分野の導入用として大学受験生にも使ってもらいたいと 切に願う。ただ、この本の評価は書店で実際にこの本をご覧になった皆さんにおまかせ することにしたい。 # 今、我々がやりたいことの1つに、この本でカバーできていない部分(たとえば数と # 式、三角比、三角関数など)を補い、高校数学全分野の導入用教材を作ることがあ # る。場合によっては中学内容まで戻って説明し直してもいいかも知れない。今まさに # 教育課程に振り回されている生徒さんを救いたいのはもちろんでもあるが、指導する # 立場にある我々自身のためにもなるはずだ。 (新)「青チャート」数学U(数研出版) 「定点観測レビュー」で見てみて思ったが、全体のバランスが悪く、作り手側が受験数 学の全体像をきちんと捉えているか、また載せたい内容自体をきちんと消化したうえで 構成しているか、疑いたくなるような内容であった。例題は「黄」並みか少し難しい程 度であるのに対して節末・章末が重たすぎる(そのくせ、重要と思われるポイントを外 してしまっている?)ところからして、内容が十分に練られていない証拠とはいえない だろうか。今回の調査結果には、筆者もただただ失望するだけであった。 (以下、定点観測レビュー「3次方程式の解と係数の関係」より抜粋) 「式の値」と「虚数解」の問題に基本例題枠を1つずつ費やして扱っていたが、節末・ 章末にあれほど問題数があるにもかかわらず、他書にあるような応用問題が収録されて いなかったことに疑問を抱く。率直に言って、「赤チャート」との落差がありすぎる。 また、「虚数解」の問題の扱いにも大いに疑問が残る。この本では、一旦「解と係数」 の導入の前で(基本例題43)「虚数解」を一旦扱っておいて、そこではこの問題を 「代入」で解き、3次方程式の解と係数の関係を導入したあと、基本例題46で再び解 いているわけだが、前者のページには「あとで別解も紹介します」的な但し書きがな い。内容的に冗長であるうえ、記述も極めて不親切である。「青」の編集者は、本当に 受験数学の全体像を捉えたうえで、本全体の流れを考えて、また同じ会社から発売され る「黄」や「赤」との連携をきちんと考えて本を作っているのだろうか(そこまで言っ たら言い過ぎであろうか)?? ***04/05/02 (新)「白チャート」(数研出版)・「ニューアクションγ」(東京書籍)・「フォー _カスLight」(啓林館)・「基礎からベスト」(学研)他 本棚の整理をしていて感じたが、このレベルの総合参考書で、明確な編集意図や存在意 義を感じさせるものは非常に少ない。入試基礎レベルの網羅系からやや難しい問題を何 題か抜けば初学者向けの本として売れるという考え自体にそもそも無理がある。 ***04/04/20 # 雑感:『略解』の存在意義について # # 皆さんもご存知のとおり、当レビューでは以前より一貫して「詳しく、わかりやすい # 解答・解説を!」と主張してきた。それを知ってか知らずか、最近は各社ともまるで # 別冊解答の分厚さを競うように「親切な」参考書を作るようになった。筆者としては # 自分自身が主張してきたことが現実になった(?)わけで、基本的には喜ばしく思っ # ているのだが、実際にそうなった本を何種類も眺めていると、人間とは贅沢なもの # で、果たしてこれで良いのかという疑問もわいてきてしまう。 # # 筆者の考えとして詳解が基本であることには変わりはないが、そこに略解をうまく絡 # めていくことで、目先を変えたり、学習の効率(密度)を上げたりすることができる # のではないか。そのため、まず詳解は主にどう書くべきか、そして、略解は主に「ど # こで使うべきか」、この2点について考えてみたい。 # # まず、当たり前のことながら、読んでいて疑問点や理解できないところを少なくでき # る詳解のメリットを十分に生かしたい(もちろん、ただ長く書けば理解しやすいとい # うわけではないのだが)。部分部分を詳しくすることはもちろんそうだが、「唐突 # さ」をなくすため、テストの模範解答とは少し違った解き方をして、多少冗長になっ # ても頭から読み進みやすくするなどの工夫も考えられる。 # # これに対して、解法の流れや全体像を一気につかめるという略解のメリットは、果た # して十分に生かされてきたといえるだろうか。どうも略解というと、紙面の節約であ # るとか、わざと意地悪して詳しい解法を教えないとかいった消極的なイメージがつき # まとうが、似た問題を解いた記憶がある人や、基本事項をきちんと消化できている人 # には、わかっていることまでいちいち繰り返すよりも、略解だけポンと示してくれた # 方が、むしろ親切に感じるのではないか。 # # 略解が「生かせる」場面として、まずは例題の数値だけを変えた類題、節末などのそ # れほど程度の高くない確認問題などが考えられる。もし略解を見て分からなくても、 # その前に戻ってやり直せばよいからであり、こうすれば紙面が節約できる。ただしこ # の場合、その枠組の問題の難易度をそろえる必要があるし、また、つまずいた場合に # どのページに戻ってやり直せばいいか紙面の上ではっきりさせておかないと、単なる # 不親切ととられてしまうことがあるから注意が必要である。 # # さらに、別冊に詳解、本冊の巻末に略解というふうに解答・解説を2本立てにして、 # 得意なところは略解でどんどん進み、どうしてもわからないときだけ別冊を参照する # というような使い方を提案してもよい。少々古い本になるが、「大学入試数学基本技 # 法250」(旺文社)という私大小問対策用の問題集が、ここで言いたい「2本立 # て」に近い構成になっていた。それは、問題文の右下に答えの数値だけを載せてお # き、巻末に答案形式の解答を載せるというものであった。このそれぞれを詳しくすれ # ば、総合参考書や他の初学者向けの本でも通用しそうである。その際、すべての問題 # でそれ(2本立て)をやるとかえってしつこくなるが、そういうコーナーを作ってそ # こだけの限定でこういったスタイルをとれば、同じような収録問題でも目先が変わ # り、使う側も取り組むページを選びやすくなるのではないか。 ***04/04/14 (新)「解法のテクニック」数学T・A(科学新興新社・フォーラムA) 収録問題のレベルや網羅性という以前の問題がある。新課程版であるにもかかわらず、 「整式の割り算」「因数定理」(新課程では数U範囲)が前触れなしに扱われており、 節末にもそれを使う問題が収録されているのだ。いかに高レベルの生徒さん向けの参考 書とはいえ、仮にも教科書から外れる内容については、収録の際にも「補足」「補充例 題」などの文言を使うべきだし、百歩ゆずって課程無視を許すにせよ、せめて前書きに その旨を明記しておくべきではないだろうか。これでは、一般の生徒さんには到底おす すめできない。 ひとつ下のレベルの「基礎解法のテクニック」の同じ箇所にはそんな内容がなかったの で、さすがに作り手側の教育指導要領に関する無知まで疑ったりはしないが、作り手側 が課程を理解しているのと、作った本が生徒さんに混乱なく使えること、また、選ぶ際 のミスマッチを起こさないこととはまったく別の問題である。たとえば本の作り手が現 在の課程に疑問を持っていようが、決まってしまったからには、それに対する最小限度 の配慮はすべきである。このことだけは強調しておきたい。 (新)「ニューアクションβ」数学T+A(東京書籍) たまたま筆者の手元(職場)にあったのでこちらも確認していたが、こちらでも「整式 の割り算」が扱われているではないか。次のページから分数式が扱われており、その前 に「ここは数学Uで学ぶ内容ですが、一歩踏み込んでみましょう」と前フリがあるの で、上の「解テク」よりは多少マシだが・・・惜しい。 # 確かに、学校の授業でも旧課程に沿って教えている先生がいるだろうから、高1時に # 扱われる可能性は十分考えられるのだが、それとこれとは別問題だ。 どうして、割り算のページにもその旨をきちんと書いておかなかったのだろう。しかも 「β」は初学者も十分意識している本であるはずだから、罪は重い。 即刻改訂を求める。 ***04/04/11 (新)「大学への数学 1対1対応の演習」数学U(東京出版) 過去問演習の前段階用として定評のある演習書。1ページに例題1題とその解答・解 説があり、下に演習題を1題ずつ「対応」させるというスタイルをとっている。網羅系 で言えば「青チャート」の例題・重要例題を終えたあと、力試しに使う感じ。収録問題 数は多くないのでこのシリーズだけでどのレベルまで網羅できるかということは言えな いが、過去問演習に先立ち、難しい問題にチャレンジすることを通じて知識の整理をす ることは有益であるはず。 旧課程版と同じ例題が収録されているところで見比べたが、着眼点や解法の説明が多く なり、解答の途中式もかなり詳しくなっている。紙面が全体的に窮屈な感じになってし まったが、仕方あるまい。 収録問題は入試標準の下から中ぐらいのレベルが中心だが、このレベルは同時に教科書 学習時の扱い、理解に差が出るところでもあるので、使用には注意を要する。自学自習 で使うなら、おおむね3割程度は自力で解けるようになってからにすべきだろう。ま た、中にはかなり難しい問題、解法を思いつかないと「はまって」しまう問題なども含 まれているので、おおむね8割程度の問題の解法が理解できれば、残りは気にせず次の 段階に進んでしまって構わないと思う。 # この本に限らず、筆者は1冊の参考書・問題集の使用時期を「自力3割→8割理解」 # を基本に考えている。この使い方ができない本、つまり生徒さんの想定スタートレベ # ルから明らかに難しすぎるもの(もしくは簡単すぎるもの)、想定ゴールレベルをさ # らにこえる難しさの問題が多いものは、どうしても使用感が悪くなる。難易度を示す # マークを付けるなどの工夫をしている本もあるが、やはり配列の時点で収録問題を十 # 分に吟味するのが基本。後回しで構わないことはわかっていても、解き進めていくと # きにとばしとばしになるのはやはり気持ち悪いものだ。 ***04/04/03 「入試問題が語る数学の世界」(現代数学社) 過去に出題された入試問題の中から、珍しいもの、数学的・歴史的背景をもつものをと りあげているが、一般受けする本ではない。やはり指導者向け。 ***04/04/01 (新)「湯浅の見える新数学UB」(栄光) 入試基礎と呼ばれるレベルの内容を、入試での出題例を通じて解説した本。短い節で区 切られており、それぞれに「三角関数の合成」などのタイトルがつく。各節では、基本 事項をサラッと説明したのち、「Example」→「この問題で確認!」→「入試での出題例 」の順に問題を配列しているが、「Example」から「この問題で確認!」にかけても、節 によっては少しずつレベルが上がったり、他の事項が入ってきたりするので、この本だ けで定着するには難がありそう。他の本と併用するか、この本をテキストに授業を受け たりするぶんには問題ないが、まったくの初歩から取り組んでもどうにかなるたぐいの 本ではない。 やはり、私大の志望者で、教科書をひととおり終えたがその内容が身についているかど うか不安で、基礎の確認をしながら入試問題に触れたい生徒さん向け。学校の授業では 難しい問題も扱ってもらったがキツキツだったという人は喜ぶかも。 (新)「小島の難関大突破 新数学T・Aハイレベル演習」(栄光) 表向きは難関大志望者のための演習書であるが、それを通じて「脇」の知識にも適宜触 れさせる要素が強い本。数学T・A範囲のみだが、頻出パターンをうまく外しつつ、高 等な問題を解くために知っておいたほうがよい事項も盛り込んでいる。とくに「整数問 題」「論理と集合」に多くのページを割いており、そこで「鳩の巣論理」を扱っている のが目を引く。解答には省略が多く、その行間を埋めるのは生徒さん自身の仕事になる が、難関大突破と銘打っているし、このレベルになるとどう書けば分かりやすいかは個 人個人で変わるだろうから仕方ないし、これで良い。 難関大を志望する生徒さんで、その中でも学校の進度的に余裕のある人が、「1対1対 応の演習」や「数学を決める論証力」などと併用して使うのが最もしっくりくる。少な くとも、受験学年の2学期を過ぎてから慌てて使う本ではない。筆者(私)はこういう 本を「ひまつぶし用」と形容することが多いが、著者の小島先生自身もおそらくこの生 徒層を意識しているはず。それが最も顕著に読み取れるのが問題48(麻布大・環境保 健)である。入試数学の演習書よりもどちらかというと公務員試験の問題集や「論理パ ズル」の本で見かけるような問題だが(もしかすると、「数学」として出題された問題 ではないのかも)、小学校の算数も含めて数学の好きな人は喜ぶと思う。 # 最近、この「栄光」から「大学入試ドリームチーム選書」の名前でいろいろな演習書 # が出だしたが、多くの本は予備校の有名講師が著者になっており、おそらくはその講 # 師が最も得意とする生徒層に向けた構成になっている。これは、自分の思い通りの本 # を出したい著者側と、有名講師の執筆で数を見込みたい出版社側の利益がうまく一致 # してのことだろうと想像できる。 # 生徒さんから見て良い点は、普通の参考書ではなかなかお目にかかれない、面白い内 # 容に触れられる(可能性がある)点。悪い点は、シリーズ全体が構成や難易度などの # 統一性に乏しく、講師の個人商店的なラインナップになったり、選題や解説が著者の # 独り善がりになったりしやすい点。 # こういう本がもっと増えたら、おもな著者の得意とするレベルや分野についても当レ # ビューでまとめる必要が出てくるかも知れない。「参考書MAP」に続く「参考書著 # 者MAP」の誕生か?? =====