2010年5月

6日(木)
 このゴールデンウィークは、嫁さんの実家に帰省したのですが、その途中下車ということで島根県の玉造温泉へと足を延ばしていました。途中下車といっても途中で下車したわけではありませんで、岡山から米子・松江を経由して玉造温泉まで足を延ばしていました。玉造と聞いてなかなか変わった名前だなぁ、などと悠長なことを思いつつ出かけたのですが、どうやら勾玉や菅玉の里ということのようです。三種の神器の一つであり、安徳天皇が壇ノ浦で二位尼に抱きかかえられて海に沈む時に、一緒に二位尼が抱えて一度は沈んだという八尺瓊勾玉、源義経が拾い上げて今は皇居に納められているというあの八尺瓊勾玉が作られたといわれる付近に湧き出る温泉です。
 
 八尺瓊勾玉が具体的に何処で作られたかまでは分かりませんが、この一帯はメノウなどの産地のようでして、それを櫛明玉命が加工して作ったということで、櫛明玉命が祀られている玉作湯神社にも行ってきました。ちなみに〈出雲国風土記〉でも玉作湯社とすでに呼ばれているとか。この神社には、願い石というボーリングの玉の数倍はある大きな丸石がありまして、これに社務所で叶い石というのを購入しまして、願い石と叶い石をくっ付けながらお願いをすると、願いが叶うということでやってみました。願い石の力を、叶い石に分け与えるっていう感じですかね。

 その玉作湯神社よりも山の上の方に、出雲玉作資料館っていうのがありまして、そこで近辺で発掘された勾玉類の展示が行われています。しかし、伝承でしか勾玉が作られていたと分からなかった地が、大正期以降に発掘が進んでいく様などは、シュリーマンではないですけど結構感動的です。もっとプロデュースすれば良いのにと歯痒くなるくらいでした。

 温泉は〈湯陣 千代の湯〉という旅館に宿泊しました。源泉かけ流しということで、庭から温泉が湧いていたようですが、露天風呂で風に吹かれて長湯をするにちょうどいい季節だったこともあり、合計で3−4時間は温泉につかりっ放しでした。しかも湧き出る温度が66度くらいということで、屋内だと長風呂には少し熱過ぎるのが、露天風呂だとちょうどいい具合に温度が下がってくるんですね。肌もスベスベになってしまいました。湯道楽な方には是非とも体験して貰いたい宿です。あれだけ泉質が良い温泉は、交通の便が良かったらもっと混雑し過ぎで大変なことになるでしょうが、そこは山陰ということでゴールデンウィークなのにほどほどの人出で大満足でした。いや、温泉旅館的には良くないんだろうが。

 料理の方はネット検索したところ不満もチラホラあったので少々心配していたのですが、実際に堪能してみると味付けが山陰風というだけの話でして、地元の山海の幸がたんまりとあって十分に満足できました。サワラに稚鮎にワラビにタケノコなどなどと、春の終わりを満喫してしまいました。朝食のフキノトウたっぷりの蕗味噌も美味しくて大満足です。嫁さんの味付けが最初山陰風だったので知っていますが、山陰では料理に砂糖どころか味醂も最低限しか使わないので、全体に甘みが少なくなって塩分が強調される傾向があります。それを知らないで食べると、確かに不満を感じるのかも知れませんねぇ。

7日(金)
 宮崎県で発生した口蹄疫では、牛馬45000頭が殺処分されるという壮絶な事態が起こっています。完全に初期での鎮圧に失敗してパンデミックを起こしている状態で、このままいくと南九州の畜産業は酷い打撃を受けそうです。幸いにも人間への感染の可能性が限りなく小さいのですが、九州域内では鳥インフルエンザどころの騒ぎではない深刻な事態です。激甚災害に指定するような要望も上がっているくらいですし、殺処分には自衛隊が派遣されはじめています。他県や大都市にまで感染が広がると、動物園で飼育されている動物たちまで殺処分になるでしょうし、鳥インフルエンザと同じかそれ以上の大災害になっています。

 ところが、全国区のニュースではほとんど報道されていないみたいでして、事態の深刻さが理解できていないんじゃないかと驚き呆れるばかりです。あれほど東国原知事を持て囃していたテレビなどで、口蹄疫のニュースを深刻に取り上げないとは、いったいどういう事なんだと腹立たしくなってきます。農林水産省をはじめとした政府の対応も無為無策としか言いようがない状況でして、農水大臣はGWで外遊中だわ、対策費は事業仕分のパフォーマンスに充ててしまったから金がないとか、消毒薬の備蓄は韓国での口蹄疫対策にほぼ全部あげちゃったから手持ちが皆無とか、本気かジョークか分からないほどの無為無策ぶりに頭がクラクラしてきます。

 農水大臣はうちの中学・高校の先輩だからあんまり言いたくはないのですが、口蹄疫が広がって九州の畜産業が危機的状況だという話を聞いて、それでものほほんと悠長にキューバやら南米やらに行って帰ってこないって、政府の当事者としての意識に乏しいんじゃないかと呆れ果てます。物事には優先順位があるだろうに、いったいいつまで大臣不在のまま無為無策に過ごすのかと、九州の美味しい牛や豚を食べたい身としては怒りを抑えられません。鳩山首相の普天間の問題もそうですが、どうしてこの政権は、やるべき業務をやらないままタダタダ放置して事態を悪化させていくのでしょうか。

10日(月)
 グラッドストンやロイド=ジョージを生みだしたイギリスの自由党は、戦間期以降は労働党に二大政党制の片方というポジションを奪われてしまって、泡沫政党化しつつ何とか現代まで生き延びて来ました。20世紀も終わりには自由民主党という政党名に改称して、ますます日本人にはよく分からなくなってしまったのですが、そのイギリスの自由民主党の支持率が回復してきて20%を超える得票数をこの前の総選挙で得たとのことです。しかしそこは小選挙区制度の国イギリス、獲得議席数はわずか数%とのことで、本来ならばここで話は終わるところでした。

 ところが、保守党も労働党もともに過半数が取れなかったために、自由民主党がキャスティングボートを握ってしまいまして、目下連立交渉の真っ最中とのことです。で、連立条件に挙げられているのが小選挙区制度と比例代表制度を組み合わせた、日本型に類する選挙制度に変えろというのが一番の焦点のようです。このままいくと、二大政党制の一つの理想型みたいに言われてきたイギリスが、連立政権を当然とする多党分立の状態へと転換を遂げそうでして、なかなか興味深いものがあります。

 現在の日本の小選挙区と比例代表制の並立制は、そもそも単純小選挙区制への一里塚的なことを考えていた人達もいた筈ですから、その本家本元のイギリスで単純小選挙区制度の見直しが進んでしまいますと、日本にも大きく影響を与えることでしょう。比例代表を組み合わせるのは少数意見を排除しないためのものでして、確かに小泉郵政選挙や昨年の政権交代選挙を見ていると、得票数に比べて第一党の議席が大きすぎ、そのために色々と不都合が生じてきているようです。並立制ですらそうなのですから、単純小選挙区制ならば尚更のことでしょう。

 イギリスなどの動向が明確になれば、日本国内でも小選挙区の数字を減らして比例代表の数字を増やすようにとか、元の中選挙区制度に戻せとか、そういう声が大きくなってくるのではないでしょうかねぇ。日本の場合も、参議院のキャスティングボートを握っている、またはこの夏以降に握る政党にとって、現在の衆議院の選挙制度は納得いくものではないでしょうからねぇ。

24日(月)
 ゴールデンウィークの終わりごろに、赤松農林水産大臣による失政で口蹄疫が大変なことになっていると書きましたが、ここにきてもはや宮崎の畜産業は壊滅という事態になってしまいました。しかも、松阪牛や飛騨牛などの種牛も宮崎牛がやっていたとかで、国産和牛事態が深刻な状況まで追い込まれてしまい、回復には10年かかるとも、20年かかるとも言われるほどの惨状です。黒豚の鹿児島を始めとして、周辺各県もまた畜産業の盛んな地域でして、何とかこれ以上の被害の拡大を防げないものかと、ただただ事態を見守るしかない状況です。

 腹立たしいのは全国区のメディアです。九州などではかなり早い段階から東国原知事を先頭にした宮崎県の対応とともに、国が動かないからどうしようもないという苦しみがニュースで流されていて、多くの人たちが赤松農林水産大臣らによる初動の遅れだと認識しているのですが、全国区のメディアの報道が遅れていただけで、宮崎県や知事の責任に押し付けるような報道には怒りを覚えます。種牛の移動も、宮崎県はかなり早い段階で要求していたのに、赤松農林水産大臣を始めとした政府の決断の遅れで悲劇的な事態になっている訳でして、九州と全国区との温度差には唖然とするものがあります。

26日(水)
 TRICK好きの嫁さんに連れられて〈劇場版TRICK 霊能力者バトルロイヤル〉、つまりTRICK劇場版の第3作を見て来ました。その準備として、先日の土曜ワイド劇場でやっていた浅野ゆう子や手塚理美が出演した〈TRICK新作スペシャル2〉も踏まえた上での映画館でした。確かに予習をした甲斐がありまして、新作スペシャル2を見ているからこそ楽しめるシーンが満載の作りになっていまして、そちらを見ていないと楽しさが2割ほど削られてしまうことでしょう。以下は一部ネタばれあり。

 TRICK全般に言えることですが、B級臭さがたまらなく満載でして、村人A役で登場する島崎俊郎にアダモステの踊りをさせてみたり、仲間由紀恵が松平健に対して「余の顔を見忘れたか」と大見え切ったり、ちびっこマジシャンだった山上兄弟が成長して大きくなっていたり、ガッツ石松のOK牧場に、戸田恵子がハイテンションで怪しげな集団ダンスをしたりと色々と満載でした。脱力系の笑いあり、失笑あり、苦笑あり、頭を抱えたくなるやっちゃった感ありと、B級作品ならではの好き放題さがありまして、あまりにものバカバカしさが魅力的でした。〈シベリア超特急〉シリーズが好きな人には是非ともお勧めしたい作品です。

 トリックの方はというと、これはもう単純なトリックでして、大ネタも小ネタもけっこう早い段階で分かってしまいます。TRICKは別にそういう謎解きを楽しむ映画ではないので、その点は基本的に何ら問題はありません。ただ、藤木直人が殺されるシーンの回答はそれでいいのかと言う気がしないでもありませんが、要するに次回以降に続くということなんだなと理解すれば、それはそれで良しとしましょう。ちなみに、テレビドラマ版の最初期の〈母之泉〉との関連も重要でして、ある程度のシリーズ視聴を大前提としているのですが、まぁそれもそれで良しとしましょうか。