2010年10月

5日(火)
 秋といえば秋刀魚でして、焼いた秋刀魚も美味しいですが、昨今の流通システムの大改善によって博多でも秋刀魚の刺身なんかが食べられる世の中になっていまして、あの秋刀魚の脂の香りというのはとっても良く堪能できる訳です。ということで、秋刀魚といえば人々のイメージする香りというのは結構共通しているもんだとばかり思っていたんですね。ところが札幌で食べました秋刀魚の味は驚愕すべきものがありまして、我々が秋刀魚の脂の味だと思っていた味や香りが全くしない代物でした。あの秋刀魚の香りっていうのは、脂がある程度熟成してきた結果発しているもののようでして、本当に新鮮な秋刀魚の脂っていうのは極めて薄味なんだということを発見してまいりました。

 ウニは型崩れ防止などのためにミョウバンを使っている事は有名な話でして、ミョウバン無しのウニを食べるのは最初から目的の一つでしたが、ウニのミョウバンあるなしっていうレベルではなく、秋刀魚の鮮度の違いによる味の差の方が大きかった気がします。これで根室とか釧路で食べたらどうなっていたんだろうか。あと、厚岸の牡蠣がこれまた抜群に美味しかったです。広島の牡蠣も確かに美味しいですが、それよりも濃厚な牡蠣でして、酒蒸しでいただいたりオイル漬けをいただいたりしたんですが、どれもこれも危険なくらい美味しく、ルイ14世なら何個食べるんだろうなどと思いながら食していました。

 北海道での学会報告も終わったことですし、本年度も後期に入っていきますねぇ。

7日(木)
 今年のノーベル化学賞がパラジウム触媒を用いたクロスカップリングでの有機合成が対象となり、日本人2人が受賞したということでして、久々に明るいニュースが流れています。北海道大学からのノーベル賞受賞ということで、筑波・東北・名古屋に続いて北海道と、九大はまたまた遅れをとってしまってまた話題にはなるでしょうが、そんなことは瑣末なことでして、何はともあれ嬉しいニュースです。クロスカップリングには様々なものがあるようですが、その中でも、液晶テレビだとか、エイズ治療薬だとか、血圧降下剤だとか、有機化合における応用の広さが、特に鈴木・根岸両氏のクロスカップリングが選ばれる理由になっているようです。

 しばらく前の選定では、先進的な発明に次々と賞を与えていった結果、実はよくよく時間をおくとあまり応用がきかなかったという、発想は先進的だけれども人々に影響を与えない研究が結果として対象になってしまっていた反省から、昨今はいかに人間生活に大きな影響を与えているかっていうのが選考基準に組み込まれているような気がします。そのため、けっこう前の時代の研究が対象とされているんですよね。鈴木章氏は80歳の大台に乗ってからの受賞となりますが、南部陽一郎氏の時もそうでしたが、お元気な中で高い評価が伝えられて良かったなぁって言うのが実感です。

 経済史なんかに進んでいる身で言うのもなんなんですが、日本にとって最も重要なのは、こういう技術開発をはじめとしたいわゆる理系分野でして、優秀な若い人材がこういうニュースに刺激を受けて、どっかのラボで頑張ってくれるといいなぁっと思ったりするわけです。

21日(木)
 先日のことになりますが、小学校以来の友人が亡くなりまして、未だ現実感が全く湧いて来ずに何が何だか訳がわからない状況です。僕の出身は多治見市ということで岐阜県でして、中高一貫の私立であります名古屋の東海へと行くために、小学校のころから山本塾っていう受験予備校に通って受験をしたのですが、その小学校時代の受験予備校からの友人でして、はじめてカラオケボックスに行ったのもそいつとでしたし、下戸なのに飲み会は好きな奴で何度も運転手役を務めてくれたりで、友達たちからもたらされる連絡を直視出来ないでいます。今年の1月・2月に話したのが最後でしたが、まだ36歳と干支が3回まわったばかりで、ゆっくり話すのは老後でもいつでも出来ると思っていたのに、現実のこととして受け止められないでいます。

 この前中学時代の恩師が亡くなったばかりですし、この年になってくると悲しいニュースが増える一方です。その一つ一つを認めることが出来ない自分がいまして、どうしたらいいんでしょうかね。

26日(火)
 1251年間行方不明だと思われていた宝物が、実は100年ほど前に発掘されていたものだったとエックス線調査で判明したということで、東大寺正倉院の国家珍宝帳に記載された除物7つのうちの陽宝剣・陰宝剣だったようです。一旦は正倉院へと納められた宝剣が、大仏の足元に収められていたというのは色々と意味合いもありそうでして、古代史へのロマンが広がります。正倉院の宝物に武器がたくさん含まれているのも面白いですし、その武器群の筆頭に記載されていた陽宝剣・陰宝剣が除物だったというのも謎に包まれていまして、こういう話を聞いているだけでわくわくしてきます。

 それにしても、エックス線にしろ炭素同位体にしろ、科学技術の発展というのが古代史とかの解明に大きな役割を果たしている訳でして、近現代とかとはまた違った方法論の世界だなぁっと感心してしまいます。しかしこういう話を耳にすると、休日に親魏倭王の印でも探しに出かけて行きたくなりますね。