§人物論・作品論を執筆される、若き研究者へ§

 

安部は私生活を作品に反映することを、徹底して拒否した作家でした。

だからこそ、数少ない反映を発見した時は、おもわず喜びを感じる程です。

ただし、この定説には、誤解がありました。

実は安部作品には、安部が小説やエッセイを書いた当時、興味を持った

文献の影響が、深く、色濃く出ているのです。

 

安部公房は、速読の達人であり、非常なる読書家でした。

洋を問わず、あらゆる文献を読み、その中から普遍的な発見があるもの

と、そうでないものを選り分け手掛かりとし、『人間という種の実像を見る』

ライフワークに当てはめ、進む手法でした。

また、それは、『ものを見る角度』として、小説に影響を与えております。

安部公房研究において、その相関関係に触れている論文はまだ、ありません。

 

このように、残された安部公房文献、つまり安部公房全集は喩えるなら

『宝の山のインデックス』

で、それらの文献は

『宝の山に分け入る」

行為そのものなのです。

 

安部公房に対する研究に、新しさが見れないのは、既存の

「研究者の怠慢」です。

ただ、専門化・分業化が進んだ現在の研究社会で、広角に掘り下げな

ければ到達できない、新しい安部研究には、研究者の怠慢のせいにす

るだけではすまされない、非常なる困難がつきまとっていることは、私も

重々承知しています。

そうです、もうご存知なとおり、最も根本的な問題は、研究しなければな

らない学問が、あまりに多岐にわたる結果(大脳生理学、言語学、動物

行動学、分子生物学、社会学)評価できる研究者もまた、不在だからです。

ただ、そこは、本当の宝の山で、すばらしい鉱物がゴロゴロ眠っている。

今後、安部公房論、安部公房作品論にむかう研究者は恐れず、そこに、

分け入り、進むことをお薦めします。

 

作品の書かれた年代に、安部が興味をもっていた研究・文献を丁寧に

読んでみてください。

必ずや、貴方の研究に、新しい切口が見えてきます。

なにより、貴方自身の物を見る目を、強化します。

 

後期安部公房論執筆

「密会」「方舟さくら丸」「カンガルーノート」作品論執筆

の必読書

大脳生理学系 角田忠信「右脳と左脳」
養老孟司「唯脳論」
 〃   「神と人の解剖学」
言語学系 デレック・ビッカートン「言語のルーツ」
ノアム・チョムスキー「言語論」
動物行動学系 コンラッド・ローレンツ「攻撃」
   〃      「ソロモンの指輪」
デズモンド・モリス「裸のサル」
分子生物学系 リチャード・ドーキンス「利己的遺伝子」
社会学系 エドワード・サイード「オリエンタリズム」
マルト・ロベール「カフカのように孤独に」
エリザベス・ブルゴス「私の名はリゴベルタ・
メンチュウ」

戻る