久し振りサロンと化した通夜の席  遠い親戚  14
昔話に 仏もにやり 

御葬式となると 普段疎遠にしていてもみんなやってきます。
気まずい関係の人は 御焼香を早めに済ませ、そそくさと多忙そうなふりして 帰ってしまいます。

通夜には、
御爺さんの従弟などと言うような 遠い親戚もやってくるので、
親戚なのに知らない人が沢山現われます。

若い頃に行動をともにした「親友」もやってきます。
御互いに昔話をして「縁」を確かめ合い、
故人との繋がりをたどって お互いを理解し逢うのです。

少し御酒をいただいて、
故郷に残った友達の消息や 都会に出てきた当時の懐かしい昔話が 際限無く続きます。
戦争当時の手柄話や 苦労話はいくら話しても尽きることがありません。
かれこれ20年も会っていない人が 5人も集まれば100年分の話があるわけです。

あちこちで話は弾み、笑いが起こり、
実に和やかで 賑やかな集まりになるのです。
誰も涙を流している人などいません。

喪主が知らない人達が、
みんな黒い服を着て にこにこしながら 酒を酌み交わして、
賑やかに喋っているのです。

「そしてあの人も来ていた」、
「あの家はこうなっている」、
「あの人は今どこにいる」
などという話を大切な土産にして 家に帰るのです。

此れが天寿を全うした、
付き合いの良かった故人の通夜なのです。

涙を流すのも、儀式の内なのでしょうか。


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