初心者のためのマージャン講座 ルールと役の解説

TOP > 禁断の世界 「領域」> 熱くなるギャンブル「深夜特急」沢木耕太郎 その2
で、結局この沢木ってやつはどうなったんだ? 100ドル負けたんだろ?
沢木氏はこの後もサイコロを続け、自分の戦略があたったり外れたりしながらカジノで時間をすごすんじゃよ。そして、ふと負けた時に気づくわけじゃ。

(これで200ドルか……)
100ドルまでなら高い授業料だったと笑ってすますことも不可能ではなかったが、200ドルともなるとさすがに慌てざるをえなくなった。日本から持ってきた金は、トラベラーズ・チェックと若干の現金を合わせても、2000ドルにも満たなかった。そのうちの200ドルなのだ。これから先の旅に影響を与えないはずはない。ロンドンを目前にして、金がないため行かれない、などということにでもなったら最悪だ。たとえどれほど手間がかかろうと、必ず挽回しなくてはならない。
長期戦を覚悟したとたん、ひどい空腹を覚えた。そういえば、朝から何も食べていなかった。

200ドルになってるのか… それに飯も食わずによくやるよな。大丈夫か?

けっこう危ない心理かもしれんな。取り戻そうとする感覚じたいは不思議ではないんじゃが。それに、ギャンブルをして夢中になっていたりすると、何も食べなくても気にならない経験がある人もいるかもしれんな。

この後、沢木氏はサイコロを続け、自分の読みがあたってなんとか負けを取り戻すんじゃよ。そして、その日はホテルに帰るわけじゃな。
やめれたんだな。よかったじゃねーかよ。
それが、そうもいかんのじゃよ。
その夜、沢木氏はベットの中でサイコロの舞う姿を思い出すんじゃな。それが、章のタイトルにもなっている「賽の踊り」。そして、これを英語でどういうのか考えた時に、沢木文学の真骨頂が出るんじゃ。

「サイコロ」の英語は「DICE(ダイス)」 しかし、それが複数形で単数形は死を意味する「DIE(ダイ)」と同じあることに沢木氏は気づくんじゃよ。そして、ジュリアス・シーザーが言った「賽は投げられた」の英訳を目にする。

THE DIE is CAST (賽は投げられた)
だが、この文章をじっと見つめていると、投げられたのが賽ではなく、死であったかのように思えてくる。いや、賽を投げるとは、結局は死を投ずることだと言われているような気がしてくる。DICEはDIE、賽は死と……
なんか、ものすごくキザな感じがしないでもねーな。
キザなのが沢木文学! これがカッコイイんじゃよ。文学の香りがしていいじゃろう?
負けを取り戻した沢木氏、だがそのまま香港に帰ろうとかいう気にはなれなかったんじゃな。
そんなシーンに出くわす。

私は大小に心を残しながら、自分を上手になだめてマカオから去ろうとしている。冷静に判断すれば、カジノを相手に勝ち越せるわけがないといえる。1000ドルや2000ドルの金など、負けはじめればまたたく間になくなってしまうだろう。やめて帰ろうという判断は確かに賢明だ。しかし、その賢明さにいったいどんな意味があるというのだろう。大敗すれば金がなくなる。金がなくなれば旅を続けられなく。だが、それなら旅をやめればいいのではないか? 私が望んだのは賢明な旅ではなかったはずだ。むしろ、中途半端な賢明さから脱して、徹底した酔狂の側に身をゆだねようとしたはずなのだ。
なんか、冷静さと熱が入り混じったような文章だな。カジノを相手に勝つのが難しいのは重々、わかってるみたいだしよ。
そして、自問自答をしながらこう続けるわけじゃ。

激しい感情に突き動かされるままに、私は自問自答を重ねた。その問いと答が指し示す方向はカジノ以外のどこでもなかった。私は、自分がこれほどまでに博奕に未練を残していたということに、むしろ驚いていた。もちろん、博奕への未練だけが、私を突き動かしている感情のすべてではなかった。恐らく、私は、小さな仮の戦場の中に身をゆだねることで、危険が放射する光を浴び、自分の背丈がどれほどのものか確認してみたかったのだと思う。
<やろう、とことん、飽きるか、金がなくなるまで……>
ふーんって感じだな。確かに書いてる文章はCOOLだけどよ。なんかひっかかるぜ。
なかなかするどいかもしれん。わしは思うんじゃが、上の2つの文章、こういう考え方にある種の憧れも感じる。沢木耕太郎の深夜特急は面白いし、書いてある文章はカッコイイわい。だが、これは沢木耕太郎という人物が、深夜特急という旅の中で思ったからこそ、許される、あるいは価値のある文章かもしれん。
日常の生活でこんなことを考えていたら、生活できなくなるかもな。
そうじゃな。ギャンブルを続行する理由なんて、ちょっと勘違いすればいくらでも思いつく。今日こそ勝たなければプライドが許さない! とか、金の問題ではなくて意地の張り合い! とか、俺はパチンコ台と戦っているのではなくて神に勝負をふっかけている! とか、まあイロイロあるわ。

大儀をかざそうと思えば、いくらでも思いつく。そして、ギャンブルに熱中する中では、冷静に考えれば妄言的なことも、十分に「動機」になりうるんじゃとわしは思うぞい。
確かに、自分が望んで出発した旅で、金がなくなって終わろうが、それは自分自身の問題で済む話だからな。
どころが、家族や生活をもっている人間ならそうもいかんわい。

そして、再びカジノに向かった沢木氏は、紛れも無いこのWEBサイトでいう「領域」の存在を感じていたと思う。

1500パタカを綺麗に使い果たしてしまい、さらに300ドルを両替した時、底のない沼へ足を踏み入れてしまったような気がした。しかし、その生ぬるい水と腐った泥土に足を取られているような感覚は、必ずしも不快なものではなかった。
このまま博奕をやっていけば、本当に行きところまで行ってしまうのかもしれない。金を失い、これ以上前に進めなくなるかもしれない。ロンドンは無論のこと、デリーにも辿り着けず、いや、東京に帰ることすらできなくなるかもしれない。異国で無一文になり、立ち往生してしまう。だが、自分がそのような小さな破局に向かってまっしぐらに進んでいるらしいということは、むしろ意外なほどの快感があった。
快感か…… 受け止め方によっては、背筋が寒くなる文章だな。
ギャンブルに快感がともなうことも、わかる話じゃ。けど、わしは思うんじゃが、こういう状態、どんなんけ文学的に心理を表現しようとも、やはり当事者は誰かにとめてほしいと思っておるんじゃないかと思う。 

それがわしのかつての弟子であるならば、なおさらわしの役目なのかもしれんな。
特にギャンブル好きじゃない作者、最初は5ドルから始まって、金額の桁が変わって、そして最後には、ロンドンまで旅をする目的さえも握りつぶされそうになる。不思議なもんだな。
ダイジェストでの紹介じゃが、それなりに感じるところがあればよいと思うぞぃ。ちなみに、実際に読んでみると、これの1000倍は楽しい。何よりカジノの臨場感がたまらん!
で、結局、この後、どうなったんだ?
それは内緒にしておこう。まだ読んでない人もおるじゃろうしな。深夜特急の中でも、この香港・マカオがおさめられた第1便 黄金宮殿は人気が高いんじゃよ。続きは読んでからのお楽しみじゃ!
まあ、本は続いてるから、旅も続いてるんだろうな。がんばって読んでみるか…。
深夜特急〈第一便〉黄金宮殿】香港・マカオ・マレー半島・シンガポール
 沢木耕太郎 著

ハードカバー版で全3冊 文庫版で全6冊からなる、著者による香港、東南アジア、インド、ヨーロッパ、そしてロンドンまでの壮大な旅の文学。このページで取り扱った「賽の踊り」はハードカバー版第1便 もしくは文庫版の「深夜特急1」に収録されています。この本を読んで旅にあこがれた人は数知れません。マカオで金を使い果たして、この本の続きがなかったら…なんて想像すると、ぞっとしますね。続いてよかった!大沢たかお主演で映像化もされてます。

深夜特急〈第二便〉ペルシャの風】インド・ネパール・シルクロード
深夜特急(第三便)飛光よ、飛光よ】トルコ・ギリシャ・地中海・南ヨーロッパ・ロンドン
劇的紀行 深夜特急 DVD 沢木氏のインタビューも収録
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