どうすれば優れた原作者になれるのでしょうか?

今回のご相談は日本プロ麻雀協会所属の須田良規プロからのお悩み相談です。


思えば私は福地さんに目をつけていただいて、拙いながらもこうしてコラムや漫画原作などを描かせてもらえるようになりました。

今日まで私自身の乏しい経験と薄っぺらい人生を切り売りして頑張ってきましたが、いい加減ネタ・才能共に限界を感じつつあります。

どうすれば来賀さんや土井さんなどのように優れた原作者になれるのでしょうか?天牌御殿はどうやったら建つのでしょうか!?


【須田良規(Yoshiki Suda)】

1975年生まれ、島根県出身。日本プロ麻雀協会所属、第5期雀王。東大卒業のプロ雀士という異色の経歴を持つ。自身の経験を元にしたコラム『東大を出たけれど』を雑誌、近代麻雀に連載。同コラムは井田ヒロト作により漫画化されている。派手さが持ち上げられる傾向にある麻雀漫画において、雀荘メンバーの日常・リアルを描いた同作品は、従来にないトーンの作品としてヒットしている。


なんとビックリの同業者からの質問ですか。しかも天牌御殿の建て方とかw(゜o゜)w

御殿を建ててないぼくに聞いてもしゃーないと思うんですけど、聞かれた以上は、がんばって答えてみましょう。どんな答え方をしても、じゃあお前はどうなんだって言われそうで嫌なんですけど。

まず、質問を整理しましょう。「すぐれた原作者になる」「来賀さんや土井さんのような原作者になる」「御殿を建てる」。この3つは別物です。重なる部分もありますけど、重ならない部分もあるんですね。

一番目の「優れた原作者になる」は、漫画原作者じゃないぼくに聞かれても困るんですけど……とスパイラルしちゃいますね。ぼくが理解してる限りの一般論で言いますと、漫画原作を書くときに必要なものは、2つに分けられると思います。

1つは作劇テクニックです。漫画原作とは、テレビドラマのシナリオのミニチュア版みたいなもので、組み立てるときの文法があります。これはけっこう大変で、普通に思われているよりずっと地道にコツコツと組み立てる作業になります。原作を書く時間の95%はこれに使うことになります。

もう1つは、はったりです。はったりを考える時間は5%もないと思いますけど、勝負の大半はこれで決まります。読者はこのはったりの部分しか評価してくれないですね。はったりのインパクトを強めるために、95%の時間を使ってコツコツと組み立てるわけです。

この2つには正反対の資質が要求されます。作劇テクには緻密さと粘り強さが求められ、はったりにはほら吹きの才能が求められます。どうでしょう。もう思い当たるんじゃないですか。須田さんは、もともとの性格もあって、はったりが足りないんでしょう。すぐれた原作者になるには、強烈なはったり技を身につけることです。

テレビや映画にくらべて、漫画は1話20ページ前後で、登場人物も少ないですよね。クライマックスのはったりを軸に話を組み立てるわけで、他のシナリオよりも、はったりの重要度が高いと思います。

はったりの練習として、毎日、奥さんに3回は嘘をつくとか、日常生活でも嘘つきになってみるのはどうでしょう。「あんた背中が煤けてるぜ」みたいな、とんでもないはったりを毎日考えましょう!

さて、お次は「来賀さんや土井さんのような原作者になる」ですね。これは無理なので、諦めましょう。彼らが原作者になったのは、漫画の拡大期で、麻雀漫画がピークに達したあたりの時期でした。そういう時期には原作の仕事が山のようにあって、新米として仕事をこなしつつ、金をもらってテクを身につけられたんですね。それが現在は下降期に入ってますから、仕事の全体量が圧倒的に減ってます。そうなると最初から即戦力であることが求められます。

その当時の原作者で今でも活躍しているのは、来賀さんや土井さんくらい。なので、やはり彼らは優秀で、時代が良かったという幸運だけの人じゃないですけど、彼らと同じようになりたいというのは、時代が変わってしまっている以上は無理ですね。さらには、彼らは麻雀漫画だけじゃなく、他のジャンルの原作も書いています。麻雀漫画だけで一人前の原作者になるのは無理だと思います。

というわけで、彼らの時代にはなかったものに活路を見出しましょう。海外進出、ネット、ケータイですね。ケータイ麻雀小説とかどうでしょうか? まだ誰もやっていないと思うので、可能性あると思います。来賀さんや土井さんの後を追うのではなく、新たな市場を切り開くことでしょう。なんか、書いていて「お前がやれよ!」って言われそうなんですけど。

そして最後は、天牌御殿の建て方ですか。これから住宅の値段は下がっていきます。いろんな規制が緩和されて使える土地は増えていますし、国境を簡単に越えられる時代ですから、日本だけ土地の値段が高いままっていうのは変ですよね。何よりも人口が減りまから、土地もあまります。

なので、20年もすれば、今の半分くらいの値段で家が買えるようになると思います。40年もすれば御殿も安く建ちますよ。って、そんな答えじゃ駄目でしょうか?

もうちょいマジな話をすると、麻雀プロを職業として成立させた人って、昔から今に至るまで、そんなに多くないですよね。井出洋介さん、灘麻太郎さんなど、数えられるくらいだと思います。その実体は、サービス業か、タレントか、ライターですよね。ここ10年で、ネット麻雀やゲーセン麻雀が登場し、市場の構造は変わってきています。大きく言うなら、雀荘&教室&出版からネットへの移行ですよね。そんな新しい時代ならではの麻雀プロ像を作り出すことだろうと思います。

って、何を書いても、「じゃあ、お前はどうなんだ? 出版なんて斜陽産業でこの先も食って行けるのか?」と言われそうで嫌なんですが(´д`)


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