阿佐田哲也/色川武大の作品

麻雀ファンなら絶対に耳にするビッグネームですが、最近の若い人は知らない方も多いと思うのであらためて阿佐田哲也(あさだてつや)氏の功績に触れてみましょう。

作家、小説家としても有名ですが週刊少年マガジンで連載されていた「哲也~雀聖と呼ばれた男~」のモデルとなった人といったほうが若い人にはピンと来るのかも…。あの漫画は少年漫画向けにディフォルメされていますが、確かに阿佐田さんで間違いないです。1929年生まれで、1989年に亡くなられています。

雀聖(じゃんせい)って呼ばれるぐらいだから、すげえ強かったんだろうな?

う~ん、確かに強かったのは間違いないと思うがそんなに無敵で最強の人ってわけでもなさそう。勝ったり負けたりの感じで「雀聖」と呼ばれるのは、麻雀の発展や普及に多大な功績を残されたという意味で尊敬の念をもってそう呼ばれていると判断するのが妥当かもしれん。

ギャンブル全般を愛するおおらかな性格と人柄で、今でも多くの麻雀プレイヤーに愛されている人物といえる。名前の由来が麻雀をやっていた際の『朝だ!徹夜だ!』に由来するのは有名な話。競輪も好きだったようで、日本のギャンブル史を語る上でも、大きな功績を残した人です。

麻雀放浪記

阿佐田哲也最大のヒット作として知られるのが小説「麻雀放浪記」でしょう。1970年頃に大ヒットして「麻雀小説」というジャンルを確立させた偉大な作品といえましょう。やはり大ヒットするだけあって、めちゃくちゃ面白いです。ぜひ読んでいただきたい。

麻雀小説で分類的にはピカレスクロマンになるんだな。悪い奴らが戦後の賭場で活躍する感じか。

週刊少年マガジンで連載されていた「哲也」は、この小説を少年漫画向けにリライトしたものです。シリーズや外伝も出ているのでぜひ1巻から読んでいただきたいです。

同時に商品右側にあるように映像作品としても傑作で有名です。主演は若き日の真田広之、ライバルのドサ健に鹿賀丈史、他にも加賀まりこや大竹しのぶといった今ではベテランの役者が出演します。麻雀のルールがわからなくても楽しめるので、あわせて見ていただけると楽しいでしょう。ブルーレイ版も発売されました。

Aクラス麻雀

阿佐田氏の功績としてあげられるのが麻雀ブームをつくった、より大衆が楽しめるゲームとして広めたという側面でしょう。現在、阿佐田哲也といえば運をコントロールしたり、流れ論に代表されるオカルトな部分の代表として取り上げられるのは事実です。そういったゲームの戦術として時代にそぐわない側面はさっぴいて考えてください。

阿佐田哲也以前の麻雀は本当に「バクチ」って感じで一般人が近寄れないような雰囲気があったんだな。それを阿佐田哲也が知的な戦略的ゲームとして普及するのに大きく貢献したという感じか。

Aクラス麻雀は代表的な戦術書です。他にも小島武夫氏らと共に「麻雀新撰組」を結成してテレビのバラエティー番組に出演したりと、エンターテイメントとしての露出も多かったことが昭和の麻雀ブームの一旦をになっていたのは間違いありません。

今風にいえば「麻雀タレント」としてテレビに出演し、麻雀普及・発展に大きな功績を残したといえるでしょう。戦術論としては現在とはルールも少し違いますし、いわゆる「オカルト」の要素もあり、そのままゲームに使えるかは微妙ですが、そもそも「戦術」「戦略」の概念がなかった時代に、知的ゲームとして捉えた点が斬新だったといえましょう。

哲也~雀聖と呼ばれた男~

さいふうめい原作、星野泰視の作画で週刊少年マガジンに1997年から2004年まで長期連載された人気作品ですのでご存知の方も多いと思います。今でも漫画喫茶やネカフェに行けば絶対に置いているでしょう。ゲームやアニメなどメディアミックスもされました。少年誌で「麻雀」をテーマにすることがけっこう珍しいので、連載当時も目新しさはありました。

麻雀マニア層からすれば、麻雀を扱った人気作品としての功績が称賛されることはあっても、作中の麻雀シーンや闘牌に関しては「まあ子供向けだね」って程度に留められる感じ。

これは麻雀放浪記を漫画にしたものか?

というよりも、麻雀放浪記をベースにしながら、阿佐田氏が書いた様々な麻雀小説のエピソードをリライトしてつなぎあわせて、オリジナル作品にしている感じが近い。

特に麻雀のルールを知らない少年誌の読者に配慮して、麻雀の闘牌の緻密さ駆け引きではなく、超能力バトル的な駆け引きや心理的なバトルに比重を置いてうまく読ませてくれていると思う。麻雀を知らない女の子でも、楽しめる作品にはなっていると思う。

直木賞作家 色川武大として

阿佐田哲也といえば雀聖、麻雀愛好家、麻雀作家としての側面が強いですが、別名の色川武大(いろかわ たけひろ)の名前での作家活動も功績がある。「離婚」で第79回直木賞、「百」で川端康成文学賞など、片手間で文学をやってたとはいえない、けっこうな受賞歴もあります。

「麻雀放浪記」が大ヒットして知名度は「麻雀作家」としての阿佐田哲也ほうがありますが、色川武大、あるいは別名の井上志摩夫(いのうえ しまお)での作家活動も、十分に功績を残した人といえましょう。多彩な人であったといえるでしょう。

晩年は病気だったんだよな?

ナルコレプシーという急に眠くなってしまう病気に悩まされていたのも有名な話。他にも阿佐田哲也が盲牌、つまりツモする時に親指で何かを知る初歩的なテクニックがあるが、これでと思った牌が実はだったため、衰えを感じて雀ゴロ生活からの引退を考えたというエピソードもある。

そういったエピソードも多い。ネット麻雀時代になっても、その功績はこれからも讃えられていくであろう人物。以下、阿佐田哲也氏の関連書籍などを紹介しよう。


阿佐田哲也勝負語録―ここ一番に強くなる
発表された様々な小説から名言といえる台詞や文章を抜粋したもの。阿佐田哲也の哲学がよく反映されている。


ドサ健ばくち地獄
名作「麻雀放浪記」以外にもスピノオフ的な作品、番外編などの小説も多く発表されている。ドサ健を主人公をおいて手本引きなどのギャンブルが繰り広げられる。


狂人日記 (講談社文芸文庫)
色川武大の名義で発表された小説。自身のナルコレプシーの体験などが色濃く反映されている。1989年に読売文学賞を受賞している。


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