日英中韓カタカナ語見くらべ字典


「日英中韓カタカナ語見くらべ字典」
講談社 505ページ 2000年5月発行 1500円

タイトルのとおり,外来語を始めとして日本語でカタカナ表記される ことの多い単語について,英語・中国語・韓国語ではどういうかを 横並びで示した字典である。言葉の意味は,特に注意を要するもの しか書かれていない。

カタカナ語辞典はこれまでも数多く作られてきたが,同じ漢字文化圏の 中国・韓国と対比させたところに本書のユニークさがある。中国語では 音に漢字をあてる場合もあるが,翻訳される方が多いこと,また韓国語 では日本語ほどではないにせよ外国音をそのまま表記する場合がかなり あることなどは,これまでもよく言われているが,こうやって数多くの 実例によってそれを確かめることができる。この語はこういうのか,と いう発見がページをめくるごとに出てくるのも楽しい。

ただ,唯一の,しかし大きな欠点は,中国語の発音がカタカナでしか 表記されていないことである。中国語は外国語であるから,当然 カタカナでは近似音しか表せない。表紙の見返しには中国語の音節表 (よく中国語の教科書に載っているもの)がピンインとカタカナの 両方で出ているが,本文には一切ピンインが出て来ないのだから,こんな 表は全く意味がない。

これまでも中国語会話の入門書などで同じような経験をさせられることが あった。特に旅行者向けの中国語会話の本は,書く方も最初から 読者がきちんと中国語を勉強するなどとは思ってもいないのだろうか, ほとんどがカタカナだけで,ピンインがついているものは本当に 少数派である。

この手の本は,韓国語会話の本でも発音はカタカナでしか書かれて いないが,ハングルは表音文字であるから,きちんと読み方をマスターした 人なら,カタカナを無視すれば正しく発音することができる。 ところが中国語はそうはいかない。だいたい振り仮名を無視して中国語の 漢字がすらすら読めるような人なら,会話の入門書など買う必要は ないであろう。会話の入門書にしても,「カタカナ語見くらべ字典」 にしても,本当に必要なのは中国語や韓国語のエキスパートよりも むしろ,中国語や韓国語を少しかじった人ではなかろうか。

講談社は最近,「日英中3ヵ国語辞典」という,ポケット版ながら 非常に充実した辞典を出した。こちらは中国語の例文の全てに ピンインがついている。このような優れた実績があるだけに, 「カタカナ語見くらべ字典」の扱いは全く惜しいというほかない。

(2000.7.19)


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