MIDIについての基礎知識

第1幕

MIDIって何?
そもそもMIDIとは
 MIDIは、確か1983年(1982年でもある)にその姿を現したのだと記憶している。初期のMIDIは、トラブルが多かったらしいが、おとがMIDIを使い始めた1985年にはほとんどトラブルが無くなった。おとの経験したトラブルといえば、MIDIケーブルが途中で抜けたり、音を出している間にプログラムチェンジを行うと、音が鳴り続けて止まらなくなる程度だった。
 今では、電子楽器のみならず様々な分野で無くてはならないものになったMIDIだが、そもそもこれはMusical Instrument Digital Interfaceの略で、楽器同士を相互に接続するためのインターフェースのことである。インターフェースといっても、拡張ボードやカードなどのハードウエアではなく、単なる取り決め(規格)である。この規格を作るため、国内外の主だった楽器メーカーが話し合い、統一規格として定めたそうだ。そのため、MIDI対応の楽器や楽器以外でも、MIDIに対応した機器なら国内外、メーカー、機種を越えて接続することができる。MacとWindowsコンピュータをつなぐためには、Ethernetとかでつないで、対応するソフトを入れて、・・・と複雑だが、MIDI規格の情報ならMIDIケーブル1本(実は2本必要)で接続でき、それぞれの使い慣れたソフトで動く。古いおとの98noteも、RS232Cに付けたアダプターからなんとMacに情報が送れ、Macの情報も受けれるんだ。
 MIDIの出力端子から送り出されるものは、実は音楽ではなく音楽を演奏する(した)情報だけだ。キーボードを例にすると、鍵盤を押さえる、離す、音色を変える、ベンダーを動かすといった動作を、ひとつひとつ送り出していると思えばいい。受信側はその情報をどの様に利用しても良い。受け側がシンセや音源ならば、押された鍵盤の音を鳴らす止める、などなど。受け手がシーケンサーやコンピュータなら、情報を記憶する。ただの情報なので変な使い方も出来る。MIDIの最も基本的な情報である鍵盤情報を、受け手は鍵盤情報として認識しなくても一向にかまわないのである。これを音色の切り替えに使っても、エフェクトの切り替えに使っても、極端な話、お部屋の照明の入り切りに使っても、全ては受信側に任されているのである。実際コンサートなどの照明の切り替えにMIDIを使っていることもあるようだ。
 MIDIとは“演奏情報を入出力する場合には、規格書どおりにお願いします”という単なる約束事である。MIDI規格は楽器の性能に影響を与えないようにフレキシブルにできている。逆に、MIDI楽器側は多くの約束ごとの内、必要なものだけ利用するように作られている。使う我々も、楽器の持っているMIDI規格の内、必要なものだけ使うことにしよう。
 MIDIはあくまでも自主的な約束事であり、なんら法的な制約を受けるものではない。しかしMIDIという言葉は登録商標になっておりMIDI規格協議会が管理している。そのため、MIDIというロゴを使って商売するには、MIDI規格協議会への加入が必要となるそうだ。
もしもMIDIがなかったら
 あなたが音楽に目覚め、Y社の電子ピアノを購入したとします。最初は、満足していたのですがそのうちストリングスの音が欲しくなり、楽器店に通ってなるべく安い値段で自分の気に入った音色の出るR社のシンセを見つけて購入しました。R社のシンセはミニ鍵盤だったので、弾き慣れたY社の鍵盤でR社のシンセの音を出したくなりました。しかし、Y社とR社の信号の規格は違うのでそのままでは接続できません。Y社のシンセにしておけば良かった。泣く泣く、Y社規格の信号をR社の信号に変換するインターフェースを購入しました。このインターフェースは、R社のシンセと同じくらいの値段がしました。
 2台のキーボードで活動を続けていましたが、ドラムやベース、ギターの音も欲しくなりました。K社から、ドラムの音やいろんな音が出る音源が発売されました。早速購入しましたが、Y社のキーボードでしかその音源を鳴らすのとが出来ないことに気づき、mailだけに使っていたiMacをシーケンサーとして使うことにしました。しかし、Macからの信号はそのままではY社、R社、K社の音源につながりません。そこでUSBの信号を各社の信号に変換するインターフェースを購入しました。USBのハブも必要ですし、Macのソフトも必要です。最近出たE社のB-3が欲しいのですが、またインターフェースを購入するとなると大変です。これ以上、拡張するのはあきらめました。
 しかし、YMOはこんな時代によくやってたもんだなーと最近つくづく感心させられる。もし、MIDIがなかったら、おとはギター1本で頑張っているかもね。それもいいかもね。
MIDI端子(MIDIがMIDIであることの証)

MIDI機器の3つの端子
 あなたのMIDIキーボードや音源の裏を見てみよう。MIDI IN、MIDI OUT、MIDI THRUと書かれた3つの端子があるだろう。裏にはない。表でも上でもどこかにあるはずだ。MIDI THRUは無い機種もあるが。何もない、何処にもない、代わりにCV/Gateというのがあります。それはMIDI楽器ではないが、今や伝説のアナログシンセではないか。大事に使おう。鑑定団に出したら、高値が期待できるかもよ。冗談はさておき、3つの端子はありましたか。これがMIDI楽器の印ともいえるMIDI端子で、ここからMIDI信号の入出力が行われるわけです。

MIDI IN/OUT端子
 MIDI IN端子とはそのままMIDI信号の入力、MIDI OUTはMIDI信号の出力を行う端子である。キーボードの場合で言うと、演奏した鍵盤情報がMIDI OUT端子から出力される。また、音源のMIDI INに先ほどのMIDI OUTからの信号を入力すると、鍵盤を持たない音源があたかも自らの鍵盤で演奏しているかのように演奏を行う。Y社のキーボードでR社の音源を鳴らしたければY社のキーボードのMIDI OUT端子とR社の音源のMIDI IN端子を専用ケーブル(MIDIケーブル)で接続する。Y社のキーボードを弾けばR社の音源が鳴ってくれる。この演奏情報を送っている側をマスターと呼び、受ける側をスレーブと呼ぶ。相互に情報のやりとりを行う場合は、2本のケーブルでつないであげればよい。

MIDI THRU端子
 THRU端子とは、INから入力されたMIDI信号をそのまま出力する端子だ。これがあれば音源やキーボードを3台、4台と数珠繋ぎに接続して鳴らすことが出来る。ただし、数珠繋ぎと言っても無限に接続できるわけではない。これは、MIDI規格が制限しているわけではなく、電気的な問題なのである。MIDIの信号は、THRUを通すたびに劣化する、伝言ゲームのようだと思えばいい。もちろんデジタル信号なので、伝言ゲームのように「ドレミ」が「どらみ」になることはないが、あまりつなぎすぎると、正しい情報が伝わらなくなる。その理由はさておき、3〜4台ぐらいまでが無難なようだ。
 6台のMIDI機器を接続したいのですが、どうすればいいのでしょうか。答えは、パラ・ボックス(THRUボックス、今でもこういう言い方をするのかなあ?)を使うことだ。これはひとつのMIDI信号を複数に分岐させる物で、各社から安いのもから高価な物まで販売されていると思う。おとのスタジオでいえば、YAMAHAのYME8がこれに当たる。ROLANDのA-880のMIDI OUTから出た信号をYME8に入れて、KORGのPOLY800IIなど複数台のMIDI機器に情報を送っている。A-880にもいっぱいMIDI信号が入ったり出たりしているのがわかるだろう。これは、MIDIパッチ・ベイと呼ばれる物で、パラ・ボックスより利用価値が高い。お金に余裕があるならMIDIパッチ・ベイを購入することをお勧めする。

MIDIケーブル

MIDIケーブル
 MIDI楽器は、MIDIケーブルと呼ばれる専用ケーブルで接続する。専用と言っても特殊な物ではなく、5ピンのDINと呼ばれる繁用ケーブルである。(ちなみにDINとは、Douche Industrial Normの略で、ドイツの工業規格のことである。日本でいうJISのようなもので、世界中で利用されている。)しかし、DINケーブルをMIDIケーブルとして使用することには全く問題はないのだが、逆の場合は、問題が生じることがあるので注意しよう。最近DINケーブルを使う機器も少なくはなって来たが、万が一使う場合はね。
 DINピンソケットの配置は図のようになっているが、この中でMIDI情報を送るために使っているのは、4番と5番の2本だけで1番ピンと3番ピンは使われていない。2番ピンは、MIDI OUTのみ接地(グランド)として使われている。MIDIケーブルとして売られている物は、使わない1番ピンと3番ピンをつないでいない物がある。この方が、作る側も買う側も安上がりだ。ただし、リズムマシーンなどに使われていたDIN SYNCの場合は、MIDIケーブルとして売られているのもでは動かないことがあるので注意しよう。

ケーブルの長さの限界
 MIDI信号はデジタルであるため、基本的に劣化と言った問題はなく、ノイズにも強い。ここがオーディオ信号を違うところだ。しかし、なんだかの原因でケーブルがノイズを拾った場合は、大変なことになる。伝えられるべき情報の内容が変わってしまうので、誤動作を引き起こす。誤動作の大半は、音が鳴りっぱなしになったり、弾いてもいない音が鳴るなどである。おとはまだ、経験したことはないが、ショルダーキーボードで長いMIDIコードをノリノリで振り回すと誤動作が起きる場合があるようだ。
 MIDIコードは長くなればそれだけノイズを拾いやすい。MIDI規格では、ケーブルの長さは15m以内と決められている。ただし、それ以上長いと必ず誤動作するとは限らない。なるべく短くするのに越したことはないが、どうしても長いケーブルを使う必要がある場合や、ショルダーキーボードでノリノリにいきたい場合は、光ファイバーを使ったケーブルを使うと良い。

MIDI情報はどうなってるの

MIDI情報
 MIDIケーブルは、5ピンのDINケーブルだが、実際に使っているのはその中の1本(一組み)だけだということは上で説明した。どうして、鍵盤はたくさんあるのに1本の線でどの鍵盤を押したかわかるのだろうか。楽器の内部では、キーボードが押されたという情報を、1か0の(電流が流れるか流れないか)デジタル信号に変換している。それがMIDI OUTから出力されている。この1と0の8つ(8ビット=1バイト)の組み合わせがMIDIの基本的なメッセージの単位になる。常に8ビートのリズムを刻んでいて、情報としてたとえばカスタネットが「叩いて叩いて休んで休んで叩いて休んで叩いて叩いて(11001011)」と演奏しているのだと思えばいい。実際には、8ビットのMIDIメッセージにスタートビットとストップビットを加えた10ビットが送られる。
 MIDI信号は8ビットが基本単位であり、"00000000"から"11111111"までの256通りの表現が可能だ。これなら、88鍵のピアノの演奏でもまだ余裕がある。MIDI情報は、8ビット単位で0と1の組み合わせで送られているのだが、どうも説明し辛いし読みづらい。そこで普通、前の4ビットと後ろの4ビットを分けて16進数で表す方法をする。つまり、"0000"から"1111"までは16通りあるので、1から16までの数字を使っても良いが、0、1、2、3、・・・、8、9、A、B、C、D、E、Fとした方がわかりやすい。16進数は10進数と区別するためお尻にHを付けて区別する。8ビットで"11111111"は十進数で255で、16進数で表すと"FFH"となる。MIDI楽器の説明書の後ろに付いているMIDIインプリメンテーション・チャートに出ている数字は、この16進数でMIDI情報を表現している。

MIDIの伝送速度
 MIDI規格で転送速度は31.25kbps(±1%)と決められている。つまり、1秒間に3万1250ビットが送られる計算になる。計算上MIDIメッセージ1バイトの送信には、31.25×10+ICの動作に要する時間として、およそ320μsecがかかることになる。そして、実際に"ド"の音を出そうと思えば、3バイト(理由は後ほど)のデーターが必要であり、960μsec必要である。つまり、ひとつの音を鳴らすのに、およそ1msec必要なんだ。
 この情報を1本のケーブルで送っているため、データの転送に時間差が出来る。鍵盤で"ドミソ"の和音を弾いたとしよう。ドの鍵盤を押した、ミのソの鍵盤を押したという情報が送られるためには、3msecの時間が必要だ。手弾きで、ピアノだけなら指の数が10本、一本の指で二つの鍵盤を押さえたとしても聞ける音楽を作るためには10和音くらいが限界だろう。同時に10和音を1msecのずれもなく弾くことは不可能で、弾き方に揺れなどがあるため、この程度つまり10msec程度のずれは気にならないだろう。
 しかし、音楽のクライマックス、Drumも両手両足、ピアノもキーボードも10本の指めいっぱい使って、ギター2本もベースも全ての弦をかき鳴らし、メロもサブメロ10音ぐらい鳴っている(とてもうるさくて仕方がないが)状況ではかなりのずれが生じる。ちなみに、48音同時に鳴った場合の遅れは、0.0031秒になる。大したこと無い。いいえとんでもない。テンポ200の曲では32分音符1個分です。ここに、ベンダーやアフタータッチやモジュレーションホイールなどの情報が入ってくる。もうどうにもならない。この時間のずれはMIDIを使う以上どうにもならない問題と言える。音は整理して使いましょう。
 31.25kbpsが早いか遅いか、それ以上にMIDIを受信してから実際に発音するまでの処理時間の方が遙かに時間を要していることも事実である。



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