シンク録音と同期信号

 最近はマルチ音源の進化、コンピュータの発展によってアマチュアでもMIDIとオーディオ・データーが同一ソフト上で扱えるようになった今は、シンクとか同期とかの言葉はあまり聞かれなくなった。それでもあえて、シンク録音と同期信号とは・・・。
 MTRとシーケンサーを同期させる場合、通常はMTRがマスターになる。MTRからタイミング・クロックをシーケンサーに供給してあげればよいのだ。そのためには、タイミング・クロックをMTRのどこかのトラックに録音しておく必要がある。この信号だが、MIDIタイミング・クロックはデジタル信号なのでそのままテープに録音することは出来ない。それで、FSKとかSMPTEと呼ばれる信号に変換して録音し、それをMIDIタイミング・クロックに変換してシーケンサーに送る必要があった。
 FSK信号は、タイミング・クロックと同じテンポによってクロックの間隔が変化するもので、しかもタイム・ベース24が一般的だった。そのためFSK信号をタイミング・クロックに変換する作業は比較的簡単であり、テープ・シンクと言えばFSK信号を思い浮かべるくらい広く使われた。一方、SMPTE信号は絶対時間で管理するためシンクロナイザーと言ったシンクロ専用のアイテムが必要であった。
 音楽制作の中でテープとMIDIとの同期を考えると同期を使う機会は少なくなったと言えるが、映像と同期を考えるとまだまだ使う機会が有るのでは・・。ビデオの音声トラックにシンク信号を入れてシーケンサーと同期を取ると、映像のタイミングに合わせた効果音が簡単に付けられるぞ。

シンク録音における途中からの同期

 MTRとの同期で使われるFSK信号は、常に曲の頭からスタートさせなければ同期を取ることが出来ない。たとえば壮大なるシンフォニーを作っていたとしよう。実際にMTRで録音したオーケストラに足りない楽器があるので、MIDIで同期を取って入力することにした。それは、エンディングのシンバル一発だ。データの入力はすぐに出来るが、そのタイミングがピッタリかどうか確認するためには、曲の最初から聞かなければならない。タイミングを少しずらしたい。そして、また最初から聞くと言った具合だ。
 MIDIのタイミング・クロックは、FSK信号と基本的には同じだ。しかし、ソング・ポジション・ポインターの出現によって、曲の途中からの同期が可能になった。これで、曲の頭から聞くという無駄がなくなり、シンク録音の効率が大幅にアップした。ただし、MTR側は依然としてFSK信号に頼っていたため、シーケンサーがソング・ポジション・ポインターに対応していても、それを使うことは出来なかった。そのため、絶対時間で管理しているSMPTE信号からタイミング・クロックやソング・ポジションを作り出すことにしたのである。
 SMPTE信号からMIDIタイミング・クロックを作り出すシンクロナイザーは、当時アマチュアにとってはとても高価で、結局プロしか扱えなかった。それで、FSK信号の拡張版まで登場した。FSK信号に小節のデータを記録させるもので、これによってアマチュアでも途中からの同期が出来るようになった、そんな時代もある。

SMPTEとは

 SMPTEとは、Society of Motion Picture and Television Engineerの略である。これをこのままexcite翻訳にかけると、「映画およびテレビ・エンジニアの社会」と訳される。英語はよくわからないが、MIDIとは全然関係ない映画やテレビ関係から生まれたものだと言うことはわかる。同期などに使うSMPTEは、タイムコードの意味で使用されることが多いが、あくまでも規格の中のひとつにすぎない。しかし、SMPTE規格の最もポピュラーなものであることは間違いないが。
 SMPTEはVTRの同期信号として広く使われ、そのうちに映像と音楽とのリンクにも利用されるようになった。そして、その有効性が理解され、普及していったのである。SMPTE信号は単なるタイミング情報が記録されるのではなく、絶対時間情報(時/分/秒/フレーム)が記録されるため、任意のポイントでSMPTE信号を読み出せば、曲の頭から何秒後かがわかる。
 上に書いたように、秒の下にはフレームと言う単位が用意されていて、1秒間を何フレームにするかによっていくつかの種類がある。日本やアメリカのカラー・テレビの場合、30フレームのドロップ(29.97フレーム)が使われている。従来、モノクロ画像を30枚/秒という規格があったが、カラーになってその分増えた信号を前と同じ速度で処理しようとしたため、半端な数字が出てしまったのだそうだ。ヨーロッパでは、24や25フレームが使われている。なお、映像の世界ではカラーが主役なので、当然ドロップ・フレームが使われ、レコーディングでは映像とリンクしない限り、30フレームのノンドロップが使われる。
 SMPTE信号を使った同期を行えば、時/分/秒/フレームで指定される曲中の任意のポイントから同期できる。つまり、曲の途中から同期が可能なのである。


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