第15回記念福岡古楽音楽祭
2013年9月13日(金)〜16日(月祝)

音楽監督:有田正広

The Grand Finale

 数え切れない感謝を込めて

                     有田正広(音楽監督)

 ついに、今回が最後の福岡古楽音楽祭となりました。

 振り返ってみると、この音楽祭は今からおよそ四半世紀前、僕が40歳の時に「おぐに古楽音楽祭」という名でスタートしました。始めるにあたって僕が理想としたのは「プロの音楽家とアマチュアとの境界線をなくし、皆が一緒になって交流を深められるような音楽祭」でした。

 この目標のもと、第1回の「おぐに音楽祭」は始まりました。主会場は、熊本の大自然豊かな小国町にある「木魂館」という、全国でも有名な小国杉で造られた町の集会場でした。また演奏会場のひとつに家畜市場が選ばれました。

 これは、17 - 18世紀のフランス宮廷に所属した3つの音楽組織、シャペル(教会音楽)、シャンブル(室内楽団)、グラン・エキュリ(大厩舎=野外音楽団)のうち、グラン・エキュリを念頭においていたからです。当時も宮廷の外へ足を一歩踏み出すと、自然が隣り合わせで、木々や草花、そして牛や馬、豚など家畜たちの姿を見たり、また匂いも身近に感じられたことでしょう。会場の家畜市場は、演奏者のステージを観客席から見下ろすといった、いわゆるアリーナ型で、観客と演奏者が一体感を持てるようなものでした。これこそ「境界線をなくす」という理想にピッタリの会場だったと思っています。

 「おぐに音楽祭」の頃から抱いていた理想は、福岡市に拠点を移し、「福岡古楽音楽祭」となってからも引き継がれました。それはプロの演奏家たちによるコンサートのみならず、交歓パーティ、古楽セミナー、古楽コンサートといったプロやアマチュアが関係なく、皆が参加できるプログラムがあることからも分かります。これらのセミナーやコンサートを経て、世界的な音楽家へと羽ばたいていった人もあったほどです。また、海外からスペシャリストたちを毎回招いて交流をする国際的な音楽祭となりました。

 毎回これほどのプログラムが実現できるのは、事務局の前田さんご夫妻をはじめ、実に大勢のボランティア・スタッフの心温まるケアがあってこそです。これらの方々の音楽と、音楽祭に向けられた情熱、熱意があってはじめて音楽祭が実現していることに、毎回、毎回感謝の念を抱かずにはいられません。
 いつか音楽祭が終わって車での移動中に、ある外国人ゲストの演奏家が「この音楽祭は他にない人間的な素晴らしい交流ができる。また、それを支えるボランティア・スタッフたちの音楽を愛する情熱は他に類を見ないものだ」と言っていました。他の演奏家も、口々に同じようなことを言っています。

 僕は音楽監督という立場から、この音楽祭の中核、または精神的な支柱として、皆が集うような音楽祭になるように見守り、それを支えられるように努力して参りました。ですが、このような音楽祭が実現してきたのは、ここに集まり出演して下さった演奏家、聴衆、古楽コンサートやセミナーの参加者、そしてボランティア・スタッフといった多くの方々の支えがあったからでした。

 このような音楽祭が24年間も続いたのは、まさに奇跡です。皆さんと共に創り上げたミラクルです。

 しかし残念ながら、24年間の歳月は長いものです。音楽祭の土壌を作ってきたスタッフの方々にも肉体的、物理的に無理が出てきました。さまざまな事情と、そして「まだまだ続けたい!」という想いが交錯しつつ、幕を閉じることになりました。僕たちの後を継ぐ若い世代の方々が再び、この地で新しい音楽祭の幕を開くことを期待したいと思います。


第4回おぐに古楽音楽祭における「家畜市場」での、有田正広氏らの室内楽コンサート(1993)

 さて、最終回の「取り」をつとめて下さるゲストたちのご紹介です。

 日本の古楽の大変に大きな礎を作ったともいえる「クイケン・ファミリー」とチェンバロのR.コーネン氏、リコーダーのW.v.ハウヴェ氏をお招きして「福岡古楽音楽祭」は幕を閉じます。

 クイケン・ファミリーのヴィーラント(ガンバ/チェロ)、シギスヴァルト(ヴァイオリン)、バルトルド(フルート)の各氏は、今の日本の、世界の古楽シーンで活躍している主立った音楽家たちの育ての親で、まだバリバリの現役演奏家たちです。R.コーネン氏は、クイケン・ファミリーと半世紀以上もの長きに渡って良きパートナーとしてチェンバロを弾いてきました。クイケン氏たちやコーネン氏の教え子たちは、世界、そして日本で彼らの音楽の芳ばしいエスプリを引き継いでいます。リコーダーのハウヴェ氏は、巨匠F.ブリュッヘンの高弟として知られ、日本でも、特に福岡古楽音楽祭にこれまで度々出演して下さっていますので、その素晴らしさは、ご説明の必要はないでしょう。

 そして演奏する日本人演奏家の大半が彼らの弟子、または薫陶を受けた人たちで、今回の「夢の共演」が実現しました。

 最後になりましたが、長い間僕たちの夢の音楽祭を支えて下さった全ての皆さんに、改めて心から感謝申し上げます。本当にありがとうございました。

 振り返ってみると、この音楽祭は今からおよそ四半世紀前、僕が40歳の時に「おぐに古楽
福岡古楽音楽祭を終えるにあたって

18世紀音楽祭協会会長 中里 隆

 当時まだ皆30代だった有田正広さんたちが、唐津の隆太窯で酒を呑みながら、「日本にも本格的な古楽オーケストラを作りたい」と、情熱的に語り合っていたのは、もう30年近くも昔の話です。音楽に関しては全くのしろうと集団であった18世紀音楽祭協会が、「おぐに」で音楽祭などという大それたことを始めたときにも、それが今日のような形に発展するとは、夢にも思っていませんでした。

 福岡古楽音楽祭がここまで発展してきた最大の要因は、少なくとも古楽に関しては、世界で最も高い水準の内容を維持してきたこと、地方で開かれる音楽祭といってもその点に関しては決して妥協しなかった点にあると思います。その基礎を築き支えてくれたのが、有田正広さんほか、最初の東京バッハ・モーツァルト・オーケストラにはせ参じた我が国の古楽奏者たちであり、今回お出でいただいたクイケン一家の方々やハウヴェさん、コーネンさんを代表とするヨーロッパの一流古楽奏者たちであったわけです。

 それと同時に、一般的にいえば音楽の中で決してポピュラーとは言えないジャンルを対象としたこの音楽祭にあって、その内容の高さを理解し、愛好してもらえる聴衆の方々が存在しないと、音楽祭は成り立ちません。その中心になったのは、古楽コンサートや古楽セミナーに参加されている方々で、そのほとんどは一度音楽祭に来ると、以後は毎年のようにお出でになるという、いわゆるリピーターになっています。また自分で演奏はされなくとも、毎年この音楽祭を楽しみにしている聴衆も増え、同時にその範囲も全国規模になっていきました。それらの方々が、毎回この福岡古楽音楽祭のもう一つの大きな支えとなって発展して来ました。

 諸般の事情で、今回をもって福岡古楽音楽祭は終了することになりましたが、これまで長年にわたって音楽祭の音楽監督を務めてきた有田さんをはじめ、国内外の古楽奏者の方々、ならびに音楽祭に参加して盛り上げていただいた多くの古楽愛好家の方々に厚く御礼申し上げます。

 また、毎回このプログラムの最後のページに名簿をまとめておりますが、福岡古楽音楽祭開催にあたって毎年ご支援をいただいた福岡県・福岡市、助成金・賛助金を賜った企業や諸財団、18世紀音楽祭協会の賛助会員・特別会員として個人的に資金援助をしていただいた皆様、ボランティアとして音楽祭の運営を支えていただいた皆様、どうもありがとうございました。

ミュージック☆ファクトリー
バロック・フルートの歴史
2013年9月10日(火)18:00〜18:30
アクロス福岡1階コミュニケーションエリア

出 演 前田りり子
(フルートとお話)

第15回記念福岡古楽音楽祭プレイベント
テレマン/パリ四重奏 「ロココの愉悦」
2013年7月13日(土) あいれふホール
出演:前田りり子・寺神戸亮・上村かおり・上尾直毅
ご来場ありがとうございました。こちらに当日の写真を掲載しました。
2014年に開かれる「新・福岡古楽音楽祭」について
去る7月10日に新・福岡古楽音楽祭実行委員会からプレスリリースされた新・福岡古楽音楽祭の概要をこちらレポートしています。