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(2011年11月7日修正) |
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30.2011年夏 ヨーロッパ旅行記 |
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◆日本脱出 節電の夏を乗り切るには海外脱出が一番だということで、8月に約1ヵ月間ヨーロッパに行ってきました。最近は大学を2つも教えに行っているため、なかなか長期の旅行に行くのが難しくなりました。でも今回はバッハ・コレギウム・ジャパンのヨーロッパツアーが8月下旬で、リハーサルも現地集合とのことでしたので、こんなチャンスはめったにないと、大喜びでツアーの2週間も前にヨーロッパ入りしました。 ◆ケンブリッジ、ルネサンス講習会 最初の1週間はイギリスのケンブリッジでルネサンス音楽の講習会を受けてきました。講師はムジカ・アンティカ・オブ・ロンドンを主宰しているフィリップ・トービーさんとその仲間たちで、しばらく日本で暮らしていらしたガンバ奏者のデヴィット・ハッチャーさんもいらっしゃいました。ケンブリッジ大学というのは31のカレッジから成り立つ総合大学で、カレッジは学生たちが寝食を共にしながら学べる寮を意味します。今回の講習はそんなカレッジの一つシドニー・サセックス・カレッジの中に宿泊しながら行われました。高い塀に囲まれたカレッジ内には美しくて広い庭が広がり、16世紀に建てられた寮内の個室はゆったりとした2部屋。こんな素晴らし環境で、友人たちと人生について語り合い、切磋琢磨しながらともに学ぶなんて大学生活をしてみたかったものです。
コース参加者の多くはご高齢のマチュアでしたが、彼らを単なるアマチュアと侮ってはいけません。私が生まれるよりも前、デラーやマンロウが活躍した時代からルネサンス音楽を愛し続ける猛者たちで、歌はもちろん、リコーダー、ガンバ、ドルチアン(ルネサンスのファゴット)、サクバット(ルネサンスのトロンボーン)と一人でいくつもの楽器を、初見で楽々と皆さん演奏していました。ガンバと歌が上手な80歳ぐらいのとっても小さなおばあさんが、「最近新しい楽器を始めたの」と楽しそうにサクバットを吹く姿はもう脱帽でした。こんな風に私も上手に年が取りたいものです。そんな猛者たちと朝から晩までルネサンス漬けの1週間を共に過ごし、音楽だけでなく人生をいろいろ教わることができました。
◆サン・クルーの滝 その後は5日ほどパリを起点に純粋に観光旅行を楽しみました。まず訪れたのは、オトテールの組曲ト長調(作品2の3)のアルマンドのタイトルになっているサン・クルーの滝です。滝といって日本の滝のような自然なものではなく、18世紀に人工的に作られた噴水の一種のようなものというのは写真で知っていたのですが、本物がぜひ見てみたくて実際に行ってみました。
◆シャンティイ城 2日目はパリから電車で30分ぐらいのシャンティイ城に行きました。駅からお城を目指して森の中を歩いていくと急に視界が開けて、競馬場が広がりました。その向こうに見える古くて立派な建物ががお城だろうとたどり着いてみてびっくり。それは巨大な厩舎でした。18世紀には馬240頭、猟犬 500匹が飼育されていたそうですが、その建物の豪華なことと言ったら!当時、オトテール一族やフィリドール一族などの管楽器奏者は宮廷楽団ではなく、厩舎の音楽隊に所属していましたが、やっぱり、厩舎を現代の感覚でとらえてはいけませんね。宮廷の中でもとても重要な地位を占めていたことがよくわかりました。
実際のお城ももちろんとても豪華でより洗練され繊細な感じがしました。このお城はコンデ公という王族に非常に近い大貴族が所蔵していたもので、18世紀以前の絵画ではルーブルに次いでフランスで2番目の所蔵数を誇っています。壁には所狭しと大小さまざまな絵画がまるでパズルのように飾られており、その並べ方は時代や様式を完全に無視していてごちゃごちゃです。上の方に飾られた絵は光が反射してほとんど見えなかったりもするのですが、一つ一つの絵をよくよく見てみると中にはラファエロやボッティチェリ、ワトー、コロー、ドラクロワなど超大物の絵画が混ざっていて、まさに珠玉混合。一体これはなんだとびっくりしました。
◆ランス 3日目はTGVに乗ってシャンパーニュ地方のランス大聖堂に行きました。マショーやデュファイが活躍したこの大聖堂は盛期ゴシックの典型といわれていますが、入り口の装飾が実に見事でした。これから教会に入ろうとする人に向かって圧倒的な神の力を見せつけるように迫ってきて、その圧力にめまいを覚えるほどでした。思わず神にひれ伏しながら建物内に入ると、縦横高さすべてにおいて巨大な空間が広がり、大きな窓からは、ステンドグラスを通って色とりどりの光が振り込んできます。まさに神の家。教会の権威を象徴するかのような演出に、昔の人もきっと圧倒され、恐れ入ったのでしょうね。
◆ヴォー・ル・ヴィコント城 4日目は現地のツアーに参加して、ヴォー・ル・ヴィコント城とフォンテーヌブロー宮殿に行きました。ヴォー・ル・ヴィコント城はルイ14世の財務長官だったニコラ・フーケが建てたお城です。フーケは非常に洗練された教養人で、若くて才能ある芸術家たちに惜しみない援助を与え、活躍の場を与えました。彼がパトロンとなった人には詩人のラ・フォンテーヌ、劇作家で俳優のモリエール、コルネイユ、画家のプッサン、ル・ブランなど後に大物となって活躍した人がたくさんいます。きっととても高い審美眼をもっていたのでしょうね。
実際のところフーケが本当に罪を犯していたのかはよくわからないそうで、22歳で親政を開始したばかりのルイ14世が、フーケの後に財務大臣となったコルベールと共謀して、目の上のたんこぶだったフーケに言いがかりをつけて排除した、というのが本当ところではないかと思います。というわけで、せっかく建てたお城にフーケはほとんど住むことなく、生涯牢獄に幽閉されました。日本語オーディオガイドから流れる史実は。まるでサスペンス映画のようにとてもワクワク・ドキドキするもので、お城を眺めながら様々な妄想に浸ってしまいました。
◆フォンテーヌブロー宮殿 午後に訪れたフォンテーヌブロー宮殿は、中世時代からフランス王室の重要な拠点として使用された城で12世紀ごろからすでに存在していたそうです。それぞれの王やその妃、寵姫たちが自分の趣味によって工事を繰り返したため、16世紀から19世紀のナポレオンまで、様々な様式の部屋を一つの建物の中に見ることができます。中でもフランソワ1世の回廊は異彩を放っていました。ヴェルサイユ宮殿の鏡の間のような長細い部屋で、両方の壁には大きなフレスコ画が何枚も描かれ、巨大で立体的な彫像が額縁のように絵を飾り立てています。
マリー・アントワネットの部屋は彼女の趣味に合わせて、巨額をかけてロココ風に改装されたそうですが、一度もその部屋を訪れることなく、断頭台へと消えたそうです。16世紀から19世紀へ様式の変化を立て続けに見ていくと、大げさで重かった装飾が次第に軽くなり、曲線から直線へ移っていく過程がよくわかりました。私自身はルネサンスもバロックもそれぞれ大好きですが、それでも時代にそって趣味がだんだん洗練されていくなぁと感じるのは現代人の感覚でしょうか、それとも日本人?
◆カルナヴァレ博物館 最終日の5日目はそろそろ現代に帰ってこようかと、ピカソ美術館に行ってみましたが、なんと改装のため長期休館中で見ることができませんでした。仕方がないので近くにあったカルナヴァレ博物館に全く期待せずに入ってみたら、それが予想外に面白く、なんだかとっても得した気分になりました。
◆ル・ピュイ・アン・ヴレイ その後は、バッハ・コレギウム・ジャパンのツアーに参加するためにフランス中部のオーヴェルニュ地方にある、ル・ピュイ・アン・ヴレイに行きました。この町にはスペインのサン・チャゴ・デ・コンポストラへ向かうキリスト教の巡礼道の起点の教会がある街で、切り立った岩石の上に立つ教会やマリア像、世界遺産の大聖堂がある風光明媚で素敵な町でした。今回はまずこの町に数日滞在してリハーサルを行いました。毎日快晴、快適温度の最高に良いお天気が続き、リハーサルスケジュールもかなりゆったりだったため、みんなヴァカンス気分で近所をお散歩したり、フランス・グルメを堪能したりしました。おかげでみんなの気力も十分みなぎり、集中力の高いリハーサルだった気がします。
最初の公演はル・ピュイからバスで30分程度の町ラ・シェーズ=デューで、音楽祭の一環として11世紀に建てられた、サン・ロベール修道院というところでカンタータを演奏しました。この音楽祭は、フランスではかなり有名らしく、ヴァカンスを兼ねて近くに長期滞在し、毎晩コンサートに来る人も多いそうです。
◆ラインガウ その後ドイツに移動し、フランクフルトの近くのラインガウのエーベルバッハ修道院でマタイ受難曲公演を行いました。エーベルバッハ修道院は教会にしてはあまりに何の装飾もなく、がらんとしてだだっ広く寒々しい感じがしました。石がむき出しの壁にはシミが浮き出ていて、照明も薄暗く、会場へ向かう途中に通った部屋には、ほとんど真っ暗で何も見えないところに酒樽のような巨大なものがぼ〜とみえ、なんだかとても怖い印象でした。何の予備知識もなくいってしまったので、いったいどんなところだったのだろうと帰ってから調べていみたら、11世紀頃建てられたけど、1803年には教会としては閉鎖され、現代ではドイツでは有数のワイナリーとして有名なのだそうです。それで薄暗いのも、だだっ広いのも、亡霊のような酒樽を見た気がしたのも、昼間から観光客がたくさんいて、立派なお土産屋があったのも納得できました。また映画「薔薇の名前」(1985年)のロケに使われたところだそうで、ああ、確かに映画も薄暗くて怖い雰囲気だったと思い出しました。修道院は何もない山の中にポツンとあったので、公演後に見た満天の星空は素晴らしかったです。
◆ブレーメン 最後に訪れたのはブレーメンで、聖ペトリ大聖堂でカンタータとマタイ受難曲の2公演を行いました。ブレーメンの中央にある広場の一角は、大聖堂を初めとして北ドイツらしい重厚で大きな歴史的建物が立ち並んでいましたが、まるでおとぎ話にできそうにかわいい、昔ながらの小さな商店街を残した一角もあり、すべてがコンパクトにまとまっていて過ごしやすい町でした。マニアックなファクシミリをたくさん置いている楽譜屋さんがあり、ついつい散財してしまいました。
◆旅行を終えて 今回1ヶ月もヨーロッパにいて、そのうち2週間が仕事以外というのは本当に久しぶりでした。オランダ留学中は暇さえあれば貧乏旅行に精を出し、かなりいろいろな場所を回りました。年がたって再び訪れてみれば、一度いったところでもそれはまた新鮮で、これまで見過ごしていたいろんなことが見えるようになった気がしますし、一方で日本での忙しさに紛れていつの間にか忘れていた大事なことを思い出したりもしました。やっぱり自分で見て、聞いて、肌で感じられる旅行はいいですね! |
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バロック・フルート(フラウト・トラヴェルソ)を教えます この他、DACという楽器店が開催しているミュージックスクールDaCapoというところでも、レッスンをしています。場所は新大久保です。くわしくはDACのホームページに出ています。こちらのレッスンをご希望の方は、直接DAC(03-3361-4110)にお問い合わせ下さい。 大阪ではRootsという楽器店に行って、不定期ですが、個人レッスンをしています。場所は大阪市中央区の難波にあります。関西地方でレッスンを受けたい場合には、liliko@pm-sf.tepm.jpにメールをしてお問い合せ下さい。 |
