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ベルギー、アルデンヌ地方の教会での2回目のCD録音
2枚目のCD録音のため、ベルギーのアルデンヌ地方に録音に行って来ました。今回の録音は、チェンバロのローベール・コーネンさんとガンバの市瀬礼子さん、録音技師や録音会場、宿泊などのすべてが、3年前の「バッハとその同時代の人々」の録音と全く同じでしたので、気心も知れていて終始リラックスしたムードがただよう、大変楽しいものとなりました。(前回の録音の時の様子はこちら)
今年のヨーロッパは異常気象で、6月にも関わらず毎日からっとよく晴れた、30度を超えるほどの暑い日々が続きました。かなり深刻な水不足らしく、牧草地が茶色く枯れ気味だったのが気になりましたが、日本の夏と違って湿気が少ないため、教会の内部はいつでもひんやりしていて、過ごしやすかったです。ちょうど野生のブルーベリーやストロベリーの季節で、リハーサルの合間に森へブルーベリー摘みに出かけたりもしました。ちょっと小振りでしたが、甘酸っぱくて、手が真っ青になるまで摘んでしまいました。
ロベール・コーネンさんが奏でる最高の通奏低音に支えられて
今回の録音で一番印象的だったのは、なんといってもロベールの暖かな人柄とやさしさについてです。前回同様、今回の録音もロベールの全面的な協力なしには、全く実現不可能でした。録音会場の手配、チェンバロの搬送や調律、会場や駅などへの車での送迎、彼の別荘への宿泊、3度の食事やおやつから夜食のワインとおつまみにいたるすべてを、ロベールが奥様とともに準備してくれました。
私はロベールの通奏低音で演奏するとき、最高の自由を感じます。何を好き勝手やっても暖かく包み込んでくれる包容力と、行き過ぎたら私自身が気がつかないほど自然に軌道修正してくれるという信頼感があるからです。チェンバロの上手な人はたくさんいますが、通奏低音が上手な人はなかなかいません。それは通奏低音の演奏には、チェンバロの技術だけでなく、コミュニケーション能力の高さと「縁の下の力持ち」に喜びを感じる気質が必要だからです。
ロベールは人と接することが大好きです。駅員やカフェの店員など初めて出会った人にも、気さくに話かけます。そして二人は楽しそうにおしゃべりをはじめます。また彼は、あたたかな家族や友人に囲まれながら「彼らのためにできること」をいつも考えています。「だって友達だったら当然でしょう?」というたった一言ですんでしまう彼の他人に対する無償の愛は、留学してきた日本人の世話から、自分のデュリュケンのオリジナル・チェンバロの貸し出しまで、とどまるところを知りません。彼の心遣いはけっして出しゃばらず、しかも的確です。必要な時に、必要なことを、必要な人に行う・・・なかなか出来ることではありません。そして彼の行動はあまりにも自然で、相手が好意に重荷を感じないための気遣いにもあふれています。
ショートケーキの上のさくらんぼ
ロベールの演奏には、そんな彼のあたたかな心遣いがいっぱいです。録音終了後にロベールに「あなたと演奏すると、私はショートケーキの上の苺のようにあなたの演奏の上に乗っかっているだけですんじゃうの。だって私が一番美しく輝くおいしいケーキをあなたが作ってくれるから」といったら、「ベルギーではそういうのを、苺じゃなくて、ケーキの上のサクランボって言うんだよ」と教えてくれました。
ロベールの目下のところの最大の野心は、別荘の近くの一軒しかないパン屋兼何でも屋のおばさんに「ムッシュ」ではなく親しみをこめて「ロベール」と呼んでもらうことです。「こういうことは無理矢理頼んでもだめなんだ。友達だと思ってもらえるように、ゆっくりと時間をかけて頼んでみるつもりなんだ。でも今年中には、ロベールと呼んでもらえるようになるからね」と実に楽しそうに決意の程を話してくれました。
幸せと躍動感あふれるCDをお届けします
前回の録音では、初めてのソロ録音に緊張していましたし、まだまだ演奏する事に精一杯で、なかなか録音やアンサンブルを楽しむ余裕がありませんでした。でも3年の間に、BCJや他の様々なアンサンブルと一緒にコンサートや録音の経験を積んだことにより、前回と比べると今回は心にずいぶん余裕があったような気がします。
録音では、一つの曲を何度も何度も繰り返し演奏するため、だんだん集中力がなくなって、コンサートのような躍動感が失われてしまうことがよくあります。でも今回は、3日間の録音の間、一つ一つの演奏すべてが、新鮮で楽しくて、ああいつまでもこうして吹いていたいと思いました。
ベルギーの美しい自然と豊かな教会の響き、ロベール達との優雅で粋なおしゃべり、奥様のシンプルだけどセンスの効いた手料理の数々や飲み頃のワインに囲まれて、幸せと躍動感あふれる1枚のCDができあがるに違いない、と確信できる録音だったと思います。
追 記
心配していた小鳥たちは、どうもお引っ越しをしてしまったようで、全然問題なくほっとしました。近所の犬が吠えて、録音が時々中断しましたが・・・
レコーディングの後、ロベールから私の実家の方に次のようなメールが入ったそうです。 The recording session was wonderful, everything worked 'a la perfection...' in Japanese style. We were lucky , because the wheather was very nice, at the present moment it's raining and raining all the time,.
I prepare Fukuoka now, with much pleasure. Robert
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