【レコード芸術準推薦盤】

【日本経済新聞ディスクレビュー掲載】

パリのフルート音楽

   〜華麗なるロココの饗宴〜

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発売元:アルケミスタ・レコード

販売元:キング・インターナショナル [CD]ALQ-0012

 

演奏 フラウト・トラヴェルソ 前田 りり子

   ヴィオラ・ダ・ガンバ  市瀬 礼子

   チェンバロ ロベール・コーネン Robert Kohnen

 

2005年6月27日~29日 ベルギー、ブラ・シュール・リエンヌ教会での録音

レコーディング・エンジニア  リコー・イェンテマ Rico Yntema

レコーディング・ディレクター  濱瀬 祥

 

J.M.ルクレール:ソナタ集第4巻 第7番 ト長調 op.9の7

M.ブラヴェ:ソナタ ロ短調 第2番 op.3の2

J.D.ブラウン編集:無伴奏組曲 ホ短調 op.12

M.ブラヴェ:組曲集 第1巻 より 無伴奏ジーグ

J.B.ボワモルティエ:フルートとオブリガートチェンバロのためのソナタ 1番 ニ長調 op.91の1

M.ブラヴェ:ソナタ 第2番 二短調 op.2の3

J.P.ラモー:クラブサン・コンセール 第5番 ニ短調

Total time 75'23"

【レコード芸術 2006年1月号より全文転載】

 

◆皆川達夫(準推薦)

 ジョセフ・ボダン・ド・ボワモツティエ(1689 - 1755)、ジャン・マリー・ルクレール(1697 - 1764)、ミシェル・ブラヴェ(1700 - 68)らのソナタや組曲、さらにはジャン=フィリップ・ラモー(1683 - 1764)によるコンセールなど、ルイ15世(1715 - 74 在位)時代のフランスの音楽作品7曲を収録したCDである。

 演奏の前田りり子さんはすでに高校生の頃全日本学生音楽コンクールで首位を獲得された由。その後は桐朋学園大学、オランダのデン・ハーグ音楽院などで学ばれ、現在は東京芸術大学の講師をしておられる。1996年ルドルフ・トゥッツ作製バロック・フルートの響きは柔らかく、あたたかい。腕前はたしかでしかも「わたしが、わたしが」といった自己主張や、取ってつけたような作為がまったくなく、みずから音楽を流れの中に素直にひたし、自然でしかも的確にフランスの調べを歌いあげておられる。

 はじめわたくしはフランスで学んだ方かと思ったが、録音がベルギーでおこなわれ、チェンバロで伴奏しているのがロベール・コーネンと知って、なるほどと納得した。いかにも繊細で柔軟、それに加えて女性らしいやさしい心づかいにみちた好ましい音楽づくりである。ヴィオラ・ダ・ガンバは市瀬礼子さんによっており、これも望ましい支え。

 今月は山岡さん、前田さんと名演奏が並んで、日本人によるフルート演奏が国際的に高い水準にあることを証ししている。牛若丸以来日本の笛の伝統が、今日まで生きつづけているということでもあろうか。前田さんはまだお若いだけに(お年は記されていないが、写真から見て間違いなくそのように思われる)よく言えばひたむきで真摯、けなげなまでに律儀、逆に言えば視線がただ1本で、まっ直ぐすぎるという思いもなくはないものの、それだけに今後の大成を期して待ちたい。

 

◆美山良夫(準推薦)

 18世紀の半ば、パリはヨーロッパにおけるフルート音楽の頂点にあり、パリから演奏家を招聘したり、パリでフルートの名演奏家に接することは、音楽愛好家にとって垂涎の的であった。その精華を、当時パリの音楽を二分していたイタリア派とフランス派の相克と融合を視野に入れ、それも1740年代とその前後という時期に絞り込んで、その豊穣を開示してみせた企画意図は大変明確だ。

 10年前に山梨の古楽コンクールで1位に輝いた後オランダに学び、ブリュージュの古楽コンクールでも入賞するなどした前田りり子は、現在日本の様々なオリジナル楽器アンサンブルで活躍している。これは彼女の技術的な安定とアンサンブルに融和する卓越した能力の賜物であろうが、その美質はこの演奏の隅々にまで聴くことができる。ブラヴェのソナタ作品3の2最終楽章における変奏では、旋律と修飾音型をひとりで演奏しなくてはならないが、両者のバランスの見事さは特筆に値しよう。重要なのは、技巧が外在化することなく、常にひとつの美学に収斂していることである。それは繊細さと親密さに向かい、大柄で外向的な音楽づくりと対極をなしている。

 「華麗なるロココの饗宴」というこのディスクの副題とはやや異なり、大広間や大回廊ではなく、私室や小さなサロンにおけるアンティームで高品質な音楽の時間がここにある。その意を汲んだ市瀬礼子と名手ロベール・コーネンによるコンティヌオの柔軟性も指摘しておく必要があろう。

 

◆三井 啓(録音評 93点)

 2005年6月、ベルギーのブラ・シュール・リエンヌ教会で録音。教会特有の残響時間が長い響きが豊かに収録されており、その響きをともなってバロック・フルートがつややかで美しく、肉好き豊かに、柔らかく鳴り、その左右に定位するヴィオラ・ダ・ガンバ、チェンバロもウエル・バランスで収録されている。聴いていると、そのやわらかな美しい音色に心休まる思いがするCDだ。

 

【12月26日/日本経済新聞 夕刊 ディスクレビュー】より転載

 

◆前田りり子「パリのフルート音楽」

 

 前田りり子「パリのフルート音楽」 鈴木雅明や寺神戸亮らが指揮するピリオド(作曲当時の仕様の)楽器合奏団の中に前田の顔を発見するたび、「今日のフルートは楽しめる」と安心する。モダン楽器のコンクールでも優勝したほどの腕前に欧州で磨きをかけ、日本の古楽演奏の先端を担う。ルクレールらロココ時代の仏音楽も新鮮。(CD)発売=アルケミスタ