アンタレス伴星を見る        English  00年6月16日作成
                                     05年4月30日追記



<アンタレス観察記録>
1 00年5月24日 ×:時々、エアリ−ディスクが小さくまとまる時がありますが持続しません。小さく纏まる時に、アンタレスのすぐ近く(右下)に伴星らしきものがあるように見えましたが、確信できるものではありませんでした。
2 00年5月29日 (△):アンタレスの回折像が落着き静止するのはごくわずかの時間です。このときかろうじてアンタレスのすぐ近くに青色の伴星が見えましたが、じっくり確認する時間もなく回折像が揺らぎ出します。
3 00年6月1日 ×:雨上がりの直後で気流状態が悪い。肉眼でも星がちらついている。320倍ではエアリ−
ディスクも確認できない。
4 00年6月4日 ×:夜になると気温が下がり気流状態が悪い。肉眼でも星がちらついている。
5 00年6月15日 ◯:久しぶりの晴れ(梅雨の中休み)。アンタレスの近くに月が輝いている。今日は気流が良いため2階のベランダに望遠鏡を出してアンタレスを見ると伴星がはっきり見える。少しグリーンに近い色。接眼レンズを変えて見たがどのケースでも良く見える。
(ケース1)2倍バローの上に5倍バローを重ねてA-25mm→250倍
(ケース2)2倍バローの上に5倍バローを重ねてパンオプ19mm→340倍
(ケース3)2倍バローにA-4mm→320倍
 (注:2倍バローは、Zeiss接眼バローレンズ、5倍バローは、テレビューパワーメイト)
今日は、月を320倍で見ても揺らぎは少ない。やはり気流がよければ常時見えるということがわかりました。
(補足1):この日は少しもやがあってアンタレスの色が赤くなく色褪せていました。あとで考えてみると、伴星が見やすかったのは、アンタレスが赤くギラギラと輝いていなかったせいではないかとう気もします。
(補足2):6月15日以降、安定した気流の日が続いて、見るのに慣れて来たせいかもしれませんが、6月18日、19日、20日と毎回アンタレス伴星が見えるようになりました。ただし、何度見ても難しい対象です。2重星を楽しむ対象ではなく、見えるかどうか気流のチェックをしているような非常に眼が疲れる対象です。

00年7月16日 (◎):今日は皆既月食の日ですが、月食前に久しぶりにアンタレスを見ました。薄雲がかかった天気ですが、青い伴星がよく見えました。最高倍率で見るピッタリ寄り添った伴星の青と主星の紅の色の対比の美しさを味わうことが出来ました。今までの経験からしてもこういう薄雲がかかった日のほうがアンタレスの伴星は見やすいようです。伴星のエアリ−ディスクは、その周辺が淡く輪郭が不明瞭でした。また、エアリ−ディスクの大きさが光の波長により変わるのを確認するため、青いセロファンをアイピースの上にのせてアンタレスを見ました。青いアンタレスのエアリ−ディスクは確かに小さくなっているようでした。
05年3月31日 アンタレス食で伴星出現を見る。
倍率約50倍で月の暗縁を見ていると白っぽい星が出現しその後赤い主星が出てきました。
最初に出たのは伴星ではっきりと見ることができました。主星が出るまでの時間が短い(数秒)ので色はじっくり見ることができませんでしたが、白っぽい感じでした。「アンタレスの伴星が発見されたのは1819年のアンタレス食の時、伴星が月の暗縁から先に飛び出してきたため」ということを本で読んだことがありますが、今回これと同じ現象を体験することができました。アンタレス食で伴星が低倍率でもはっきり見えたのは私も驚きでしたが、月により、主星の光が望遠鏡に届く前にシャットアウトされたため、主星の回折リングや大気による揺らぎの影響がなかったためだと思います。(注)

(注)補足説明です。月が主星を隠すことにより伴星が容易に見えるなら、アイピースにオッカルティング・
   バーを着けて人工的に星食を起こせばと考えますが、両者は本質的に異なります。望遠鏡のレンズを
   通過したあとで主星を隠しても回折リングや大気のゆらぎのため主星の光がオッカルティング・バー
   から漏れてしまいます。一方、月による食では回折光発生前かつ大気の影響なしの状態で主星の光が
   シャットアウトされます。

<小口径望遠鏡でアンタレス伴星が見える条件>
 結論としては、非常に安定した気流が必要(少なくともエアリ−ディスクがきれいに見えることが必要)
だと思います。(5月頃に較べると夏の気流は安定していて、6月中以降は伴星が見える日が多くなりました。
特に、7月16日は、回折リングも落ち着いて(ほぼ完璧な回折像でした。)じっくり観察することができま
した。)→回折リングの簡単な説明

<アンタレス伴星が見えにくい理由のまとめ>
以下の理由により、3〜4インチクラスの小口径望遠鏡にとってアンタレス伴星の分離は易しくないと思
います。
1.離角が小さく光度差が大きい。(伴星の百倍近い明るさアンタレスの光がすぐ側に強烈に輝いている)
  →口径10cmの望遠鏡では、伴星が第一回折リングのすぐ側にあり伴星の光度も第一回折リングと
  同じくらいのため、気流が乱れると伴星と第一回折リングの区別がつかなくなる。
  (気流の影響は中心のエアリ−ディスクよりも周辺の回折リングのほうが受け易い(*)ので、エア
   リ−ディスクが見えているからといって安心できません。)
    このことは、逆のケース(伴星が第一回折リングのすぐ側にあるが伴星の光度が第一回折リング
   よりも明るい)を考えると理解しやすいと思います。
   →例:牛飼座ε星
      アンタレスとほぼ同じ離角に伴星を持つ牛飼座ε星の場合は、伴星の光度が主星の第一回折
      リングより明るいので、非常に楽に見える。第一回折リングが揺らいでいるような気流でも
      伴星を見ることができる。
  (*)経験的にそう思いますが、大気の動揺と回折像の乱れの関係を理論的に説明すると面白いと
     思います。
2.日本からでは南中高度が低いため安定した像が得にくい。
3.アンタレスは赤い星のため回折像が青い星に較べて約10%ほど大きい。(回折像の大きさは、光の
  波長に比例するため)→この分、伴星との間が狭くなっている。
4.その他
  アンタレスは変光星のため極大期は分離が難しくなる。

以上、一言で云えば、3〜4インチクラスの小口径望遠鏡にとって
 『(アンタレス伴星が見える)≒(気流が非常に安定している)』
アンタレス伴星が見えましたということは良い気流に恵まれましたね、という挨拶のようなものです。
見えなかったら今日は気流が今一つだと思えばよいと思います。上空にジェット気流がある日本メイン
ランドでは第一回折リングが落ち着いて見える日はそう多くありません(年に数日位)。私の去年の
経験でも静止した完璧な回折リングが見えたのは1度だけでした。ジェット気流から外れた沖縄は気流
が安定しているそうです。

アンタレス伴星についてのコメントは、人によりかなり差があります。
<アンタレス伴星についてのコメント1>
さそり座が天頂に見える南半球の天文雑誌/本のコメントです。
(1)オーストラリアの天文雑誌SKY&SPACE(JUN/JUL2000)からの要約
 ・アンタレスは素晴らしい2重星だが、非常に難しいものの一つ。伴星は光度5等でわずか3秒しか
  はなれていない。この星は初心者の対象ではない。ある程度の口径と非常に安定した気流が必要。
 ・オーストラリアのアマチュア天文家E.J.Harungは、7.5cmの望遠鏡で分離したと言っているが、
  筆者は12cm以下の口径で見たことはない。
(2)オーストラリアのスターウオッチングガイド(The Australian guide to STARGAZING,
   GREGG D.THOMPSON著 Lansdowne)より
 ・主星の輝きにかき消されそうな青い伴星は、性能の良い高倍率の望遠鏡と安定した気流の下でのみ
  見ることができる。アイピースの視野絞りにオッカルティングバーを置いてアンタレス主星を隠す
  ということで伴星を見やすくすることができる。

 (私の補足):アンタレスの伴星は、星食観測のとき月の暗い縁からアンタレスが出る直前になって
        伴星がさきに飛び出して来たことにより発見されたそうです。(1819年)

<アンタレス伴星についてのコメント2>(7月29日追加)
(1)「Star-Hopping for Backyard Astronomers ,Alan M.MacRobert著 SKY PUBLISHING」と
  いう本の中のコメントです。
 ・アンタレスは有名だが、難しい二重星。Robert Burnham,Jr. が、Celestial Handbookという本に
 「シーイングが良い時に、6インチの望遠鏡でエメラルド色に輝く伴星を見ることができる。」と書い
  ているが、私(Alan M.MacRobert)はしばしばトライしているにもかかわらず6インチ反射で見た
  ことはない。
(2)国内のコメントより
 1)藤井 旭著「星座ガイドブック」より
  ・よほど空気の落ち着いた条件のよいときにかぎり、10cmに200倍の倍率をかけて、やっと
   アンタレスの回折像の中にポッチと光っているのがわかるくらいです。
 2)小森幸正著「天体望遠鏡ガイドブック」より
  ・アンタレスの伴星は、15cm反射でよほどよい鏡でないと認めることがむずかしい。
 3)Sky Watcher2000年9月号の二重星観測ガイドより
  ・7cmとか15cmとか本によって見え方がバラバラの「さそり座α」。8cmで可能。但し、気流
   の非常に良い日でないと見られない。

<アンタレス伴星についてのコメント(その他)>
(1)インターネットの掲示板で見かけた中で、アンタレス伴星が見えた最小口径の望遠鏡はNikon8cm 
   屈折でした。
(2)私の掲示板に寄せられた観望記より;
  ・テレビュー85にナグラー4.8mm,2.4倍バロー,シーイング4/5,天頂ミラー使用300倍で第1回折
   リングの外側に接するように伴星がはっきり見えた。位置角はほぼ270度(京都の武ちゃんさんより)
  ・ティーガル100にOr5mm154Xでハッキリと位置角265度辺りに伴星が見えた(広島の中井さんより) 






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