二重星の発見年代史
主な二重星が初めて見つけられたのはいつか?という興味から作成してみました。
(1)17世紀
  ・1650年:ミザ−ル(おおぐま座ζ)イタリアのRiccioliが発見。ガリレオの望遠鏡発明の
         41年後です。
         (これは又、1857年にG.P.ボンドにより写真に撮影された最初の二重星です)
  ・1656年:トラペジウム(オリオン座θ) ハイゲンスが1656年にその存在に気付きました。
  ・1664年:おひつじ座γ 4.7等と4.8等の二重星。ロバート・フックが1664年に発見。
         "I took notice that it consisted of two small stars very near together"
  ・1678年:ふたご座α(カストル) カシニにより初めて分離。
  ・1689年:ケンタウルス座α(リゲル・ケンタウルス) インドでリチャウド神父により発見。
(2)18世紀
  ・1718年:ポリマ(おとめ座γ) ブラッドレイとパウンドにより発見された。
  ・1777年:みずがめ座ζ 4.4等と4.6等の二重星。マイヤーが発見。
  ・1779年:カシオペア座η 3.6等と7.5等の二重星。ウィリアム・ハ−シェルが発見。
  ・1779年:うお座α 4.3等と5.2等の二重星。ウィリアム・ハ−シェルが発見。
  ・1780年:ポラリス(こぐま座α:北極星)2.1等(変光)と9.0等の二重星。ウィリアム・
         ハ−シェルが発見。
  ・1780年:うしかい座クシ−星。ウィリアム・ハ−シェルが発見。
  ・1781年:いっかくじゅう座β ウィリアム・ハ−シェルが発見。
         "one of the most beautiful sights in the heavens"
  ・1782年:しし座γ ウィリアム・ハ−シェルが発見。
  ・1783年:白鳥座δ 3.0等と6.5等の二重星。ウィリアム・ハ−シェルが発見。
         T.W.Webbは、「Difficult because falls on interference ring:often easy in
         twilight,but invis. in a dark sky.」と書いている。
  ・1783年:へびつかい座τ 5.3等と6.0等の二重星。ウィリアム・ハ−シェルが発見。
  ・1783年:エリダヌス座オミクロン2 4.5等と9.4等の二重星。ウィリアム・ハ−シェルが発見。
  ・1788年:アンドロメダ座γ 2.3等と5.1等の二重星。マイヤーが発見。(*1778年と書い
         てある本もある。)
(3)19世紀
  ・1819年:アンタレス(さそり座α) Burgが発見(アンタレス食の時、伴星が月の暗縁
         から先に飛び出してきたため)伴星の色は緑色と云われていますが、これは主星の
         色に影響されているため→ドーズも1856年の食の時に出現した伴星の色について
         「not contrasted grn.」と云っています。
  ・1819年:オリオン座ζ(アルニタク)ドイツの天文学者クノウスキーにより初めて分離。
         Wilhelm Struve calls it 'olivacea subrubicunda'!.((明るい方の星に対して)
         わずかに赤みががったオリーブ色)
  ・1826年:トラペジウムの5番星(E星) W.Struveが発見した。
          
        ↑トラペジウムのE,F,G,H星の説明図(E,F星は10cmでも見ることが可能。
         T.W.Webbは、「E星はおそらく明るくなりつつあるかもしれない。10cmで
         見えるのだから」と書いている。)

  ・1829年:うしかい座ε(pulcherrima:プルケリマ)F.G.Wシュトルーフェにより発見。
         T.W.Webbは6cmアクロマートでも見えると書いている。「I have seen it
         perfectly with 2.25 inch achr.」
  ・1830年:トラペジウムの6番星(F星) John Herschelが11.7インチ屈折で発見した。
  ・1836年:くじら座γ F.G.Wシュトルーフェにより発見。
  ・1842年:アンドロメダ座γの伴星自身が二重星であることをOtto Struveが発見。
  ・1846年:四重星(ダブル・ダブル)のさそり座νの暗い方のペア(CD)
         →ミッチェルによって初めて分離。
  ・1848年:オリオン座η 難しいペア。ドーズが11cm望遠鏡で発見。
  ・1850年:おおいぬ座ε ケープ天文台で発見。
  ・1862年:シリウス(おおいぬ座α)Alvan Clarkが、46cm屈折レンズのテスト時にその伴星
         (8.7等)を発見したことで有名。このときの離角は、10秒だったということです。
         その後、離角が減少し1889年に5秒、1896年に3.7秒になったのをリック天文台の
         36インチ屈折が確認した記録があるそうです。1970年〜80年代前半頃は10〜11秒
         の離角があり、15cmクラスの望遠鏡で見えたそうです。
         10cm位でも伴星が見えるという話があります(南仏ニースでの話;
         Paul Couteau著のObserving Visual Double Starsの中に「The companion
         of Sirius has been seen at Nice with 10-cm refractor ,although it is
         difficult to observe even with very large instruments.」という記述)
  ・1874年:四重星(ダブル・ダブル)のさそり座νの明るい方のペア(AB)
         →S.W.バーナムが15cmで検出。
  ・1879年:さそり座βの第二伴星 47cm屈折でS.W.バーナムが発見。
  ・1887年:くじら座13番星(短周期二重星) 46cm屈折でG.W.ホ−が発見。
  ・1888年:トラペジウムのG星 16等星でA.G.Clarkがリック天文台の36インチ屈折で発見。
  ・1888年:トラペジウムのH星 16等の二重星で、E.E.Barnard がリック天文台の36インチ屈折
         により発見。
  ・1890年:クリューガ−60(眼視連星中最も太陽系に近い星) リック天文台36インチ屈折で
         S.W.バーナムが発見。R.バーナム Jr. 星百科大事典には、良質な15cm望遠鏡に
         高倍率で分離可能とある。
  ・1896年:プロキオン(こいぬ座α) シェベールが、リック天文台の36インチ屈折で発見。
         発見当時の伴星の位置は4".6、位置角320゜。伴星の光度は11等。
(4)20世紀
  ・1923年:ミラの伴星 リック天文台36インチ屈折によりR.G.エイトケンが目視で検出。
  ・1935年:ケンタウルス座ベータ星(固有名:Hadar)0.7等星と4.0等星の二重星。J.C.Vouteが
         Lembang天文台のツアイス60cm屈折により分離。当時の離角は、1.12秒。1991年
         時点で0.87秒。最近ではもっと接近しているとのこと。

<調査中の二重星>
 ・オリオン座リゲル:いつ誰が発見についての記述は見当たりませんでした。Thomas Webb著の
          「Celestial Objects for Common Telescopes」には、小口径で見えたと
           いう事例が紹介されています。(例:Burnham detected it with 1.25 inch;
           T.T.Smith with 1.5 inch silver spec.など、口径3cm〜4cm程度でも分離
           出来たようです。(19世紀の話です。))
          →Wikipediaによれば、「Rigel has been a known visual binary since
           at least 1831, when it was first measured by F.G.W. Struve.」と
           いうことです。

(参考図書)二重星に関連する本です;
・Thomas Webb著「Celestial Objects for Common Telescopes」
・Paul Couteau 著 Observing Visual Double Stars  MIT Press 1981
・Editor:Bob.Argyle 'Observing and measuring Visual Double Stars'
 →Springer-Verlagの'Practical Astronomy'シリーズ 2004年発行
・藤井 旭著「星座ガイドブック 春夏編、秋冬編」
・R.バーナム Jr. 星百科大事典
・その他(SKY&SPACE誌等)