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                                          02年3月10日作成
                                          02年3月14日修正 
                                          02年4月21日一部追記
不等光二重星の分離曲線について

 ドーズのリミットは等光ニ重星についての話しですが、ニ重星は不等光のものが圧倒的に多いので
不等光ニ重星についてもドーズのリミットのような関係式が成立しないかを考えてみました。
1.エアリ−ディスクと回折リングの等級差と離角の関係
  エアリ−ディスクと回折リングの等級及び離角は、図1の左のようになります(但し、離角はD=100mm
 の望遠鏡の場合)。エアリ−ディスクが0等のときの回折リングの等級(1明、2明、・・の等級)について
 は、月刊天文1994年7月号の「回折像と二重星(木村陽一氏)」の値です。
 これらの値を、横軸に等級差、縦軸に離角(秒角)としてプロットしたのが図1の右のグラフです。
 例えば、回折リングの1明はエアリ−ディスクとの等級差=4.47等(エアリ−ディスクが0等ならば、回折
 リング1明の光度は4.47等)で、口径10cmの望遠鏡の場合エアリ−ディスクの中心からの離隔は1.7秒角
 なので図の@をプロットする。以下同様に、回折リングの2明、3明、4明、・・を考え図のA、B、C・・
 をプロットします。
      
       図1 エアリ−ディスクと回折リングの等級差と離角のグラフ表示

2.不等光二重星の分離限界
  考え方は単純で
  「不等光二重星の分離限界は、伴星が主星の回折リング付近にあるとき伴星の光度と主星の回折リングの光度
  の比較により決まるのでは?」ということです。
  図2のように、主星の第k回折リングと伴星のエアリ−ディスクの位置関係を見た場合、両者の位置が重なり
  回折リングと伴星のエアリ−ディスクの光度が近い時が分離限界付近ではないかと考えます。 

      
         ΔMk:主星のエアリ−ディスクと第k回折リングの光度差
         Δm:主星と伴星の等級差
         Δm:主星のエアリ−ディスクと伴星のエアリ−ディスクの等級差
         Tk:主星のエアリ−ディスクと第k回折リングの離角(秒)(k=1,2・・)
         t:主星と伴星との離角(秒)
         C:定数
       図2 主星の回折リングと伴星のエアリ−ディスクの位置関係
   
  図2のとき、分離限界は、
    ΔMk=C×Δm かつTk=t  (k=1,2・・) ・・・・・・(1)
  と考えます。ここで、C:定数は観測データから決めます。

3.不等光二重星の分離曲線(暫定版)
  D=100mmの場合の不等光二重星の分離曲線は、横軸に等級差、縦軸に離角(秒角)として上記(1)式の
 点(図3の■)をプロットし、これらの点と等光二重星のドーズ・リミットである点を通るカーブ(図3の太
 い実線のカーブ)とします。定数Cは、トラペジウムC、F星の分離を10cmの限界としてC=0.9としました。
 (細い線のカーブは、エアリ−ディスクと回折リングの等級差と離角を結んだカーブ)
 これを見ると、10cmでシリウス伴星を見るのは最大離角でも難しいようです。
 
        図3 不等光二重星の分離曲線(D=100mm)

   他の口径Dmmに適用する場合は、エアリ−ディスクと回折リングの離角が異なるのみなので、上記を基準
  分離曲線Lとして、L×100/Dとします。

4.分離曲線の関数表現
  4インチ屈折のケースで、分離曲線を4次多項式による最小自乗近似を求めると、
  図4のように下記の式となります。
    y=(2E-05)x^4+0.0102x^3+0.0042x^2-0.034x+1.1
   
  [補足] 上記式より口径Dmmの無遮蔽望遠鏡では分離曲線は次のように表現出来る;
    y=((2E-05)x^4+0.0102x^3+0.0042x^2-0.034x+1.16")*100/D
     =(0.002/D)*X^4 + (1.02/D)*X^3 +(0.42/D)*X^2 -(3.4/D)*X +116"/D
     =116"/D -(3.4/D)*X +(0.42/D)*X^2 + (1.02/D)*X^3 +(0.002/D)*X^4
     ↓    ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄↓ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
 
    (A)                  (B)
    ここで、(A)項はドーズリミットの式で、(B)項は不等光二重星の分離のための拡張項です。
    →等光二重星の場合はX=0なのでy=116"/D となります。

4.観測データとの比較
 上記3で出した分離曲線をFSー128及び25cmシュミカセのデータと較べてみます。
(1)FSー128による二重星の分離データ
  本データは、奈良の宮崎さんから送られていたデータを等級差10、離角10秒までの範囲で取り出
 したものです。膨大な量の観測データと今後のターゲットデータから成っています。(図5)
 尚、宮崎さんのデータは、「FS128固有のもので、奈良市郊外の中程度の光害地におけるデータ」という
 ことです。この分布図に上記3の分離曲線を重ねてみました。(図5の赤い曲線)
 
   図5 FSー128による二重星の分離と分離曲線

(2)25cmSCによる二重星の分離データ 
  本データは、広島の中井さんのHPにある「マニア向け二重星」のページに載っているデータを
 使用しました。尚、25cmSCの光学的悄諸元は、D=254mm,f=2500mm、副鏡遮蔽率=13.7%(面積比)
 37%(直径比)だそうです。
 中央遮蔽の場合、回折リングの明るさが無遮蔽の場合と異なるので、下の赤いカーブはを考慮した分離曲線
 を示します。

  
   図6 25cmSCによる二重星の分離と分離曲線

7.二重星分離判定ツール (Trial version)
  図7は、上記の分離曲線に基づいた二重星分離判定ツールです(但し、無遮蔽の場合のみ)。
  <入力データ>
   ・口径
   ・ターゲットの二重星の離角と等級差
   ・環境要因: シーイングと観測者の熟練度
  <出力データ>
   ・ターゲットの二重星の分離判定

  図7 二重星分離判定ツール (Trial version)

上のツールのダウンロードはここから

5.今後の課題
(1)上の方式の妥当性や定数Cの決定のため今後もいろんな観測データとの比較/検証が必要。
(2)中央遮蔽の場合の関数近似の検討。


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