Small Telescopes

これまで入手した小型望遠鏡(Small Telescope)を紹介します。

1.TAL-65:65mm,F7.7ニュートン反射赤道儀
TAL-65は、ロシアのNovosibirsk Optical Instrument-Making Factoryの製品です。
TAL-65の全体像:小口径、球面の反射鏡、手動微動の卓上赤道儀、ツァイスサイズのラムスデン
アイピース、のぞき穴式のファインダー、アイピース被せ式のサンフィルター、そしてホームセンター
に置いてあるような望遠鏡のパッケージ・・・・・
これらの言葉を見ると50年前の初心者向け望遠鏡のスペックそのものですが、TAL-65は現行製品です。
自動導入や電子観望が盛んな現代において、その対極のような絶滅危惧種の望遠鏡です。しかし、コスト
ダウンを図りつつ必要な所は手抜きのない、非常に良く見える望遠鏡です。
例えば、TAL-65で二重星のアンドロメダγを130倍で見ると、回折リングも奇麗に見え、小さな青い
伴星が主星よりも少し遠くにあるような感じでした。TAL-65のアンドロメダγの見え方に関しては
クエスターと比べても全く遜色ない見え方でした。TAL-65は、「この口径とF値の球面鏡は精密に
作られていれば収差は殆どない」ことを実際に示している望遠鏡だと言えます。

下の写真の上段左:鏡筒と赤道儀及び格納箱   上段右:箱に格納した様子 中段左:斜鏡 
中段右及び下段:アイピースとバーローレンズ及び中間筒(これにより倍率が3段階[30倍、90倍、130倍]
になる)
    下の丸い物はアイピースに被せるサングラス(日本や欧米では現在製造されていませんが
    ロシアの現行製品にはこれが付いていました。英文マニュアルには、「太陽を見るときは
    Black filterを使用すること」とありますが、怖くてこれは使用しません)



6.5cmの反射望遠鏡といえば1960年代後半の天文ガイドの広告に日野金属のH65型反射望遠鏡があった
のを思い出します。これより口径が小さくなるとその当時作られていた4cmの卓上式ニュートンなど玩具に
近いものとなります。ニュートン式反射で実用上6cmが最小口径のようです。6cmあれば月、惑星は一応
見れます。この口径とF値ならば球面鏡でも必要な光学精度に達しています。また、手動微動式の赤道儀
ならば高倍率でも惑星を容易に追尾できます(世の中一般的には、入門用の天体望遠鏡は口径5〜6cm
の屈折経緯台が良いとされていますが、惑星を100倍以上で見るとなると経緯台に微動が付いていても追尾
は大変ではないでしょうか)。
価格的にはTAL-65はebayで新品が199ドルです。これに国際送料等が同額程度かかりますが、入門用の
望遠鏡として6.5cmニュートン式反射赤道儀は有りではないでしょうか。
■TAL-65の主鏡の光軸修正機構
→取説の写真を見ると光軸修正は 3組のスプリングとネジ、鬼目ナットを用いた押し引き共用方式
 のようです。小口径なので光軸が狂うことはあまりなさそうです。


■センタリングアイピースを使って覗いた像。光軸は合っているようです。
(中央遮蔽率=約25%です)


■TAL-65の精度について
小型のニュートン反射TAL-65は球面鏡(D=65mm, f=500mm)ですが月や惑星を見ると
非常に良く見えます。
そこでどの位の精度があるのかを机上で求めて見ました。球面鏡が完全な球面であるとして
鏡の原点で接して鏡の端で交わるような放物面との差を下の表に示します。
→この結果では、球面鏡とパラボラの差(P-V値)=λ/16となります。
 ミラーは入射と反射があるのでλ/16の半分の精度のλ/8がこの球面鏡の波面精度となり、
 望遠鏡として十分な値となります。


(注)球面鏡の収差について
 
いろいろ調べてみると、これを求める公式は
  TEXEREAU  HOW TO MAKE A TELESCOPEのP.17〜P.19
 に載っていて、それを求める方法は
  Andre Danjon, Andre Couder  LUNETTES ET TELESCOPES(注)のP.123〜P.134
 に詳しく載っています。
 両方とも球面とパラボラの偏差がλ/4の場合の式は
     f^3=34.9*D^4
 となっています(単位はcm)。λ/8の場合は
     f^3=69.8*D^4
 となります。この式でD=6.5cmの場合を求めるとf=49.9cm=500mmとなります。
 すなわち、公式からはD=65mm, f=500mmの球面反射望遠鏡の精度は(λ/8)*2=λ/4
 となります。
 (参考)D=5cmの球面鏡で球面とパラボラの偏差がλ/2の場合、f値は?
     →f^3=17.45*D^4を使って求めると、f=222mm。
     従って、5cm, F=4の球面鏡の精度(P-V値)はλ/2の半分の精度のλ/1。
     上の表のように机上でグラフから求めると精度はこれより少し良くλ/1.5でした。

(注)Andre Danjon, Andre Couder  LUNETTES ET TELESCOPES  1979 A BLANCHARD PARIS
 望遠鏡に関する光学の本(仏語)。700頁あります。明倫館書店の古書にあったので入手。



2.LOMO Astele 60:60mmマクストフ・グレゴリー望遠鏡
LOMO Astele 60は、ロシアのLOMO社(Leningrad Optical Mechanical Association)の製品です。
ebayから中古を入手しました。
下の写真は、LOMO Astele 60をMAKSYの卓上三脚に載せたものです。


この望遠鏡の特徴は、光学系がMaksutov-Gregorianであることです。すなわち、正立光学系の
グレゴリー式反射望遠鏡のマクストフ版です。マクストフ・グレゴリーなのでメニスカスは正面から
見ると凸状になっています(マクストフ・カセグレンと逆)。
下の写真のように、副鏡はスパイダーによって固定されメニスカスとは分離しています。副鏡は
グレゴリー式の副鏡なので楕円凹面鏡だと思います。焦点調節はカメラレンズのように前方に
ヘリコイドがあり、ヘリコイドを回すと副鏡とメニスカスが回転しながら前後に進むようになっています。


↑副鏡を支える3本のスパイダーが見える。また、副鏡が大きいのが分かる。

Astele60の副鏡をアイピース側から見ると、3本のスパイダーがあるのが分かります。
また、副鏡の遮蔽率(開口の直径Dに対する遮蔽の直径の比率)は45%程度あります。
Questar3.5の遮蔽率は30%位なのでAstele60の遮蔽率はかなり大きいです。一般に、
グレゴリーの副鏡はカセグレンに比べて大きくなります。
     
↑Astele60の副鏡    ↑(参考)Questar3.5の副鏡


この望遠鏡のもう一つの特徴は、接眼部が45°傾斜しているということです。
 これは、この望遠鏡の目的がspotting scopeのためですが、グレゴリー式の正立像に
 ハーフペンタプリズム(正立像をそのままに45°向きを変えるプリズム)を入れて45°傾斜
 方向の正立を実現していると思われます。
 *ハーフペンタプリズムの構造はこちらを参照

 以上のことを纏めると、LOMO Astele 60の光学的構造は下記のようになると思われます;
 

 同じ口径60mmのマクストフ・カセグレン式の例としてはMAKSYがあります。
 下の写真は2つを並べたものです(MAKSYはf=12.5, LOMO Astele60はf=19.5)


  

 メニスカスレンズに見える蛍光灯の形を見ると、
 MAKSYのメニスカスは凹面、Astele60のメニスカスは凸面であることが分かります。
 また、副鏡のサイズの違いも分かります。
   
 
 Astele60の鑑筒にはクエスターを真似たのかスターチャートが描かれています(LOMOのミニ
 マクストフの特徴)。光学系としてもロシアらしい非常に面白い望遠鏡です。地上の風景を見た
 限りでは良く見えます。
 
 Maksutov-Gregorian scopeの他の例としては、Zeissの30×60 mirror scopeがあります。