![]() 演出と声とアニメーション:新海誠/音楽:天門/彼女の声とイラスト協力:篠原美香/協力:Rabsaris <<<「彼女と彼女の猫」TOPへもどる <<<TOPへもどる |
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【Plot】 彼女と彼女の猫 or their standing points 1999/07/19 ■作品の目標 大作ゲームに代表されるような、大手資本によるデジタル映像に拮抗しうるものを個人で作成すること(「あのムービーより全然すごくはないけどこっちの方が好き」と言ってもらえるもの)。その際、期間・機材を含めた制作コストが極端に大きくないこと。完全に「大人」をターゲットにし得るクオリティを達成すること。 現時点で可能な映像は、3DCG、手書き、実写のほぼ3択となる。3DCGは手間が膨大で、一定以上のレベルを目指すと個人の場合、特に期間的に現実的ではない(個人的なスキルの問題ももちろん大きい)。実写では「デジタル映像」の範疇から微妙に外れるし、シナリオそのものに対する評価がいきなり厳しくなる。手書きを選択すれば、セルアニメが30年かけて築いてきた、記号化された映像文法がそのまま利用できる。そこで、手書きのアニメーションとする。 抽んでた完成度を実現するため、また、期間的なコストを削減するため、手書きの絵の作成にはデジカメなどの実写資料をフルに活用する。絵からできるだけ嘘を排除し、現在の現実をそのまま抜き出したようなリアリティを獲得することを目指す。ただし、一般受けするメジャー感を常に意識した、さっぱりした絵柄にする。 全体の気分、雰囲気、そういったものから、1990年代後半の日本を連想できる作品にすること。閉鎖的な同人活動を指向した無数の非商業作品、SF・ファンタジー・学園・ミステリー、類型ばかりのエピソードと手法を積み上げた商業作品、そのどちらからも自由な作品を作ること。 ■物語のアウトライン 彼女は二十代半ばの社会人。職業は明かされない。関東周辺の地方都市で一人暮らしをしている。 彼女は美しく、スマートで、他人にプレッシャーを与えず、とてもまじめ。つきあっている男性はいる模様。でも、なんだか彼女は彼を本心から好きになることが出来ない。上手に甘えることや、わがままを言うことができない。相手の時間や領域や、自主性とかいったそういう大切な部分に踏み込むことが、すごくいけないことだと思ってしまう。彼女はなんでも一人でできて、すごくしっかりしている。それからいつでもすこし寂しい。 彼女は猫(♂)を拾う。猫は美しい彼女をすぐに好きになるし、彼女は猫といるときはリラックスすることができる。彼女も彼女の猫も、いきもののからだの暖かさに安心することができる。 猫には、とても自然に、猫のガールフレンドができる。猫のガールフレンドは、とても自然に彼に甘える。 ある夜、電話の後、彼女は長い時間泣き続ける。つきあっている男性と別れたとか、ひどいケンカをしたとか、理由はたぶんそんなところだ。猫はそんなことは大したことじゃないと思うが、彼女はとても疲弊してしまう。そんなに好きになれなかった相手でも、彼女なりに必死に、慎重に、大切に続けてきた関係だったからだ。それでも彼女は、次の朝も変わらずに仕事に出かける。空も川もきれいだと思う。 そんな話。オチはないです。できることならば、それが余韻につながるように全体を構成する。 |
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「彼女と彼女の猫」 ---1 イントロダクション--- 季節は春のはじめで、その日は雨だった。<画面、ナシ。ナレーションのみ> <ひざに顔を埋める、長い髪の女性、の顔のアップ> <雨のSE。部屋の隅、風で揺れるカーテン、電話機、うずくまる彼女、キャミソールとか、薄着> だから、彼女の髪も僕の身体も重く湿り、あたりは雨のとてもいい匂いで満ちた。 <電話が鳴る。びくっとする彼女> 地軸は音もなくひっそりと回転し、<コール音続く。台所> 彼女と僕の体温は、<洗面所> 世界の中で静かに熱を失い続けていた。<脱ぎ捨てた服。カーテンの影が揺れる。留守電に切り替わる音「カチャ」> <最初のアングル。彼女はいない> <留守電「ハイ、サトウです。ただいま留守にしております……」> <遠くで靴を履く音。トントン> <重い鉄のドアが開いて、閉まる音。ギィ、ガチャン> <閉められたマンションのドア。音の余韻> その日、僕は彼女に拾われた。 だから僕は<木の下の彼女> 彼女の猫だ。<猫のアップ><タイトルロゴ><ピアノ曲IN。ジムノペディNo.2> ---2 彼女の日常--- <BGM続いている。見上げたマンションの壁面と流れる雲間の青空> <玄関の濡れた傘と靴> <蒸気の吹き上げるやかん、またはポット> 彼女は母親のように優しく、<彼女から見たミルクを飲む猫の頭。ミルクの波紋のみ動画> 恋人のように美しかった。<下着姿で毛布にくるまりミルクを飲む彼女のアップ> <それをロングで。お互いを見ているふたり。猫の頭にハートマークが浮かんで消える。彼女の目をドットにする等、多少デフォルメを> それで僕は<仰向けになる彼女の髪のアップ、できれば動画> すぐに彼女のことが好きになった。<仰向けで雑誌を読む彼女と、おなかの上の猫。真上から> 彼女は一人暮らしで、<朝日の中のテーブル、シンプルな朝食。光るコップのミルク> 毎朝仕事に出かける。 仕事の内容は知らない。<床に寝転がる猫。床に置かれたブラウス> 興味もない。<猫のポーズ、オーバーラップで変わる。床にはパジャマなど> でも、 僕は、朝部屋を出ていく彼女の姿がすごく好きだ。<天気予報のテレビ画面CG。派手に動かす> きちんと束ねた長い髪、<バレッタを止める指先、アップ。写真を撮らせてもらうか?> 微かな化粧と香水の匂い。<手前にマニキュアを塗る彼女、からだの奥にテレビ> 彼女は僕の頭に手を乗せて、<為替相場のテレビ画面CG> 「じゃあいってくるね」<シロヌキの台詞の字幕> と声に出して、<猫の頭の上に置かれた手> 背筋をぴんと伸ばして気持ちのいい靴音を響かせて、<ドアの上のブレーカー。靴音のSE。> 重い鉄のドアを開ける。<ギィ、というSEで、ブレーカーに朝日が当たる> <ドアが閉まるがちゃんと言う音とともに画面FO> 雨に濡れた朝の草むらのような匂いがしばらく残る。<何でもいいけど、部屋の中とか窓とか空とか、気持ちのいい絵> ---3 彼の日常--- <SE、蝉時雨> <マンション、上にPANしつつFI。「向かいのマンション.jpg」参照。プラス入道雲、手前の壁面と手すり3Dでパース移動> <電柱の根本など、より日常的な舞台のほうがよいのでは?適時切り替える?> <埼京線の高架とその向こうの鉄塔。蝉時雨と電車の音。高架下、ということにしてはどうか?夏が終わる前に写真を> 夏がきて、 僕にもガールフレンドができた。 子猫のミミだ。<ミミの絵> ミミは小さくて可愛くて、甘えるのがすごく上手で、でも僕はやっぱり、<大型の鉄塔、青空と積乱雲、鳥> 僕の彼女のような<下から見上げた彼女のカット(ミルクを飲む彼女リピート)> おとなっぽい女の人の方が好きだ。<ミミがじゃれついている絵> 「ねえ、チョビ」<以下、ミミの台詞は全画面字幕> 「なに?ミミ」<ミミの下敷きになっている彼。以下、チョビの台詞は字幕+ナレーション> 「ケッコンしようよ」 「ねえ、ミミ、何度もいったけど、」<マンションの廊下> 「僕には大人の恋人がいるんだ」<美しい彼女の絵> 「うそ」 「うそじゃないよ」<屋上へ続く階段、バリケード> 「会わせて」 「だめだよ」<バリケードの錠アップ> 「どうして?」 「ねえ、ミミ、何度もいったけど、」<> 「こういう話はもっときみが大人になってから」 とかなんとか、こういう話がずっと続く。<大型の鉄塔、青空と積乱雲。セミの声がFI。> <間。セミの声つづく> 「また遊びにきてね」 <ミミとチョビの絵。重くならないように、ハートマークなど> 「ぜったいきてね。ほんとにきてね。ほんとにほんとにきてね」 電線が、いつでも、空がどんなに広いかを教えてくれた。 ミミとの話は、ほんとうはすごく楽しい。 ---3 彼の日常 別案--- 僕にも友達はいる。昼間、彼女が出かけているあいだ、僕は彼らと会ったりもする。中でもいちばんの友達は犬のジョンで、彼は僕の知らない多くのことを知っている。彼の話はとてもためになる。 「にゃん。にゃあにゃあ」(ねえジョン、遊びにきたよ) 「わんわんわん。わん」(やあチョビ。今日もいい男だね) 「にゃん。にゃあにゃあにゃあ」(彼女のことなんだけどね、僕は彼女の心の隙間を埋めてあげたいんだ) 「わん。わんわんわわん。わん」(チョビ、前にも言ったようにね、それはほとんど無理なんだよ。つまりね……) ジョンによると、彼は生命の創造の時を記憶しているから寂しくなどないんだという。生命が生き残るために二つの性にわかたれた、それ以前の寂しさのなかった幸せな時代を覚えている。星が生まれたときと同じ分子が、いまでも彼の血液の中を流れていることを覚えている。 「でも、僕だってそんなことはほとんど覚えてないよ」 「だから君も、そんなに心が寂しがるんだ」とジョンは言う。 ---4 彼女の寂しさ--- <ひぐらしの声、ずっと続く> 秋のはじめ、<彼女_電話2(少しロング)。風の音がして、膝の辺りまで光が当たる。もしくは背景の影が動く> ながいながい電話の後、<彼女_電話3> 彼女が泣いた。<ここでフェードアウト。SE電話の切れる音> 僕には理由はわからない。でも、<彼女_電話2と同アングル。彼女は膝に顔を埋めていて、その向こうに猫。フェードアウト> でも、僕のとなりで長い時間泣いた。<画面ブラック。椅子を倒す音、電話を置く音> 「ねえ、ちょび」<倒れた椅子、電話プラス字幕> と彼女が言った。 <「そこにいるね」女性ナレーション> <チョビの手、彼女の手のひら、同アングル。彼女の手が動いて、彼に触れる> <画面フラッシュ。「バチン!」> 彼女が僕にそっと触れると、彼女の悲しみで僕の身体は激しく痛んだ。<手前に被写界深度のぼけた花、その奥にシルエットの彼女と猫、その奥は窓、夕日、ひぐらしの声> 彼女の声が聞こえる。 「だれか、だれか」<涙ぐんだ彼女の主観映像。顔を覆う手のひら、涙を拭う手。激しい動き> <「だれかたすけて」(字幕、フェードアウト)> ---5 彼女と彼女の猫--- 果てのない暗黒の中を、<工事現場のクレーン、シルエット、FI。赤色灯点滅。黒く厚い雲が流れている> 僕たちを載せたこの世界は回り続ける。 <四角い窓の中に、パーティクルの雪> 季節が変わって、いまは冬だ。 僕にとっては始めてみる雪景色も、<信号機見上げ、雪の中(990422/信号機1)> ずっと昔から知っているような気がする。<郵便受けパース> 冬の朝は遅いから、彼女が家を出る時間になってもまだ外は暗い。<自動販売機アップ> 分厚いコートにくるまった彼女は、 まるでおおきな猫みたいにも見える。 <いってくるね> 雪の匂いを身にまとった彼女と、<ドアが閉まるSE。閉まったドアの絵> 彼女の細い冷たい指先と、<口元の手。白い息> 遥か上空の黒い雲の流れる音と、<鉄塔3D。背景に重い雲。カメラ上を向く> 彼女の心と僕の気持ちと僕たちの部屋。 雪は全ての音を吸い込んで、 でも彼女の乗った電車の音だけは、 ぴんとたちあがった僕の耳にとどく。 僕も、 それからたぶん彼女も、 この不完全な世界のことが好きだと思う。 |
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