嘘予告『狂鬼大戦』


   〜髪かきあげ、図面引いて、奇妙な話を熱く語った。
    あの男は狂っていた。
    本気で人を救う気でいた〜         大槻ケンヂ 



「ミノリオ嬢サマ。篤胤博士アテニ、オ手紙ガ届イテオリマス」

 そう言って封筒を差し出したのは、六本のマニピュレーターを持つ業務用掃除機にそっくりなロボットだった。

「ありがとう、アレックス。でもあたしは、"みのりお嬢様"じゃないわ。"みのり博士"よ! ―――いまごろお爺さまあて
に手紙?」

 豪田みのりは首を傾げつつ、差出人不明の封筒を開封した。

祖父の篤胤が死んでから二年が経っている。最近は手紙が届くことも稀な事なのだ。

封筒の中身は一枚の紙片とメモリーディスクだけである。

「『世界最高の科学者の皆様へ―――』ですって・・・何かしら?」



  世界各地に郵送された差出人不明の手紙―――



 気温、氷点下80℃。

南極大陸の永久結氷の大地に造られた新帝國ギア―――秘密都市ネオグラード。

謎の手紙を踏みにじって、孤独な隻眼の科学者がマントを翻して絶叫する。

「『世界最高の科学者の皆様へ―――』だと―――愚か者めが! 世界一は私だ! その名にふさわしいのは、この
私―――ドクターマン唯一人だけなのだ!!」
            ネオメカジャイガン
独裁者の命を受け、機械巨人が発進する―――



  受け取った者達は―――



「なんとっ! 全てのメモリーディスクのデータを合わせると『オルフィレウスの永久運動機械』の設計図が出来上がる
のであるかっ!?」

「そんなの、あり得ないロボ。 エネルギー保存の法則からいって―――」

「永久機関! 無限に動き続ける奇跡のメカニズム! 科学が神に勝利した偉大なる記念碑っ! あああっ! 全ての
科学者が夢見た、究極の動力機械なのであるっ!!」

 ドクター・ウエストは黴くさい研究室でエレキギターを掻き鳴らして叫んだ。

「・・・ぜんぜん聞いて無いロボ」



  狂気と理性の狭間に揺れ動く科学者達―――



 何基ものプロペラで飛翔する、ピラミッド型の飛行要塞がTOKIOを爆撃する。

機体下部から投下される爆弾が平和な市街地を瓦礫に変え、無数の砲塔が死と破壊をぶちまける。

「Ha!Ha!Ha!Haa〜! ダレにも、ダレにも渡さん! 世界最高の科学者とは、この私のコトなのだぁ〜!!」

 飛行要塞のコクピット内で、扇子をうち振りつつ狂笑するハスラー教授。


「ああっ! なんて事だっ! 再建費用が幾ら掛かるのか、保険会社が倒産するかもしれないし、今年度の税収だって
落ち込んでしまうっ! 今だって、財政再建団体になりかかっているのにっ!」

 防災センターで、市街地の被害状況をモニターしていた都知事は激しくマタタキをしながら悲鳴を上げた。

「心配は無用だよ。イシ○ラ君」

 背後からの冷静な声にふり返った都知事の顔が恐怖に強張り、マタタキの速度が増加する。

彼が目にしたのは国際条約によって、免責特権を認められた天才科学者だったからである。

「こんなこともあろうかと思ってね」

「ま、まさか、またアレを・・・」

 白衣の狂人は不敵な笑みを浮かべた。

「あれから7年・・・さらにパワーアップした私の最高傑作の出番がついに来たか―――」

 岸和田博士の叫びと同時に、防災センターは激しく揺れ動く。

「イシ○ラ君、極東超巨大公務員伝説の復活を胸に刻むがよい! 東京都庁ロボ発進!!」

 地響きを上げて浮上した全長202m、地上48階建てのビルは、見る間に巨大ロボットに変形し、ハスラー教授の飛
行要塞と対峙した。

「では教育してやるか。公務員ミサイル連続発射!!」

「あの、どうせなら定年間際の使えない連中を優先して発射してくれませんか・・・?」



  "最高の科学者"に用意された椅子は唯一つ―――



「あらまあ、なんかたいへんねー。でも、永久機関をモノにすれば、今度の昇進試験は確実に合格ね!」

 かすりのモンペに防空ずきん姿の豪田みのりは、TVに写る飛行要塞vs都庁ロボの戦闘を見て呟いた。

「みのりさん! 何やってるんですか! 早く避難しないと、ここも危ないんですよ!」

「あら、こんにちは、山下さん。 アレックス! 山下さんにお茶をおだしして〜!」

「呑気にお茶してる場合じゃありませんよ! 九十九里浜と横浜のほうにも、巨大ロボが上陸したらしいし・・・」

「ツトムさんはどうしてるのかしら? ・・・山下さん、お砂糖はいくつ?」

「じゃあ、一つで良いです―――って速く逃げましょうよ!」

「逃げるのは、お茶が終わってからにするわ」

 山下は舌を火傷しそうになりながら、紅茶を一気に飲み干した。

「はい、終わりましたよ。さっ、早く!」

「・・・それでは、今回は山下さんで間に合わせるってことで」

「ま、まさかっ! 今の紅茶には・・・!」

 豪田みのりは可愛らしく微笑んで言った。

「以前、ツトムさんに使った薬をちょこっと―――ね♪」

「ぬおぅわぁ〜〜〜〜!!! なんで俺がぁ〜〜!」

 次の瞬間、山下は屋根をぶち抜いて巨大化した。



    神の叡智か、悪魔の技か―――



「大丈夫ですかお爺さん? 立てますか? ケガとかはしてませんよねえ?」

 ツトムは人通りの絶えた道路に倒れ込んでいた老人を助け起こした。

「白衣をなんて着ているから、お爺さんはお医者さんなんですか? ひどいよなあ、誰も助けないなんて・・・よっこいしょ
っと―――うわぁぁぁぁっ!!」

 助け起こした老人の顔を間近で見たツトムは、飛び上がって悲鳴を上げた。

その老人の左半面は、無惨な火傷痕と古傷に覆われていたからである―――だが、恐ろしいのは傷跡だけではない
―――かっと見開かれた老人の隻眼には、紛れもない狂気が輝いていたからだ。

「あ、あなたは一体―――ぼ、ボクに何の用があるんですかぁ!!」

 老人はツトムの袖を掴むと、耳元で囁く。

「おまえは神にも悪魔にもなれる。神となり人類を救うことも! 悪魔となり世界を滅ぼすことも! お前の自由だ。お前
が選べる! お前の好き勝手に、世界を手玉に取るが良い! 世界はお前の物じゃぞ!」



  マッドサイエンティスト達の超科学決戦の幕が開く!! 



「神よ・・・・科学という名の悪魔に魂を売った私(たち)を許したまえ!!」


         『狂鬼大戦』

         Coming Soon......?



                                   豪田みのり  火浦功『みのりちゃんシリーズ』
                                   ドクターマン 『超電子・バイオマン』
                                   ドクター・ウエスト 『斬魔大聖デモンベイン』
                                   ハスラー教授 『大鉄人17』
                                   岸和田博士  トニーたけざき『岸和田博士の科学的愛情』
                                   兜十蔵 永井豪『マジンガーZ』
                                    



「ええいっ! どいつもこいつも、あたしのシマで勝手なコトをやらかしてっ! だいたい『オルフィレウスの永久運動機
械』って何よ! このマイティ・マサコさまに手紙が届かないなんて間違ってるわよ!」 

「・・・それは、姉御が認められていないからじゃあ・・・?」

「そんなこと絶対に許せないわよ! あの小娘を倒すのは、あたしなんだからっ! 行くわよタロ! "ジャンボ・マックス
U"出撃よっ!!」

「あ、アレはまだ未完成では・・・」

「通信教育出身のマッドサイエンティストの底力と根性、エリート連中に思い知らせてくれる!」


                                    マイティ・マサコ  火浦功『みのりちゃんシリーズ』




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